ウーフーアイランドと、近くにあるウェッジ島が主な舞台。南国の島のため、昼間は明るい雰囲気だが夕方や夜の時間帯には、落ち着いた雰囲気の中を飛ぶこともできる |
任天堂から4月14日に発売されたニンテンドウ3DS用スカイスポーツ「パイロットウイングス リゾート」が発売された。本作は、1990年にSFCで発売され、1996年にはニンテンドウ64で2作目が発売されている「パイロットウイングス」シリーズの最新作。今回は「Wii Sports Resort」の舞台でもあったウーフーアイランドの上空を、さまざまな乗り物に乗りながら自由自在に飛び回れる内容となっている。
本作を含めたシリーズ作品がすべて、任天堂が新たな本体を発売したすぐ後に発売されていることから、「パイロットウイングス」シリーズに、新たなゲーム機の能力を測るベンチマーク的な印象を持っている人も多いのではないだろうか。本作も、ニンテンドー3DSの立体視に対応し、迫力のあるグラフィックスを感じられると同時に、空を浮かぶオブジェクトとの距離感がつかみやすくなるなど、立体視の効果をひしひしと感じられる内容に仕上がっている。
今回のレビューでは、そういったニンテンドー3DSならではのプレイ感覚も含めて、本作の内容と魅力についてレビューしていこう。
■ まずはウーフースカイクラブに入会して会員証を作ろう
事前にMiiを作っておけば、自分のMiiでゲームをプレイすることができる |
ゲームを始めると、まずウーフーアイランドにあるウーフースカイクラブに入会することになる。入会時には自分のMiiを登録することができるので、事前にMiiを用意しておきたいところだ。なお、Miiがない場合には、6種類用意されているゲストキャラクターの中からアバターを選ぶこともできるので、友達や家族がちょっと遊びたいというときは、ゲストキャラクターから選べばすぐに遊ぶことも可能だ。
キャラクターを選んだら後は自分のサインを下画面に入力すれば入会完了。会員証が発行され、主な3つの乗り物である飛行機、ロケットベルト、ハンググライダーに体験搭乗することができる。この体験搭乗では、時間や燃料を気にせず思うがままに飛び回ることができ、下画面には操作方法も表示されるので、それぞれの操作方法をひと通り学んでおきたいところだ。
乗り物ごとに若干操作方法は違うものの、基本的な操作方法は、スライドパッドによる方向の調整と、Aボタンによる加速、Bボタンによるブレーキのみ。R・LボタンやX・Yボタンに特殊な操作が割り当てられることもあるが、使用頻度が少ないため、最初は覚えなくてもかまわない。ほかには、十字ボタンを押すことで、上下左右を見回すことも可能だ。
なお、会員証はセーブデータも兼ねており、これまでの飛行時間や取得したスコアなども確認できるようになっている。セーブ領域は4つ用意されているので、家族などで楽しみたい場合にも安心してほしい。
■ 40種類を超えるミッションに挑戦できる「ミッションフライト」
スカイクラブに入会したてのプレーヤーが選べるのはトレーニングクラスのみ。まずはトレーニングクラスで練習しながら「ミッションフライト」の進めかたを学んでいこう |
会員証を作成後には、3つの乗り物でさまざまなミッションに挑戦できる「ミッションフライト」か、上空を自由に舞いながら集めモノをする「フリーフライト」を選択できるようになる。どちらを選ぶかはプレーヤー次第だが「ミッションフライト」を進めることで、「フリーフライト」で取得できるアイテムの種類が増えるので、まずは「ミッションフライト」を進めることをおすすめしたい。
「ミッションフライト」は難易度ごとに、トレーニング、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの5つのクラスに分けられており、各クラスの中には6つもしくは9つのミッションが用意されている。
最初のトレーニングクラスでは、リングをくぐりながら指定されたコースをたどり、最後に着地(着水)するまでを、遊びながら楽しむことができる。ブロンズ以降になると、ミッションの難易度が少しずつ上がるとともに、的を撃ったり写真を撮ったりと、徐々にさまざまなことが要求されるようになっていく。
スコアはガイドドットやリングなどに触れるたびに加算され、障害物にぶつかったり着地(着水)時に衝撃が大きかったり精度が低かったりすると減点される。1度パーフェクトスコアを出すと、次回からパーフェクトスコアを出すとクリアタイムのスコアにボーナスが追加されるようになる。そのため、単にパーフェクトスコアを出したら終わりではなく、その後もタイムとスコアを追求する楽しみもあるわけだ。
各ミッションはクリアした際のスコアに合わせて、★1つから3つまでの評価が得られるようになっており、すべてのミッションをひと通りプレイした上で、その難易度のクラス内で一定数の★を取得することで、次の難易度のクラスが解放されるようになっている。例えば最初のトレーニングクラスには6つのミッションが用意されており、ブロンズクラス解放に必要な★は12つなので、平均すると★2個の評価を得られれば、ブロンズクラスが解放されるわけだ。
