【連載第16回】 開発者が語るiPhone/iPadゲームの最先端

iPhone Spotlight Report

iPadの登場でゲームはどう変わる?
早速配信されたiPad用アプリから可能性を探る

 世界中でブームを起こしたiPhoneは、新たなゲームプラットフォームとしての地位を得た。続いて登場したiPadも、かつてないゲーム体験を生み出す可能性を秘めている。本連載では、iPhone/iPadゲーム開発者へのインタビューから、最新のトレンドや魅力を探っていく。



5月28日 発売


 5月28日、アップルの新端末「iPad」が日本でも発売された。テレビや新聞などでは「出版業界に黒船が到来」という形で電子書籍の話題を中心に紹介されていたが、GAME Watchの読者がもっとも気になるのはゲーム機としての可能性だろう。

 ズバリ言うが、可能性は大いにある。多数のiPhone/iPod touch用ゲームが配信されているApp Storeを配信プラットフォームとしていることもあり、iPad用のアプリは既に5,000本を越えており、ゲームも続々と登場している。iPhone/iPod touch用ゲームはこれまで、本体サイズや機能面からモバイルゲームとして捉えられている感触があったが、iPadは画面サイズや機能面、ゲーム内容、遊ばれるシチュエーションから言って、それとは別の新たなゲーム機として位置づけてもおかしくない。

 今回はいつもの開発者インタビューからは主旨を変えて、iPadが持つゲーム機としての可能性を、配信されているゲームを紹介しながらお伝えする。




■ 画面の広さを活かしてiPhone版から機能追加されたゲーム

 iPad本体の大きさは、B5サイズに近い242.8×189.7mmで、ディスプレイのサイズは9.7インチ(対角)。iPhoneの3.5インチと比較すると面積比で約6.5倍になり、大迫力の映像を楽しめる。解像度もiPhoneは480×320ピクセルだったが、iPadは1,024×768ピクセルと上がったことにより、表示方法やインターフェイスが改良され、格段に見やすくなっている。例えばメール機能だと、iPhoneではメールのリストから読みたいメールを選ぶと本文に画面が遷移するが、iPadではリストと本文が同時に表示され、使いやすくなっている。

 ゲームでも解像度が上がったことにより、iPhone/iPod touch版よりも遊びやすく改良されているものがある。ゲームロフト株式会社の「N.O.V.A.-Near Orbit Vanguard Alliance」は、iPhone/iPod touch版からの移植でゲーム内容は同じなのだが、iPad版では画面の表示領域が広がったことで余裕ができ、画面上にマップが表示されるようになった。敵の位置まで把握できるので、遊びやすくなっている。ただ単に画面が大きく綺麗になっただけではない。


左はiPhone版、右はiPad版の「N.O.V.A.-Near Orbit Vanguard Alliance」。美麗な3DグラフィックスでSF世界を描いたFPS。主人公の元宇宙海兵隊員のカル・ワーディンとなって、宇宙船やジャングルなどを舞台に人類を滅亡から救うべく、謎の地球外生命体に立ち向かっていく。全12ステージを用意

(C)2009 Gameloft. All rights reserved. Gameloft, the Gameloft logo and N.O.V.A. Near Orbit Vanguard Alliance are trademarks of Gameloft in the U.S. and/or other countries.



■ iPhone/iPod touchのゲームも動く

 iPadは、これまでに配信された20万種以上ものiPhone/iPod touch用アプリもほとんどが使用可能となっている。まずiPadでiPhone/iPod touch用アプリやゲームを起動すると、iPadのスクリーンの真ん中にiPhone/iPod touchと同じ解像度で表示される。画面右下の2倍を押すと、縦横を2倍に拡大して表示され、iPadのフルスクリーンに近い大きさになる。

 映像は単純に2倍に引き伸ばしされるだけなので、文字などはジャギーが目立つ形になる。しかし使用上はあまり影響がなく、大画面で見やすくなるメリットのほうがずっと大きい。株式会社コナミデジタルエンタテインメントの「ラブプラスi」をプレイすれば、そのインパクトは一目瞭然だ。


iPhone版「ラブプラスiN」をiPadで等倍表示させると、画面の周りに黒縁とともに表示される。2倍表示させると、姉ヶ崎寧々さんも拡大表示。iPadをスタンドに立てかけておけば、置き時計になる上に、いつでも姉ヶ崎寧々さんに見つめられ過ごせる

