★3DSゲームレビュー★
幅広い層が楽しめるシリーズ最新作
力の入った通信関連要素にも注目!
「ファイアーエムブレム 覚醒」
ジャンル:
  • ロールプレイングシミュレーション
発売元:
開発元:
/インテリジェントシステムズ
プラットフォーム:
  • 3DS
価格:
4,800円
発売日:
2012年4月19日
プレイ人数:
1~2人
レーティング:
CERO:B(12才以上対象)

 4月19日、任天堂株式会社から1990年に第1弾「暗黒竜と光の剣」がリリースされたロールプレイングシミュレーションシリーズの最新作「ファイアーエムブレム 覚醒」がニンテンドー3DSにて発売された。

 開発はこれまでのファイアーエムブレムシリーズ同様、任天堂と株式会社インテリジェントシステムズが担当している。

 店頭での販売はソフト単体のみだが、任天堂オンラインでは、オリジナルデザインの3DS本体、1,000円分のニンテンドープリペイドカード、ソフトがセットになった「ファイアーエムブレム 覚醒 スペシャルパック」(19,800円)が数量限定で販売。数量限定のため、発売日に行なわれた受付は終了しているが、5月10日、5月19日には再度販売が予定されている。



■ 選べる難易度とモードにより、初心者から上級者まで誰でも楽しめるファイアーエムブレムに!

 失った仲間は甦らない、歯ごたえのあるロールプレイングシミュレーションのイメージの強い本シリーズだが、シリーズ「 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~」と同様に難易度やモードが選択できるため、誰でも遊べるゲームに仕上がっている。

○ 難易度

 最初に選択できる難易度は「ノーマル」、「ハード」、「ルナティック」の3つ。この難易度は新規にゲームをスタートする際に選択するもので、1度ゲームを始めたら、そのゲーム中に変更することはできない。

 ・「ノーマル」
 初心者向けの難易度で、他の難易度と比べ、最も敵が弱く、バトルマップでの敵の登場数も少ない。本作では、1つの章をクリアすると自動的に次の章に進むのではなく、任意でワールドマップを移動し、次に進む場所が選択できるようになっており、シナリオに関係しない遭遇戦というフリーバトルでは、キャラクターのレベルを上げ、強化できる。遭遇戦は章をクリアするなどの条件で発生するが、ノーマルでは遭遇戦を発生させられるアイテムが安価で入手できるため、レベル上げがしやすい。

 ・「ハード」
 シリーズを遊んできた上級者向きの難易度で、ノーマルと比べて敵が強く、登場数も多くなっている。体力が減っていたり、弱いユニットを積極的に攻撃してくるなど、NPCの思考面でも難しくなっている。遭遇戦を任意で発生させられるアイテムもノーマルの約10倍の価格になっていたりと、レベル上げもやり難くなっている。

 ・「ルナティック」
 超上級者向きの難易度。ハードよりもさらに敵が強く、いやらしく攻撃してくる。はっきり言って、チュートリアル的な序盤のステージから手強く、1ミスで味方がやられてしまう。詰め将棋のような印象だ。

○ モード

 モードは「カジュアル」と「クラシック」の2つ。こちらも難易度と同様で、新規ゲームスタート時に決定し、そのゲーム中は変更できない。

 ・「カジュアル」
 やられてしまった仲間が復活し、どこでもセーブできるモード。仲間がやられてしまってもいなくなることがないので気軽にプレイできる。また、バトルマップ中にセーブすることが可能なため、セーブしておいて、命中率の低い攻撃が外れたら再開してやり直したり、レベルアップ時の成長に満足いかない場合に再開といった使い方もできる。なお、本作のセーブスロットは3枠ながら、どこでもセーブはそれらとは別に2枠設けられている。

 ・「クラシック」
 倒れた仲間は2度と戻らず、バトルマップ中のセーブは中断セーブとなり、再開すると中断セーブのデータは無くなってしまう。昔ながらの、緊張感溢れるバトルをプレイしたい人向けのモードとなっている。


