★PS3/Xbox 360ゲームレビュー★
海外の著名クリエイターによって作られた新たなる西遊記 スピーディーで爽快なアクションアドベンチャー 「ENSLAVED ODYSSEY TO THE WEST」 |
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2010年10月7日、株式会社バンダイナムコゲームスから西遊記アクションアドベンチャー「ENSLAVED ODYSSEY TO THE WEST」がリリースされた。
開発は「Heavenly Sword ~ヘブンリーソード~」を手がけたNinja Theory。脚本は「The Beach」などで知られるAlex Garland氏とNinja Theoryのデザイン責任者Tameem Antoniades氏。主役のモンキーは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのゴラム役なども演じたAndy Serkis氏が担当。また、同氏は本作のパフォーマンス監督も務めている。
なお、今回のレビューにはプレイステーション 3版を使用した。そのため、レビュー内容や操作方法、スクリーンショットは全てPS3版のものとなっている。
発売から日が経っているタイトルだが、なかなか魅力的なので、今回紹介することにした。早速、本作の魅力を紹介していきたい。
■ ストーリータイトル
今から150年後の未来……。 世界中を巻き込んだ戦争の結果、生き残っている人間はわずかとなっていた。 自然がふたたび世界を包み、文明は滅びたかに見えたが、 「ボット」と呼ばれる機械群が、生き残った人間を襲い、世界を支配していた。 ボットに捕まった人間は奴隷船へ連れ込まれ、はるか西へ輸送される。 奴隷船の目的地は不明で、もどってきたものも存在しない。 ――かつてアメリカと呼ばれた地。 そこを通ろうとする奴隷船の中には、1組の男女が捕まっていた。 男の名はモンキー、女の名はトリップ。 トリップが奴隷船から脱出しようとした騒ぎに乗じ、モンキーも脱出を試みる。 トリップが乗り込んだ脱出ポッドにつかまり、ともに脱出するモンキー。 しかし、着地の衝撃でモンキーは気絶してしまう。 トリップの目的は、住んでいた村にもどることであった。 だが、単身ではボットに捕まるか、殺されてしまう……。 モンキーの戦闘力が生き延びるカギだと確信したトリップは、 モンキーが気絶しているスキに、スレイブ・ヘッドバンドをモンキーに取りつける。 このヘッドバンドは、モンキーがトリップの命令に反したときに頭を締めつけ、 トリップが死ぬとモンキーに致死性の毒を注入するという代物である。 目が覚めたモンキーはトリップにヘッドバンドを外せと迫ったが、 トリップはもちろん拒否し、モンキーは早速ヘッドバンドの性能を思い知ることになった。 そしてモンキーは否応なしにトリップの旅に同行することになったのである。 |
150年後のアメリカ、機械が人間を襲う世界。墜落する奴隷船から無事に(?)脱出を果たしたトリップとモンキーだったが、トリップは村に戻るためにモンキーの力が必要だと考え、モンキーが気絶している間にスレイブ・ヘッドバンドを取り付ける。このスレイブ・ヘッドバンドは、トリップの命令に従わなかった場合に頭を締めつけ、トリップが死ぬとモンキーに致死性の毒を注入するという恐ろしいもの。こうして、トリップと従わざるをえないモンキーの2人旅が始まる。旅を進めることで、何故ボットたちは人間を奴隷として捉えるのかも明らかになっていく。また、当初、命を盾に従うことを強要され、否応無く旅に同行するモンキーだが、互いの力を合わせて旅をしていく中で、2人の心境に変化が生じてくる。そんなモンキーとトリップの異色の関係も見所だ。
チャプター1「脱出」(墜落する奴隷船からの脱出)、チャプター2「旧市街」(脱出後の地上)と、ゲームはチャプターで区切られている。序盤はチュートリアルも兼ねており、説明書を読まずとも迷わずプレイできる。1チャプターの平均プレイ時間は40分程度。もちろん、慣れてくればプレイ時間を大きく短縮できるようになる。
主人公は登ることと格闘技に長けているモンキー、高いプログラミング技術を持つトリップの2人。プレーヤーはモンキーを操作し、トリップと協力しながら旅を進めていく。ゲーム後半では、ライフルによる狙撃とフックショットによるワイヤー移動を得意とするピグシーも仲間に加わり、3人での旅となる。モンキーが孫悟空、トリップが三蔵法師、ピグシーが猪八戒ということなのだが、何故か沙悟浄は出てこない。敵役はともかく、沙悟浄が出てこないのには何か訳があるのだろうか。気になるところだ。
■ 簡単操作で楽しめる多彩なアクションの数々
本作には多彩なアクション要素があり、飽きずにプレイできる。さらにモンキー各種アクションはどれもスピーディーでストレスなくプレイできるのが嬉しい。
■ 登ることと格闘技を得意とするモンキーのアクション
身体能力の高いモンキーにかかればどんな場所でも思いのままだ |
