PS3/Xbox 360ゲームレビュー

加速しろ! 火花を散らせ! ブっぱなせ!
手応え抜群のハイテンションシューティング・アクション

「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」

  • ジャンル:シューティング・アクション
  • 発売元:株式会社セガ
  • 開発元:プラチナゲームズ株式会社
  • 価格:7,980円
  • プラットフォーム:プレイステーション 3/Xbox 360
  • 発売日:発売中(2010年10月21日 発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:D(17歳以上対象)


 ハイスピード&ハイテンションをテーマにした新感覚シューティングアクションゲーム「VANQUISH」(ヴァンキッシュ)。本作は銃撃が攻撃手段の基本となるシューター要素をベースに、ブーストによる加速や「ARモード」によるスローといった独自のアクション要素を融合させた、バリバリのシューティングゲーム。その歯ごたえ、その激しさが、眠っていた“強敵に打ち勝つ喜び”を呼び覚ましてくれる。

 「VANQUISH」は、ディレクターを株式会社Tango所属の三上真司氏(代表作『バイオハザード』、『デビルメイクライ』等)、プロデューサーをプラチナゲームズ株式会社の稲葉敦志氏が務め、プラチナゲームズが開発を行なったタイトル。抜群のアクション性とやりこみに耐えるタイトルを世に送り出してきた三上氏のセンスを、プラチナゲームズが形にした。

 このレビューでは、スピーディーなアクションにシューター要素が融合した“シューティング・アクション”という、これまでになかった新機軸の本作が持つ独特の魅力を紹介していこう。なお、プレイはプレイステーション 3版で行なっており、本稿中の操作表記もPS3用コントローラの名称で記述している。

 なお、本作の体験版として「PlayStation Store」および「Xbox LIVE マーケットプレイス」にて体験版第1弾「VANQUISH OFFICIAL DEMO - VELOCITY ATTACK」がプレイできる。本編中の冒頭シーンをプレイできるので、まだ触っていない方は、そちらもぜひプレイしてみてもらいたい。


― Story ―

未来は夢に溢れているはずだった……。

爆発的な人口の増加は止まることなく、ついに世界人口は100億人を突破。
食料問題、エネルギーの枯渇、世界各地での紛争の勃発。
人類は冬の時代を迎えていた。

そんな中、太陽光発電による平和の象徴だった米国のスペースコロニーが何者かの襲撃を受ける。
コロニーは瞬く間に占領され、送電システムは増幅したマイクロウェーブで
地上を焼き尽くす大量破壊兵器と化した。

襲撃者は「ロシアの星」。

ロシアでクーデターを起こし、政権を奪った直後の宣戦布告だった。

彼らは、サンフランシスコを死の街へと変え、アメリカの即時無条件降伏を要求してきた。
断れば次はニューヨークが標的にされてしまう。

だが、米国は、侵略者との交渉には一切応じない。
大統領は、スペースコロニー付近に駐留していた全艦隊に対し、
侵略者の殲滅とコロニーの奪還を命じた。

総指揮官はバーンズ。

3度の戦争でシルバースターと海軍殊勲十字章を受章した英雄だ。

一方、DARPA(国防高等研究計画局)は、そのバーンズの旗艦に1人の男を派遣していた。

男の名はサム。

今作の主人公だ。

新型バトルスーツARSの戦闘データ採取が表向きの任務だが、彼の目的は別にあった。
恩師カンディード博士の救出である。
博士は、コロニー計画の発案者であり、いまだ未完成のコロニー建造を現場で指揮していた。

そこに今回の襲撃事件が起きたのだ。

孤立した状況の中、博士は発案者としての責任感から
発電システムを停止させようとしている。

「ロシアの星」によるニューヨーク攻撃まで、残された時間はあと僅か。

それぞれの思惑が交錯する中、米国の存亡をかけた戦いが、
いま始まろうとしていた。



■ 最新鋭バトルスーツARSが可能にした「ブースト」と「ARモード」を武器に戦い抜け!

