12年ぶりにリファインされたシリーズ第2作
- ジャンル:
- RPG
- 発売元:
- アトラス
- 開発元:
- アトラス
- プラットフォーム:
- PSP
- 価格:
- 6,279円
- 発売日:
- 2011年4月14日
- プレイ人数:
- 1人
- レーティング:
- CERO:B(12歳以上対象)
「噂は現実となり、人は『罪』を知る。」――高校生活を送る主人公たちが奇妙な事件に巻き込まれていく「ペルソナ」シリーズの第2作、「ペルソナ2 罪」が、12年ぶりにPSP用のタイトルとしてリファインされた。本作はもともと、1999年にプレイステーションで発売されたシリーズ第2作で、原作を基本に、プレイをしやすくするための多くの改善や、新要素が加えられている。
改善要素として、戦闘システムの改良、ミニマップ表示の追加や、各種表示、インターフェイスの改善がなされている。また、新規オープニングムービーや100曲近いリミックス曲を収録(オリジナル曲も全曲収録)、オリジナルクエストのプレイやクエストの作成ができる新システム「シアターモード」といった、新要素も追加されている。
「ペルソナ2 罪」という作品の魅力を伝えるとともに、改善されてプレイしやすくなったポイント、新要素などについて触れていこう。
■ 「ペルソナ2 罪」の魅力。ライトなノリとダークでカルトなテイストが混じり合う、独特の魅力を持つ作品
栄吉との乱闘騒ぎの中、ペルソナを発現する達哉やリサたち |
政令指定都市 「珠閒瑠市」にある七姉妹学園高校(通称「セブンス」)。この学校はカッコイイ生徒が多いと評判で、校章やエンブレムを持ち歩くのがステイタスとされるほど。だが、いつからか奇妙な噂が流れ始める。「セブンスのエンブレムは呪いの紋章だ」というものだ。
本作の主人公「周防 達哉」はセブンスに通う生徒で、同じセブンスの女子生徒である「リサ・シルバーマン」から好意を持たれていた。ある日、近隣の高校である春日男子高校の番長「三科 栄吉」に呼び出された周防たちは、乱闘の中で自らのペルソナを発現してしまう。
ペルソナを発現させたショックで気を失った達哉、リサ、栄吉の3人は、夢の中で「フィレモン」と名乗る奇妙な人物と出会う。フィレモンは、珠閒瑠市は噂が現実になる異界と化した、と告げる。目を覚ました3人は、「ジョーカー様」という噂話が本当に現実に起きるかを試してみるのだが……。
大きな特徴のひとつ「噂が現実になる」。これは数々の事件を巻き起こすが、悪いことばかりではなく、自分たちに有利な噂を流せばそれも現実になる。日常は噂話によって次々と非現実な世界になっていく |
「ペルソナ2 罪」には、2つの大きなテーマがある。ひとつは「噂が現実になる」というもので、これはストーリーにもゲームのシステムにも重要な要素として関わってくる。噂が現実になり、次々に異常な現象が起こっていく。「セブンスのエンブレムは呪いの紋章」という元から流れていた噂もまた、現実のものとなってしまう。
だが、噂が現実になるというのは、噂にさえなれば、達哉たちに有利なことも現実にできるということでもある。これが非常にユニークで、たとえば「ラーメン屋のおばちゃんが元は女スパイで、今も武器を販売している」という子供じみた噂もまた、広めることで現実となってしまう。その後はラーメン屋で武器が購入できるようになるわけだ。
噂には様々なものがあって、お店で扱っている品物や値段が左右されたり、噂で手に入る武器やスキル、噂を広めることで出現する悪魔というのもいる。噂によって日常がどんどん変化していく。噂集めもひとつのポイントだ。
もうひとつのテーマはストーリーの核となるもので、タイトルの「ペルソナ2 罪」にもあるとおり「人は罪を知る」というもの。フィレモンも、そしてジョーカーもまた、達哉たちを、特に達哉を知っている。だが、達哉には何のことかわからない。ジョーカーに強い憎悪を向けられ、狙われながらも、ジョーカーの影を追っていく。そうして、罪を知る。
