★Xbox 360ゲームレビュー★

立ったままプレイする新感覚ドライブゲーム
ハーフパイプ、トリックなど多彩な遊びも完備!

「Kinect ジョイライド」

  • ジャンル:レースアクション
  • 開発元:Big Park Inc
  • 発売元:マイクロソフト
  • プラットフォーム:Xbox 360(別途Kinectセンサーが必要)
  • 価格:5,880円
  • 発売日:1月20日
  • CEROレーティング:A (全年齢対象)
  • プレイ人数:1~2人(オンライン最大8人)


 「Kinect ジョイライド」はコントローラーを使わずプレイできるKinect専用のドライブゲームだ。プレーヤーはKinectの前に立ち、両手をハンドルを握っている形に構えてプレイする。

 本作はレースゲームとしてはかなりカジュアル寄りのゲームバランスであり、低年齢のユーザーや、初めてKinectに触るユーザー、そして家に訪れた「お客さん」もすぐにプレイできる。Kinectゲームの面白さをたっぷり味わえる作品である。本稿では、ゲームのディテールと感触を紹介していきたい。


■ ハンドルを握ったように手を突き出しプレイ。Kinectならではの楽しさを体感

カジュアルに楽しめるレースゲーム。間口は広いが、よりよいタイムを目指し世界中のプレーヤーと腕を競うこともできる
立ってプレイするユニークなドライブゲーム。何も持たずに全身を使ってプレイする
ロード中には操作法の説明が入るので、初心者でも説明書いらずでプレイできる

 「Kinect ジョイライド」ではプレーヤーはKinectの前に立ち、ハンドルを握っているように両手を構えてプレイする。ブレーキやアクセルは自動で、ステアリングはハンドルを握っている仕草そのままに、右手を上に、左手を下に体の中心に向かって動かすと右に曲がる。逆に左手を上にすれば左に曲がる。

 本作には一定時間速度をアップさせる「ブースト」がある。1度使うとしばらくは使えないものの使用回数に制限はなく、このブーストによる加速がゲームの鍵となっている。ブーストは、ハンドルを胸元に引き寄せるようにしてゲージを溜め、突き出すことで発動。手の動きそのままに急加速するのが気持ちいい。また体を傾けることでドリフトする。ドリフトでコーナーに入り、ブーストで一気に加速して抜ける、といったテクニックも可能だ。

 また、大ジャンプ中には車体を回転させる“スタント”が可能だ。手を上に上げたり、下にすることで縦回転、左右にすることで横回転をする。ジャンプ中何度も車体を回転させるとボーナスがもらえる。また、「スタント」というアクティビティでは、スノーボードのハーフパイプを車でプレイする。ここではぐるぐると車を回転させる楽しさを体験できる。

 「ドライブゲームを立ってプレイする」というのは、プレイ前は奇妙にも思えたのだが、始めてみるとKinectによる操作に夢中になってしまった。特に背を伸ばしてまっすぐ立つことで、安定した走行を心がけるのが大事だと感じた。ステアリングは割と敏感で細かくカーブに合わせて手の角度を工夫する。手を回すだけできちんと車が曲がるのは、「Kinectってすごい」と素直に思わせる。きついカーブの時に、ぐいっと体を傾けドリフトするコツをつかむとさらに楽しくなる。

 従来のKinectタイトルと比べて、激しく体を動かしたり、ジャンプや足踏みといった激しい操作がないのも日本の家庭事情にうれしいところ。ただ、スタントの時には体をひねったり大きく体を動かすので運動量は決して少なくない。他のKinectゲーム同様、プレイしていると「体を使っているな」と実感できるし、運動不足の解消にもなりそうなゲームだ。その一方で、ブーストを溜めるための動作がハンドルを引くという動作であるため、“手を胸元に寄せたままステアリングを切る”という狭苦しい操作が頻繁に必要になるところは、もうすこしやり方があったかもしれないとも感じた。