サムは混成部隊の総指揮官バーンズの部隊と行動を共にしている

 主人公の「サム」は、最新鋭のバトルスーツ「ARS」(※Augmented Reaction Suit Systemの略)を身にまとった政府機関「DARPA」のエージェント。「ARS」は主力戦闘車に匹敵する攻撃力・機動力・情報処理能力・戦術性を持つ高機動なスーツで、エネルギーを使うことで、「ブースト」による高速移動と、時間の流れをスローにする「ARモード」を可能にしている。

 本作を象徴するようなアクションの「ブースト」と「ARモード」は、ハイスピードとスローモーションという両極端な性質のアクションだ。激しい攻撃の中をハイスピードで駆け抜け、ここぞという場面でスローモーションにして狙いをすます。そのギャップが非常によく効いている。また、「ARS」のエネルギーを一気に放出して強烈な打撃を繰り出す「近接攻撃」も可能だ。

 また、「ARS」は状況に応じて形状を変化できる装備「BLADE」システムを搭載している。このシステムは武器をスキャンすることでそのデータを入手し、同様の形に変化するという特殊な装備。あらかじめ武器をスキャンしておけば、様々な武器を瞬時に切り替えて扱える。ただし、大量のメモリを消費するので同時に記憶できるのは3種類が限度。

 「ARS」の「ブースト」と「ARモード」といった特殊なアクション、「BLADE」システムによる多彩な武器を駆使して、指揮官のバーンズ率いる中隊とともに「ロシアの星」が配備する大量の歩行兵器と戦いを繰り広げる。


バトルスーツ「ARS」は、多彩な形状に変化する武装システム「BLADE」を搭載。スキャンした武器と同形状に変化するだけでなく、「ARS」の出力エネルギーを使った高速移動の「ブースト」、時間の流れをスローにできる「ARモード」も可能
画像左と中心の人物が、3度の戦争で2度も受勲した英雄的な存在の「ロバート・バーンズ」。今回の作戦の総指揮官を務める。サムと行動を共にするが、命令系統が異なるサムとは考え方も合わず、衝突が絶えない。右の女性はサムをサポートしてくれる「エレナ・イヴァノワ」。DARPAの実験船からからサムの後方支援を行なうオペレーターだ



■ ハイスピード移動の「ブースト」、スローモーションの「ARモード」、多彩な武器を使いこなすのがプレイのポイント!

画面の構成は一般的な後方視点型のシューターゲーム的な作り。銃撃をメインの攻撃としつつ、アクション性の高い内容になっている
従来のシューターゲームではありえないほどのスピードで移動できる「ブースト」。激しい攻撃を回避しながら一気に移動できる

 「VANQUISH」は銃での攻撃を基本としたシューターアクションだ。画面はサムを肩越しにみたいわゆる後方視点の画面で、左スティックで移動、右スティックでカメラ操作および照準操作を行なう。L1ボタンで構えと「ARモード」の発動、R1ボタンで射撃。このほか、R2ボタンでリロード、L2ボタンでブースト、△ボタンでグレネード、○ボタンで近接攻撃、×ボタンで回避、□ボタンで遮蔽物に隠れるカバーができる。

 特徴的なのはやはり「ブースト」による高速ダッシュと、「ARモード」によるスローモーション。どちらもエネルギーゲージを消費するアクションで、エネルギーは時間が経てば回復するが、使い切ってしまうとオーバーヒートしてしまい回復にさらに時間がかかる。オーバーヒートさせないようギリギリまで活用するのがポイントだ。

 ブーストは移動している方向へ加速してダッシュするもので、方向は自在。背中のタービンを回転させ、「ゴオオオッ」と音を立てながら疾走するそのスピード感は相当なもので、爽快感は抜群。シューターゲームは言うに及ばず、たいがいのゲームでは体感したことがないようなスピードで突き進める。

 ブーストダッシュしながら射撃したり、「ARモード」を発動することも可能で、進行方向も自由自在。ブースト中にある程度の方向操作もできるので、プレイ開始当初は制御するだけで手一杯なスピードでも、慣れてくるとスイスイと障害物をかわしつつステージを一気に突き進める。それだけでも上達を感じて気持ちいい。なお、ブースト中に敵に接触してもするっと横をすり抜けるだけだ。

 ブーストの活用方法は様々だが、単純な高速移動方法としてだけでなく、戦い方に組み込めるとかっこいい。例えば、遮蔽物にカバーしている状態から飛び出して一気に加速、敵の攻撃を高速移動でかいくぐりつつ撃ちまくり、途中、落ちている武器を通り過ぎる瞬間にスキャンして弾薬を補充、ブーストのまま別の遮蔽物へカバーするというような動きができる。