 これら難易度とモードを組み合わせて、全体の難易度を決定する。本作では、1キャラクターが様々な兵種に転職できるなど、単にシナリオを進めるだけでない、キャラクターを育成する楽しみがあるので、サクサク進めたい人、簡単に育成を楽しみたい人、これまでのシリーズをプレイしたことはあっても途中で投げ出してしまったなんて人にはノーマル+カジュアルをオススメしたい。逆に緊張感のあるバトルを求めるなら、昔ながらのクラシックがいいだろう。ただし、難易度に関しては、ルナティックはかなり厳しく、ゲームシステムを充分に理解してから挑まねばクリアできないはずなので、ノーマルかハードを選んでおく方がいいだろう。ちなみに遭遇戦を発生させやすい=お金が稼ぎやすく、レベルも上げやすくなるのだが、後述の配信やDLCを利用できるなら、この点は解消される。



■  仲間と共に戦う「デュアル」、2人1組になる「ダブル」など、ゲーム性を高め、熱中させてくれるシステムの数々!

 ゲームは、マス目で区切られたバトルマップでキャラクターを動かし、自軍と敵軍のターンを繰り返すというシミュレーションゲームではベーシックなスタイル。家庭用ゲーム機において、このスタイルを定着させたのは本シリーズと言っても過言ではないだろう。

 剣は斧に、斧は槍に、槍は剣に強いといった3すくみなど、シリーズでお馴染みの要素はそのままに、シンプルながらも熱い駆け引きが楽しめる。プレイしながら学べ、いつでも確認できるチュートリアルも搭載されているので、ゲームシステムについては初めて本シリーズをプレイする人も安心してもらいたい。

 本項では新システムなど、中核となるシステムを中心に紹介していく。

○ 「デュアル」

 仲間が隣接している状態でバトルに突入するとデュアルとなり、その仲間と一緒に戦うことができる。デュアルのメリットはいくつかあり、バトルに直接関係するものは下記の3つ。

 1つはデュアルサポート。バトル時に命中/必殺/回避/必殺回避が上昇するもので、上下左右マスにいる全員分の効果が上乗せされる。

 2つ目はデュアルアタック。一定の確率で隣接するキャラクターが攻撃してくれるシステムだ。発動率に左右されるが、例えば2回攻撃が可能な場合、1回目の攻撃→デュアルアタック→2回目の攻撃→デュアルアタックといったケースもあり、1人で攻撃するより遥かに大きなダメージが見込める。

 3つ目がデュアルガード。一定の確率で隣にいるキャラクターが敵の攻撃をガードしてくれるシステム。発動すれば、敵の攻撃を完全に無効化し、一切ダメージを受けない。ガードしてくれたキャラクターもダメージを受けることはない。

 支援効果の有無で戦闘結果は大きく変化する。本作では、基本的に敵味方共に単体攻撃のみなので、なるべく味方と隣接して戦うようにしておきたい。これらの支援効果は、後述の支援レベルに大きく依存する。

○ 「ダブル」

 ダブルは2人がペアを組み、1つのユニットになるシステム。シリーズ「トラキア776」の「かつぐ」(自分より体格の小さいユニットを担ぐシステムで、味方を担いだユニットの能力は低下する)を連想する人がいるかもしれないが、ダブルになることで、隣接時と同じ効果が得られることに加え、前衛ユニットの能力が向上するというプラス面の多いシステムとなっている。前衛と後衛は交代コマンドで変更でき、降ろすを選択すれば、ダブルを解消することができる。

 ダブルは使い勝手の良さも魅力。例えば、遠距離まで移動したい場合、ユニットAが移動→ユニットBとダブル(ユニットA+Bに)→ユニットA+Bが移動とすれば、1人で1ターン内に移動できる距離を伸ばすことができる。さらに移動後に交代→攻撃とすることもできてしまう。なお、降ろすを選択した場合には、攻撃などはできず、そのユニットの行動は終了してしまう。

 圧倒的な強さのユニットが1つでもあれば、そのユニットだけで多くの敵をなぎ倒してしまえる本シリーズでは、ダブルは非常に効果的。能力向上効果は、そのユニットの成長限界に関係なくプラスされるため、限界まで育成したユニットであってもダブルを利用すれば、さらに強くなれる。ただ、ダブルにすればなんでもいいかというとそんなことはない。強力なユニットにはなるが、ユニット数が減ってしまうからだ。1人で充分に倒せる敵が相手であれば、1ターンで倒せる敵の数が減ってしまうし、味方ユニットで壁を作り、敵の行動範囲を限定したいのにユニット数が足りなくなるケースもある。基本的にはダブルを使っておいて問題ないが、状況に合わせて柔軟に使い分けるのが肝心だ。

デュアルサポートでは命中や回避にボーナスが得られる。攻撃面でも有用だが、敵の必殺の一撃を受ける可能性が減らせる点でも優秀だデュアルアタックが発動すれば、1人での攻撃よりも大きなダメージが期待できる。必殺の一撃が出てくれればさらなるダメージが!