(C)2010 Konami Digital Entertainment



■ 音楽ゲームが快適に楽しめる

「太鼓の達人プラス」は太鼓を叩くおなじみのゲーム。画面が広がったことで太鼓のサイズも拡大して叩きやすくなり、小さな太鼓を叩く感覚で遊べる。アプリ本体が無料になり、曲はアプリ内課金によるダウンロード販売に変更された

 画面サイズ広がったことによって違いを感じるのが、コナミデジタルエンタテインメントの「DanceDanceRevolution S」や、株式会社バンダイナムコゲームスの「太鼓の達人」などの音楽系ゲームだ。

 iPadでiPhone/iPod touch用音楽ゲームを試してみると、画面が広い分だけ画面が指で隠れにくく、楽譜や矢印が見やすくなる。さらにタッチする領域も広がって押しやすくなった。ちなみに「太鼓の達人」は、iPad向けに画面サイズを最適化した「太鼓の達人プラス」が無料で配信されている。もちろんこちらは最適化されているだけあって非常に遊びやすくなっている。


(C)2010 NBGI



■ 本体重量は若干重いが、すぐに慣れる

「アスファルト 5」はニトロの加速で激走する3Dレースゲーム。パリやサンフランシスコ、ラスベガスなど、世界各地の12都市のコースを舞台とし、フェラーリ、ランボルギーニ、日産などの名車、さらにはカワサキなどのバイクなどを30車種以上を収録

 ゲームロフトの「アスファルト 5」やエレクトロニック・アーツ株式会社の「Need for Speed Shift for iPad」などのレースゲームも、広くなった画面の恩恵が大きい。大画面でプレイするレースゲームは、iPhone/iPod touch版よりも数段上のスピード感と迫力があり、iPhone/iPod touchで1度遊んだゲームなのにとても面白い。

 これらのレースゲームでは、iPad本体を傾けてハンドル操作を行なうが、約700gというiPad本体の重量が少々ネックになる(Wi-Fiモデルが680g、Wi-Fi+3Gモデルが730g)。持ち上げた時には本体の大きさもあって重く感じるが、実際は1kg未満の端末だけに、いざゲームを遊んでみると、長く持っていてもそれほど疲れは感じない。むしろゲームの面白さに本体の重さを忘れてしまう。


(C)2009 Gameloft. All Rights Reserved. Gameloft and Gameloft logo are trademarks of Gameloft in the US and/or other countries. All manufacturers, cars, motorbikes, names, brands and associated imagery featured in Asphalt 5 mobile game are trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners.



■ 1台のiPadだけで、みんなで対戦ゲーム

 これまでiPhone/iPod touchは、どちらかというと1人で使うことが多かったが、iPadでは画面サイズが拡大したことにより、みんなに見せながら使いやすくなっている。ビジネスの現場では商談時に相手にスライドを見せながらプレゼンしたり、医療の分野ではレントゲン写真などを見ながら手術を行なったりと、さまざまな分野に用途が広がっている。

 ゲームでも新しい遊び方が登場し始めている。アミューズメント施設でよく見る「エアホッケー」をアプリ化した米Accelerotoの「Air Hockey」は、iPhone/iPod touch版でも対戦できるが、画面が小さいため、2人でこぢんまりと遊んでいた感がある。iPad版では画面が十分に広くなったので、周りのみんなが見ている中でワイワイと対戦が楽しめる。

 株式会社セガのiPad用「スーパーモンキーボール2: さくらエディション」では、専用のミニゲームとして、1台のiPadを最大4人で取り囲んでマルチプレイを楽しむ「モンキーベース」が用意されている。他のプレイヤーが打つボールをキャッチして打ち返し、自分のバナナを守りきる単純なゲームなのだが、みんなで対戦すると盛り上がれる。1台のiPadだけで数人が遊ぶゲームは、これまでにないゲームスタイルが生まれる可能性を感じる。


その名のとおり、エアホッケーをiPad上で対戦できる「Air Hockey」。画面が十分に広いので、2人で操作しても快適に遊べる おサルの入ったボールをiPad本体を傾けて操作して転がし、ゴールを目指すアクションゲーム「スーパーモンキーボール2」。ミニゲームモードとして、最大4人まで参加して楽しめる「モンキーベース」なども収録

(C)2010 Acceleroto
(C)2010 SEGA. All Rights Reserved.