 ブースト中の体勢もかっこよさが感じられるポイント。常に敵のいる方へ銃口を向けながらになるので、非常にアクロバティックな姿勢になることもある。スライディングで突き進むのを基本として、ひざをついたまま進んだり、体を反らして後ろ方向へ銃を向けたり。中には、「えー! その体勢で高速移動!?」と言いたくなるような変態チックなのもあるのだが、それがまた一段とかっこいい。

 また、ブーストには“通常の移動では通れないところを通る”という使い方もある。冒頭にある1番最初の戦闘で、足場の下の狭いスペースをスライディングでくぐり抜け、敵の背後へ回り込んで殲滅するという場面があるのだが、これを最初に見せているのは、ところどころにブーストダッシュでくぐることで有利になる場面があるため。正面突破が厳しい場面でも、そうしたルートをうまく使うのがポイントになってくる。もちろんあえて正面から挑んでもいいし、戦い方に幅が持たされている。

「ブースト」は進行方向も自由自在。方向によっては非常にアクロバティックな体勢のまま滑っていく。ブーストしながら銃を撃ったり、スローモーションの「ARモード」を同時に発動することもできる


画面が一段暗くなり全体の動きがスローモーションになる「ARモード」
素早く動き回る敵でも、「ARモード」でスローの世界なら悠々狙いをつけられる

 全体の動きをスローモーションにできる「ARモード」は、ハイスピードなブーストとはうってかわり、精密な動きをするのに適している。「ARモード」は、“ブースト中”、“回避後”、“カバーポイントを乗り越えつつ”、“近接攻撃後”に発動可能だ。

 「ARモード」のシンプルな活用方法としては、敵を確実に撃ち抜くために使うのが基本になる。ちょこまかと動いていて狙いづらい敵でも、「ARモード」中なら敵の動きがスローになるので撃ちやすい。スナイパーライフルで狙撃するときにも非常に有効だ。また、ハイスピードで照準を合わせにくいブースト中でも「ARモード」でスローになるので撃ちやすい。目の前に群がる雑魚の機械歩兵を、ブーストで接近しながら次々に破壊していく、なんていう動きもできる。

 凝った使い方としては、投げたグレネードを「ARモード」で撃ち抜くという、かっこいい動きもできる。まずグレネードを投げ、すぐさま回避からの「ARモード」を発動。ゆっくりと放物線を描いて飛んでいくグレネードを撃ち抜けば、即座に爆発を引き起こせる。同様に、敵が放った大型ミサイルやグレネードといった攻撃を撃ち落とすということも可能で、その敵の攻撃を撃ち抜いた爆発で敵自身に大ダメージを与えるというテクニックもある。

 特殊なのが近接攻撃後の「ARモード」で、近接攻撃は放つとエネルギーゲージを全て使ってしまい、即オーバーヒートになるのだが、一部の近接攻撃だけはヒット後に「ARモード」を発動する猶予がある。ブーストダッシュで一気に距離を詰め、スライディングから近接攻撃のドロップキックをヒット、空中に浮いたまま「ARモード」で周囲の敵を撃つ、という動きが可能だ。

 「ARモード」中は照準操作に集中したいので、画面右下のエネルギーゲージは見づらい。そこで、「ARモード」中は照準近くに別の円形ゲージが表示されるようになっている。集中して照準操作をしつつ、視線を動かすことなくゲージを確認できるというわけだ。

  自分で発動する以外に、瀕死状態になっても「ARモード」が自動発動する。敵の攻撃が激しく弾速も速いので、あっという間にピンチになるときもあるが、「ARモード」の自動発動があるので、納得できないほど瞬間的に死亡するということは起きない。

  ただし、瀕死で「ARモード」が自動発動するのはエネルギーゲージが残っているときのみ。ここにはちょっと不満があった。瀕死になって画面が赤くなると「あ、瀕死の『ARモード』か。えーと、どうするのが1番いいかな……」と、スローになったことでピンチに対して冷静になれたりするのだが、エネルギーがない場合だとスローにはならず、予想を裏切られて慌ててしまうこともあった。「ARモード」が自動発動した瀕死状態と、そうでない瀕死状態にもう少しわかりやすい区別が欲しかったと思う。

