インタビュー

「WoWS」旭日旗問題の真意を聞いた。Wargaming.net HQ単独インタビュー

日本市場の重要性と特殊性。「ガルパン」「アルペジオ」コラボは世界で展開予定!?

9 月17日〜20日開催(17、18日ビジネスデー)



会場:幕張メッセ



入場料:1,200円(税込)

巨大ブース出展を果たしたWargaming.net
所狭しと並ぶ大量の試遊台で「WoT」、「WoWS」の新実装車両・艦船を披露

 東京ゲームショウ2015会場に、海外オンラインゲーム企業として最大級の巨大ブースを出展したWargaming.net。ご存知「World of Tanks」や「World of Warships」といった、人気のオンラインバトルゲームをグローバルで展開しているゲームメーカーだ。

 各地特性にあわせたコミュニティ向けの施策を積極的に展開しているWargaming.netにとっても、日本は非常に特殊な市場。「World of Tanks」の展開にあたっては「ガールズアンドパンツァー」との積極的なコラボレーション、「World of Warships」の展開にあたっては「蒼き鋼のアルペジオ」とのコラボレーションを通じ、硬軟織り交ぜた形で日本のユーザーに広くアプローチしている。

 TGS 2015のステージでは、Wargaming.netのCEO、Victor Kislyi氏が登壇し、SCEJAプレスカンファレンスで発表された「World of Tanks」PS4版や、PC版「World of Warships」の正式サービスインを改めてアナウンス。また、「ガールズアンドパンツァー」および「蒼き鋼のアルペジオ」のコラボレーションを更に継続、深化させていきたいとの意気込みも語られていた。

 ステージイベントにVictor Kislyi氏が登壇したとおり、今回のブース出展にあたってはWargaming.netのヘッドクォーターがゴッソリ来日している。今回、CEOのVictor Kislyi氏を筆頭に、グローバルPR&マーケティングマネージャーのMax Chuvalov氏、そして北米担当のコミュニケーションディレクターChris Cook氏に対してインタビューを行なうことができたので、その内容をお届けしよう。

 インタビューではWargaming.net本体からみた日本展開の評価や、各種コラボの将来的な展開、そして「World of Warships」で炎上中の旭日旗排除問題についても突っ込んだ質問を行なった。

「WoT」PS4版の発表にあたり、SCEのシニアバイスプレジデント河内士郎氏とがっちり握手をかわすWargaming.net CEOのVictor Kislyi氏

新規実装された日本重戦車の実物大モック。展示物にも気合が入っている

日本をゲーム的にもコミュニティ的にも重視。各種国内コラボは世界展開も視野に

Wargaming.net CEO Victor Kislyi氏
Wargaming.net PR&Marketing Product Manager、Max Chuvalov氏
Wargaming America Director of Communications、Chris Cook氏

──「WoT」の日本国内ローンチから2年が経過しました。ここまでの経過を踏まえて、Wargaming本体としては日本の市場をどのように見ていますか?

Wargaming.net CEO Victor Kislyi氏: 私個人としても、実際のデータに照らしても、Wargaming Japanおよび日本のコミュニティは、私たちにとってとても重要で、大切なものになっています。ですので、PRやカスタマーサポート等のサービスクオリティについても、ロシアや欧州、北米で提供しているレベルのものを日本でも提供できるように各種施策を進めています。

 特に「World of Tanks」にとって日本は戦車ツリーを持つ数少ない国のひとつですし、「World of Warship」に至っては、日本の海軍はゲームにとって要となる存在です。ゲーム自体が2つの国、つまりアメリカと日本をフィーチャーしてローンチされましたからね。そしてもちろん、日本の戦車や艦船は世界中のプレーヤーに楽しんでいただいています。例えば私は、戦車はドイツが好きですが、艦船については日本ツリーでゲームをプレイしています。

 サービスという点では、弊社が提供しているすべてのゲームは日本語にもローカライズされていますし、また、日本はアジアの一般的な国々と少々異なる点もありますので、それにあわせて少し違った施策も用意しなければならない、という認識も持っています。

──日本向けの固有の施策というのは、「WoT」、「WoWS」どちらのコンテンツでも実施されていますね。

Victor Kislyi氏: そうですね。数年前に初めて日本に来た際に、日本の皆さんがアニメ好きだということにすぐ気が付きました。御存知の通り私達のゲームはリアリスティックでハードコアな雰囲気を重視していますが、今現在は、そこに日本の皆さんの好むものをうまい具合に混ぜることができていると思います。具体的には、「ガールズアンドパンツァー」や「蒼き鋼のアルペジオ」からのスペシャルな装飾、カモフラージュ、ボイスパックなど、各種コラボMODをご提供するとができました。

 それに加えてコラボレーションコンテンツのマウスパッドやTシャツなど様々なグッズも作りました。これは日本の方々だけでなく、世界各国でもこういったものを楽しんでいただいていますので、今後もこういったコラボレーションを積極的に進めていきたいと思っていますし、「ガールズアンドパンツァー」については劇場版の製作協力もしています。

話題のコラボグッズ。海外ユーザーにも好評だとか
「WoT」で始まった「ガールズアンドパンツァー」コラボはブースでも大目立ち
「WoWS」のほうは「蒼き鋼のアルペジオ」一色に

──こういった日本コンテンツを交えたタイアップを、海外にも広げていく可能性はありますか?

