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【GDC 2013】Warren Spector氏が語る「ゲームにおける物語」
“ストーリー派”の巨匠による映画やテレビ、その他メディアの相違点から学ぶ物語作り
(2013/3/26 16:06)
アメリカのサンフランシスコで開催されているGDC 2013の会期1日目、ゲームデザイナーのWarren Spector氏による講演「Narrative in Games - Roles, Forms, Problems and Potential」が行なわれた。
Warren Spector氏は、かつては「System Shock」や「Deus Ex」の開発を手がけ、最近ではディズニーの「Epic Mickey」シリーズを開発したゲーム開発スタジオ「JUNCTION POINT」の創設者として知られている(現在スタジオは閉鎖)。その作風はストーリー重視で、業界の中でも“ストーリー派”と呼べる巨匠だろう。
この講演は、「ゲームにおける物語」に焦点を当てたGAME NARRATIVE SUMMITの1つとして実施されたもの。Spector氏はゲームとそれ以外のメディアにおける「物語のあり方」を比べることで、ゲームならではの物語の語り方を述べていった。
映画で良くてもゲームではダメ? ゲームメディアに即した物語構築方法
Spector氏は、ゲームにおける物語というものを、デジタルメディア学の教授Janet Murray氏の「(ビデオゲームは)静止画、動画、テキスト、音楽、3D、指示のある空間など、単一の媒体というよりは、いくつかのストーリーテリングのブロックを組み立てたもの」という言葉を引用し、ゲームが多面的なメディアであり、そこにインタラクティブな要素が加わることで物語が生まれる、と説明した。
この前提の下、Spector氏が真っ先に比べたメディアは映画。20世紀半ばに映画技術は革新を見せ、以来多数の表現によって映画が制作されている。コミック調からリアルなものまで、多数の表現という点ではゲームと共通しているようだが、最も大きな違いは、操作中はシーンの「カット」できない部分だという。
映画は一般的に、複数のシーンを組み合わせ、場面と場面を切り替えて見せることで物語を語っていく。一方のゲームは、「スーパーマリオブラザーズ」シリーズなどでも顕著なように、本来的にカメラはプレーヤーを捉え続けるような、シーンの連続が基本となっている。そのため物語の語り口は映画とゲームで違ってくるし、またそうでなくてはならない、というわけだ。
コンテンツの長さとしても、映画は1時間半から2時間、ゲームは6時間から10時間ほどが一般的な目安となっているので、物語の進行配分も変わり、この点も考慮して制作されなくてはならない(Spector氏のスライドでは「メタルギアソリッド」シリーズが掲げられた)。
また映画的な挑戦の失敗例として、ジョン・ウー監督のゲームプロジェクト「ストラングルホールド」が挙げられた。これはゲームは「繰り返し遊ぶもの」という点に注目したもので、Spector氏いわく、「銃撃シーンは、最初の1回は素晴らしくクール。しかし、それが100回続けば飽きるし、クールではない」。
「『バイオハザード』で窓を割って入ってくる犬も、1回だけだから驚く」というわけで、同じシーンを繰り返すゲームへの戒めのように「1回=cool、1,000回=not cool」という言葉が掲げられた。
Spector氏はこのほか、テーブルトークRPG、コミック、語り部など、他のメディアとの相違点を比べながら、ゲームの特徴を、どこへでも届く「輸送性」、「没入感」、プレーヤーの行動への「反応」、「繰り返し」の4つの要素で示した。他のメディアとの混同は「危険」」としながら、ゲームのユニークさは「プレーヤーの選択が、リアルタイムに結果として帰ってくること」に尽きると述べた。
これらを踏まえて、Spector氏はストーリーの構築方法は5種類あると述べた。第1は、ローラーコースター方式。ゲームシーンを数珠繋ぎに並べていく、というもので、1本道ながらストーリーをしっかりと見せられる。
2つ目は「再話性(Retold)」で、「テトリス」で「長い棒って全然落ちてこないよね!」といったようにゲームを他の人に語り直したくなるような要素があることを指す。第3は、「CIVILIZATION」のようにプレーヤーごとに物語が生まれる箱庭型、第4は「Mass Effect 3」、「Deus Ex : Human Revolution」のようにローラーコースターと箱庭のハイブリッド型。そして第5は「稀だが、決して見逃せない」として、長年の継続がストーリーを紡ぐ手続き型(Procedural)を挙げた。
また次世代の構築法には、映画「アバター」のような「バーチャル俳優」を期待として述べた。キャラクターのグラフィックスや、戦闘以外のAIなど、NPCとの触れ合いやコミュニケーションが進化すれば、キャラクターとの恋愛の方法論も変わってくるだろう、と語った。
最後にSpector氏はテーブルトークRPGになぞらえて、これからは「バーチャルなゲームマスターが必要とされている」と語った。マスターに必要なのは、まだ見たことのないストーリー、そして予想外のプレーヤーの動きに対応する力。「これからはオリジナルのアイデアを持つこと、そしてタフな問題を解決できることが求められている。ゲームが誕生して30年経った今でも遅くはない。チャンスはあるので、ぜひ世界を変えられるよう頑張ってほしい」と述べた。