 難易度の低さ、というのも本作を評価したい点だ。「Kinect ジョイライド」は非常にカジュアルなゲームで、初心者コースならほんの数回のプレイで1位が取れるようになるだろう。ライバルカーは自分の車に合わせてスピードが調整されるので、例えコースから外れてるような大失敗をしても、デッドヒート状態は維持される。団子状態の中をブーストで一気に突き抜ける感触が、常時味わえるのだ。

 また、コースはショートカットが複数あるような仕掛の多いものになっていて様々なギミックが用意されている。ライバル達とガンガン車をぶつけながら、色んなルートを試し徐々にスムースな走りを目指していくゲームだ。カーブ1つの失敗で舌打ちしながらリスタートしなくては進めないというバランスではなく、ゆったり構えてゲームを進めていくだけで、どんどん新しいコースや、車がアンロックされていく。

 もちろん、難易度が低いからといって、単純で単調なゲームではない。各コースはただ単にコースを走るだけでなく、コースのどこかにショートカットがあり、どう進むか、カーブをどう抜けるかを考えるだけでタイムは大きく変わっていく。サーバーには世界中のプレーヤーが参加するレコードがあり、全世界のユーザーがライバルである。ストイックにコースタイムを更新する、というのも本作のプレイスタイルの1つだろう。

 加えて、ゲームの内容がタイムや着順を競うレース要素だけでないのも嬉しい。フィールドにあるスタチューを倒していく「スマッシュ」、ハーフパイプを走り、空中に車を舞わせる「スタント」、さらにはドライブ要素一切無しで、変なポーズを取って楽しむ「トリック」まで用意されている。Kinect専用タイトルならではの、プレイしている姿を自動で撮影してくれる機能は本作にももちろん搭載されている。自分が満面の笑顔でプレイしているという“事実”はプレイを一層楽しくさせてくれる。

 ちなみに、Kinectをプレイする際、問題となるのはやはり場所の確保だと思う。Kinectはリビングでプレイする場合、多くの家庭では部屋の中央にあるテーブルを動かさなくてはプレイできないだろう。筆者自身は2DKのアパート暮らしだが、いつも使っているテーブルをダイニングキッチンの方に片づけなくてはプレイできなかった。大きなテーブルだったり、家族が色々な物をテーブルに置いている場合などは気をつけたいところだ。

 この、「準備」は賛否両論あるところだが、テーブルを動かすという大仕事は、「これからゲームで遊ぶんだ」というワクワク感も盛り上げてくれる。このテーブルを片付ける行為は、元に戻すまでの数十分~数時間、濃いゲームプレイをするんだという“覚悟”をする儀式でもある。この準備も、Kinectのゲームプレイに独得の没入感をもたらしてくれると感じた。


ショートカットを使ったり、コースのギミックを使いこなしたり、やり込むほどにタイムを短縮できる。ブーストをどこで使うか、スタントを決めて多くのボーナスを獲得するかなど、攻略も楽しい
通常のレースゲームにはないユニークなモードも盛りだくさん。パーティーゲームとしても楽しい


■ レースだけでない、ハーフパイプや、ドラッグレース的なゲームもある、7つのアクティビリティ

 ここからは各アクティビティを紹介していきたい。「Kinect ジョイライド」には多彩なゲーム要素が盛りこまれている。スタンダードなレースが楽しめる「プロ レース」、「マリオカート」的な、アイテムを使ってのハチャメチャ対戦の「バトル レース」だけでなく、レース要素無しにポーズを決める「トリック」など様々で、面白いモードが盛りだくさんである。


●「プロ レース」

 オーソドックスなレースだが、コースにはいくつものルートがあり、ジャンプ台や加速する床などギミックも様々だ。各アクティビティには「メダル」という評価基準があって、記録を塗り替えていくことで、ブロンズ、シルバーといったメダルをゲットできる。

 「プロ レース」では初心者コースは気軽にプレイしていても1位は取れるが、中盤以降のコースから徐々にルート選択や、ブーストの使い方、コーナーの攻め方など戦略的な動きが必要となってくる。また、タイムを短縮しようとすると、本腰を入れたアプローチが必要となってくる。手軽なだけのゲームではなく、やり込みという「幅」も感じさせるモードであり、1番夢中になってしまうモードだろう。