ストーリー全体のテイストは、リサや栄吉たち高校生主人公たちのライトなノリやコミカルさがあり、一方でダークでカルトなテイストも併せ持っている。“噂”と“罪”というキーワードから展開されるシナリオは刺激的で、異様な魅力を持っている。そうしたところからも、12年経っても根強い人気のある作品だ。
ただし、ストーリーについてはひとつ注意点があって、PS版をプレイした人ならおそらくすぐわかると思うが、ある人物のみ名前変更されている。とはいえ、オリジナル通りでないと困る! というほどの変更ではない。
「葛葉探偵事務所」で、「ラーメン屋のおばちゃんが元は女スパイで、今も武器を販売している」という子供じみた噂を広めてもらえば、それは現実となり、武器を販売するようになる。噂にはいろいろと種類があり、プレーヤーの手で世界に変化を起こせる |
「ペルソナ2 罪」からはダンジョン内も見下ろし視点になった。画面の向きはL/Rボタンで回転できる |
「ペルソナ2 罪」は、「ペルソナ」シリーズとしてもひとつの方向性をつけた作品だ。初代の「女神異聞録ペルソナ」はタイトル名からしても「女神転生」シリーズの外伝的なスタンスが強かった。だが、「ペルソナ2 罪」からは3Dダンジョンではなく、画面見下ろしタイプになるなど、「女神転生」とは異なるシリーズとして、主に遊びやすさやライトさが考慮されていた。この遊びやすさが今作のリファインでより洗練されているのは大きなポイントだ。
一方で、「ペルソナ2 罪」の世界は初代「女神異聞録ペルソナ」の世界の3年後が舞台になっている。「ペルソナ2 罪」単体でも十分に楽しめるが、「女神異聞録ペルソナ」に登場した「ゆきの」をはじめ、薬局チェーン サトミタダシの御曹司「ただしくん」、エルミン学園を卒業した「たまきちゃん」が登場するなど、「女神異聞録ペルソナ」をプレイしていると、より楽しめる部分がある。
また、「ペルソナ2 罪」は当時のアトラスの他作品と、クロスオーバーを感じさせるところが多かったのも特徴。たとえば、「ただしくん」と「たまきちゃん」は、珠閒瑠市にある「葛葉探偵事務所」に就職していて、特にたまきちゃんはレイ・レイホゥと同じスーツを着てデビルサマナーとして活躍しているという設定まである。「葛葉探偵事務所」は、探偵業の一環として噂を街に広めてくれる重要な施設だ。
このほかにも、「豪傑寺住職」やラジオDJの「流星野郎」、ベルベットルームにいる「悪魔絵師」など、今でいうコラボレーション的なものがみられる。
シリーズとしては、後の「ペルソナ3」からはまた大きく方向性が変わったところも振り返ると、「女神異聞録ペルソナ」の世界を引き継ぎ、当時のアトラス作品から多数のキャラクターも出演する、総集編的な作品とも言えるかもしれない。
当時のアトラス作品から、様々なキャラクターや世界観、そしてスタッフも多数登場する。共通の世界である「女神異聞録ペルソナ」からも登場し、ある意味なんでもありな、アトラス作品のファンならニヤリとする場面が多い |
■ プレイを快適にする数々のリファイン。インターフェイスの一新や、戦闘システムの見直しがポイント
ここからは、リファインされ遊びやすくなったところや、新要素などを中心に、プレイの感想を書いていこう。
戦闘はPS版だとオートバトルが標準だったものがターン制に変更されている |
最も大きく変わったのは戦闘システムだ。PS版だと、あらかじめ行動を設定しておいて、それが自動で繰り返されるオートバトルがデフォルトだった(設定変更でターン制にもできた)。これが今作ではスタンダードなターン制となっている。△ボタンで全員通常攻撃するか、指定した行動をさせるオートにできるので、オートバトルライクに戦ったり、雑魚戦を楽にこなすこともできる。
複数でスキルを掛け合わせての合体スキルは、メニューから選択して発動できるようになった。こちらもPS版のオートバトルの中で発動するのはクセがあったが、わかりやすくなっている。
ペルソナは、悪魔とコンタクトしてタロットカードをもらい、ベルベットルームでカードと引き替えにして手に入れる。これも今作ではインターフェイスが全てリニューアルされていて非常に見やすくなっている。