スローモーションになる「ARモード」ならではの動きも可能。投げたグレネードを「ARモード」で撃ち抜き爆発させる、というテクニックもできる


敵や状況にあわせて武器を使い分けるのが非常に重要だ
武器の中でも最も特殊なのが「ディスクランチャー」。画像のように「ARS」のエネルギーを使わずに近接攻撃ができる

 本編中に登場する武器は「アサルトライフル」、「ヘビーマシンガン」、「ショットガン」、「スナイパーライフル」、「ロケットランチャー」、「LFEガン」、「ロックオンレーザー」、「ディスクランチャー」の8種類。このほか、サブ武器として「グレネード」と「EMPエミッター」がある。「EMPエミッター」は電磁パルスを発生させて敵兵器を誤動作(一定時間行動不能)にさせる投擲武器だ。武器は方向キーの上、右、下で所持している3種類を切替え、左で「グレネード」と「EMPエミッター」を切り替える。

 武器はもちろん、それぞれに個性が異なるし、状況や敵によって使い分けることも非常に重要だ。距離別で基本となる武器は、中距離だと連射性能が高く集弾性能も高い「アサルトライフル」と、威力は高いが反動が強く集弾性能が低い「ヘビーマシンガン」。近距離での威力が抜群に高い「ショットガン」、遠距離は「スナイパーライフル」といったあたりがスタンダード。「ロケットランチャー」は弾数が少ないものの、装甲の厚い歩行兵器にも大ダメージを与えられる。

 一方、「LFEガン」、「ディスクランチャー」、「ロックオンレーザー」は特殊な性能を持った個性の強い武器だ。「LFEガン」は障害物を通り抜けるエネルギー波を射出する武器で、障害物に隠れている敵や、前方の守りの固い敵にも有効。前面から操縦士を狙うのが難しい大型二脚の歩行兵器「モア」も、「LFEガン」なら前から撃って操縦士にダメージを与えられる。

 「ロックオンレーザー」は、構えた状態で複数の敵をロック、撃つと上空にレーザーが射出され、敵に向かって降り注ぐようにレーザーが当たるという武器。複数の敵を同時に攻撃できる上にロックオンするだけと扱いやすいが、威力は控えめ。

 「ディスクランチャー」はノコギリ状の刃を射出する武器で、射撃武器としては扱いが難しい。だが、「ディスクランチャー」は近接攻撃にも使えるという特殊な性能があって、「ARS」のエネルギーゲージを消費せずに回転する刃で斬りつける近接攻撃を繰り出せる。

 各武器は、「アップグレード」というアイテムを取るか、弾薬がフルの状態で同じ武器を取ることで強化できる。アップグレードすると、最大弾数が増えたり、ロックオンレーザーなら同時ロックオン数が増えたりする。死亡してリトライするとステージ中の武器は復帰するので、小まめに収集してアップグレードを重ねることも可能だ。

 なお、このほかに予約特典(ダウンロードコンテンツとしても販売予定)の「VANQUISH Limited Weapon Pack」には、「ブーストマシンガン」、「レーザーキャノン」、「アンチアーマーピストル」という強力な威力を持つ特殊な武器が3種類手に入るが、今回のプレイではこれら3種類を使っていない。いずれも爽快感を重視した強力な武器ということなので、ぜひ実際にプレイして使ってみてもらいたい。


左から順に、「アサルトライフル」、「ヘビーマシンガン」、「ショットガン」。基本になる3種類の武器だ
左と中央の画像は「スナイパーライフル」、右は「ロケットランチャー」だスナイパーライフルは長距離にいる厄介な敵を、ロケットランチャーは装甲の厚い敵や密集している敵を一掃するのに適している
特殊な武器3種類。左から順に、「LFEガン」、「ロックオンレーザー」、「ディスクランチャー」だ。いずれも他の武器とは特徴が大きく異なるので慣れるまでは扱いが難しいが、うまく使えると魅力的なものばかり
こちらは予約特典およびダウンロードコンテンツで配信予定の「Limited Weapon Pack」の武器。左から順に「ブーストマシンガン」、「レーザーキャノン」、「アンチアーマーピストル」。強力な威力を持つ特殊な武器だ



■ 圧倒的なエフェクト量が魅せる激しい戦い! ハイテンションな戦いの連続を華麗なプレイで切り抜けろ!

