西川善司の3Dゲームファンのための「東京ゲームショウ2010」グラフィックス講座
思わず「やりやがったな!」と叫んだ成熟期に華開いたジャパニーズゲームグラフィックスたち







 様々な新作が発表、展示され、我々の目を楽しませてくれた東京ゲームショウは今年も会期を無事に終了した。ということで、今年も独断と偏見で、筆者が気になった3Dゲームグラフィックスをピックアップして紹介していくとしよう。

【著者近影】
 今年のゲームショウは中小系ブースが圧倒的に少なく、一方で大手の海外パブリッシャーの中にはゲームショウ本体にはブース出展せず、近隣ホテルでプレスカンファレンスを開催するするにとどめるというドーナツ化現象も起き始めた。伝統的に任天堂は東京ゲームショウに参加しないため、E3で注目を集めた3DSが、全く影も形もないという事態も寂しさを煽ったように思える。その意味では、東京ゲームショウは、そろそろコンベンションとしての在り方を再考する時期が来ているのかもしれない。では、全くお寒い開催だったかというとそんなことはなく、今年はハードウェアが成熟期に来ていることもあって、展示されていたソフトウェアラインナップは例年以上に充実はしていたと思う。筆者のブログはこちら



■ スタイライズド・レンダリングの台頭が目に付いた今年の東京ゲームショウ

東京ゲームショウ2010。国際色が大きくクローズアップされた年となった

 やはり、どこの開発スタジオも気づき始めているようだ。今世代の3Dゲームグラフィックスのリアル志向を極めてしまうと、やや似た感じになってきてしまうということを。

 PS3、Xbox 360と言うハードウェアは成熟期にあり、各スタジオもハードウェアへの理解が進み、両者で出来る最大公約数的表現、そしてそれぞれで出来る最大表現が煮詰まりつつある。ここからさらに突き出たリアル系を追い求めるスタジオもあるにはあるが、別のアプローチを模索し始めたスタジオも多い。

 近年のタイトルで、別アプローチ的手法で大きな注目を集めることに成功したのは「プリンス・オブ・ペルシャ」(ユービーアイソフト)あたりだろうか。また、リアル志向グラフィックスにエッセンスとして非リアル要素を盛り込んだ「Mirror's Edge」(Electronic Arts)なども、このアプローチに含めることもできるかも知れない。

 こうした非リアル系の3DグラフィックスはNon Photo Realistic(NPR)系と言われたり、SIGGRAPHなどのCG系学会では「Stylized Rendering」(スタイライズド・レンダリング:ある法則に基づいたレンダリング手法)などとカテゴライズされることもある。まずは、このスタイライズド・レンダリング系のタイトルを東京ゲームショウ2010出展タイトルからピックアップしてみたい。



・「二ノ国 白き聖灰の女王」(レベルファイブ)

 レベルファイブとスタジオジブリのコラボによって制作されているファンタジーRPG「二ノ国 白き聖灰の女王」は、そのレンダリングをアニメライクなタッチでデザインしている。いわゆるトゥーンシェーダー、あるいはセルシェーダーと呼ばれるシェーディング手法になる。本来CGならば、リアルタイムライティングによって陰影を出すので、陰影の焼き込みは不要なはずだが、背景オブジェクトには彩度の高い彩色と、陰影を過剰なまでに描き込んでおり、一種独特なビジュアルとなっている。

 動的キャラクターのライティングについては、法線を意図的に平坦化したような、ジブリが「ハウルの動く城」で旗や布の表現に使っていたような表現になっており興味深い。例えば主人公の少年のマントの動きなどは、布シミュレーションの適用結果で、実際に激しい凹凸や曲がりが発生するが、これをそのままセルシェーディングするとごちゃごちゃした陰影になってアニメっぽくならないため、わざと適度に平坦化して凹凸陰影をおおざっぱにしているのだ。


【二ノ国 白き聖灰の女王】
PS3専用タイトルとして2011年発売予定



・「El Shaddai」(Ignition Entertainment)

