【特集】
格闘ゲーマー必見! 格ゲー専用ゲームコントローラー「Razer Raion Fightpad」を格ゲー5タイトルで使い倒す。気になる機能や操作感、使い心地などを動画と共にお届け!
2019年12月20日 12:00
- 11月29日発売
- 価格:10,000円(税別)
格ゲー界隈では“格闘ゲームを本格的にプレイするならアーケードスティック(アーケードコントローラー)は必須”という文化が根強くある。しかし近年のeスポーツシーンでは、海外のトッププレーヤーが大会でゲームコントローラーを使用している場面を見ることも少なくなくなった。依然としてアーケードスティックが主流であることは確かだが、現在ではゲームコントローラーを愛用しているプレーヤーも増えつつある。
かくいう筆者も「NEOGEO」時代からアーケードスティックを愛用してきたが、最近は実はゲームコントローラーでのプレイが多い。その理由は2つあり、1つはシンプルにアーケードスティックではレバー操作やボタンの押したときの音が大きいという問題。もう1つは、格ゲーはアーケードゲームという大前提が崩れていることだ。
今まで格闘ゲームの新作といえばアーケードが先行というのが当たり前だったので自然とレバー操作に慣れてしまい、コンシューマでも同じ感覚でプレイするためにアーケードスティックを使ってきた。しかし近年ではコンシューマが先行というパターンも多くなったので、手軽にゲームコントローラーでプレイする機会が増えたのだ。
ただ、筆者は往年の格闘ゲーマーとして、ゲームコントローラーでの操作はお手軽さはあるのだが、入力速度や正確さを要求される格闘ゲームにおいてストレス無く快適にプレイできるのかと問われると力強く頷くことはできない。操作感を格闘ゲーム寄りに調整された格ゲー専用ゲームコントローラーなども様々なメーカーから発売され、新商品が出るたびに製品情報を吟味して手を出してきたが、文句無しのアイテムに出会ったことは未だかつてない。
誇大広告に一杯食わされ続けて不信感を持っている筆者に、Razerが新たにリリースしたPS4/PC用格闘ゲームゲームコントローラー「Razer Raion Fightpad for PlayStation 4(以下、「Raion」)」の試遊レポートの話が舞い込んできた。これまで格ゲーゲームコントローラーのレビューを信じて購入し、触って落胆を幾度となく経験してきた身としては、仕事だからとはいえ悪い部分に目をつぶる気は全く無い。良い部分はもちろん、細かな部分でも悪い点があれば全て書いていく気持ちで、今回「Razer Raion Fightpad for PlayStation 4」の試遊レポートを書かせていただいた。購入を迷っているユーザーは本稿を是非チェックして参考にしてもらいたい。
格ゲーマー目線で研究され尽くした設計
まずは「Raion」の見た目から紹介していこう。形はXbox Oneのコントローラーに似ていて、握った時のフィット感はとても良好。本製品は、格闘ゲームに不要なアナログスティックを廃止し、無駄の無い洗練されたデザインとなっている。
ボタンは□・△・×・〇の4つに加えて、その隣に格闘ゲームでは多用するR1とR2ボタンも配置した6ボタン式のレイアウトとなっている。押しやすさを重視してボタンのサイズも大きめに設計。フェイスボタン同様、ゲームコントローラー上部に配置されているLRボタンも押しやすい大きさだ。
なお、「Raion」は8方向キーとボタンしかない格闘ゲーム特化型のゲームパッドとなっている。DUALSHOCK4にある2本のアナログスディックやデジタルパッド(方向キー)は付いておらず、汎用のゲームコントローラーとしては使用するのは難しいので、その点は注意してもらいたい。
さて、最初に触って驚いたのはボタンを押した感触だ。スイッチにゲーミングキーボードなどに使われている「Razerメカニカルスイッチ(黄軸)」を採用しており、ボタンを押した時の反発がほとんど無い。この軽さによって高速でボタン入力をすることができる。あまりの軽さに操作中に思いがけない誤入力が起こるんじゃないかと懸念していたが、実際にプレイしてみると全くそんなことは無く安定した使い心地。ただ、格ゲーマーに多い“ボタンを押した時の感触”にこだわりがある人には、あまりの手応えの無さに少々違和感を覚えるかもしれない。
Razerメカニカルスイッチの利点はボタンの軽さだけではなく、8,000万回の入力にも耐えられる耐久性の高さだ。これは個人的にはかなり惹かれるポイントである。何を隠そう、筆者が普段使っている格ゲー用ゲームコントローラーの最大の不満点がこの耐久性の低さなのだ。筆者のボタンの押す力が強いというのもあるかもしれないが、大体3~4カ月くらい使っているとボタンを押した際に潰れて戻ってこなくなる。1ボタンでもこうなってしまうと全く使い物にならず、今年はすでに2回買い直している。今では壊れること前提で完全に消耗品として使っている。格ゲー用ゲームコントローラーも安い物ではないので、長く使用できるのはとてもありがたい。「Raion」が実際に耐久性があるかどうかは長期間使ってみなければわからないが、耐久性を高めるために「Razerメカニカルスイッチ(黄軸)」を採用しているというのは大きく評価できるポイントだ。