冒頭から激しい戦闘の連続!ステージはActで区切られていて、ひとつのActは複数のミッションで構成されている。ミッションは切れ目なく連続して発生していく

 ここからはプレイしての印象に触れていこう。ストーリー本編は「Act1」の「ミッション1」というように構成されていて、「Act」が変わるときに場面の転換はあるが、「ミッション」間はシームレスに続いていく。1つの「Act」はかなり長めで、「ミッション」の間にオートセーブされる。

 冒頭シーンから戦闘の激しさは相当なもので、「Act1」の「ミッション1」、「2」で軽く肩慣らししたところへ、「ミッション3」は体験版第1弾で配信された「VELOCITY ATTACK」のシーンになる。体験版を触った方はご存じと思うが、「VELOCITY ATTACK」では輸送機で現われる増援部隊もいれば、物質転送で突如出現する敵もわんさかと現われる。最後にはボスの巨大な機動兵器「アルゴス」も出現する。序盤から圧倒されるような激しい戦いの場面だ。

 ワラワラと迫り来る「ゲオルギー」(赤い小型の機械歩兵)を「アサルトライフル」の速い連射で殲滅し、奥にいる「ロマノフ」(中型の機械歩兵で攻撃力、防御力高め)に向かってブーストダッシュ! ダッシュしつつ武器をショットガンに切替え、ロマノフに近接攻撃を当ててそこから至近距離からの「ショットガン」を浴びせる。こんな戦い方をスムーズにできると気持ちいい。

 アクションを組み合わせて、より華麗な動きもできる。例えば、前方にいる「ゲオルギー」の集団と「ロマノフ」に対して、まず「グレネード」を前方に投げてすぐさま「グレネード」を追うように前へブーストダッシュ! スライディングで進みつつ投げた「グレネード」を「ARモード」で撃ち抜き、その爆発で「ゲオルギー」を一掃。爆発の中にブーストで飛び込むようにして生き残っている「ロマノフ」に近接攻撃を浴びせる。操作の難易度は高いが、一瞬で多数の「ゲオルギー」と「ロマノフ」を殲滅できる。

 近接攻撃はエネルギーゲージを全部消費してしまうので、使いどころは難しいが、そのぶん威力は強烈。敵の中には弱点以外への攻撃をほとんど受け付けないうえに弱点部位も攻撃しづらく、まともに戦っては苦戦する敵もいる。代表的なのは中盤以降に出現する「バイア」だ。そうした敵はいかにして弱点を突くか、近接攻撃をあてるかがポイントになる。「EMPエミッター」で動きを止めてから狙うか、近接攻撃や「ロケットランチャー」で一気に大ダメージを与えるかなど、戦い方が重要だ。もちろん近接攻撃は接近するリスクやエネルギー消費のリスクがあるので、使いどころ、狙うタイミングも重要になる。

ブーストや近接攻撃といったアクションを駆使して一気に大ダメージを与えることもできる。画像はブーストから近接攻撃を浴びせ、さらに「ショットガン」で追い打ちをかけて「ロマノフ」を一気に倒しているところ。敵の攻撃は激しいが、華麗にガンガン攻めていきたい

カバーして安全を確保することも大事だが、敵の攻撃は1カ所にとどまることを許さない

 戦い方という意味では、敵の攻撃をどうかわすかもポイントになるが、本作は、障害物にカバーしていれば必ずしも安全に戦える、というわけではない。まず障害物は敵の強烈な攻撃で破壊されることが多く、“敵が本気で追い込んでくる”。その追い込んでくる激しさもまた、本作の特徴だ。ある程度隠れることはできても、そこからどう動くかの判断を求められる。

 また、よく見ると使いやすそうな遮蔽物自体が爆発物だったりすることもあって、「これに隠れてゲージの回復を待とう……。あれ、これ中にいかにも爆発しそうなドラム缶が入ってる、やばい!」という感じに慌てる場面も。逆にそうした遮蔽物に隠れている敵を狙い撃つのもポイントだ。