 英Ignition Entertainment(イグニッション・エンターテインメント)が放つ、ファンタジックな世界観を持つ純国産のアクションゲーム「El Shaddai」のグラフィックスも独創的なタッチで興味深い。基本的にはセルシェーディングに近いタッチだが、所々クラシックなフラットシェーディング(頂点単位よりもさらに粗いポリゴンやクワッド単位のライティング)のような擬似輪郭付きの陰影もあったりして、そのアンバランス感がユニークだ。

 アンバランス感と言えば、エフェクトの類も独特。HDR(ハイダインミックレンジ)レンダリング特有のグレアやブルームを多用した眩しさの表現、華やかなパーティクルエフェクトによる閃光表現など、エフェクト類はリアル系エフェクトに特化しているのかと思えば、流血表現は単色の赤だったりするのだ。まさに「スタイライズド」の定義に相応しいビジュアルデザインと言える。

 本作の開発スタッフはカプコンで「デビル メイ クライ」シリーズ、「ビューティフル ジョー」シリーズなどにおいてアシスタントプロデューサーを務めた木村雅人氏や、「鉄騎」シリーズ、「大神」シリーズなどでデザインを担当した竹安佐和記氏などが中核を担っており、日本初参入タイトルながら注目度は高い。


【El Shaddai】
PS3、Xbox 360両対応で2011年春発売予定



・「ガンダム無双3」(バンダイナムコゲームス)

 あの「ガンダム無双」が「3」ではスタイライズド・レンダリングを採用した。こちらもスタイライズドの名にふさわしく、単純なセルシェーディングではないアプローチを取っている。

 アニメファンに説明するならば、最近のCG制作されたガンダムアニメ、たとえば新訳劇場版ゼータガンダム、映像化されたユニコーンガンダムの映像のようなモビルスーツ表現に近い……と言えばピンと来るのではないだろうか。

 輪郭部分には黒い輪郭線を描きつつ、面表現には一般的なセルシェーダーを適用した上に、環境マップの映り込み表現や金属特有の異方性の鏡面反射のハイライト表現が適用されている。このハイライトも、大ざっぱな離散的な擬似輪郭付きで、静止しているとただのセルシェーディング表現に見えるのだが、視線が動くと陰影の出方やその異方性のハイライトがドラスティックに変化する。まさに最近のCGベースのガンダムアニメのテイストがゲームにやってきたという感じで面白い。


【ガンダム無双3】
PS3、Xbox 360両対応で2010年12月発売予定



・「TRINITY Zill O'll Zero」(コーエーテクモゲームス)

 コーエーテクモゲームスの開発チーム「オメガフォース」が手がける新作RPGの「TRINITY Zill O'll Zero(トリニティ ジルオール ゼロ)」は、ユニークなハッチング系のポストプロセスを用いて油絵調のビジュアルに作り込んでいるのが特徴となっている。

 画面全体にキャンバスの亜麻の繊維(織り目)のようなものが見えたり、速いモーションで迫り来る敵は殴り描きをしたような、荒々しい筆使いの塗りになったりするなど、その画作りには独特の法則性を感じさせられる。こちらもスタイライズドの典型だと言えよう。


【TRINITY Zill O'll Zero】
11月25日、PS3専用ソフトとして発売予定



・「ASURA'S WRATH」(カプコン)

 カプコンとサイバーコネクトツーとの共同開発で制作される「ASURA'S WRATH (アスラズ ラース)」は、今回の東京ゲームショウで電撃的に発表された完全新作のタイトルだが、こちらもなにやらユニークなスタイライズド・レンダリングが使用されている模様だ。

 彩度を落としまくった画調は、ポストプロセスによるカラーコレクションだと思われるが、ランバートライティングをバイアスしたような、明暗のはっきりとした陰影が特徴的だ。

 日本メディアでは、あまり、大きく報じられていないが、このタイトルはカプコンとのコラボ制作でありながら、MTフレームワークではなく、なんとEPIC GAMESの「Unreal Engine3」ベースという点も興味をそそる。