ステージに平坦な場所は少ない。多くの場面でジャンプしたり、手すりや突起を掴んで目的地へと進むことになる。ジャンプや掴む動作は×ボタンで統一されており、左スティックで飛び移る方向を入力して、×ボタンを押すだけと簡単。入力ミスによる落下死などはほぼ存在せず、左スティックを入力しつつ、×ボタンを連打していれば、スピーディーに移動してくれる。なお、掴める場所は白く発光しているので、見つけるのは難しくない。
モンキーはスタッフ(西遊記でいう如意棒)を使ってボットたちと戦う。格闘戦では、□ボタンで弱攻撃、△ボタンで強攻撃を繰り出し、どちらも連続入力すれば連続攻撃となる。また、□ボタン+×ボタンでダメージはないが、近距離にいる敵を吹き飛ばせる範囲攻撃が可能。複数を相手にする場合に有効となる。ただし、敵ボットもブロックしたり、シールドを持っていたりする。そんな場合には□ボタン長押しでのスタン攻撃でブロックやシールドを無効化し、攻撃を決める。また、スタッフは格闘武器だけでなく、射撃武器にもなり、L2ボタンを押しながら○ボタンやR2ボタンなどを入力することで弾丸を発射する。弾丸にはダメージを与えるプラズマ弾と敵の動きを一定時間止めるスタン弾の2種類があり、状況に応じて使い分けていく。
防御面で主となるのが、R2ボタンでのブロックと左スティック+×ボタンでの回避。ただし、敵の攻撃を無効化できるブロックはブロックするたびにシールドゲージを消費し、シールドゲージがなくなるとブロックできなくなる。攻撃と回避を繰り返し、敵の攻撃を受けてしまったらブロックへと移行するのがよさそうだ。
一部の敵は倒すだけでなく、利用することも可能。一定のダメージを与えた際に○ボタン表示が出たら、テイクダウンのチャンス。敵の銃を奪ったり、敵を捉えて相手に投げつけて誘爆を誘うことができる。また、敵の攻撃をトリップに向かないように大声を出して敵の注意を引き付けたり、金斗雲のようなクラウドという乗り物で移動したりといったアクションも存在する。
アクションはどれもスピーディーで爽快。さらに細かな操作も要求されないという誰にでも遊びやすい作りになっている。弾丸での攻撃の際のエイムでは、狙いをつける必要はあるが、的はそれほど小さくないので簡単だ。また、ひたすら防御で我慢しなければ勝てないという場面もなく、攻撃で押していける。
スタッフを使った格闘戦。相手をスタンさせ、連続攻撃を叩き込みたい | スタッフは射撃武器にもなる。弾数制限はあるが、その効果は高い | テイクダウンで敵の武器を利用し、トリップを守るなんてチャプターも |
■ トリップとの協力
多くの場面において、モンキーはトリップと2人で移動する。頭脳労働者なのでお荷物なんではと思うかもしれないが、そんなことはない。もちろん、モンキーと比べてしまうと自力で戦うこともできず、身体能力も劣るが、多少の段差は自力で登ってくれるし、隙間もジャンプで飛び越えてくれる。ジャンプで届かない場所があれば、トリップを投げてサポートする。そうすることでトリップを別ルートで進めさせたり、届かない場所にあるハシゴをおろしてもらえたりもする。彼女の死=モンキーの死でもあるので、彼女を守りつつ、彼女にも助けてもらいながら協力して旅を進めていく。
例えば、銃撃が激しい場面では遮蔽物に隠れながら移動しなくてはならないのだが、それは2人が協力すべき場面。トリップにおとりの指示を出すと銃撃を引き付けてくれる。その間に次の場所へとモンキーが移動し、次はモンキーが大声を出して敵の攻撃を引き付け、その間にトリップに移動してもらうといった具合だ。トリップへの指示はL1ボタンでのコマンドメニューから行なう。前述の移動やおとりだけでなく、アイテムを使って回復してもらったり、ステージに点在したり、倒した敵からドロップするオーブを消費してモンキーを強化できるトリップショップも利用できる。トリップショップでは、スタッフ(射撃能力)、格闘(格闘能力、新技能)、シールド(リチャージ速度や耐久力など)、ライフ(最大ライフ値と自動回復能力)の4カテゴリから選択して強化する。プラズマ弾の威力が倍加するなど、強化するとしないとでは戦闘の難易度が大きく変化する。惜しまず強化するといいだろう。
トリップにおとりになってもらい、その隙に次の場所へと移動。協力は欠かせない | トリップへの指示はコマンドメニューから。場面によっては特殊なコマンドが出ることも | モンキーを強化できるトリップショップ。なるべく多くのオーブを集めて強化したい |
■ キャラクター強化、コレクションといったクリア後のお楽しみ
1度クリアしたチャプターはいつでもリトライ可能。コンプリートを目指すのもいいだろう |
1度クリアしたチャプターはチャプターセレクトから最後にセーブした時点の能力値のまま何度でもリトライ可能。チャプターセレクトでは、チャプター中に触れたマスク(触れるとモンキーの身に不思議なことが起こり、物語の断片を知ることができる)や集めたオーブの割合が表示される。コンプリートを目指したり、高難易度に挑んだり、実績解除やトロフィー獲得を狙ったプレイが楽しめる。
