インタビュー

PCオンラインゲームに愛を届けたい、“WebMoney Award”担当者インタビュー

「PCオンラインゲームファンの“好き”を世の中に発表できる場所に」

12月19日より投票受付

 電子マネーとして代表的な存在と言えるウェブマネーが、今年も“WebMoney Award”の投票を12月19日より受け付ける。“WebMoney Award”は2006年から毎年開催されており、PCオンラインゲームファンの投票でグランプリが決まる。

 筆者もかなり長いPCオンラインゲームファンであり、“WebMoney Award”の存在は知っていた。今回、担当者の阿部紗綾香氏にインタビューを行ない「もっと“WebMoney Award”を知って欲しい。PCオンラインゲームファンが、自身の大好きなタイトルに対する想いをきちんと発揮できる場所として、ぜひ投票して欲しい!」ということで、気になるところを質問してみた。

 “WebMoney Award”の成り立ちと歴史は? ノミネート作品がPCオンラインゲーム中心なのはなぜか? “WebMoney Award”はどういった想いで運営されているのか? そしてこれからのWebMoneyの戦略は? ……そこから聞くことができたのは、PCオンラインゲームへの熱い想いである。

 「あの時のみんなは元気だろうか?」、「スマホのゲームも楽しいけどやっぱりがっつりオンゲーがやりたい」と想っているアナタ! “WebMoney Award”はそんなあなたを応援する企画である。担当者を含めた、スタッフの想いを感じ取って欲しい。

ファンの“愛”で決まる“WebMoney Award”、PCオンラインゲームと歩み続けた歴史

――最初に、“WebMoney Award”の歴史と、設立された主旨を教えて下さい。

阿部氏: まず最初にWebMoneyと、PCオンラインゲームの関係を説明させて下さい。WebMoneyは、1998年にインターネット用の電子マネーとして誕生し、1999年に会社として立ち上がりました。主にファンさんからはデジタルコンテンツ用の購入に使われていたのですが、2000年頭くらいから、PCオンラインゲーム黎明期と重なり、PCオンラインゲームでWebMoneyをご利用いただく機会が一気に増えました。

“WebMoney Award”担当者の阿部紗綾香氏
“WebMoney Award”は毎年PCオンラインゲームをノミネート、ファン投票でグランプリや部門賞を決定する
“WebMoney Award” 2015のグランプリは「ファンタシースターオンライン 2」。コメントではファンの声も見ることができる
「ファンタシースターオンライン 2」は特にキャラクターグラフィックスに人気が高い
2006年受賞タイトル「トリックスター」

 WebMoneyの基本コンセプトはクレジットカードや自身のメールアドレスなど個人情報を入力することなく、コンビニなどで気軽に購入できる電子マネーというものなので、携帯電話決済や、インターネットでのクレジットカード利用が今よりずっと少なかった時代から、手軽にネットでの支払いができるという点で多くの方にご利用いただけるようになりました。

 PCオンラインゲームとWebMoneyの関係性を大きくアピールできたのはセガさんのドリームキャストです。ここで公式に課金用としてクレジットカードかWebMoneyでの支払いという形で採用していただいたことで、「ファンタシースターオンライン」や「チューチューロケット! 」などのタイトルを通じて、PCオンラインゲームファンに広く認知されたと思っています。

 そこから様々なPCオンラインゲームでWebMoneyを採用していただきました。そういった実績をうけて、「PCオンラインゲームでの支払いはWebMoney」という認識をプレーヤーさん、メーカーさんそれぞれに持って頂けた結果、その後に続々とリリースされたPCオンラインゲームに採用していただきました。これが2002年頃でしょうか。

 その後PCオンラインゲーム市場が大きく広がっていく中、2006年に“WebMoney Award”が生まれます。実は2005年に前身となる“企画”があったんです。これはWebMoneyのメールマガジン読者を対象にアンケートを採る方式で決めたもので、受賞したタイトルを表彰し、ファンに賞品をプレゼントするという企画でした。