【ASURA'S WRATH】
PS3、Xbox 360向けに発売予定。発売時期は未定



■ リアル系3Dゲームグラフィックスはハイパーリアリズムを目指す

 リアル系の3Dゲームグラフィックスも進化を止めたわけではない。今年の東京ゲームショウでは、リアル志向の3Dゲームグラフィックスを採用したタイトルも多数発表されていた。

 最近は、ユーザーも目が肥えて来たため、PS3、Xbox 360登場当初は今世代3Dゲームグラフィックスを支える“三種の神器”である「法線マップ」、「HDRレンダリング」、「動的影生成」を採用したぐらいではもはや「すごい」といってもらえなくなってきており、なにかプラスαの要素が求められつつある。

 以下に、今年の東京ゲームショウに出展されたタイトルのうち、リアル系で、なおかつそこになにかのプラスαを感じられたタイトルを紹介しよう。



・「Ace Combat Assault Horizon」(バンダイナムコゲームス)

 「Ace Combat」シリーズ最新作は「7」ではなく、Assault Horizonという新シリーズとして登場する。これまで以上にアクション映画的な演出を強めた作品となるそうで、特に注目すべきなのは破壊表現だという。なんと、攻撃を受けた箇所のパーツが剥がれ落ち、徐々に機体がバラバラになっていくノンリニア破壊表現が実装されているのだ。

 破壊シミュレーションは、通常の剛体物理ベースだとのことで、有限要素法は活用されていない。まだ本作に関しての情報は少ないが、今後、様々な映像が出てきた際には、破壊表現に注目してみるといいだろう。




・「Castlevania: Lords of Shadow」(KONAMI)

 スペインのスタジオMercury Steamが開発を担当し、コナミ、小島プロダクションのプロデュースで制作されている「悪魔城ドラキュラ」の最新作が「Castlevania: Lords of Shadow」だ。

 一見すると、ごく普通の今世代「三種の神器」ベースの今世代機の定番ゲーム3Dグラフィックスだが、被写界深度表現、ソフトシャドウ表現などの細かい小技が効いており、小島プロダクションのプロデュースの甲斐あってか、平均点以上のクオリティを実現している。プレイ中、特に目を惹くのがド派手なモーションブラー効果だろうか。

 アートワークも素晴らしい。歴代の悪魔城ドラキュラシリーズがジャパナイズドされたオカルト・モンスターの世界観だったものが、今作では本場のヨーロッパスタジオが開発したおかげか、暗く血なまぐさい東ヨーロッパのドラキュラ伝説の本場の雰囲気が滲み出ている。


【Castlevania: Lords of Shadow】
PS3、Xbox 360両対応で2010年12月16日発売予定



・「VANQUISH」(セガ)

 今回の東京ゲームショウで、筆者が最も感銘を受けたタイトル。今世代機のフォトリアル系3Dゲームグラフィックスとしては、究極形に近いクオリティになっている。ゲームのプレイ感も良質。

 ビジュアル面でまず目を惹くのが、圧倒的な物量のパーティクル表現。煙の尾を引きながら飛び交うミサイル、爆発から飛び散る無数の火花、赤白青と様々な色で破裂する爆炎表現、ボリュメトリックなダスト表現などなど、本作の特徴である情報量の多いグラフィックスの下地を支えている。

 キービジュアルともいえる金属の質感表現も見事だ。フレネル反射なのか特別な異方性ライティングなのか、はたまた環境マッピングの妙なのか、バトルスーツや敵機動兵器の硬質感がリアルに表現されている。環境光のライティングも的確に行なわれており、間接光の確かな存在を感じられる。

 シーン内で同時多発的に発生する速い動きに対してはオブジェクト・モーションブラー(OMB)が適用されており、この部分に関してはハイパーリアリズムといえるようなアーティスティックな演出が感じられる。

