PS3ゲームレビュー

歴代シリーズの頂点を極める圧倒的な爽快感!
「真・三國無双6 TREASURE BOX」



 「真・三國無双」シリーズ久々のナンバリングタイトル「真・三國無双6」が3月10日に発売された。実は筆者、3月9日の時点でニンテンドー3DS「戦国無双 Chronicle」をプレイ中だったが、「一段落さえついてないのに、新しい無双に手を出すのも……」と思いつつも「出先でクロニクル、自宅は6!」と、発売日に即購入。

 店舗別特典には相当悩まされたが、神奈川県在住なので埼玉・千葉方面までいくのが億劫ということもあり、素直に最寄の大型量販店を利用した。特製ボールペンは「呉がいいなー。呉、呉!」とレジ前で心の中で念じていたが、店員さんがビニール袋に入れてくれたのは、胸元をはだけた優男(晋)だった。世の中ままならないものである。

 発売から少し経っていることもあり、すでにガッツリプレイされているファンも多数おられるかと思う。その一方で「ここしばらく無双シリーズの新作が続いたから、コレはどうしようかな」などと躊躇している方は、僭越ながら本稿を判断材料のひとつにしていただければと思う。個人的には、公式タイアップ商品の液晶テレビ・SONY「BRAVIA」シリーズをお持ちのユーザーは、迷わず手にとって欲しいくらい。無双シリーズと立体視環境による相乗効果は、そこいらの3D劇場作品をはるかに凌駕する臨場感を与えてくれる……と、最新3D液晶TVなどおいそれとは買えない低収入の筆者は、知人宅で体験しつつしみじみ思った。少々話はそれてしまったが、まずは基本的な事柄から順次ご紹介していこう。


【オープニングムービー】
毎回ド迫力のオープニングムービー。壁を水平に、滝を垂直に駆けていくシーンなど、無双シリーズの豪快かつ自由奔放な面がよく表現されている



■ 基本操作と主な特徴 ~攻撃モーションが武将ではなく“武器”ごとに~

 操作系は、無双シリーズではおなじみとなった従来のパターンをほぼ踏襲している。左アナログスティックまたは方向キーで武将の移動、右アナログスティックで視点変更、□ボタンで通常攻撃、△ボタンでチャージ攻撃、○ボタンで無双乱舞、×ボタンでジャンプ、L1ボタンでガード構えとシフト移動、R1ボタンで後述するヴァリアブル攻撃、R2ボタンでマップ切り替え。L2ボタンで馬の呼び寄せ。騎乗疾走中に△ボタンで馬がジャンプ。馬の乗り降り、はしごや投石器などを利用するときは、範囲内で×ボタンを押せばいい。

 最大の変更点と特徴は、従来シリーズでは武将ごとに固定されていた攻撃モーションが“武器”依存になったこと。今作は全武将がほぼ全ての武器を装備でき、例としては孫尚香の円月輪を他の武将が振り回すことも可能。ただし、武将ごとに武器との“相性”が☆印で設定されており、不得意な武器は攻撃速度が低下、少し得意なら攻撃モーションが速くなり、天凛レベルだと旋風(広範囲の敵にダメージを与える)もしくは軽功(攻撃中または空中で□ボタンを押すと高速移動)いずれかの特殊効果が付帯される。「EX」表記つきはその武将がもっとも得意とする武器で、装備時に特殊効果が得られる。

 人によっては「えー、それって武将ごとの個性が希薄になったのでは?」と訝しがられるかもしれないが、筆者は大英断だと思っている。従来シリーズでは「この武将めっちゃ好きなんだけど、攻撃が使いづらいんだよなぁ……」ということが少なからずあり、それを解消する術はほとんどなかった。だが、今作は入手した武器、特殊効果を文字どおり“とっかえひっかえ”自由にできる。無双乱舞は武将固定だが、それこそ“個性”なので問題なし。モーションが重くて高難易度で苦戦を強いられがちだった、あの武将やこの武将で気持ちよくプレイできる。これはもう、何物にもかえ難い圧倒的な爽快感だ。

 新武器システムは、単に「武器を自由に変更できる」だけではない。今作は2種類の武器を同時に装備でき、R1で武器を変更するたびに特殊効果「ヴァリアブル攻撃」が発動する。ヴァリアブル攻撃は武器のタイプごとに演出やモーションが異なり、通常攻撃のキャンセルも可能。発動時はもちろん、直後にも「矢が爆発する」、「攻撃範囲やスピードがアップする」、「間合いの外の敵にもダメージを与える」などの特殊効果が一定時間得られ、組み合わせ次第でさまざまな連続攻撃が楽しめる。装備はいつでも変更可能につき、プレイ中に「どの組み合わせがいいかな」と試しているだけで、あまりの楽しさにアッという間に時間が過ぎていく。