 新たに追加されたデュアルとダブルは絶対に有効利用したい強力なシステム。これらは低レベルのユニットを育てるのにも便利だ。高レベルのユニットを後衛にすれば、低レベルのユニットでも能力が向上し、敵と戦いやすくなる。後衛には一切ダメージはいかないので、ダメージを受けて危なくなったら交代することもできる。逆にダブルの前衛を高レベルにした場合でも、デュアルアタックが成功すれば、行動分の経験値が後衛に入る。大きく経験値を得たいなら、前衛を育成したいキャラクターに、得られる経験値はわずかだが、とにかく安全に育成したいなら前衛を高レベルにするといい。ただし、後者はデュアルアタックが発生しなければ、一切経験値は得られない。

○ 「支援レベル」

 バトルに一緒に出たり、デュアルやダブルで戦うと仲間同士の絆が深まり、一定以上絆が深まると支援会話が発生する。

 この支援会話はバトル中ではなく、ワールドマップ上から行なうもので、行なうと支援レベルが上昇し、支援効果が高まる。支援レベルはC、B、A、Sの4レベルが存在し、Sになると配偶者となり、キャラクター情報に記載される。そのため、Sにできるのは1キャラクターにつき、1人までで、異性に限定される。また、支援レベルが高められるのはメインシナリオに関係する一部のキャラクター間のみとなっている。誰が対象なのかは支援会話の一覧から確認できる。

 支援効果が高まるため、支援レベルを上げることは戦力に直結する。意図せずともデュアルやダブルといったシステムを利用していれば自然と支援レベルは上がってくれる。さらに支援レベルSに関しては後述の別システムにも関係してくる。

○ 「兵種」

 キャラクターには何かしらの兵種が設定されており、兵種毎に使える武器/魔道書、特性などが異なる。

 一部を除き、多くの兵種には上級兵種が存在し、マスタープルフというアイテムを消費することで上級兵種となることができる。上級兵種へのランクアップは、シリーズ第1弾「暗黒竜と光の剣」から続く代表的なシステムだ。全兵種においてではないが、シリーズ「聖魔の光石」のように2つの上級兵種が用意されている兵種も存在する。さらに本作では、チェンジプルフというアイテムにより、他の兵種になることも可能。キャラクターや性別によってなれる兵種は決められているが、全40以上とバリエーション豊かな兵種が用意されている。どんな兵種があり、どの上級兵種になれるかは公式サイトで確認してもらうといいだろう。他の兵種になった場合でも、使用できる武器/魔道書に関わる武器ランクは持ち越しになるため、兵種を変更しても再び上げ直す必要はない。

○ 「スキル」

 一定レベルに達するとスキルを習得する。習得するスキルは兵種により異なり、1つの兵種につき、習得できるスキルは2つとなっている。セットできるスキルは最大5つまでで、1度習得しておけば、いつでも着脱可能。つまり、戦術師、傭兵、勇者のスキルを併せ持つキャラクターを育成するなんてことができてしまう。

 ステータスアップ、成長に補正がかかるなど、スキルの効果は様々。兵種数×2+αと、かなりの数があるので、いくつかピックアップして紹介する。

 ・「デュアルアタック+」
 デュアルアタック発生率+10%
 習得兵種:ロード

 隣接、ダブルの味方が攻撃してくれるデュアルアタックの発生率を高めてくれるスキル。なかなか強いスキルだが、ロードになれるキャラクターは少なく、この恩恵にあずかれる人材は限られる。