 敵の攻撃は連続して喰らった場合、瀕死になってしまうことが多いが、中には1発で死亡してしまう攻撃もある。そうした攻撃は“音”がポイントになっていて、“キュインキュイン”と他の音とは異なる音で即死攻撃の予備動作がわかったりする。大型ミサイルが迫る音だったら“キンキンキン”と迫ってくる危機を知らせるような音がなるので、音に反応するのも重要だ。逆にその音が聞こえたら「ARモード」を発動して、迫るミサイルを撃ち落とし、その爆発で敵を破壊するということも狙える。

タバコを投げて、その熱で敵の注意を引きつける、なんていうアクションもできる

 基本アクション以外にちょっとした隠し要素というか、特殊なアクションとして、「サムがタバコを吸う」というものがある。カバーしている状態でL2を押し込むと、フェイスガードを開いてサムがタバコに火を付ける。1口吸ってからそのタバコを投げるのだが、敵によってはそのタバコの熱に反応してそちらを攻撃することがある。タバコを囮に使えるわけだ。

 舞台は広大なコロニー内と限定されてはいるが、シチュエーションは多彩で、宇宙港の広場、市街地、森林など、ほかにも様々な場面があり、なかにはシリンダー型のコロニー内ならではという、ちょっと特殊なシチュエーションもある。

 全編を通して、スナイパーライフルを活用したくなる場面がけっこう多い印象で、スナイピングの手触りの良さは好印象だ。全体的にゲームのテンポが速く、敵の動きも素早いのだが、こちらにはなんと言っても「ARモード」がある。スナイパーライフルを持ってある程度の狙いを付け、回避からの「ARモード」を発動、スローな世界の中で楽々と照準を合わせ、スパッと正確に撃ち抜く。スナイパーライフルのズームで敵がスローに崩れ落ち爆発していく様子を見ていると、破壊した部位によって反応が多彩で、非常に細かく作られているのがわかる。

敵の歩行兵器は部位の破壊が可能だったり、画像のように細かなパーツを破壊することもできる

 細かさで言えば、「VELOCITY ATTACK」に現われる「アルゴス」をはじめ、壊せる部位が多数あるのもポイント。「アルゴス」は金色に光る間接部以外にも、ところどころ小さな砲台が付いていて、そこも個別に破壊できる。あまり部位の破壊を徹底しすぎると弾が足りなくなったりすることもあるのだが、そのあたりをいかに無駄弾を抑えて破壊し尽くせるか意識してみるのも面白い。別に弱点部位だけを突いて手早く倒してもいいので、これはやりこみの方向性の面白さだ。

 武器の選択も非常に重要だが、「ディスクランチャー」は独特な面白さがある。「ディスクランチャー」は唯一、エネルギー消費のない近接攻撃が可能になる武器で、チェーンソーで斬りつけるような攻撃が繰り出せる。ブーストダッシュからの近接攻撃を決め、さらにその周りにいる敵をギャンギャン切り刻む。エネルギーが回復したらすぐさままた近接攻撃、といったように近接攻撃をメインにした組み立てもできる。ただ、接近して攻撃を喰らいまくるリスクは変わらないので、上級者向けとも言えるスタイルだ。

 こんな感じで、戦い方を色々と自分で組み立てていけるようになると(自然と戦い方を考えていけるようなデザインになっているのも好印象)、いよいよ動きのかっこよさにしびれてくる。一瞬だけ「ARモード」を発動し「スナイパーライフル」で厄介な敵を撃ち抜き、ブーストしながら次に使う武器を選ぶ。「BLADE」システムでガシャガシャと組み変わっていく気持ちいい音を聞きながらハイスピードに突き進み、撃ちまくり、ここぞというところで近接攻撃を決めてフィニッシュする。どのアクションもかっこよくて、どの瞬間でもうまい華麗なプレイを狙いたくなる。


「スナイパーライフル」で厄介な敵を狙撃するシーンが比較的多め。「ARモード」のスローを駆使すれば狙撃も楽。画像のように破壊した部位がしっかりわかるようになっていて、細かいところも作り込まれている。ただし、「スナイパーライフル」が置いてある場所には敵もしつこく突っ込んでくるので、その場に居続けるのは危険