また、悪魔とのコンタクト中には「感情グラフ」という表示が出るようになった。悪魔の感情がみやすくなり、こちらも分かりやすくなっている。
メニュー表示類などインターフェイスの改善は全体のプレイ感にも影響しており、全体にとっつきが良くなっている。表示類もスピーディーで快適だ。独特なシステムが多い作品ではあるが、理解しやすくなった。
移動中には画面の左下にミニマップが表示され、パーティーメンバーのステータスも常に表示される。今プレイするには厳しい難易度を軽減し、快適にプレイできるよう配慮されている |
移動中にはミニマップが表示されるようになっている。本作のダンジョンは今からすると広大で難易度が高いものが多いのだが、ミニマップには1度進んだ道には色が付いたり、1度落ちた落とし穴が表示されたりもして、苦労をかなり軽減してくれる。今時としては厳しすぎると感じるところがずいぶんと楽になっていると感じた。また、移動中はパーティーメンバーのステータスが常に表示されるようになったので、状態を把握しやすくなったのもポイントだ。
グラフィックスは、PSPに合わせて16:9化されているが、基本的にはPS版をそのままに最適化したものになっている。特定のイベントシーンで流れるムービーも同様で、16:9化と最適化が施されたオリジナルのものがそのまま入っている。PS版のテイストを忠実に残した仕様だ。
BGMは、リミックスとオリジナルのものがあり、コンフィグからいつでも切り替えられるようになっているのが嬉しいところ。リミックスはオリジナルを元にリッチでスタイリッシュなものになっている印象だろうか。オリジナルにこだわる方は切り替えれば、インターフェイスの改善以外はほとんどオリジナル同様にもできる。
ひとつ気になったのは、通常戦闘が終わるときの曲。これはPS版でかなり印象的だったところで、通常戦闘の曲がループしていたところから戦闘終わりのフレーズへとクロスフェードして繋がるという作りになっていた。今作では、戦闘曲がフェードアウトしリザルト画面が出るという流れになり、BGMを切り替えてもPS版通りとはならない。妙に印象的な作りだっただけに少し残念なところだ。
メモリースティックDUOへのデータインストールにも対応。必要容量は243MBとなる。データインストールをすれば各種の読み込みが大幅に速くなるので、これはぜひインストールしてプレイしたい。ただ、データインストールしても、戦闘突入時のローディング画面が完全になくなることはない。
■ 新要素「シアターモード」。オリジナルクエストや配信クエストのプレイ、さらにクエストの作成もできる
クライマックスシアターの案内人「ミツギ モトコ」。ここでは、オリジナルクエストや配信されるクエスト、さらにプレーヤーが作成したクエストがプレイできる |
今作で追加された大きな新要素がこの「シアターモード」。一見、ムービーがみられる場所みたいに思えるが、これは全く違うものだ(ムービーやサウンドが再生できるのは『ギャラリー』として別にある)。
シアターモードは、珠閒瑠市にある施設「クライマックスシアター」で楽しめる。簡単に言うと映画館なのだが、ここで上映される作品はまるで本当に体験しているかのようと評判。ということで、オリジナルのクエストや配信クエストをプレイしたり、ゲームを1度クリアすると自分でクエストを作成することもできるようになる。
オリジナルクエストは、このレビューを書いている時点だと「デビルサマナー葛葉ライドウ」でディレクターを務めた山井一千氏が担当した「カリスマの教室」、そして「ペルソナ泥棒」の2つが発表されている。もちろんこのほかにも、あんな人やこんな人が担当したクエストも予定されているということだ。
また、各ゲーム雑誌、ゲーム情報サイトが担当したクエストも配信が予定されており、弊誌からも筆者が担当させて頂いたクエストの配信が予定されている。オリジナルクエストや配信クエストについて詳しくは公式サイトや、公式ブログをチェック頂きたい。
