PS4ゲームレビュー「The Order: 1886」

The Order: 1886

問われる「騎士の道」。壮大な物語の第1章

問われる「騎士の道」。壮大な物語の第1章

騎士が飲むブラックウォーターは、傷を癒やし、非常に長い寿命をもたらす
謎めいた異国の美女が、ガラハッドの運命を変える
騎士の名は受け継がれていく。様々なこの世界の“ルール”が断片的に語られる

 「The Order: 1886」のストーリーは、ロンドンの「精神科病院」に収監されていた人間達が脱走し、暴れ始めたところから始まる。パーシバルの指示の元、イグレイン、ラファイエットと共に鎮圧に当たるガラハッドは、逃亡者の中に複数の半獣・ライカンがいることを知る。そして逃亡者は「ホワイトチャペル」という手がかりを残すのだった。

 ホワイトチャペルとは、反乱軍の巣窟とされているロンドンの怪しげな場所。騎士団のトップを務める大法官オーガスタスはホワイトチャペルへの干渉を禁じるが、パーシバルはガラハッド達を連れ調査におもむく。そこでは反乱軍と共に半獣の姿が。ガラハッド達は反乱軍の飛行船襲撃計画を察知したものの、内通者の存在も知ってしまう。4人は内通者に知られるのを恐れ、そのまま騎士団に報告せず飛行船に向かう……。

 美しく緻密なグラフィックスで描かれるロンドンの街は市民のいる市場から高級そうなホテル、売春もやっている酒場、貧民達の住んでいる区画など様々な表情を見せる。その中で様々な情報が断片的に与えられプレーヤーは情報をヒントに世界を組み立てていくのだ。どうもイギリスの女王は市民の前に姿を見せなくなっているようだとか、パーシバルがホワイトチャペルの“以前の姿”、それは100年以上も前の状況を知っているようだなどなど、いくつもの謎が提示され、いくつかは明らかになり、いくつかはそのまま語られないまま物語は進行していく。

 騎士達にはそれぞれ“本名”があるところもグッとくる設定だ。ガラハッドはグレイソンという名前があり、パーシバルはマロリー。そして騎士の名前は“受け継がれる”ということをプレーヤーは知る。

 内通者、反乱軍、ある人物の死とそれによるガラハッドの暴走と、物語は大きなうねりを見せていく。物語のスケールは大きく膨らみ、ガラハッドは「騎士とは何か」を問われる様になる。繰り返すが「The Order: 1886」の最大の魅力はストーリーである。渋く、苦く、そしてカッコイイ、ハードボイルドな物語をぜひ楽しんで欲しい。

【展開していく物語】
ユニークなテスラの研究室
半獣はかなりの強敵だ
飛行船の中へ潜入。どこかに反乱軍が潜んでいる

半獣との戦いは自由度を持たせたQTEという意欲的なシステムだが少しわかりにくい。さらに洗練して欲しいところだ
弱音を吐くイグレイン。騎士の運命の過酷さが垣間見える
音声を収録したアーカイブは様々な場所で入手できる収集要素だ

 すでに出ている海外のレビューでは、本作のコンテンツとしての短さと、QTE(クイックタイムイベント:ムービーシーンで特定のタイミングで指示されたボタンを押すことで進行する仕掛け)のゲーム性が今ひとつだという評価を受けている。QTEに関しては指示されるボタンの必然性が薄かったり、カーソル移動にこれまで移動に使ってた左スティックではなく、いきなり右スティックを使わせたり、キャラクターの行動と、QTEのゲーム性が一致してないように感じてしまう。ここは改良してもらいたいところだ。

 筆者は6~7時間でエンディングに到達した。マルチプレイもなく、探索要素もそれほど多くないため、昨今のFPSやTPSと比べてもボリュームが少ないと感じるところはある。しかし、2回目のプレイで自分の腕が上がっているのが実感できたし、何よりも1度目でプレイして気がつかなかった様々な伏線に気がついたのである。伏線は今後の物語のための要素が多く、今作で解決する要素ではないが、まだまだ明らかになっていない要素が多いことを改めて確認できた。1度クリアしても、ぜひもう1回プレイして欲しい。

 あくまで筆者の感触だが、「The Order: 1886」はゲーム製作中、かなり大きく手を加えたのではないかと思っている。ストーリーとテーマ性をはっきりさせるため余計な部分と感じるところをそぎ落としたからこその現在の姿なのではないだろうか。

 そして本作によって生まれた世界はとても魅力的だ。登場人物がどのように動き、物語はどう膨らんでいくか、賛否はあるとは思うが「The Order: 1886」は壮大な物語の“第一章”として制作された作品だ。今後ファンの期待を満たす情報に期待したい。

【世界観の魅力】
新聞や手紙など様々なものを見ることができる。テスラとエジソンの確執。現実世界とオーバーラップするところも面白い
当時のテクノロジーと、現在を越える技術、ユニークな世界観だ
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(勝田哲也)