 このアンケート企画そのものの規模は小さかったんですが、2006年頭に六本木ヒルズのセミナールームを借りて、受賞されたメーカーさんをお呼びし、授賞式を行ないました。受賞タイトルは「トリックスター」や、「ラグナロクオンライン」でしたね。受賞したメーカーさんによる座談会企画などもしたと思います。これがきっかけに社内で盛り上がり、「次はもっと大きい規模でやろう」というのが、“WebMoney Award”の始まりです。

――“WebMoney Award”のユニークな点は、ノミネートを「PCオンラインゲーム」に限っているところだと思います。PCオンラインゲームと言えばやはりスマートフォンタイトルも含めるべきだと思いますが、ラインナップに関してはどうしてこういう構成になっているのでしょうか。

阿部氏: “WebMoney Award”初期の頃はアプリゲームがなかったというのもあるのですが、元々我々が取り扱っているのがPCオンラインゲームだったので、現在も“WebMoney Award”については、PCオンラインゲームの祭典という位置づけで開催しています。

 また、コンシューマーゲームはメディアだったり、街ナカでの露出機会が多い一方、PCオンラインゲームはそういった機会が少なく、ランキング的なメディアもなかったりします。そこで、“WebMoney Award”がある意味、PCオンラインゲーム用の1つのメディアとして存在し、年に1度、人気のPCオンラインゲームを表彰し、PCオンラインゲームファンはもちろんのこと、より多くのゲームファンにPCオンラインゲームをアピールできればと思っています。

――今までの結果を見ますと一部メジャーなタイトルが入っていないのが気になりますね。

阿部氏: プレーヤーさんは公式ページの告知などを見て”WebMoney Award”に投票していただいているのですが、ノミネートの告知などは各メーカーさんの運営方針によるところが大きいので、そのあたりの影響もあるかと思いますね。

 “WebMoney Award”は、興味を持っていただいたプレーヤーさんの投票で成り立っています。つまり、メーカーさん側で「投票しよう!」といった呼びかけを積極的にしていただけているところは、やはり強くなりますね。投票者側も「俺たちのタイトルを盛り上げよう」という勢いを感じます。私たちも、より多くのプレーヤーさんに“WebMoney Award”を知ってもらうというのが永遠の課題です。

 また投票者の特徴としては10年以上PCオンラインゲームをプレイされている古参プレーヤーが多いように思います。もちろん新規の方も多くご参加いただいていますが、古参プレーヤーさんはPCオンラインゲーム黎明期からWebMoneyを利用していただいているという点では、私たちも「一緒にPCオンラインゲームを支えてきてくれた同志」という想いを持っています。

――2015年でも部門賞を受賞している「Alliance of Valiant Arms」や、「サドンアタック」などPCオンラインFPSは若いプレーヤーも多い印象があります。

阿部氏: そうですね。特にオフラインイベントで若いファンの勢いも感じます。また、最近だと「親子2代で遊んでいます」という方も増えてきている印象があります。

 こうしたプレーヤーさんがWebMoneyを使い続けてくださっていることもあり、“WebMoney Award”入賞するタイトルは、比較的歴史の長いものが多く、投票者の年齢層も年々上がっている印象を受けます。

――これはオンラインゲーム、特に老舗のPCオンラインゲームでの課題でもありますが、より幅広い層にゲームを知ってもらう、ファン層を広げるというのはウェブマネーそのものにも共通する課題なのですね。

阿部氏: そのためにも“WebMoney Award”が色々なPCオンラインゲームを知る“きっかけ”になってくれればと思います。受賞されたタイトルは“WebMoney Award”を通じて多くの方に認知してもらえる機会が増えると思いますし、数年前から投票者に「このゲームの何が好きか」というアンケートを取って、紹介しています。プレーヤーさんの生の声を見ることで、そのゲームをプレイしたことがない方に興味を持ってもらえるきっかけになればいいなと思っております。

 プレーヤーさんの生の声を見ることで、そのゲームをプレイしたことがない方に興味を持ってもらえるきっかけになればいいなと思っております。プレーヤーさんからの生の声はとても参考になります。メーカーさんからは「プレーヤーさんの意見は厳しいものが多い」と言う声も聞きますが、“WebMoney Award”は「自分の大好きなゲームを応援したい」という想いがあるためか、とても暖かく、好意的な意見が多いですね。