最も基本的なゲームモード。ショートカットを見つけたり、コーナーの入り方など、攻略しがいがある

●「バトル レース」

 こちらには多彩なアイテムが登場する。地雷となる「ホバーマイン」、前方に向かって敵を攻撃する「ロケット」、スピードアップし無敵になる「スーパー スピード」、空気の弾で相手を押しのける「ブラスト」、先行している敵のタイヤを凍らせる「ディープ フリーズ」、優位なポジションにテレポートする「テレポート」の6つのアイテムを使いこなす。

 アイテムを使うときは、車の横に表示されてるアイテムインジケーター側に手を伸ばすことで使用できる。アイテムはコースに並ぶボックスからランダムで入手するのだが、シングルプレイでは、自車に合わせて敵車のスピードが変わり常に接戦状態となるバランスなため、アイテムボックスへも団子で飛びこむ状況が多く、敵車にアイテムを取られて自分がアイテムが持てないという状況も多かった。また、アイテムの効果時間などは短く、「アイテムを使って大逆転」という状況があまり生まれなかった。「プロ レース」と比べて、作り込みがちょっと甘いかな、と感じる部分もあった。

基本的なアイテムは揃っているが、本作はどちらかといえばコース攻略要素が強く、アイテムの駆け引きはもう少しかな、と感じた

●「スマッシュ」

 フィールド内に立てられているスタチューを倒していくモード。円形のフィールドに立てられているスタチューをガンガンなぎ倒していくのは爽快感がある。目標の巨大スタチューを高速で動く車でぶつけるのは結構難しくて、車をしっかりスタチューに向けていたつもりでも、実際に近づいてみるとわずかにコースが外れ、ギリギリ当てられなかったりする。焦って当てようとするとうまくいかず、一旦離れてから改めて車体をスタチューに向けるのが有効だが、制限時間が厳しかったり、どこまでうまく冷静に車体をコントロールできるかが鍵となる。観客がいると1番盛り上がるモードかもしれない。

アクセルとブレーキが自動なためか、目標にぶつけるのが結構難しい。このやきもきした感覚が楽しいモードだ。人のプレイを見ていると、「惜しい!」、「何やってるの!」と声をかけたくなってしまう

●「スタント」

 ハーフパイプ状のステージで、高速で車を走らせることで高く飛び上がらせ、アイテムを取っていくモードだ。スノーボードゲーム的なプレイが楽しめる。加速パネルをうまく使い、突っ込む角度を工夫することで高く、長くジャンプができる。ジャンプ中、車体を回転させるスタントが爽快だ。空を舞うのが楽しく、テンションが高くなってしまうモードである。

ハーフパイプをどう攻めていくか、スピードを稼ぎ、高く大きくジャンプすることで高得点が狙える

●「ダッシュ」

 直線コースを駆け抜けていく、ドラッグレースのようなモードだ。このモードでは通常の操作と違い、ステアリングは右、左、中央の車線変更となる。コースには障害物があり、これをどうかわし、ブーストと加速パネルでどこまでスピードを上げていくかに挑戦していく。シンプルだけに、タイム短縮に熱くなれる。

ドラッグレースのように直線コースを突っ走っていくモード。障害物の位置を覚え、ブーストのタイミングを工夫することで、どんどんスピードを上げていける

●「トリック」

 このモードは完全にドライブゲームではない。スタートで空に飛び上がり、いきなり車体から翼がつきだし飛行機に変形する。そしてプレーヤーが翼に飛び上がる。このアクティビティではプレーヤーは翼の上に立ち、画面に表示されるポーズを取っていくのだ。ポーズは、筋肉を誇示するようなガッツポーズや、フラダンスポーズ、波動拳の様なポーズなど、ユニークなものばかりで、成功すると「すごいポーズだ!」などと、大げさに褒められる。派手な演出が気分を盛り上げる。オマケ要素といえるゲームではあるが、パーティーゲームとして楽しいアクティビティだ。