 破壊表現はノンリニアではないが、破壊アニメーション後の破片の飛散に関しては物理シミュレーションが適用されており、シーン内を破壊されたパーツが縦横無尽転げ回る様が描かれている。開発は「ベヨネッタ」を送り出したプラチナゲームズが担当している。


【VANQUISH】
2010年10月21日にPS3、Xbox 360向けに発売予定



・「グランツーリスモ5」(SCE)

 今度こそ発売される「グランツーリスモ5」(GT5)。「GT5」のグラフィックスの魅力は、「プロローグ」と同じく、全て内製スタッフの手によると言う純メイド・イン・ジャパンのハイクオリティ車両モデル群や、金属/カーボン/FRPなどの素材を正確に再現したマテリアル表現にもあるが、製品版ならではの新要素も要チェックだ。

 特に力が入っているのは芸の細かい様々なエフェクト表現。プロモーション映像でも目に付く、フロントガラスに付着してはワイパーによってぬぐい取られるリアルな雨水の表現などは製品版ならではの新表現だ。

 多くのパーティクル表現には物理シミュレーションが適用されており、花びらなどは路面に衝突判定があり降り積もるし、川に落ちればちゃんと流れるという凝りよう。土煙や砂煙の表現に関しても流体物理的アプローチのシミュレーションが実装されているとのことで、風の影響にも配慮しつつリアルに飛散する表現も行なわれている。

 また、トスカーナなどのシーンで夜に上がる花火は描き割りのテスクチャ・アニメーションではなく、こちらはプロシージャルアプローチでランタイム上で実際に花火を打ち上げているのだとか。プロローグではユーザーが心配になったほどシンプルだったポストプロセス系エフェクトも、本編ではだいぶ進化しており、モーションブラーやHDR表現などもリッチなものになっていた。今回の本編では、今までのグランツーリスモに不足していた、“ゲーム世界のリアリティ”が向上している。


【グランツーリスモ5】
「GT5」は3D立体視にも対応する。発売は11月3日を予定



■ Deferred系技術は次世代3Dゲームグラフィックスのスタンダードとなるか!?

 今世代機の表現限界を超えようと、いくつかの先進的なゲームスタジオでは新しいレンダリングパイプラインの模索を開始している。その中で、1つのトレンドとなってきているのがDeferred系アプローチだ。Deferred系アプローチとは、ジオメトリを先にレンダリングしてしまい、材質表現のための高度なピクセルシェーダーは後回し(Deferred)にさせるレンダリング手法だ。

 最初のジオメトリ・レンダリング時に、材質表現ピクセルシェーダーを動作させるために必要な中間パラメータを算出し、これをMRT(マルチ・レンダー・ターゲット)と呼ばれるGPUの特殊機能を使って複数のテクスチャにまとめて出力してしまう。Deferred系アプローチは大別するとDeferred Rendering(Deferred Shading)とDeferred Lighting(Light Pre-Pass Rendering)の2タイプに分かれ、どちらが優れているかが昨今の開発者にとって熱い議論のテーマになっている。

 Deferred Renderingでは、MRTで多くの中間パラメータを4枚程度(DirectX9世代GPUでは4枚まで、DirectX10世代以降のGPUでは8枚まで)のテクスチャに出力してしまい、後段のレンダリングパスではこのパラメータを使って高度なピクセルシェーダを動作させる。Deferred Lightingでは、MRTではライティングに必要な最低限の中間パラメータをテクスチャに出力し、このパラメータを用いてライティングだけを先に行ない、材質表現のためのピクセルシェーダーはさらに後段で行なう。

 共に一長一短があるが、共通する長所としては、アルゴリズム的に動的光源の数に上限がなく、非常に複雑なライティングが行なえる点が挙げられる。Deferred系アプローチでは、光源でオブジェクトをライティングするというよりは、レンダリング済みの無着色のシーンに光源を描き込んでいくというイメージになり、オブジェクト基準でレンダリングする手法と全く考え方が異なるため、こうしたことが可能になっているのである。