また、本編クリア後には初回生産版封入特典のダウンロードコードによる高い能力を持ったキャラクターでのプレイが可能。利用できるのは、格闘戦の能力が倍増したクラシック風モンキー、弾丸が無制限に使用できる忍者風モンキー、トリップやモンキーのスタン攻撃効果時間が倍になるセクシー&ロボット風トリップの3つで、いずれか1つが選択できる。
初回生産版封入特典のDLCは本編クリア後から利用できる。最初から利用できないのは、その性能が半端ではないからだ |
■ ピグシーが主人公のDLC「Pigsy's Perfect 10」
ピグシーらしい物語が展開する「Pigsy's Perfect 10」 |
本作のDLCとしては、ピグシーのサイドストーリーが楽しめる「Pigsy's Perfect 10」(PS3版 1,000円 / Xbox 360版 800MSP)が配信中だ。
毎日を孤独に過ごすピグシーは、仲間が欲しい一心でガラクタから必要なパーツを探す旅に出る。近接戦闘がまるでダメで、防御面もひ弱なため、おとりなどのデバイスを駆使しつつ、敵に見つからないよう隠れながらライフルで戦う。太っているため、高いところへのジャンプなどはできないので、高所への移動にはフックショットを利用し、ワイヤーで移動する。ストーリーはもちろんだが、アクション面でも、本編とは全く異なる印象を受けるだろう。
メインの攻撃方法はライフルでの銃撃。弾数制限はない。モンキーのスタッフによる銃撃と大きく違うのがスナイパーモードで狙撃。スナイパーモードではズームがかかりピンポイント狙撃ができるだけでなく、射撃の威力までも向上する。
トリップショップのような強化はできないが、物語を進めると使用できる武装が増えていく。どれも1度使用すると再使用までチャージ時間を要するが、生き延びるためには欠かせないものばかりだ。
テーザーは近距離戦の1体の敵をスタンさせられる。ただし、1体にしか効果がない。近寄られてしまった場合の奥の手としてとっておくのがいいだろう。スタン中の相手はスナイパーモードで頭を狙うと1撃で倒せるのでスタンさせたら、しっかりと狙いを定めて倒したい。
おとりデバイスは着弾地点におとりを出し、敵の攻撃を引き付けられる。おとりに攻撃が集中している間に敵を撃破したり、先に進んだりできる便利なデバイスだ。
EMPデバイスは着弾地点から一定範囲の敵を一定時間スタン状態にできる。前述の通り、スタン中はヘッドショットで1撃で敵を倒せるため、スタンさせられたらスナイパーモードで確実に撃破したい。
爆破デバイスは銃器では倒せないタレットや進めない場所の破壊などに有効な爆弾。投げることはできず、その場に置き、ボタン入力で爆発させる。
魅了デバイスは足元に設置し、一定範囲の敵を一定時間魅了できる。魅了された相手は敵ボットへ攻撃してくれる。敵機撃破だけでなく、おとりとしても効果的。ボットだけでなく、タレットも魅了することができ、タレットを魅了すれば、強力な味方となる。
おとりデバイスで敵を集めて、EMPデバイスでスタンさせるなど、デバイスの組み合わせを考えた戦闘が楽しい。モンキーとは全く異なるため、ピグシーの方が好きだという人もいるのではないだろうか。筆者もその1人である。もちろん、これは本編あってこそ、楽しめるものであることには違いない。
これだけの内容に加え、本編と比べると1チャプターは多少短いが、全19チャプターもあり、ボリュームも十分。本編同様クリア後のコレクション要素や実績解除やトロフィー獲得を狙ったプレイも楽しめる。
また、本DLCを導入することで、本編と「Pigsy's Perfect 10」を3Dテレビに対応した3D効果のビジュアルでプレイできるようになる。
モンキーとは違ったストーリー、アクションが堪能できる。本編が楽しいと思ったなら、絶対にプレイしてもらいたいDLCだ |
■ 最後に
西遊記の世界観をモチーフに、アクション・アドベンチャーをストレスなく、爽快に遊べるように開発された本作。様々なアクション要素がふんだんに詰め込まれ、無駄がなく、物語やゲームの展開が早いため、最後まで飽きずに気持ちよくプレイできた。DLCの内容やボリュームも十分なものに仕上がっている。
稀に処理落ちが見られたり、ゲームが進行しなくなるなど「惜しい」と思わせる点もあるが、ゲーム自体は紛れも無く良作のアクション・アドベンチャー。プレイしておいてまず損はない。なお、前者はPS3を再起動するなどで、後者はチェックポイントからのリスタートで回避できる。
アクション・アドベンチャー好きな方で本作をプレイしていないなら、まずは体験版を遊んでみてもらうのが1番だろう。本作の魅力を体感してもらいたい。なお、体験版はPS3版は終了しているが、Xbox 360版に関しては現在も配信中だ。是非ダウンロードしてプレイしてみよう。
(C)2010 NBGA. Created by Ninja Theory Ltd.
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□「ENSLAVED ODYSSEY TO THE WEST」のページ
http://enslaved.namco-ch.net/
(2011年1月18日)