 やはり投票して応援するというアクションをしてくださるプレーヤーさんは、そのゲームに対する愛がとても強い印象を受けます。特に「運営の皆さんいつもありがとう、がんばってください!」という応援コメントをはじめ、大変貴重なご意見がたくさん寄せられているため、毎回、メーカーさんにも共有させていただいています。

――昨年の“WebMoney Award”グランプリは「ファンタシースターオンライン 2」でした。2013年から3年連続受賞ですが、この人気の秘密は何でしょうか。

阿部氏: おそらく、プレーヤーさんが多く、WebMoneyユーザーさんも多いのではないかと思います。……ひょっとしたら、ドリームキャストの頃からWebMoneyを使ってシリーズをプレイし続けている方もいらっしゃるのかもしれないですね。

“WebMoney Award”では過去の受賞作も掲載しているので、そちらも見ていただきたいですね。PCオンラインゲームのその年の流行も感じられますし、“WebMoney Award”ならではの流れも見ていただけるのではないかと思います。

 各年の受賞タイトルをみてみると、入れ替わりが激しいコンシューマゲームに比べ、PCオンラインゲームは歴史のあるタイトルが強いですね。また、プレーヤー数が多いタイトルが強いとも限らないWebMoneyユーザーさん独特の傾向も感じます。

 その理由の1つとして、実はPCオンラインゲームプレーヤーさんって“ツンデレ”気質な人が多いのではないかなとも思うのです(笑)。ずっとプレイし続けているゲームはあるが、そのゲームのこれからの発展を願う気持ちが強いが故に、「“WebMoney Award”で賞は取らせない!」みたいな複雑な思いを抱えたプレーヤーさんもいらっしゃるのではないかと(笑)。

 愛が大きいだけに妙なところで厳しい、実は“WebMoney Award”を続けてると、わざと投票を控えるようなプレーヤーさんの存在も感じられるのですよね(笑)。

――今年で11年目を迎えた“WebMoney Award”ですが、今以上にPCオンラインゲームファンに認知してもらうための施策はどのようなものを考えていますか。

阿部氏: プレーヤーさんからの生の声はとても参考になります。メーカーさんからは「プレーヤーさんの意見は厳しいものが多い」と言う声も聞きますが、“WebMoney Award”は「自分の大好きなゲームを応援したい」という想いがあるためか、とても暖かく、好意的な意見が多いですね。

 やはり投票して応援するというアクションをしてくださるプレーヤーさんは、そのゲームに対する愛がとても強い印象を受けます。特に「運営の皆さんいつもありがとう、がんばってください!」という応援コメントをはじめ、大変貴重なご意見がたくさん寄せられているため、毎回、メーカーさんにも共有させていただいています。

――これからの“WebMoney Award”の新戦略などはありますか?

阿部氏: 社内では賞を増やしていこうなどの声は上がっていますが、今のところは大きな変化を起こす予定はありません。ただ、運営メーカーさんと“WebMoney Award”の繋がりをもっと深め、PCオンラインゲーム業界全体でこのイベントをPCオンラインゲームの祭典として楽しんでいただき、運営メーカーさん、プレーヤーさんの両者にとって意義のあるメディアにしていきたいと、個人的には思っております。そうなるためには”WebMoney Award”というイベント名称を変更することもあるかもしれませんね。

 余談になりますが、受賞トロフィーをオフィスの受付に飾ってくださっている運営メーカーさんもいらっしゃって、その光景を見るたび、「“WebMoney Award”をもっともっと活気あふれるイベントにしていかなくては!」と気合が入ります。

――今回の結果発表は、アフリカTVで生配信するんですね。

阿部氏: はい、2017年1月25日に、アフリカTVの「アフリカTVオンラインゲームチャンネル supported by WebMoney」で生配信予定です。視聴者向けWebMoneyプレゼントもあるのでぜひ見ていただきたいですね。

 「アフリカTVオンラインゲームチャンネル」ではPCオンラインゲームの実況系も力を入れていますし、利用者の親和性も高いかと思いますので、今回に限らず、PCオンラインゲームを盛り上げる協力をしていければと思っています。

スマホ向けのサービスなど新しい挑戦もしつつ……やっぱりPCオンライン頑張れ!

