「World of Warships」レビュー

World of Warships

当代随一の海戦ゲームを徹底分析
オンラインゲームとしてあるべき進化の方向は?

ジャンル:
ゲーム
発売元:
Wargaming.net
開発元:
Wargaming.net
プラットフォーム:
Windows PC
価格:
無料(アイテム課金)
発売日:
9月17日

鋼鉄がうなる、大迫力の海戦ゲーム

 Wargaming.netが9月17日に正式サービスをスタートしたオンライン海戦ゲーム「World of Warships」。本作はオンライン戦車バトルゲームの決定版となった「World of Tanks」の遺伝子を引き継ぐ、オンラインプレイ専用の海戦ゲーム。主役となるのは1930年台〜40年台初頭までに就役した、日米両軍の軍艦だ。

 各種艦艇のビジュアル的な迫力や緻密さは、さすがWargaming.net、お見事というほかない完成度だ。それでいて、ゲームとしての適切な抽象化が施され、1ゲーム10〜20分で迫力の艦隊戦を楽しめるというのが本作のいいところだ。

 本作の基本的な手応えや魅力については以前、クローズドβテストレポート(関連記事)やWindows 10ゲームマラソン企画としてお届けしているので、今回は、正式サービスイン後の雰囲気を中心に手応えをお伝えしていきたい。

4つの艦種にプレイの幅。展開次第で多彩な顔を見せるゲーム

ロマン溢れる大鑑巨砲
圧倒的スピードで魚雷を叩き込む駆逐艦
万能選手な巡洋艦
航空機でマップ全体を射程に収める空母

 本作の基本コンセプトはシンプルだ。高い速力と魚雷による打撃力を誇る「駆逐艦」、機動性と攻撃力のバランスに優れる「巡洋艦」、鈍重な代わりに強力な大砲を搭載する「戦艦」、アウトレンジで戦略的に攻撃できる「空母」、この4つの艦種が相互に弱点を補いながら連動して戦う、艦隊戦の醍醐味だ。

 基本のランダムマッチでは、1チーム各12隻の艦隊同士が戦い、相手チームの撃滅もしくは規定の陣地の占領・維持で勝負を決める。その中で各プレーヤーがやることは、自艦の特徴を活かしつつ、できるだけ多くの敵を叩いたり、陣地の占領を通じてチームをアシストしていくこと。

 海戦というとえらく時間がかかりそうなイメージがあるかもしれないが、本作では現実の海戦にくらべて戦場を狭めにし、大砲の射程距離も現実の1/2〜1/3程度にスケールすることで、おおむね10〜20分で勝負がつく、クイックなゲーム性を実現している。

 戦艦の火力を活かして戦うにしても、駆逐艦で奇襲に徹するも、それぞれの遊び方にそれぞれの勝負どころやコツ、面白さがある。毎日プレイしてもひと月やそこらではマスターしきれないほどの“何か”を、たっぷりと内に秘めたゲームだ。プレイのテンポは異なるものの、「World of Tanks」ゆずりの基本路線を同様に踏襲したゲームといえる。

 ちなみに、ついに正式サービスイン! ということで何かが大きく変わったわけでもなく、7月から続いたオープンベータテストからの仕様上の変更点はほぼない(いくつかの艦艇や、アカウントレベル9以降で参加できる、7対7の“ランク戦”が追加されたのみ)。だが、ここ数カ月で大きく変わった面もある。大勢のプレーヤーが本作のプレイに慣れてきたことによる、いろいろな面でのプレイフィールの変化だ。

とにかく本作で感動的なのは映像の力、そしてオーディオの迫力。重厚感たっぷりの艦隊戦を雰囲気たっぷりに楽しめる、最大の魅力はその1点に尽きる

オンラインゲームとしての楽しさに“ムラ”を感じられる部分も

隊伍を組んで、さあ作戦開始だ
先頭に立つと集中砲火を浴びてしまう
特にやられると困るのがこれ、魚雷の集中攻撃

 本作は「World of Tanks」の平均的なプレイ時間(5〜7分)に比べ、1ラウンドあたりのプレイ時間が長い(10〜20分)。それだけに1戦あたりの体験密度を、艦種を問わずいかに高めていくかという部分がWargaming.netによるゲームデザインの見せ所だが、いまのところは理想どおりにはいっていないところも散見されるのが実情だ。

 よくあるのが、艦隊運動の体をなさないプレイになりがちなところ。先頭を行くと真っ先に発見され、集中砲撃を受けて何もできないまま撃沈されてしまうことがあるため、皆がそれを恐れてなかなか敵に向かわなかったり、マップ端を大回りして時間を稼いだりするのだ。こうして各自がバラバラに動き、連動のレの字も見えてこないうちに五月雨式に交戦が始まり、なんとなくどちらかに趨勢が傾いて逆転不能なままラウンドが終わる、というパターンがかなり多い。

 この傾向は、オープンβテスト以来、多くのプレーヤーが本作のプレイに慣れた結果、顕著になっている面が大きいと感じられた。特に船のレベル(Tier)が上がると船の修理費用がバカ高くなるため、プレーヤーはますます自己中心的になる。味方を矢面に立たせて漁夫の利を得るような戦い方をしたほうが「単艦としての成績」は高くなりやすいから、という理由もあるだろう。

うまく連動し、火力を集中できれば強いし、すごく楽しい

互いの火力を活かすため、集団で動くことが基本だ
隊伍を組んでいたつもりが誰もついてこず・・・というよくあるシーン

 理想のイメージとしては、一糸乱れぬ艦隊運動をしつつ、チームでターゲットを共有して集中砲火……みたいなことができれば非常に楽しいはず。しかし野良で戦うランダム戦でそれを実現するためには、“主砲のダメージ出力に偶然性が高すぎる”とか“魚雷が強すぎる”とか、“航空攻撃が強すぎる”とかの枝葉末節的な戦術以前に、チームプレイを促すゲームシステム上の仕組みを充実させることが何よりも必要だと思う。