 ・「戦知識」
 ダブルの状態で、経験値を1.5倍貰える
 習得兵種:戦術師

 ダブル状態に限り、獲得経験値が1.5倍になるというレベル上げに最適なスキル。ただし、ロードと同様に戦術師になれるキャラクターは少ない。

 ・「強奪」
 幸運%の確率で発動 自分から攻撃して倒すと、金塊(小)入手
 習得兵種:蛮族

 男性限定の兵種である蛮族のスキル。入手できる金塊(小)は換金専用アイテム。お金稼ぎのお供に。

 ・「良成長」
 レベルアップした時 全成長判定に+20
 習得兵種:村人

 レベルアップ時にステータスが上昇しやすくなるスキルで、効率良くキャラクターを成長させることができる。村人もなれるキャラクターが少ない。

 ・「武器節約」
 幸運×2%の確率で発動 武器耐久度を減らさずに攻撃する
 習得兵種:傭兵

 ほぼ全ての武器に耐久度が設定されている本作ではありがたいスキル。その真価は勿体なくて使えないような高ランク武器の使用などで発揮される。条件を満たせば幸運を50以上にすることができ、そうなると100%武器耐久度が減らなくなる。

 ・「力の叫び」
 「応援」コマンド選択時、1ターン周囲3マス以内の味方の力+4
 習得兵種:ウォーリアー

 使うと行動が終了してしまうものの大きな効果の得られる応援タイプのスキル。他にも応援タイプには技や全能力が上がるものなどが存在する。

 ・「鍵開け」
 鍵なしで扉や宝箱を開けられる
 習得兵種:盗賊

 鍵なしで扉などが開けられる便利なスキル。習得さえすれば高い戦闘性能の兵種でも利用できるのが大きい。

 ・「月光」
 技%の確率で発動 敵の守備・魔防を半減して攻撃
 習得兵種:グレートナイト

 敵の防御能力を半減し、与えるダメージを増やすことができる。ダメージアップが図れるスキルの1つ。

 ・「太陽」
 技%の確率で発動 敵へのダメージの半分HP回復
 習得兵種:勇者

 発動すれば、攻撃しながら回復できてしまう。勇者になれるキャラクターには必ず習得させておきたいほど強力なスキル。

 ・「滅殺」
 技÷4%の確率で発動 相手を必ず撃破する
 習得兵種:アサシン

 発動率は低いが、1発で敵を仕留められる即死スキル。

 ・「疾風迅雷」
 自分から攻撃して敵を倒すと、1ターンに1度だけ再行動できる
 習得兵種:ダークペガサス

 女性限定兵種のダークペガサスで習得できる再行動スキル。これがあれば、1ユニットであっても1ターンに2体の敵が撃破可能で、移動先の敵を経由することで長距離の移動も実現してくれる。ダブルで2人がこのスキルをセットしていれば、攻撃(敵撃破)→移動→交代→攻撃(敵撃破)→移動→攻撃などが可能に。

 ・「回復」
 ターン開始時、HP30%回復
 習得兵種:バトルモンク/バトルシスター

 敵を倒さずともターン開始時に回復してくれる便利スキル。生存能力が大幅に向上する。

 ・「生命吸収」
 自分から攻撃して倒すと、HP50%回復
 習得兵種:ダークナイト

 敵撃破での体力回復スキル。レベルアップしても、その後に発動するため、レベルアップで増えた最大HPも回復してくれる。

 転職に必要なマスタープルフやチェンジプルフはショップでも販売されており、安易に入手できるうえ、遭遇戦などを利用すれば経験値は無限に稼げる。様々な兵種を経験することで多くのスキルを習得し、強いユニットを育成するのは、大きな楽しみの1つと言える。

○ 親の能力を引き継ぐ子供たち

 支援レベルがSになったキャラクターたちの間には子供が生まれる。描かれているシナリオの段階ではまだ生まれてはいないのだが、とある事情により、主人公クロムらは今後生まれるであろう子供たちと共闘することになる。子供たちは親の能力を一部引き継ぐため、強力な性能のユニットになってくれる。「聖戦の系譜」ファンには垂涎もののシステムだ。

 一定以上メインシナリオを進め、支援レベルがSになると外伝マップがワールドマップに追加される。1人を除き、この外伝マップで子供を味方にすることになる。継承される要素はいくつかあるが、もっともわかりやすいのがスキル。父と母から1つずつスキルを引き継ぐことができる。引き継ぐスキルの決定タイミングは外伝マップに挑む段階なので、支援レベルを早期にSにしてしまっても外伝マップに挑む時期は任意なので、親を成長させてスキルを習得してから外伝マップに挑むことで、引き継ぐスキルを調整できる。