シアターはマップ画面から入れる。画面中央と右は、山井一千氏が担当した「カリスマの教室」の冒頭シーンだ。このほかにも、たくさんのクエストが予定されている |
クエスト作成の画面。キャラクターの配置やセリフ、イベント作成、フェーズ進行、戦闘まわりなど、細かに作成可能だ |
クエスト作成では、マップを「聖エルミン学園」か「軽子坂高校」の2種類から選択できる。「聖エルミン学園」は「女神異聞録ペルソナ」に登場した高校で、「軽子坂高校」はなんと「真・女神転生if…」の舞台となった高校だ。それぞれ、通常のマップのほかに、異界化した難易度の高いマップも用意されている。
クエスト作成では、NPCの配置、イベント作成、フェーズ進行、エンカウントの有り無しから敵の強さなどを自分で設定できる。登場させるキャラクターも、本編に登場するキャラクター以外にクエスト用の新規キャラクターもいるので、アイデア次第ではかなりいろいろな内容を作れると思う。
公式ブログによれば、クエスト作成ツールは元々、収録されているオリジナルクエストを作るための社内ツールだったということだ。さすがにPSPだと会話等のメッセージ入力をソフトウェアキーボードで行なうほかないので、本格的なものを作るのには苦労するところはあるのだが、作り始めると本気で取り組みたくなってくる魅力がある。
自分で作成したクエストは、メモリースティックDUOに保存されるので、ユーザー間でのやり取りも可能になっている。ユニークなクエストを互いに作って交換する、なんていうのも良さそうだ。
なお、「クライマックスシアター」ではこうした各種のオリジナルクエストをプレイしていくと、ポイントが加算され、ポイント数に応じて会員のランクがブラックラズベリー、ホワイトグローブと徐々に上がっていく。ランクが上がるとシアター案内人のミツギ モトコの対応が変化するという。ぜひいろいろなクエストをプレイしてみてもらいたいところだ。
クエスト作成では、本編に登場するキャラクター以外に、クエスト用のキャラクターも収録されている。メッセージ入力はソフトウェアキーボードで行なうほかないのでちょっと大変だが、作成したクエストのやり取りもできるので、がんばって作りこみたくなる |
■ 原作のテイストはそのままに、遊びやすさやとっつきのよさを中心にしたリファイン
高校生が中心の主人公たちのラフなノリやコミカルなやり取り。そこに、ダークさやカルトさが加わった、当時のアトラスらしさが存分に発揮された独特の魅力を持っている |
12年ぶりの復活となった本作。実は筆者はクエスト作成の件もあってPS版も事前にプレイしたが、それと比べると圧倒的に快適だ。PS版では読み込み時間が長かったりメニューを開くときの暗転などがわずらわしく感じられたりと、今からするととっつきが悪いところがある。
リファインされた今作では、そうしたところの多くが改善されており、インターフェイスも見やすく、システムも分かりやすくなっている。特に戦闘はとっつきが良くなった。内容にわずかな変更点はあるものの、今から遊ぶなら当然ながらPSP版の今作だ。
グラフィックス等から感じるテイストの大部分はPSP用に最適化されているのにとどまっていて、原作の味がきちんと残っているのも好印象。イベントシーンでのキャラクターの動きにはさすがに12年前の作品らしさを感じるところはあるが、インターフェイスやエフェクト類など各所が高精細になっているので、厳しい印象は受けない。テイストは残しつつ、見ためや快適さを向上した作りになっている。
新要素の「シアターモード」では、すでに発表されている「デビルサマナー葛葉ライドウ」でディレクターを務めた山井一千氏が担当したクエストをはじめ、“初期『ペルソナ』シリーズといえばあの人”という人が担当したクエストも予定されているということで、こちらも楽しみにしたいところ。そして……「ペルソナ2 罪」が出れば当然、「罰」も期待したいところだ。
Published by ATLUS
(2011年 4月 14日)