■ テーブルゲームの対戦に向いている

「森田将棋」はiPhone/iPod touch版より盤面が大きくなったことで、駒を指しやすくなり、対戦しやすくなった。CPU対戦は強さに定評があり、歯ごたえのある対局が堪能できる

 iPadは将棋やチェス、オセロなどの王道のテーブルゲームを楽しむのにもちょうどいい大きさだ。iPhone/iPod touch向けにもテーブルゲームは数多く存在するが、iPadは実際のテーブルゲームに近い大きさがあるので、よりリアルな感覚で対戦を楽しめる。この大きさならば、さまざまなボードゲームを再現するのも容易だと思われるので、他にも有名なボードゲームの登場が期待できそうだ。


(C)2004,2010 Yuki Enterprise Inc. (C)morita kazurou (C)TAITO CORP.2004,2010



■ iPadのゲームをiPhoneで操作

 iPad用ゲームでは、iPhone/iPod touchをコントローラーとして使って遊ぶものまで登場している。香港Software Moderna Hong Kongのレースゲーム「PadRacer」では最大4人でレースが可能で、iPadにコースと車が描かれており、その車をiPhone/iPod touchで運転してレースする。つまりiPadをモニターとして使い、iPhone/iPod touchをBluetoothで接続して遠隔操作するわけだ。昔、アーケードゲームで人気を博した「スーパーデッドヒート(タイトー)」のようなゲームで、4画面やアイテムの出現はないが大勢で遊べば白熱する。

 このようにiPhone/iPod touchをコントローラーとして使ったゲームアプリが実現できるので、今後もユニークなアイデアを盛り込んだアプリの登場を期待したい。またiPadではBluetoothキーボードを使えるので、キーボード操作を使ったゲームが出てくる可能性もある。もしかするとBluetooth接続のゲームコントローラーが出てくることもあるのかもしれない。


「PadRacer」は、iPadに表示される車をiPhone/iPod touchで操作するレースゲーム。用意されているコースは全部で3種類。操作はiPhoneの加速度センサーを使うのだが、ラジコンを操作する感覚で慣れが必要だ。ゲームモードは対人プレイしかなく、CPU対戦は搭載されていない。対戦するには、人数分のiPhone/iPod touchが必要。iPhone/iPod touch向けのコントローラーアプリ「Pad Racer FREE Controller」は無料で配信されている

(C)2010 Software Moderna HK Ltd



■ iPadとiPhone/iPod touch両用ソフトもある

新感覚タッチシューティング「METAL GEAR SOLID TOUCH」のiPad版。ゲーム内容はiPhone/iPod touch版と同じだが、iPadの高解像度で「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」の世界を堪能でき、迫力も楽しさも倍増する

 iPad用ゲームが続々と配信されているが、ゲームによってはiPhone/iPod touch用とiPad用のアプリがそれぞれ用意されているものと、1つのアプリでiPhone/iPod touchとiPadに両対応するユニバーサル対応のものがある。アプリを購入する際には、iPhone/iPod touch用とiPad用を間違えて買わないように注意しよう。

 ちなみにiPadの発売以前から配信されていたコナミデジタルエンタテインメントの「METAL GEAR SOLID TOUCH」は、バージョンアップでiPadにも対応し、画面レイアウトやキャラクターの解像度などがiPad向けに最適化された。1つのアプリでiPhone/iPod touchとiPadのどちらでも遊べる、1つで2度美味しいアプリになっている。ユーザーとしては、他のゲームも積極的にユニバーサル対応してくれると嬉しいところだ。


(C)2009 Konami Digital Entertainment



■ iPadとiPhone/iPod touchのセーブデータをクラウドで共有

 ユニバーサル対応したアプリでは、自宅では大画面のiPadで楽しみ、外出時にはiPhone/iPod touchで楽しみたいと思うのが自然な考え方だ。しかし、それを実現するのに問題になるのがセーブデータ。今のところ共通のセーブデータを持つ方法がないため、別々にゲームを進めていくしかない。

 ところが先日、株式会社CRI・ミドルウェアがiPhone/iPod touchとiPadのセーブデータをクラウドで同期する新サービス「栞 for iPhone&iPad」の制作を発表した。このサービスが実装されれば、状況に合わせてiPadとiPhone/iPod touchを使い分けてゲームを楽しめる。採用タイトルが増えてくれることを期待したい。




 ざっとiPad用ゲームの紹介ともにiPadの可能性を紹介してきたが、iPadが米国で発売されたのは、まだ2カ月前の4月。ゲームが充実してくるのはまだまだこれからといったところだ。iPadは新たな使い方ができる可能性を秘めたデバイスだけに、これまでにないゲームが登場してくる可能性も高い。また、発売2カ月での販売台数が全世界で200万台を超えたとしており、このハイペースな普及率からみてもゲーム業界にも大きな影響を与えそうである。これからもiPadのゲームには注目していきたい。


(2010年 6月 7日)

[Reported by 川村和弘]