 より能力の高いキャラクターを作りたいなら、引き継がせるスキルは重要。女性専用のスキルを男性に習得させたりと、普通ならできないことも可能になるからだ。さらに子供の性別、転職できる兵種なども親に依存する。育成にこだわるなら、支援レベルをSにするキャラクターを選定し、引き継がせたいスキルを習得してから外伝マップに挑むようにしたい。



■  面白さだけでなく遊びやすさも秀逸!こだわりの感じられる親切な設計!

 ファミリーコンピュータからニンテンドーDSまで、10タイトル以上がリリースされ、シリーズを重ねる度により快適に遊べるようになってきているのだが、中でも本作の遊びやすさは飛び抜けている。「暗黒竜と光の剣」、「聖戦の系譜」といった古いシリーズ以来、久しぶりに遊ぼうかと考えているプレーヤーもいると思われるので、どれほど親切なのか紹介しておきたい。

○ 結果予測

 敵に隣接し、攻撃を選択すると結果予測が表示される。何回攻撃できるか、互いの命中率、どれだけHPが減るかまでがわかってしまう。命中率や必殺の一撃の可能性もあるため、あくまでも予測ではあるが、事前に攻撃してよいものかどうか簡単に判断できる。いけると思えば決定すればいいし、ダメだと判断したのなら、キャンセルすればいいわけだ。

 さらに結果予測を詳細表示に切り替えることもできる。こちらではHPがどう減るのかではなく、1回の攻撃がヒットした際にどれだけのダメージが与えられるのか、互いの必殺の一撃やデュアルアタック/デュアルガードの発動率などが表示される。必殺の一撃の発生率が少しでもあると大惨事になってしまったりするので、特にクラシックをプレイするなら詳細な結果予測を確認しておくようにしたい。前回の状態が保存されるので、毎度詳細に切り替えるなんて手間はない。

○ 敵範囲表示

 敵の範囲に入らず、被ダメージを減らし、先手を打つのは本シリーズの定石。敵の行動範囲についてはXボタンを押すだけで簡単に表示できるようになっている。これを利用すれば、敵の攻撃範囲ギリギリまで自軍ユニットを動かしておき、近づいてきた敵を攻撃することも簡単にできる。敵範囲を表示したまま、自軍ユニットを動かすことができるため、使い勝手も上々。表示する範囲は、攻撃のみ/杖のみ/すべて(攻撃と杖の両方)の3つが設定可能。

 さらにXボタンでの敵全体の範囲表示に加え、敵軍ユニット個別の範囲表示もできる。数に制限はなく、Aボタンで選択すれば、そのユニットの範囲が表示される。全体の範囲表示とは別の色で表示されるので、併用時でも見分けやすい。全体を表示しつつ、弓を使うユニットだけ別で表示しておき、弓に弱い飛行タイプの自軍ユニットがその範囲に入らないように注意するなど、様々な使い方ができる。

○ 各種スキップ設定

 戦闘アニメのスキップ、ユニットの移動速度変更など、ゲームの展開速度に関わる要素のカスタマイズ性が高く、じっくり見たい、結果だけをスピーディーに知りたいなど、多様なニーズに応えてくれる。

 戦闘アニメは必殺の一撃でカットイン演出が入るなど、迫力のあるものになっており、見ごたえは充分。さらにカメラを主観/敵味方両方が入る/自動切換えの3つからリアルタイムに変更できたり、早送り、一時停止機能まで備わっている。しかしながら、何百、何千回と戦闘するとなると、これらをスキップして結果だけを見たいという人も多いだろう。戦闘アニメについては、オン/オフ/自ユニット/自ターン/個別(ユニット毎にオン/オフを設定)から選択できるし、バトルマップ上での杖・踊りアニメーション、AIのスキップ項目までもが用意されており、自分好みにカスタマイズすることで快適にプレイできる。