次のクラスを解放するのに必要な★の数は、ブロンズまでが12個、シルバー以降は18個となっており、1つのクラスの中では平均★2個とれば、次のクラスが解放されるようになっている。各ミッションのプレイ時間は短いものでは1~2分から、長くても5分程度で終わるものがほどんどと、短時間で結果が出るものばかり。ちょっと時間ができた時にもプレイしやすいことだろう。
ミッションのバリエーションも豊富に用意されている。最初は用意されたルートを飛ぶだけだったミッションも、次第に飛行中に別のことをすることを求められるようになるなど、クラスが解放されるごとにできることが増えていく。ただし、ミッション中にもちょっとした説明が表示されるほか、ミッションをスタートする前にミッションの説明を読めるガイドなども用意されているので、何をすればいいか迷うことはほとんどない。複雑な操作が苦手という人も、何度か練習すればすぐに慣れることができるのではないだろうか。
さらに「ミッションフライト」を進めていくと、「フリーフライトモード」に新たなアイテムが登場するようになるほか、新たな乗り物に搭乗できるようになるなど、クラスを解放するごとにさまざまなご褒美も用意。
プレイした感想としては、ミッションへのチャレンジを2~3回繰り返せば★2以上の評価を得ることはそれほど難しくなく、30分から1時間程度の時間をかければ、次の難易度のクラスにステップアップできる印象だった。
遊びながら少しずつ乗り物の操作が上達していくとともに、ある程度上手くなったところで、次のクラスが解放され、新たなミッションが遊べるのはもちろん、できることが少しずつ増えていくため、ついもう少しプレイしたくなる作りとなっている。このあたりの絶妙のバランス感覚は、「さすが任天堂のゲーム」と思わせる仕上がりだ。
■ 上空を自由気ままに飛びながら集めモノをする「フリーフライト」
ウーフーアイランドにある名所のあちこちに設置してあるiリング。名所に関する説明が楽しめるほか、iリングを一定数集めることで、夕方や夜の時間帯にフリーフライトできるようになる |
もう1つの「フリーフライト」モードでは、好きな乗り物を選んで、制限時間の間ウーフーアイランド上空を自由に飛びながらアイテムなどの集めモノをすることができる。
集めることができるアイテムには、ウーフーアイランドの名所の説明が読めるiリングや、白風船などがあり、一定数集めることでフリーフライトの時間帯を夕方や夜に変更できたり、フリーフライトの制限時間が延長される。
さらに、「ミッションフライト」をある程度進めておくと、飛行機を選択したときはスタントリング、ロケットベルトのときはMiiトロフィー、ハンググライダーを選択したときはゴールドリングと、乗り物専用の新たなアイテムが出現。それぞれ一定数集めることで、乗り物や建物などゲーム中に登場するさまざまな3Dモデルを閲覧できる「ジオラマ」モードが選択可能となる。
「フリーフライト」で取得できるアイテムの種類は、「ミッションフライト」を進めておくことで増えるので、「フリーフライト」を楽しむのはある程度ミッションモードの難易度を進めてから遊ぶのがオススメだ。ただし、ミッションに縛られずにのんびり飛んだり、操作の練習をすることもできるので、そういったときにプレイするしてももちろんいい。
【ジオラマ】 | ||
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スタントリング、Miiトロフィー、ゴールドリングをそれぞれ一定数集めると、ジオラマを鑑賞できるようになる。ジオラマ鑑賞では、カメラを好きな角度に変更したり、ズームイン・アウトをすることも可能だ。長時間フライトして少し休憩したいときなどに、のんびりとジオラマを楽しんでみてはいかがだろうか |
■ ニンテンドー3DSならではの立体視について
3Dボリュームを適度に調節することで迫力のある映像が楽しめる
飛行機によるシューティング系のミッションでは、距離がつかみやすくなることで、より正確な射撃が可能となる |
ニンテンドー3DSということで、気になる立体視についてのプレイ感もお伝えしておこう。本作はもちろん3D表示に対応しており、本体にある3Dボリュームを上げることで、上画面のグラフィックスを立体的に見ることが可能となる。
実際に3Dボリュームを操作してみると、自分のキャラクターや乗り物はもちろん、背景や建物、空中に浮いているガイドドットなどのオブジェクトがより立体的に見えるようになるのはもちろん、接近した際の迫力が大きく増して感じられるようになった。また空中に浮かんでいるオブジェクトとの距離感もつかみやすくなるため、ミッションモードで高スコアを狙うときには、多少3Dボリュームを上げたほうが飛行ルートの予定が立てやすく感じられた。