ちなみに上部のLRボタンは軽いフェイスボタンとは異なり、しっかりとした押し心地のスイッチとなっている。おそらくコントローラーを持つ際にLRボタンへ指を添えるのを想定し、誤入力を防ぐ為なのだと思われる。しかし個人的にはもう少し固いスイッチでも良かったかなと思うのが正直なところ。使い初めの頃は対戦中に何度か誤入力が発生して難儀した。ただ、ここは慣れの問題だと思う。
そしてゲームコントローラーでもっとも重要な方向キーは、このコントローラー独自の「メカタクタイル8方向キー」を採用している。オーソドックスな4方向キーあるいはアナログスティックではなく、円形の形状となっており、ゲームコントローラーの弱点である斜め入力の甘さを見事に解消している。あまり力を入れず、軽い入力で斜めがバッチリ入ることに正直感動した。
触った感触も独特で、円形の方向キーが少し浮き上がっており、キーを押し込んで入力するというよりは、軸の短いスティックを親指で操作している感覚に近い。方向キーを動かしたのカチカチと鳴る音も、しっかり入力が出来ているのを直感的に感じられるのも良い。
ここからは機能面を見ていこう。ゲームコントローラー下面には「方向キー」、「右スティック」、「左スティック」に入力を切り替えるスイッチと、L3やR3のボタンを割り当てるスイッチ、そして裏面にはPS4とPCの切り替えスイッチが備わっている。
ボリュームコントロールボタンとマイクミュートボタンを同時押しすることで「競技モード」に切り替えることも可能。競技モードでは、PSボタン、SHAREボタン、OPTIONボタンがロックされ、大会などで誤って押して試合を中断させてしまうという事故を防いでくれる。まさにeスポーツ向きの機能である。
複数の格ゲータイトルを「Razer Raion Fightpad」でプレイ!
ここからは、格闘ゲームのタイトル別に「Raion」でプレイした感触を語っていこう。今回プレイしたのはeスポーツシーンを熱く盛り上げている4タイトル(「鉄拳7」、「ストリートファイターV アーケードエディション」、「SAMURAI SPIRITS」、「BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE」)と、来年に発売を控える話題の完全新規タイトル「グランブルーファンタジー ヴァーサス」の計5本だ。
初めにプレイするのは、今年に入ってパキスタンの強豪プレーヤーが目覚ましい活躍を見せて話題となっている「鉄拳7」。このゲームは他の格ゲーと比べて特に立ち回りが重要で、対戦中は常に左手側(方向キー)のアクティブな操作が要求される。
「鉄拳」で重要とされるステップ系のテクニック(山ステ、ステステなど)は、ゲームコントローラーで精確かつ高速で出すのは難しいと言われている。「Raion」で試した感想としては、素早く連続で出すのはやはり難しかった。しかし普段使っているゲームコントローラーと比べれば、操作のしやすさは雲泥の差である。
「鉄拳7」は斜め入力の技コマンドも多いので、ゲームコントローラーでプレイしていると“入力が甘くて別の技に化ける”ことも結構あるのだが、そういったことも起こらず快適にプレイできた。「Raion」でも十分にイケる印象だ。
次は、格闘ゲームの王道タイトルであり、来年には大型アップデートも控えている「ストリートファイターV アーケードエディション(以下、「スト5」)」をプレイ。「スト5」を楽しむなら、とにもかくにも必殺技がスムーズに出ない事には話にならない。初めに技コマンドの基本となる「波動拳」、「昇竜拳」、「竜巻旋風脚」を試したが精度はとても高かった。筆者が持っている某格闘ゲーム専用パッドと「Raion」とでコマンドの入力精度を動画で比較してみたのでチェックしてもらいたい。
ゲームコントローラーではなかなか厄介な投げ技の一回転・二回転コマンドも、スティックに近い滑らかな方向キーのおかげでコマンド入力がスムーズでき、簡単に出すことができる。入力速度の向上により、相手の飛びを見てから咄嗟に対空技を決められるのも爽快だった。他にも、高速入力をウリにしているボタンだけあって連打系のコマンドも驚くほど瞬時に繰り出すことができた。「スト5」に関しては「Raion」でプレイして不満点は特に見当たらなかった。
続いては、約十年ぶりの復活を遂げた剣戟格闘ゲーム「SAMURAI SPIRITS」。一撃の威力の大きさが最大の特徴で、1つのミスが命取りとなる緊張感のある戦いが楽しめる作品だ。「SAMURAI SPIRITS」は使用するボタンが多く、格ゲーではあまり使うことがないL1やL2ボタンもフル活用する。