 結果を確認しつつ、アニメーションをスキップしたいなら、戦闘アニメ:オフ、杖・踊りアニメ:オフ、ゲームスピード:速い、AIのスキップ:移動がオススメ。AIのスキップは、すべて/オフ/移動があるのだが、“すべて”にすると、自軍ターンになってから各ユニットを確認しないと、誰がダメージを受けたのかがよくわからないし、“オフ”にすると、バトルマップ中を敵ユニットが移動してくるアニメが入ってしまう。

○ おまかせ機能

 自動で戦闘してくれる機能も搭載している。“おまかせ”を選択すると、そのターンにおけるユニットの操作を自動でやってくれる。

 おまかせ上級機能というものもあり、こちらを利用すれば、護衛/突撃/追従/個別が選択できるようになる。護衛はクロムについていき、その周辺で戦うバランスのいい設定。突撃は近くの敵へ移動し攻撃する攻撃的な設定。追従はなるべく敵の攻撃範囲外でクロムについていく安全な行動設定。個別は各ユニット個別に、護衛/突撃/追従を設定できる。

 おまかせ機能は仲間を失うことのないカジュアルや自軍が圧倒的に強いバトルで、ユニットを育成したい場合にとても便利。自軍と敵軍の力量差、敵の数、マップの広さなどにもよるが、AIのスキップ:すべてにして、おまかせ機能を使えば、あっという間にバトルが終了する。なお、レベルアップ、所持できるアイテム上限を超えてのアイテム入手、敵にやられるといった場合には、スキップが一時中断される。レベルアップでどれだけパラメーターがアップしたか、どのアイテムを輸送隊に送るかなどは自分で確認、選択できるわけだ。


 どうすればいいのかを探すのが楽しいという人は別だが、そうでない人にとっては親切でありがたい仕様と言えるだろう。他にも各種確認のオン/オフ、ターン開始時に主人公に自動でカーソルを合わせるかといった環境設定などもあるが、ここで挙げただけでも、古いシリーズしか遊んだことのない人は特に便利になったと痛感できることだろう。

 加えて、ゲームの内容面において遊びやすいと感じられた点をここで1つ紹介したい。バトルマップで特別なユニットを仲間にする方法に関してだ。本シリーズをプレイした人なら、誰で話しかければ仲間にできるのかなどがわからず、出撃ユニットを変更しつつ、条件を探したりと苦労したことがあると予想される。しかし、本作では基本的にメインシナリオのバトルマップに強制出撃のクロムで話しかければOKとなっている。筆者がプレイした限り、ごく一部のキャラクターだけ他の条件があったが、どうすればいいのか明示されていたので困ることはなかった。



■ たっぷり用意された通信関連コンテンツ!任天堂発売のタイトルながら有料DLCも!

 すれ違い通信、いつの間に通信など、通信関連コンテンツもかなり力が入っている。これらは遊びの幅が広がるだけでなく、利用するかどうかがゲームの攻略にも大きく関わってくる。また、本作は任天堂発売のタイトルながら有料DLC(ダウンロードコンテンツ)が存在する点においても注目が集まっている。まずはそのDLCから紹介していく。なお、本稿に記載されている情報は5月2日現在で確認できたものとなっている。

○ DLC

 現在明らかになっているDLCは7つ。DLCの購入はワールドマップにある異界の門から行なう。DLCは以下に記載されている7つが全てなのではなく、今後も配信が予定されていることを断っておきたい。

【DLC】
配信日タイトル価格
4月19日異伝 英霊の魔符1300円
※5月31日までは無料配信
4月26日異伝 英霊の魔符2250円
4月26日異伝 王対王 紋章編350円
5月2日異伝 英霊の魔符3300円
5月2日異伝 金と銀300円
5月2日異伝 王対王 聖戦編400円
5月10日異伝 紅対蒼 封印編350円

 DLCではオリジナルのストーリーが味わえたり、特別なキャラクターが仲間にできることに加え、何度でも挑戦できるため、キャラクターの育成にも活躍する。今回、実際に全てのDLCを購入し、試してみたので、いくつか紹介したい。

 ・「異伝 英霊の魔符1」
 クリアすれば「異界のマルス」が仲間になるDLC。マルスは高いステータスを持ち、クロム専用の武器「神剣ファルシオン」なども装備できる。登場する敵のレベルは低く、ハード以上の難易度における序盤のレベル上げに重宝する。5月31日までは無料なので、通信環境のある人は必ずダウンロードしてもらいたい。