 例えばミニマップ上に予定航路を曲線等で書き込んで共有、それをメイン画面上にもオーバーレイ表示できるとか、旗艦(トップTierの戦艦)が近くにいると自艦の能力も向上するとか、近くの味方(同じ敵を射程内に捉えているなど)にわかりやすくターゲットを指示するインターフェイス(使うべき弾種等も指定できればなお良し)といった連携用の仕組み等々、ゲーム的にやりようはいくらでもあると思う。

 いまのところは艦隊戦に必要な基本的なゲームシステムしか備えられていないため、ラウンドが面白くなるかどうかはまさにプレーヤー次第というところがある。気の効く味方が近くにいて、戦艦に駆逐艦がきちっと随伴してくれるとか、空母の攻撃に対して密集隊形をとり対空射撃を密にするとか、隊列の順番を入れ替えて単艦にダメージが集中しないようにするとか……そういった工夫をお互いにできることがあれば、このゲームは本当に面白く、とてつもないほどのやりがいがあるものになる。

 本作はオンラインゲームとして継続的なバージョンアップとコンテンツの拡充を続けることが期待されている。新ゲームモードや艦艇の追加も良いが、プレイ内容そのものの改善のためには、上記のようなチームプレイを強力に推進するゲームシステムの強化にも力を注いで欲しい。

固まってはみたもののどっちへいこう?で迷うことも多いので、システム面で何らかの仕組みが欲しいところだ

でもやっぱり気になる「旭日旗排除問題」。Wargaming.netは誠意ある対応を

艦尾にはためくのは……?

αテスト前のゲーム画像。史実通り、旭日旗がはためいていた
αテストのある段階から、旭日旗が排除され日章旗に差し替えられた

 本作のように骨太かつ本格的な海戦ゲームが出てきたというのは、我々ゲーマーにとって大変うれしいところだが、心象的に強く引っかかっている部分もある。本作における「旭日旗排除問題」だ。

 この問題は、本作のクローズドαテスト中に顕在化した。当初、本作に登場する日本帝国海軍の艦艇には、史実どおりの日本の軍艦旗である「旗竿側にやや重心をずらした十六条旭日旗」が表示されていた。

 だが、本作のクローズドαテスト中がはじまるなり、一部ユーザーが旭日旗の掲示に反発。フォーラム上で各国ユーザーを巻き込んでの論争となった結果、Wargaming.netの判断で旭日旗は排除され、日章旗に置き換えられた。

 この対応を受けて今度は日本のユーザーが反発。旭日旗の排除は不当であるとして、フォーラムでの議論、署名活動など多面的に抗議運動を展開。しかしその思いは届かず、オープンβテスト開始直後の7月10日、Wargaming.netが「旭日旗及びその他歴史的な表記物に関するガイドライン」という声明を発表(関連記事)するに至り、ワールドワイドでゲームから旭日旗を排除することを確定させている。

 同社によれば「旭日旗をめぐる歴史的、政治的な軋轢ばかりが先に立ち、結果として弊社のゲームの魅力を伝えにくくなるのは弊社の望むところではありません」とのことである。

 こういった経緯から、日本のプレーヤーは本作を素直に楽しめないでおり、プレイはしても有料アイテムは一切買わないという“不買運動”をしている人も多いようだ。旭日旗を排除したWargaming.net、それに反発する日本のプレーヤー。さて、どちらに理があるのだろうか?

圧力に負けて旭日旗を排除したことにより、ことは政治問題の様相に

 筆者は、この問題について、Wargamint.netのヘッドクォーターに直接聞いたこともある(関連記事)。そこでCEOのVictor Kislyi氏は、欧州各国で禁止されているナチス・ドイツの党旗や、中国でのあらゆる国旗についての規制を例に挙げつつ、旭日旗排除の理由を「我々のゲームを政治的な議論の場にしたくないから」と発言していた。

 残念ながら、彼らはこの問題の本質を理解していないか、目をそらしていると思う。いずれにしても、軍事上のテーマを扱うゲームパブリッシャーとして誠実な態度を取っているとはいえず、その不誠実な対応のゆえに、問題を複雑なものにしてしまった。

 大前提となる事実として、旭日旗を禁止する、あるいは排除を正当化する法律等は、世界中のいかなる国や地域にもなく、また、いかなる国の政府も旭日旗を問題視していない。その理由は明確だ。旭日旗は現役で、国際的に認められた海上自衛隊の軍艦旗なのである(ついでに、漁船の大漁旗の意匠としても現役)。国際儀礼としても、各国の軍艦旗を尊重するのは当然のならわしだ。

 法的な裏付けがない以上、Wargaming.netが旭日旗を排除した理由は「一部のユーザーがうるさいから」にすぎないではないか。ゲームを議論の場にしたくないというのであれば、ゲーム中の使用は続けつつ、フォーラムでの議論を排除すればよかったと思う。

 しかし実際に旗の方を排除してしまった以上、Wargaming.netはゲームを通じて「旭日旗は排除すべき悪いもの」というメッセージを世界に広めているに等しい状態になった。つまり、旗を排除することで、この問題は政治的な性質を帯びてしまった。同様のミリタリー系オンラインゲームを展開している企業でも、この手の抗議を黙殺したGaijin Entertainmentとは両極端である。

 筆者としても、純粋にゲームとして楽しみたいと考えている。そのためにも引き続き、Wargaming.netには本件について誠実な対応を求めていきたい。

米合衆国海軍
帝政ロシア海軍
ソビエト連邦海軍
大日本帝国海軍

(佐藤カフジ)