ただし、筆者の場合は3Dボリュームを最大まで上げると、自キャラクターとに目の焦点を合わせたときと背景に合わせたときの差が大きくなり、迫力が増すのと引き替えに焦点が合わせにくくなり、見にくくなったり目が疲れやすくなるように感じられた。そのため、3Dボリュームを少し上げた状態でほとんどのミッションをプレイしていき、のんびりとフリーフライトを楽しむときだけ、3Dボリュームを上げて迫力のある映像を楽しむという使い方でプレイしていった。
最適な3Dボリュームの値は人それぞれのため一概にはいえないものの、いきなり3Dボリュームを大きな値にしてプレイするのは、見にくく感じる恐れが高い。本作に限ったことではないが、これからプレイを始める人には、まずは3Dボリュームを小さな値から試していき、少しずつ大きくしながら最適な値を見つけていってほしい。
■ 楽しみながら乗り物の操作を少しずつうまくなるだけでなく
アイテム集めやハイスコア狙いといったやり込みがいもある内容
ハンググライダーで撮影した写真は、後でニンテンドー3DSカメラを使って閲覧することができる。すべてのミッションでパーフェクトスコアを出したり、アイテム集めが終わった後には、自分だけのフライトアルバムを作ってみるのも面白いのではないだろうか |
本作をプレイしていて感じたのは、豊富なミッションを楽しみながらプレイしているうちに、いつのまにか乗り物の操作がうまくなっていること。さらに、ロケットベルトやハンググライダーを題材にしたタイトルは少なく、飛行機を含めたこれらの乗り物を思うがままに操れりながら、自由自在に飛び回れるのは本作の大きな魅力の1つといえるだろう。
筆者がプラチナまでの全てのミッションで★3の評価を得て、スタッフロールを見るまでにかかった時間は10時間程度。短いと感じるかもしれないが、ミッションでパーフェクトとそれ以上のスコアを追求したり、フリーフライトでのアイテム集めなど、まだまだ楽しめる要素は残されている。ただし、ひと通りのミッションをクリアしたらもうプレイしない、という人にとってはボリューム的に物足りなく感じてしまうかもしれない。
とはいえ、スタッフロールを見たあともちょこちょことプレイし続けているが、20時間を超えてもすべてのミッションでパーフェクトをとれていなかったり、フリーフライトでとれていないアイテムがあるなど、まだまだ遊びたりない印象だ。ハイスコアを追い求めるのが好きだったり、すべてのアイテムをコレクションするのが好きな人にとってはいつまでもプレイし続けられる内容といえるのではないだろうか。
残念な点を挙げるとすれば、ハンググライダーで撮影した写真をニンテンドー3DSカメラで見ることはできるものの、リプレイデータを保存することができず、スーパープレイができた場合に、後で見直す手段がないのが残念なところ。最近のゲームでは、ネットワーク越しのスコアランキングやリプレイデータのアップロード・ダウンロードができるものも多く、これらの要素があれば、よりスコアアタックなども白熱したのではないだろうかと思われる。人と競争することよりものんびりと楽しんでもらうため、あえてこういった要素を入れていないのかもしれないが、もう少しいろいろと楽しめる要素を用意してもよかったのではないかと感じられた。
また、ストーリー性やキャラクター性がほとんどなく、ずっと1人で飛んでいると時折寂しく感じられることもあった。「ガイド気取りのミゲル」が操作するほかの飛行機と一緒に飛ぶミッションや、迷子になったUFOをマザーシップに連れていくミッションなどでは、クリア後に彼らとのちょっとしたイベントがあれば、より世界観に深みが増したのではないかと思える。
「ガイド気取りのミゲル」と一緒に飛ぶミッションでは、ミゲルの動きに合わせてアクロバット飛行を決める必要がある。彼とのドラマ的なものがまったくないのは少々残念 | 迷子になった子UFOを、マザーシップまで誘導するミッション。自分の動きに合わせて子UFOがついてくるため、大勢で飛んでいる気分が味わえるが、迷子を連れていったのだから、お礼の1言くらいはほしかった |
以上のように、若干物足りなく感じる部分はあるものの、本作の持つ自由に空を飛ぶ爽快感と徐々に乗り物の操作がうまくなっていく達成感は、それを補って余りある魅力。それでいて基本的な操作はシンプルにまとめられており、誰でもすぐに修得できる間口が広さを持ちながらも、パーフェクトスコアを狙うには繊細な操作が求められるなど、プレイすればプレイするほど味わいが出てくる、奥行きの深い内容に仕上がっている。
本作が気になっている人には、ゲームショップなどにある体験台でぜひ度体験してもらいたい。プレイしてもらえれば、大空を自由に飛び回る、誰でも1度は夢見ることを手軽に楽しめる、本作が持つ魅力に気づいてもらえるのではないだろうか。老若男女誰にでもおすすめできる内容だが、フライト内容を突き詰める楽しみもあるので、フライトシミュレータ的なジャンルが好きな人や、ハイスコアやタイムを追求するのが好きな人に、特におすすめしたい1本だ。
※ 画面写真は開発中のものです。
※ニンテンドー3DSの3D映像は、本体でしかご覧いただけません。 画面写真は2D表示のものです。
(2011年 4月 25日)