攻撃の激しさ、爆発等のエフェクトの量には圧倒されるものがある。それらエフェクトが広がっていく様子を「ARモード」のスローでつぶさに確認できるのも魅力のひとつ

 画面のスピード感、速めのテンポの気持ちよさも相当にクオリティが高い。機械兵器が相手なこともあり、爆発が多数巻き起こる。エフェクトの量も圧倒されるばかりで、視覚的にもテンションが高まる。それでいて処理の低下等はほとんど見られず、作り込みの良さを感じさせる。

 

 スピード感と激しさでテンションが高まる一方、「ARモード」のスローである種のクールダウンが入るので、「ハッ」とさせられる瞬間もある。その緩急も魅力だ。「ARモード」は単にスローになるだけでなく、視覚に訴えてくるところもあって、圧倒的なエフェクトの量、飛び交う弾丸、飛び散る火花、吹き飛んでいく破片たちがスローでじっくりと見られる。それらエフェクトをスローでじっくりと眺めた時、「あ、キレイだな。アートみたいだ」と思う瞬間すらあった。圧倒されるような質量も本作の魅力のポイントだ。

 一部のボス敵ではQTE(画面に表示された操作を正確に行なうパート)を行なう場面があって、体験版に出現するアルゴスでもQTEのシーンがある。しかし、本編全体ではQTEはほとんど見かけない。2、3度あったかどうかというところだ。ダイナミックで特殊なシーンを見せる意味でQTEは存在するものの、過剰すぎないよう配慮されている。QTE自体も必ず発生するというわけでなく、特定の状況になると発動するというもので、QTE発生を避けることもできる。

 ゲーム本編は様々なシチュエーションの戦闘の連続で構成されているが、その中でちょっと変わった隠し要素的なものがある。ステージ中に隠されている「パングロス像」という謎の金色の像だ。撃つとビヨーンとはねて赤くなり、リザルト画面(プレイ成績)にも発見した数がカウントされる。けっこう変な場所に隠れていたりするので、これを探しながらプレイしてみるのもオススメ。多数発見すると何かあるのかもしれない。

一部ボスとの戦闘では、特定条件を満たすとQTEが発生してダイナミックなアクションが展開される。ただQTEの数は控えめで、アクションのテンポを崩さないよう配慮されている
ステージ中に隠されている「パングロス像」。全Act中の各所に、かなりの数が隠されているようだ



■ シューティングが苦手な人でもプレイできる「カジュアルオート」、上級者が挑む「チャレンジモード」も搭載!

 シューティング初心者お断りな雰囲気が出ているかもしれないが、実際のところ本作は歯ごたえ満点で平たく言うと難しい。最近ではめっきり少なくなった手触りをしている。だがそれだけに、上達していく面白さがしっかりとあり、自然と向上心が沸くような上手いチューニングが施されているので、アクションが苦手な方にこそ挑んでもらいたいところがある。この「VANQUISH」をきっかけに“シューターをやりこむ面白さ”に目覚める方もいるはずだ。

 シューターアクションに不慣れな方には、「カジュアルオート」という自動で照準合わせをしてくれるモードもある。カジュアルオートでは武器を構えると視界内の敵に照準を合わせてくれて、敵の動きにあわせて追尾もしてくれる。まさしく撃つだけと手軽。

 アクションやシューターに慣れている方でも、このカジュアルオートのテンポ良く敵を倒せる面白さは体験してみてもらいたい。次々に照準が合う様はテンポが良く、「シュンッ(照準が動く様)」、「ズババババッ(撃つ)」、「シュンッズババババッ」、「シュンッズバババッ」、とリズミカルに敵を倒せる。普通にプレイするのとはまた違った手触りの面白さがある。

 ただそれでも、本作は少し手厳しい印象もある。序盤以降では攻略のガイドやポイントを知らせるものが少なめで、アクションが得意な人にとっては、むしろ発見の喜びがあって嬉しいのだが、例えばカジュアルオートの難易度だけはプレイの上達を助けるサポートを増やすなどの工夫がされていたら、より初心者をスムーズに導けたかもしれない。