複雑な技コマンドは無く、基本的には入力は簡単なのだが、個人的にそこそこな確率で入力ミスをする必殺技がある。1つは、従来の格闘ゲームでいう超必殺技にあたる「武器飛ばし必殺技」だ。コマンドは波動拳コマンドという至って簡単なコマンドなのだが、問題は“ボタンがL1”というところ。ボタンを押し慣れていない左手ということもあり、防御崩しからの武器飛ばし必殺技の連携がちょくちょく失敗し、対戦で痛い目を見ている。
先ほど、「LRボタンはもっと固いスイッチの方が良かった」と述べたが、「SAMURAI SPIRITS」では逆に、これぐらい軽く押せるほうがとても具合が良い。LRボタンの反発力が少ないので、コマンド入力からL1ボタンを押すまでの工程が流れるように行なうことができる。筆者の体感だが、かなり精度が増したように思える。防御崩しから武器飛ばし必殺技同様に精度の低かった、弾きからの秘奥義も大分ミスが減るようになった。
11月の末にVer2.0へ大型アップデートされ、対戦がさらに面白くなった「BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE」も欠かせない。この作品は、アークシステムワークスに縁のあるキャラクターが総出演しているというお祭り的なタイトルということもあり、初心者やアーケードスティックを持っていない人でも簡単に遊べるよう、技コマンドなどが簡略化されている。
本作は元よりゲームコントローラーでのプレイを視野に入れて開発されているゲームということもあり、「Raion」以外のゲームコントローラーでも操作の面では正直特にストレスを感じることは無かった。しかし、長時間プレイしていて操作性以外の部分で「Raion」の凄さを感じることができた。
普段から、時間がある時は友人と5~6時間はぶっ通しでオンライン対戦をするのだが、入力に力が入っているせいか、普段のゲームコントローラーだとどうしても方向キーを入力している指が痛くなってくるのだ。今回「Raion」で夜から朝方まで通しでプレイしたのだが、全くと言っていいほど指の痛みは無かった。軽い入力でしっかり認識してくれるので力まずプレイできて、指への負担が軽減されたのだろう。こういった疲れを軽減させてくれる設計も格ゲーマーとしてはありがたいポイントだ。もちろん操作性の面も文句無く良好で、長いルートのコンボも安定して完走できた。
最後にプレイするタイトルは、2020年2月6日にCygamesより発売予定の格闘ゲーム「グランブルーファンタジー ヴァーサス(以下、「GBVS」)」。本作のイベント試遊版を今回特別にプレイさせていただいた。こちらも「BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE」同様、シンプルな操作性で、ゲームコントローラーでも十分に遊べる作品となっている。
まず初めに「Raion」ではなく標準のDUALSHOCK4でプレイしたが、こちらでも文句のつけ所のない快適な操作性を実現していた。DUALSHOCK4でここまでプレイできると「Raion」を使っても大きな差は体感できないかと思っていたのだが、必殺技のコマンドを入力してみるとスムーズさが段違いに「Raion」の方が良い。
ゲームコントローラーのパッドだと方向キーを押し込んで入力する都合上、滑るようなスムーズな入力が難しく、強い摩擦を感じるが、「Raion」ではそれが一切無い。「GBVS」に関しては、繰り返しになるが、操作の面でいえばアーケードスティックを使わなくても、DUALSHOCK4でも全く不都合はないのだが、「Raion」でのプレイはワンランク上の“操作感”を味わうことができた。
さらに、「GBVS」ではコンボパーツとして□ボタンや△ボタンの連打アクションを使う場面が多いので、「Raion」の軽いボタンがここでも活躍した。ゲームコントローラーでは「Raion」はベストチョイスといっても過言ではないと思う。
今回の「Raion」レビューでは、駄目な部分があれば容赦なく書いていく気でいたのだが、触ってみると欠点という欠点がほとんど見当たらないハイクオリティな格闘ゲーム用コントローラーであった。格ゲーマーがもっとも重きを置く、方向キーの斜めの入りやすさやも素晴らしく、格ゲーをプレイする際の快適さが格段に向上するのを感じた。これまでそれなりの数の格ゲーゲームコントローラーを触ってきたがここまで満足度の高いものは初めてである。
価格は10,000円(税別)と、決して安いとは言い難いが、Razerが謳っている耐久性が本物ならば、筆者のように壊れやすい格ゲーゲームコントローラーを一年に何度も買い直しているのを考えると、コスパ的には全然アリな値段である。この試遊が終わったら当然「Raion」は返却となるが、なくなったら筆者の格ゲーライフが損なわれるのでこの記事を執筆中にプライベート用のものを即購入した。一度このゲームコントローラーを触ったら今使っている格ゲー専用コントローラーには正直戻る気にはなれなかった。
実際に「Raion」に触れていなかったら、値段が値段なだけに良いか悪いか分からない状態では購入していなかったと思う。気にはなっているが購入を迷っている人もいると思うが、この試遊レポートが参考になれば幸いだ。