 選べる武器は、後述するストーリーモードやクロニクルモードをプレイするごとに、少しずつ増えていく。入手方法は、倒した敵武将がドロップする、武器屋で制作するかまたはクリア報酬(クロニクルモードのみ)など、いくつかある。各武器は、それぞれ使い込むと“印ゲージ”が増えていき、MAXになると「印」と呼ばれる秘められた能力が使えるようになる。使い方は、武器装備画面で□ボタンを押し、各武器に設定されたスロットにセットするだけ。武器には炎、氷、雷、斬、風といった属性つきのものもあり、攻撃力や使い勝手がさらに向上する。なお、取得した武器は全武将で共用する形になっている。相当な数が用意されているため、武将ごとに集めなくていい点は本当にありがたい。


【チュートリアル】
基本操作から新システムまで、すべてが実践形式で簡潔に学べる。シリーズのコアユーザーもヴァリアブル攻撃などの新要素はここで予習しておくといいだろう

【すべての武将が自由に武器を持ち替えられる!】
倒した敵武将がドロップする。拾った武器を、その場ですぐ装備することも可能。後述のクロニクルモードでは、都城内の施設「武器屋」や「行商人」で制作できる
武器の持ち替えはいつでも可能。武将が得意な武器でもいいし、好みを優先させてもいい。最大2種類まで同時に装備可能

【ヴァリアブル攻撃】
R1ボタンで武器を切り替える際に発動する特殊攻撃。通常技をキャンセルして発動させることも可能。直後に特殊効果が付帯するものもあり、武器の組み合わせ次第でさまざまな攻撃バリエーションが生み出せる

【印で武器をカスタマイズ】
武器を使い込むと印ゲージがたまっていき、最大になるとその力を引き出すことが可能になる。1度MAXにすればオーケーで、使い方は各武器の空白スロットにセットするだけ。獲得印の欄にMAXがない武器があれば、積極的に使ってその力を引き出したい



■ ストーリーモード ~“シネマティック一騎当千”を体言するシームレスプレイ~

 今作のストーリーモードは「魏」、「呉」、「蜀」、「晋」といった勢力単位で選択。ただし、最初に「晋」を選ぼうとすると“ネタバレになるので先に他の勢力をクリアしておくことをおすすめします”という旨のインフォメーションが表示される。三国志に詳しい人はともかく、そうでなければ一応他勢力からプレイしたほうがいいだろう。

 操作する武将は、章や局面ごとに変化する。このとき、各章や局面で、本作が初登場となる演出“シームレスプレイ”が絶大な効果を発揮する。これは、従来はブツ切りになりがちだったイベントシーンとゲームパートをシームレスにつないでいくというもの。たとえば、魏のストーリーモード開始直後、馬で敵陣に突っ込んでいくシーンがある。従来シリーズであれば敵陣に突っ込むシーンでムービーが終了し戦闘準備画面が表示されるが、今作では引いていくようなカメラワークのままシームレスにゲームパートに移行していく。同一ストーリー中で操作武将が変化する場面でも、違和感などはほとんど感じられない。

 勢力単位につきプレイするゲームパート以外はダイジェスト感が濃厚だが、丁寧なナレーションとインフォメーションにより全体の流れは三国志に詳しくない人でも把握できるだろう。個人的には「このエピソードがプレイしたかった!」という場面が少なからずあったため、可能であれば後日DLCや「猛将伝」などのエクスパンションで充実させていただければ……と思う。ちなみに、ストーリーをクリアしていくと、後述のクロニクルモードで選べる武将が増えていく。どちらを先にプレイするかは、ユーザーのお好み次第。コンプリートまでは結構な時間がかかるため、焦らずぼちぼちとプレイしてみてはいかがだろうか。もちろん、両モードを交互に少しずつプレイしていくのも悪くない。


【シームレスプレイ】
魏のストーリーモード導入部に使われているシームレスプレイの一例。イベントシーンから途切れることなくゲームプレイに移行。臨場感を心ゆくまで味わおう



■ クロニクルモード ~武将のアンロックや育成がコツコツ楽しいミッション単位の展開~

 ヘックス(6角形のマス)で区切られた古代中国マップが印象的なモード。各ヘックスがステージになっており、クリアすると隣接するステージが選択可能になる。どの方向に進めていくかはユーザーの自由。徹頭徹尾“硬派”なストーリーモードに比べると、IF展開などなど、全体に“柔らかめ”のテイストとなっている。

 各ステージに記されたマークは、武器(クリアすると武器がもらえる)、アップ(クリアすると金、名声、能力、いずれかひとつが上がる)、列伝(武将固定で、それにちなんだエピソードをプレイ)、宝具(クリアすると強力な武器がもらえる)、支援獣(クリアすると支援獣がもらえる)、解放戦(クリアすると隣接した都城に入れるようになる)、都城(内部施設が利用できる)の計7種類。クリアするとパネルが裏返り、色は銀から金に色が変化する。