 ゲーム本編とは別に、もうひとつタイムアタック的な遊び方をする「チャレンジモード」がある。チャレンジモードはまさしく上級者が“チャレンジ”するスタンスで、その歯ごたえは本編をさらに凌ぐ。タイムアタックはおろか、クリアするだけでも手一杯な歯ごたえだ。チャレンジモードでは敵の出現パターンに対して、武器をどう活用するかがよりポイントになってくる。タイムアタックするなら、スローになる分、倒すまでの時間も延びてしまうので「ARモード」を極力減らす必要がでてくる。瀕死状態の「ARモード」自動発動もある意味ペナルティになってしまうので極力避けねばらならないといった、本編とは違った考え方が必須になってくる。

 ゲーム本編の高難易度もそうだが、チャレンジモードもやり込みがいがある作りだ。腕に自信がある人はもちろんだが、そうでない人でも、いかにして敵を倒すのがスムーズなのか、考え方を鍛えて上達するための道筋としても優れている。本編プレイ後には、ぜひタイムアタックのランキングに果敢に挑んでもらいたい。


「チャレンジモード」より。チャレンジモードは本編中の一部分をタイムアタック用にアレンジしてあって、Actの数だけバリエーションがある。本編以上に手強く、まさにチャレンジという難易度だ。スピーディーに敵を倒していける動きを突き詰めていこう



■ スピード感と圧倒的なエフェクトが生み出すハイテンション! 手触りがよく、本気で挑めるシューティング・アクション

中盤から終盤にかけてはより手強くなっていく。どう動くか、どう戦うか。本気で挑めば、上達する喜びと華麗なアクションの面白さをたっぷり味わえる

 「VANQUISH」はロックだ。繰り広げられる激しい戦闘の中をブーストで駆け抜けながら、「ARモード」のスローな静寂の中、目の前をゆっくりと過ぎさってゆく弾丸を見つめながら、敵の歩行兵器が起こす爆発を見ながら、意識はブーストとスローの緩急が効いたプレイによって集中していき、大量のエフェクトが脳をガンガン刺激する。研ぎ澄まされていくその感覚は、操作感の良いアクションゲームだけが味わわせてくれるものだ。

 特に魅力的なのは、全体的に速めなスピード感と、多量のエフェクトが巻き起こる激しさ。それらでテンションが高められるなか、どう動くか? どう戦うか?を考えているかいないかぐらいのスピードで対応していく。瞬間的な判断と反応の連続。ブーストで駆け抜ける爽快感と「ARモード」で研ぎ澄まされる感覚が交差する。シューター要素が加わっているが、攻略要素が豊富なアクションゲームのデザインをしており、独特な面白さを作り出している。

 ゲーム全編を振り返ってみると、プレイ時間はノーマル難易度でクリアまで約10時間ほどだった。プレイ時間にはムービーを見ている時間も含めているが、ムービーはそれほど過剰ではない。ただ、冒頭シーンのムービーだけはかなり長めで、「ちょっと長すぎるのでは?」と感じたところはあった。それ以降のムービーはテンポを崩さないようなほどよい長さだ。

 プレイ時間からするとボリュームはそこそこだが、ひとつひとつの戦闘の濃度は高く、もっと長時間プレイしたような印象すら受ける。一気に遊びこむのももちろんいいが、ちょこちょこと遊んで、短時間にハイテンションで密度の濃いアクションを楽しむという楽しみ方も良さそうだ。

 ただ、どうしても戦闘オンリーの1点突破なところがあるので、もう少しバラエティ感が欲しかったというのは正直なところだ。武器がアップグレードでもっと大胆に成長するとか、チャレンジモードのような別の遊び方ができるバリエーションが豊富にあったりしたら、よりとっつきが良かったかもしれない。

 そうした面はあるものの、新感覚なシューティング・アクションの醍醐味を味えるという点において、相当にクオリティが高いゲームなのは間違いない。これだけ手触りが良く、スピード感もあって、本気の歯ごたえがあるゲームというのは、昨今だと珍しいほど。本作最高の難易度である「GODHARD」はアクションゲームに自信のある方の本気を打ち砕くほどの激しさだ。チャレンジモードのタイムアタックも、相当にやりこめる深さがある。ぜひ、上達して華麗に決める爽快感を味わってもらいたい。

(C) SEGA

(2010年10月22日)

[Reported by山村智美 ]