――PCオンラインゲーム業界そのものの話なども少ししようと思います。日本では日本では、「ファンタシースターオンライン2」、「ファイナルファンタジーXIV」や「ドラゴンクエストX」、「艦隊これくしょん -艦これ-」などPCオンラインゲームで元気なところもありますが、以前と比べ、新しいゲームはちょっと少なくなった印象ですね。

阿部氏: 最近はスマホのアプリゲームが主流になり、PCオンラインゲームそのもののリリースが少なくなっていますね。私としては、以前のように多くのタイトルがリリースされ、PCオンラインゲームファンにプレイする選択肢を増やしてあげて、各自のプレイスタイルに合ったゲームができるといいなと思っています。

2014年よりスタートした「WebMoney Card」。チャージすることでクレジットカードと同じように使える
アフリカTVではPCオンラインゲーム実況も人気。「アフリカTVPCオンラインゲームチャンネル supported by WebMoney」では、様々なPCオンラインゲームを紹介している
「Shadowverse」、「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」など、スマホタイトルがPCオンラインゲームに来る、という流れもおきている

――スマホゲームで、WebMoneyは使われないのでしょうか?

阿部氏: スマホゲームは、クレジットカードか、コンビニなどで販売されているスマホ対応のプリペイドカードがあるため、WebMoneyが参入できていません。しかし、2014年から「WebMoney Card」というサービスをスタートしたんですが、このカードは年齢を問わずどなたでも持てるチャージ式のMasterCard付きブランドプリペイドというもので、先にWebMoneyをチャージしておき、クレジットカードと同じ手順でMasterCardとしてスマホに登録しておくことで、スマホゲームでWebMoneyをご利用いただけるようになりました。

――そういった新しいビジネスを会社として模索しながらも、“WebMoney Award”はPCオンラインゲームを応援していきたいというところですよね。阿部さんが個人的にPCオンラインゲームメーカーに届けたいメッセージはありますか?

阿部氏: 「今が踏ん張り時です!」と伝えたいです。“WebMoney Award”担当者として、プレーヤーさんの声に直接触れているからわかりますが、プレーヤーさんは“待って”います。面白いゲームをプレイしたい、もっとがっつり遊べるゲームが欲しいと思っています。そして自分たちがプレイしているPCオンラインゲームがもっと楽しくなることを信じています。

――その意見はとても共感できます。実は開発者達も同じ想いでいると思います。例えばネクソンの「テイルズウィーバー」なんですが、13年目にして「原点回帰」を目指してるんです。これからさらにサービスを続けるために、基幹システムのバランス調整をする。これからさらに頑張るための地固めをしているんですね。「踏ん張り時」というのはいいフレーズだし、応援の気持ちが伝わってくる言葉ですね。

阿部氏: PCオンラインゲームは、ゲームでありながら、コミュニケーションツールであるところも大きな魅力の1つだと思います。たかがゲームだと思われがちですが、その中の世界でも、しっかりとした人間関係が構築され、人と人との絆があってこそクリアできるステージがあったり、ゲームをプレイするというより、チャットなどで今日あったことを話たり、相談したり、自宅のリビングのような役割をこなしているのが、PCオンラインゲームの良さという方もいらっしゃいますしね。

――「Shadowverse」、「グランブルーファンタジー」、「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」など、スマホタイトルがPCオンラインゲームに来る、という流れがありますが、これに関してはどう思われますか。

阿部氏: 人気タイトルがPCオンラインゲームになるのは大きなチャンスだと思います。PCオンラインゲーム業界にスマホから参入してくれるタイトルが増えるというのは心強いです。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

阿部氏: 「なんで、俺たちのタイトルが賞を取れないんだ」という意見をプレーヤーさんから聞くことがあります。私もオンラインゲームファンとしてその気持ちはとてもよく分かります。あなたの大好きな、自信を持ってオススメするタイトルが受賞できるかは、まさに皆さん一人ひとりの投票で決まります。是非、あなたの想いを込めて、“WebMoney Award”への投票を、ゲームへの応援をどうぞお願いします!!!

――ありがとうございました。