 ・「異伝 英霊の魔符3」
 「異界のミカヤ」が仲間になるDLC。ミカヤは通常のプレイでは習得できないスキル「暗闇の加護(ダークマージ系の専用魔法が使用できる)」を所持している。さらに使うとスキル「全能力+2」が習得できるアイテムが獲得できる。このスキルはかなり強く、スキル習得用アイテムはクリア毎に何度でも獲得できる。なお、本DLCを購入するにはDLC「英霊の魔符2」の購入が必須となる。

 ・「異伝 金と銀」
 かなりの軍資金が獲得できるDLC。難易度ノーマルでおまかせ機能を使った所、1分もかからずにクリアできてしまった。こちらも何度でもお金が得られる。強奪のスキルなどでの金策は一切必要なくなるほどで、このDLCがあればお金に困ることはまずない。

 ・「異伝 王対王 聖戦編」
 「異界のアルム」が仲間になるDLC。アルムは「魔戦士」という特別な兵種のユニットになっている。加えて、クリア特典として、男性ユニットが魔戦士になれるアイテムも獲得できる。魔戦士は魔法防御に優れ、剣・斧・魔法が使用できる。もちろん、この兵種でしか習得できないスキルも存在する。キャラクター育成をやりこむなら必須のDLCだ。

DLCがあれば、新たなシナリオやバトルが楽しめる。さらにDLCならではの仲間、アイテムも獲得できる。また、登場するのはシリーズに出てくるキャラクターたちと、ファンにはたまらない内容になっている

 ここからはすれ違い通信、いつの間に通信関連のコンテンツを紹介する。DLCとは異なり、これらは全て無料で利用できる。

○ マイチーム

 すれ違い通信で相手にマイチームを送ることができる機能で、マイユニット(ゲーム開始時に作成するプレーヤーの分身となるキャラクター)を含む、最大10人をメンバーとして選択する。また、受け取り側に表示されるメッセージなども設定できる。

 相手のチームを受け取るとワールドマップ上に相手チームが出現し、戦ったり、アイテムを購入したりすることができる。お金を払ってスカウトしたり、バトルに勝利することで、そのチームのリーダー(マイユニット)を仲間にすることも可能(相手チームによっては仲間にできないケースも存在する)。

 俺のチームに勝ってみろ!と強いチームを設定するのもいいが、とにかくマイユニットを仲間にしてもらいたいのであれば、ゲームがあまり進んでいないプレーヤーでも仲間にしやすいようにマイユニット1人だけにしておくといいだろう。

○ 配信ボックス

 いつの間に通信で受け取ったデータが確認できるメニューで、配信チーム/配信アイテム/配信マップ/配信デュアル/データ受信(インターネットに接続し、データを受信する)の5つに分けられている。

 ・配信チーム
 ワールドマップにシリーズのキャラクターがリーダーのチームを呼び出し、すれ違い通信のチームと同様にアイテムを購入したり、戦って仲間にすることができる。チームを倒したりするとワールドマップ上から消滅するが、無償で何度でも呼び出して戦うことができるので、難易度ノーマル以外で遭遇戦を何度も行なうのが厳しかったり、DLCを利用しないという人であれば、キャラクターの育成にこちらを利用するといいだろう。

 ・配信アイテム
 配信されたアイテムが獲得できるコンテンツ。ただアクセスするだけで貰えるので、貰っておいて損はない。

 ・配信マップ
 新たな物語が追加できるコンテンツ。5月4日現在、筆者の環境では「死せる愚者」を受信している。物語が堪能できるだけでなく、マイユニットと支援レベルSにできる新たなキャラクターが仲間にできるマップとなっている。

 ・配信デュアル
 デュアルタッグ(後述)の対戦相手に異世界の新たな闘技者を追加できる。

○ 名声ボーナス

 蓄積された名声値に応じてアイテムが獲得できるコンテンツ。名声値を消費するのではなく、一定値に達するとアイテムがもらえる仕様なので、ある程度名声値がたまったら確認するよう心がけておくといいだろう。ステータスアップ、換金アイテム、メリクルといった強力な武器など獲得できるアイテムは様々。