ドライブ要素のないアクティビリティ。いきなり車が飛び上がり、翼が出て飛行機に変形するのが面白い。その翼の上で、色々なポーズを取る

●「Xbox LIVEレース」

 その名の通り、Xbox LIVEを通じて、世界のプレーヤーと戦えるモードだ。「プロ レース」と「バトル レース」で戦える。CPU相手とは違い、プレーヤーの技量が純粋に問われるストイックなゲームモード。本作は北米ではKinectと同時発売であり、早く発売されている北米プレーヤーの方が有利だが、練習を重ねコースを攻略することで勝利をつかむことができるだろう。

Xbox LIVEで世界中のプレーヤーと対戦。小さい子が歌ってたり、それぞれのプレイ環境が垣間見えるのが楽しい。うまいプレーヤーの走りは参考になる

■ 2人でのプレイは画面分割。2人で変なポーズになるのが面白い

Kinectの撮影機能で、プレイ中の画像が保存される。この写真もゲームの楽しさの1つ

 今回は、友人と2人で「Kinect ジョイライド」を一緒にプレイしてみた。普段あまりゲームをやらず、Kinectを知らなかった友人は「すごい!」としきりに感心し、手を使ってアイコンを動かすだけでも楽しんでいた。やはりコントローラーを持たず、画面の前に立つだけでプレイできるというのは、誰にでも大きな驚きをもたらのだなと、友人の反応で改めて再確認した。

 「Kinect ジョイライド」は画面分割による2人プレイに対応している。スタチューを倒す「スマッシュ」、ポーズを取る「トリック」は協力プレイとなるが、それ以外は全て対戦となる。相手が横にいると勝負に熱が入る。対戦相手の車が見えると燃えるし、ブーストをどこでかけるか、駆け引きも楽しくなる。しかも、2人プレイでも追加のデバイスは一切いらないのもありがたい。

 Kinectはプレイ中様々な場面で自動的に撮影が行なわれ、プレイの終わりにその写真が出る。2人でハンドルを握ってるように両手を突き出し、ぐりぐりと動かしていたり、トリックの時には2人で変なポーズをしているのを改めて映し出されると、ちょっと恥ずかしいが、楽しい。2人プレイは通常のゲームでも楽しいが、Kinectを使うことで一緒にプレイする楽しさをさらにふくらませてくれると感じた。

 加えて、「Kinect ジョイライド」ではプレイすることでファンを獲得し、このファンの数で車や新コースがアンロックされるのだが、2人でプレイするとファンを2人分獲得できるので、より早く様々なコンテンツがアンロックされる。使用できる車も増える。車は性能による変化はないが、ウィングが付いたレースタイプや、ワゴンの後ろにアイスクリームの飾りが付いているタイプなど、色々な種類がある。

 「Kinect ジョイライド」はKinectの楽しさを活かした、間口の広いレースゲームだ。手を突き出してハンドルを持っているかのように操作するのは奇妙な感覚だが、楽しい。そしてレースゲームの枠を越えた様々なゲームモードもあり、パーティーゲームとしてもばっちりだ。それだけでなく、レースゲームならではのやり込み要素もちゃんとあるのが楽しい。

 気になった点としては、1つのプレイが終わった後、次のコースを選びたいというときにもメインメニューに戻らなくてはいけないところだ。また、ブーストを溜めているとき手を胸元に寄せてしまうので、ハンドル操作が難しくなる。こういった点はあるが、全体的にはカジュアルで、明るく楽しい、Kinectならではのレースゲームとしてオススメしたい作品だ。Kinectを持っている人はもちろん、購入を考えている人にも、同時購入ソフトとしてラインナップの1つに加えて欲しいゲームだ。


協力プレイから、対戦プレイまでアクティビリティを2人で楽しめる。プレイに夢中になって、体をブンブン動かしているのが撮影されているところがまた楽しいのだ

(C) 2011 Microsoft Corporation. All rights reserved. Microsoft, BigPark, Kinect, the Microsoft Game Studios logo, Xbox, Xbox 360, Xbox LIVE, and the Xbox logos are trademarks of the Microsoft group of companies

(2011年 1月 19日)

[Reported by 勝田哲也 ]