 このDeferred系アプローチによるレンダリングパイプラインを採用したタイトルが、いくつか今回の東京ゲームショウではお目見えしている。



「Deus Ex」はDeferred Lightingパイプラインを採用

・「Deus Ex」(スクウェア・エニックス)

 スクウェア・エニックスが英Eidos Interactiveを買収したことで、Eidosが開発を進めていた「Deus Ex」がスクウェア・エニックスより発売されることになった。なお、「Deus Ex 3」のコードネームで開発されていたタイトルだが、最終的にはナンバリングが排除され「Deus Ex」となるようだ。余談だが、「Deus Ex」は著名クリエイターのWarren Spector(ウォーレン・スペクター)氏が手がけたタイトルだったが、今作の制作にスペクター氏は参加していない。

 さて、この「Deus Ex」は、Deferred Lighting(Light Pre-Pass Rendering)のレンダリングエンジンを採用して映像が作り出されており、Deferred系の長所である動的光源の物量設定でシーンを作り込むアプローチを取っているのが特徴となっている。

 大局照明っぽい間接照明表現も、実は動的光源をそれっぽく配置しているに過ぎない。しかし、ここを往来する全ての動的キャラクターに対して、これらの光源の影響を与えることが出来るため、シーンの作り方(動的光源の仕込み方)によっては、非常に高い説得力を持ったリアリティを実現できるとされる。画面ショットは、まるでイメージイラストのようだが、これらは実際のリアルタイムレンダリングによるものだというから驚きだ。

 これは、下に示したように、非常に豊富な形状や効果、あるいはエフェクトに近い光源をDeferred系アプローチで描き込めるために可能になっているのだ。


【「Deus Ex」の自由光源】
「Deus Ex」ではこのようにほとんどエフェクトとも言えそうな自由形状の光源が置くことが出来る。これらはライトマップではなく、影響範囲の静的、動的オブジェクトの区別なく、リアルタイムの照明効果を与える

【Deus Ex】
PS3、Xbox 360向けに発売が予定されているが、発売日程に関しての詳細は未定



・「KILLZONE3」(SCE)

 Deferred Renderingを採用したゲームとしては「Bionic Commando」(CAPCOM)、「S.T.A.L.K.E.R.」(GSC Game World)、「Tabula Rasa」(NC soft)などがあるが、その実効有効性を広く世に広めたタイトルと言えば、やはりGuerrilla Gamesが開発した「KILLZONE2」ではないだろうか。

 最新作「3」も、このレンダリングエンジンをさらに進化させたものを採用しており、Deferred系特有のライティング・リッチなシーンが目立つ。今作は立体視にも対応したことで、事実上、PS3初の「Deferred Rendering×立体視」ビジュアルが楽しめるタイトルとなりそうだ。


【KILLZONE3】
2011年にPS3専用ソフトとして発売予定



・「METAL GEAR SOLID RISING」(コナミ)

 現在開発中の「メタルギアソリッドライジング」(MGSR)も、Deferred Renderingのパイプラインが採用されると言われている。

 前作「メタルギアソリッド4」(MGS4)が、PS3専用タイトルであったために、PS3に特化したレンダリングエンジンであったが、今作はPS3、Xbox 360、そしてPCまでをターゲットプラットフォームとしたため、完全新設計のレンダリングエンジンとなるのだという。

 Deferred Renderingの問題点である材質表現のバリエーションの少なさを解決する新手法についての研究開発も行なわれているとのことで、圧倒的な先進ビジュアルを誇ったMGS4から、さらに数段ビジュアルクオリティが上がることが期待される。

 また、開発チームは、ジオメトリの動的切断エンジンも新規開発にも取り組んでいる。ジオメトリの動的切断は、ジオメトリ情報の倍倍増加ゲームになりやすく、これをPS3、Xbox 360の限られたメモリ空間の中でどう実装していくのかが手強いテーマとなることだろう。そうした制限が比較的緩いPC版では、よりダイナミックなジオメトリ表現になるのかについても期待したくなる。また、テッセレーションなどのDirectX11フィーチャーへの対応も気になるところだ。