 名声値は敵と戦ったり、通信で多くのチームと交流することで蓄積されていく。バトルの場合、遭遇戦よりも配信チームと戦うほうが多くの名声値が獲得できる。

○ デュアルタッグ

 ローカルプレイで他のプレーヤーと2人で協力し、敵軍と闘うバトル特化のコンテンツ。バトルマップでユニットを動かすのではなく、プレーヤーがキャラクターを1人ずつ出し、それぞれのキャラクターがメイン/サポートと交互に入れ替る特殊なバトルだ。敵を全て倒すと勝利となり、名声値と報酬が手に入る。

○ マイユニ図鑑

 最大99人までが登録でき、お金を支払うことで登録したユニットをいつでも仲間にできる。登録できるのは、マイユニット、すれ違い通信でやってきたマイチームのリーダー、DLCで仲間にしたキャラクターなど。育成したキャラクターであれば、すでに登録済みであっても上書きが可能。99人を越えて登録するとスカウト金額の低いユニットから削除されるが、削除されないようにロックしておくこともできる。


 「新・紋章の謎 ~光と影の英雄~」でも追加コンテンツの配信はあったものの、シリーズで最も力の入った通信関連コンテンツが用意されている。無料で利用できるコンテンツが多い点、DLCで仲間になるキャラクターや獲得できるアイテムが公式サイトで明記されている点もありがたい。今後配信されるコンテンツでは、どのようなシナリオで、誰が仲間になるのか、他にもスキルや兵種が追加されるのかなど、注目していきたい。



■ 最後に

 2007年にWiiでリリースされた「暁の女神」以来の完全新作かつニンテンドー3DSでは初めてのシリーズ最新作。その注目度は高く、開発のプレッシャーも大きかったことだろうが、生み出された本作は、クオリティ、ボリュームなどあらゆる面でシリーズ最高クラスの仕上がりになっていると感じられた。

 難易度に加え、シリーズならではの緊張感溢れるプレイを望むならクラシック、気軽に楽しみたいならカジュアルと選択でき、誰でも楽しめるのは嬉しいところ。ノーマル+カジュアルは、とにかくテンポ良くゲームが進む。死んだ仲間は戻らない緊張感のあるバトルでないと……と思う人もいるだろうが、筆者はノーマル+カジュアルでも充分に本作の魅力が味わえると思えた。プレイスタイルに合った難易度やモードを選び、楽しくプレイしてもらいたい。簡単すぎるかなと思ったら、ハードルを上げてプレイすればいいだけだ。

 選択式の難易度やモードはともかく、闘技場のような1回失敗したらリセットといったリスクもなく、自由に戦闘してキャラクターが成長させられるのはシリーズでは数少ないタイプであり、賛否あるかもしれないが、その分、豊富な兵種とスキルが用意されているなど、成長させる楽しみが大幅に広がっている。

 親切な設計について色々紹介したが、レスポンスの良さや待たされていると感じさせることのないロードの速さも特筆すべき点。何度もバトルを行なうこともあり、この点はとても重要と言える。

 通信関連のコンテンツはファン向け、おまけ的と予想していたのだが、攻略に大きく関わってくるのには少し驚いた。有料のDLCに関しては、内容が魅力的なこともあるが、ソフト自体が4,800円と安めの設定なので、買おうという気にさせてくれる。無料で利用できるコンテンツも豊富にあるので、通信環境が用意できない人もニンテンドーゾーンなどで利用してもらいたい。

 筆者のクリアタイムは、ノーマル+カジュアルで21時間ほど。おまかせ機能は使わず、全ての外伝もプレイしていない。クリア後に外伝を全てこなし、子供たちの支援レベルをSにしたり、複数兵種でスキル習得などをした結果、約30時間に。ハード+クラシックでは、追加された通信関連コンテンツをプレイしたり、より深い育成などをこなして25時間ほどになるなど、難易度に関わらず、プレイ内容によってクリア/プレイタイムは大きく異なるため、参考にならないかもしれない。クリアだけを目指せば、時間は大幅に短縮されるが、せっかくプレイするなら育成やDLCなど、本作を隅々まで堪能してもらいたい。

 プレーヤー層を問わず、長く飽きずに楽しめる本作。正直、ニンテンドー3DS本体を買ってでもプレイしてもらいたいタイトルだ。“買い”である。


Amazonで購入

(2012年 5月 10日)

[Reported by 木原卓 ]