 一見すると従来シリーズの「Empires」ふうだが、SLG要素はない。ざっくりいえばミッションクリア型で、使える武将も列伝ステージ以外は自由。各列伝をクリアすると、その固定武将が操作キャラクターとして使えるようになる。操作キャラクターを増やすのはストーリーモードのクリアが1番手っ取り早いが、クロニクルモードでしかアンロックできない武将もいるため、そうした武将を使いたいときはマップを見て対応する列伝を目指しコツコツとクリアしていくことになる。

 各ステージクリア後、たまに「都城に武将が訪れました」というインフォメーションが表示される。都城はアクションアドベンチャーふうの画面構成で、内部には武器屋(武器を作製してくれる)、鍛冶屋(預けた武器の印ゲージを自動で増やしてくれる)、料理屋(連れていく武将や支援獣を指定できる)、行商人(武器や支援獣の販売、一時的に支援してくれる武将の斡旋)、修学士(三国志に関するクイズを出してくる)といった各施設が存在。武将が訪れているときはその武将に話しかけると“絆”が強まり、2回目で“戦友”となり一緒に戦ってくれるようになる。いちどに連れて行ける戦友はひとりまで。

 武将と絆を強めるためには、前述のように都城を訪れたときに話しかける、ステージ中の戦闘で敵味方関係なく関わりあう、行商人に依頼して一緒に戦うといった方法がある。戦友を増やすには、各ステージをプレイして、なるべく多くの係わり合いを持つこと。クロニクルモード開始当初はやや心細いかもしれないが、都城を訪れる武将が出現し始めた後は、プレイを重ねるたびに、ひとり、ひとりと少しずつ増えていく。コツコツプレイして、コツコツ増やしていく。武将の育成も同様で、敵武将を倒して地道に能力アップアイテムを集めるのみ。このあたり、奔放かつ豪快なゲーム本編とは実に好対照だ。


【クリアしたステージの隣接ヘックスが選択可能になる】
各ヘックスを選びゲームを進めていく。列伝はヘックスのなかに複数ステージが存在。クリアすると裏返り、その周囲のヘックス(ステージ)が選べるようになる。どこをどう選んでいくかはプレーヤーの自由だ

【都城】
武器屋、鍛冶屋、料理屋、行商人、修学士といった各施設が存在。武将が訪れているときは、話しかけると“絆”が強められ、一定以上になると戦友として一緒に戦えるようになる

【やりこみ要素をコツコツ楽しもう!】
成長アイテムで武将を育てつつ、さまざまな登場人物と関わり合い戦友を増やしていく。ひとつひとつヘックスを埋めていく遠い道のりだが、その過程はとても楽しい



■ 気合を感じるグラフィックスと彼方まで突き抜ける爽快感

 ここまで触れてこなかったが、今作はグラフィックスに関しても相当気合が入っている。シームレスプレイを実現するためということもあるのだろうが、キャラクターモデルのディティールは文句なく「過去最高」といっていい美麗な仕上がり。メインキャラはもちろん、ステージ内のオブジェクトからザコの風体にいたるまで、言葉に尽くし難い繊細さに目をひかれる。フレームレートが60fps固定ではなく負荷で動的に変化するシステムになったため、激しく動くとフレームスキップにより実際の操作以上に見た目の落ち着きがなくなるのが難点だが、基本的な美しさは何ら変わらない。

 おなじみのワラワラ感も、3D対応を前提に考えると非常に頑張っている。個人的な理想は「真・三國無双5 Empires」の雲霞の如き雑兵群だが、それに及ばないまでも十二分に納得できるレベルだ。気持ちよく吹っ飛ばされてくれる雑兵のまとまりかたも絶妙で、ここにもシリーズ伝統の徹底したこだわりを感じる。戦っている最中にボウリングのピンみたいにまとまられても萎えるが、さりとて振りまいたゴマのごとく点々と散られても爽快感が希薄になる。このあたり開発チームは本当によくわかってくれており、こちらもドン! と構えて気持ちよく武器を振り回せる。

 ほとんど文句のつけようがない今作だが、唯一気になったのがクロニクルモードのオンラインCO-OP(協力プレイ)。発売から間もないためクリア優先の人が多いのか、つながりにくいうえにつながっても離脱が多く、マッチング環境が整っていないというか、少々厳しい印象だ。シリーズ初となるオンラインCO-OPに注目していたファンもいたはずで、このあたりもう少し工夫が必要だったのかもしれない。

 最後に難点を述べてしまったが、全体としては非常に素晴らしい仕上がりになっている。どんな武将でも1,000人以上サクサクなぎ倒せるし、コンボ数で成長アイテムのプラスが伸びる点も(懐かしさもあり)テクニカルでいい。なにより「ユーザーに気持ちよく遊んでもらおう!」という開発チームの姿勢が、随所で実感できるのが本当に嬉しい。無双シリーズのファンは言うに及ばず、突き抜けるような爽快感あふれる極上アクションを味わいたい人は、ぜひ本作をチェックしていただきたい。


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(2011年3月24日)

[Reported by 豊臣和孝 ]