【METAL GEAR SOLID RISING】
発売日は未定。PS3、Xbox 360、そしてPCへのリリースが予定されている



・ヘキサエンジン(ヘキサドライブ)

 日本のゲームスタジオ、ヘキサドライブは、今回の東京ゲームショウのビジネスデイに限定したブース展開を行ない、ここで同社のマルチプラットフォーム(PS3、Xbox 360,PC)に対応したゲームエンジン「ヘキサエンジン」の展示を行なっていた。

 ヘキサエンジンは、Deferredではなく、従来のオーソドックスなForward Rendering手法を採用しており、開発チームによれば「Forward Renderingでの最高の表現を目指す」をコンセプトに掲げ開発が進められているという。

 ブースでは、現在も鋭意開発中の、このエンジンのデモを公開しており、一部のデモは立体視でも楽しむことが出来た。展示されていたウォークスルーデモでは、動的光源として点光源、平行光源、スポットライトの構成のライティングが行なわれており、平行光源からはVariance Shadow Map技法のリアルタイム影生成までを行なっていた。

 被写界深度のシミュレーション、SSAO(Screen Space Ambient Occlusion)、モーションブラーなどなど、多様なポストプロセスエフェクトにも対応。まさに、最新の3Dグラフィックス表現の一通りを実装しているという印象だ。中でも特にユニークだったのは、CPUリードバック無しのGPUだけで完結できるパーティクルのエフェクトで、3万個以上の雪を降らせるデモをCPU負荷無しで実現する。シーンへのインタラクションが必要なエフェクト表現には向かないが、圧倒的な物量で画面を覆い尽くすようなボリュメトリックなエフェクトにはかなり有用なテクニックとなりそうだ。

 既に、共同開発をしていた外部の関係スタジオが、このヘキサエンジンを使用したタイトルをリリース済みだとのことで、その実績をうけて、ヘキサドライブとしては実際のエンジンビジネスに進出するようだ。使用料についてはロイヤリティ制ではなく、サポート付きの使用期間契約ベースの使い切りとなるそうで、中小プロジェクトにも向いたビジネス展開になりそうだ。和製ゲームエンジンとして今後、注目していく必要がある。


【ヘキサエンジン】
発売日は未定。PS3、Xbox 360、そしてPCへのリリースが予定されている




■ まとめ〜東京ゲームショウ2010を振り返る

 今年の東京ゲームショウではソニー・コンピュータエンタテインメントが「PlayStation Move」を、マイクロソフトが「KINECT」を発表したわけだが、個人的には、それよりも例年以上にソフトウェアラインナップの充実ぶりの方が目立っていたように思う。

 「重鉄騎」、「Project Dark」、「龍が如くOF THE END」、「Child of Eden」、「人喰いの大鷲トリコ」などなど、本稿では全てを紹介し切れないほど、この先もラインナップが充実している。日本のゲームスタジオはやはり、成熟期に達してからが強い。

 Xbox 360が登場したのは2005年、PS3が登場したのは2006年。2010年は、今世代機がリリースされてから、5年ないしは4年が経過したわけで、過去の歴史に倣えば、そろそろ新ハードの影がほのめかされてもいいはずなのだが、今世代は全くそうした気配がない。業界の情報筋は「今世代機は長くなる」という見解で一致しており、PS3、Xbox 360はここしばらく現役となり続ける見込みだ。

 その意味では、ユーザーは、安心してソフトウェアや周辺機器への投資に集中できる。  2010年後期以降、据え置き型ゲーム機のゲームプレイは今一度熱くなりそうな予感がする。

【人喰いの大鷲トリコ】
個人的に大期待の「人喰いの大鷲トリコ」はまさかの1年延期! 期待して待つしかない!

(2010年 9月 22日)

[Reported by トライゼット西川善司]