(2013/8/9 10:00)
マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」より、新型ゲーミングPC「MASTERPIECE a1500BA1」が8月9日に発売される。いわゆるハイエンドゲーミングPCだが、ただのハイエンドではない。AMD製の最速CPUとGPUを組み合わせた、オールAMDによる最速マシンとなっている。
PCとしての評価は僚誌PC Watchにお任せするとして、弊誌ではゲーミングPCとしての「MASTERPIECE a1500BA1」を試し、評価してみたいと思う。
一般販売なしの最新・超高速CPU&GPUを搭載
まずはスペックを確認しよう。
CPU | FX-9590(8コア/4.7GHz/TC時5GHz) |
CPUクーラー | Cooler Master Seidon 120XL(水冷) |
マザーボード | MSI 990FXA-GD80 V2(AMD 990FX) |
メインメモリ | Kingston HyperX シリーズ 16GB(PC3-12800 8GB×2) |
ビデオカード | MSI R8990-6GDR5(Radeon HD 8990、GDDR5 6GB) |
SSD | Samsung 840 PRO 256GB |
HDD | 3TB(7,200rpm) |
光学ドライブ | BDドライブ |
電源 | 1,200W(80PLUS GOLD) |
ケース | G-Tune MASTERPIECE シリーズ専用シャシー(アビーと共同開発) |
OS | Windows 8 64bit |
本機の特徴であるCPUのFX-9590について、少し詳しい話をしたい。FX-9590は8コアでありながら定格4.7GHz、Turbo Core(TC)時には5GHzに達するという高クロック動作が特徴。ユーザーのオーバークロックではなく、標準で5GHzに到達したのは、コンシューマー向けのx86系CPUはこれが初めてだ。
5GHzと言われてもピンと来ないかもしれないが、PCユーザーにとってはそれなりに衝撃的な数字と言える。x86系CPUのクロックは、2000年に1GHzを突破してから順調に上がり、2004年には約4倍の3.8GHzまで到達した。ところが、そこからクロックを上げて4GHzに到達するのは技術的に難しい状況となってしまった。そのためCPUメーカーは、クロックを上げるのではなく、コアを増やす方向に舵を切った。
以後、コア数は増えていったものの、クロックは上がらないという状態が続いた。4GHzという天井に手が届きそうで届かない時間が長く続き、ユーザーからは「4GHzの壁」などと呼ばれたりもしていた。x86系CPUで定格4GHzを超えたのは、それから8年後の2012年3月。AMDのFX-4170が達成した。このCPUは、4コアで定格4GHz、TC時4.3GHzというものだった。
FX-9590は、それからわずか1年強で、8コア・TC時5GHzという数字を達成している。「4GHzの壁」とは何だったのかと言いたくなるところだが、これには1つのからくりがある。FX-9590は一般向けの単体販売がなく、システムインテグレーター(PCメーカー)にのみ卸されている。つまり、一般ユーザーがFX-9590を手に入れるには、完成品のPCを買うしかないのだ。
単体販売されない理由は公式に発表されていないが、筆者はCPUの発熱が理由の1つではないかと考えている。FX-9590のTDP(熱設計電力)は220Wとされている。一般的なCPUのTDPは65~130W程度。つまり、FX-9590がフル稼働すると、普通のCPUの2~3倍の熱を発する。高いクロックを実現するために、大電力を消費しているわけだ。
この多大な発熱を処理するために強力な冷却装置が必要なのはもちろんだが、もし冷却装置の性能が不十分であったり、取り付けや動作に不備があったりすれば、熱暴走では済まずに即故障ということもあり得る。無用な事故を避けるためにも、きちんとした冷却装置を整え、安全を確認した製品を出荷できるメーカーからのみ販売を許可する、という形を取っているのではないかと思う。
ちなみに220Wと言うと消費電力もすごそうに聞こえるが、ゲーミングPCならGPUが同等以上の電力を消費しているはずなので、「そこを気にする人が買うものじゃない」ということで納得していただきたい。
そのGPUだが、本機に搭載されているRadeon HD 8990も、CPUと同様に一般販売されていない。Radeon HD 8970(これも未発売)を1枚のカードに2基搭載したものとされている。詳細なスペックは現時点では不明だが、製品のナンバリングから推測するに、AMD製GPUの最新フラッグシップモデルとなるはずだ。
他にも256GBのSSDや16GBのメインメモリを搭載し、快適なゲームプレイを実現する構成となっている。
ゲーム系ベンチマークソフトをチェック
それでは実際にベンチマークソフトを使って性能を見ていきたい。まずはサービス開始が近づいている「ファイナルファンタジーXIV」より、先日公開されたばかりの「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」を試す。設定できる範囲では最高画質となる、1,920×1,080ドットの最高品質という設定で、最高評価の「非常に快適」となっている。
この「キャラクター編」のトピックスとして、マルチGPUに対応したことが挙げられる。ただしスクウェア・エニックスの発表によると、現状ではAMDのマルチGPU(CrossFire)対応ドライバーはまだ開発中で、それが済めばドライバーのアップデートによってスコアが改善されるとしている。
なお最新のベンチマークソフトとなるので、低めの設定や解像度のデータも合わせて掲載しておく。また前バージョンである「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編」についても、比較用としてスコアを掲載する。
続けてスクウェア・エニックスの「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」。こちらはマルチGPUには対応していないようだが、それにしてもやや低めのスコアが出ている。高解像度でもプレイに支障のない程度のスコアは出ているが、ドライバーの成熟待ちという印象だ。
次はセガの「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」。ゲームプレイには全く支障のないスコアだが、数値的にはかなり物足りない。マルチGPU対応とドライバーの対応の両方を待ちたい。
次はカプコンの「バイオハザード6 ベンチマーク」。こちらは高めのスコアが出ているが、マルチGPUが効いているならもう一息欲しいところ。また同じカプコンの「MHFベンチマーク第3弾【大討伐】」はかなりの高得点を得ている。
これらの結果を見たところ、どうやらデュアルGPUを搭載した効果が出ていないようだ。まだ流通前の、しかもデュアルGPUというニッチなデバイスだけに、ドライバー周りがまだまだ未整備なのは間違いない。今後のドライバーアップデートで健全に動くようになれば、スコアが2~3倍になってもおかしくないスペックなので、現状ではそこに期待したい。
レビューとしてはあまり役に立たない結果になって申し訳ないが、最新型ハイエンドGPUにはよくあることなので、あまり悲観しないでもいいとは思う。