Victor Kislyi氏: アニメはここ数十年、世界的な現象になっています。もちろんロシアやアメリカにもアニメのファンはいますので、私達としてはその展開先を限定したいとは考えていません。そこはあくまでユーザーの皆さんのリクエストにかかっています。ユーザーさんの皆さんが欲しがるなら、提供したいと考えています。

Wargaming.net PR&Marketing Product Manager、Max Chuvalov氏: それについて少し具体的に説明しますと、ちょうど最近、「ガールズアンドパンツァー」に関するバンダイビジュアルとのコラボレーションを拡大し、アジア地域だけでなく世界中に展開できるようにしました。というのも、日本のコラボコンテンツはいつになったらウチの国に提供されるんだと、いろいろな国のユーザーからリクエストがあったからです。なので、まず「ガールズアンドパンツァー」のコラボコンテンツはまもなく世界中に展開するようになります。

Wargaming America Director of Communications、Chris Cook氏: また先日SCEJAのプレスカンファレンスでプレイステーション4版の「World of Tanks」が発表されましたが、そちらでも「ガールズアンドパンツァー」関連のコンテンツが様々な形で展開されていきます。もちろんメインターゲットは日本のユーザーさんですが、世界中のユーザーさんも同様にこれらのコンテンツを楽しむことができますよ。

──PS4は日本でも主流のコンソールマシンですし、これを機に日本の「WoT」ファンを更に広げていきたいという意気込みを感じます。

Victor Kislyi氏: 完全にイエスです(笑)。またPS4は世界的にも最も普及台数の多い次世代コンソールですので、これは非常に大きな機会であると考えています。

──ちなみにPS4版は、PC版とのクロス対戦はできるんでしょうか?

Chris Cook氏: いえ、コンソール版はそれぞれ異なるネットワークになっています。例えばXbox 360とXbox OneはXbox Live、PS4についてはPlaystation Networkで、サーバーの関係上、互いに接続するのは非常に難しいのです。

WGLゴールドリーグ選手支援プログラム進行中!「WoWS」のe-Sports展開は少し先の話に?

作品のe-Sports的な面についてはMax Chuvalov氏に多くを語っていただいた

──ちなみに「WoT」のe-Sportsとしての側面について。「Wargaming.League(WGL) ゴールドリーグ所属チームに給与を支払う」というプログラムが4月に発表されましたが、これはもう既に実施されているのでしょうか?

Max Chuvalov氏」 それについては既に様々なことが動いています。例えば今年頭に、WGL公式戦の試合ルール変更をしましたが、ああいうものがその一環になっています。つまり、プロのプレイヤーの方々を社内に招待してルールの検証やアイディア出しに協力していただきいたり、それ以外にも、ゴールドリーグ所属のプレーヤーに関しては、給与を支払う代わりに、ソーシャルネットワーク上で動画を投稿していただいたり、ゲームの上達方法を共有してもらうといったご協力を頂いています。

──「WoT」はe-Sportsとしてかなり成熟してきたように見えますが、大会の賞金については後発の「Dota2」などに大きく差をつけられていますね。その点、Valveが実施しているような方式の導入等、可能性はあるのでしょうか?

Max Chuvalov氏: やらないということはありませんが、「WoT」はe-Sportsとしてまだ始まったばかりで、まだ1歩づつ改善を加えているという段階ですから、まだまだ模索中です。確かにe-Sportsは進化が速いため、他の企業が試みていることについては私達としても注視し、分析を加えています。それを通じて、私達にできること、私達に合っていることが見つかれば、それは取り入れていきたいと考えています。

Victor Kislyi氏: e-Sports面ではひとつお知らせしたいことがあります。11月7日に「Pacific Rumble」という国際イベントを東京で開催予定です。世界から5つのチームが参加するミニ・グランドファイナルという感じのイベントで、北米から2チーム、アジア・パシフィックから2チーム、そして日本から1チームのワイルドカード、の5チームが参戦します。日本では初めての国際大会になりますよ。

──ついに正式サービスが始まった「World of Warships」についても、e-Sports的な展開は考えていますか?

Victor Kislyi氏: もちろんです。私達としても、ユーザーさんの皆さんもそれを望んでいると思います。ですが全てのプレーヤーがe-Sportsを望むわけではありませんから、最大の層である数百万人のプレーヤーがきちんと楽しめるものにゲームをブラッシュアップしていくことが先決です。そうしてゲームのコミュニティが成長したのちに、e-Sportsとしての展開を真剣に考えることになると思います。

 最初のステップとしては、7対7で対戦するランクバトルというシステムを導入しています。戦闘結果によってプレーヤーのランクが変動する仕組みで、e-Sports的に楽しむことができます。まずはプレーヤーのみなさんがこのようなモードを好んでくれるかどうかを見てみたいと思います。

「WoWS」は成熟までPC版に集中。そこで気になる旭日旗排除問題への認識は……

ステージイベントにて、「ガールズアンドパンツァー」、「蒼き鋼のアルペジオ」の双方に出演の声優・渕上舞さんと仲良く並ぶKyslyi氏

──「World of Warships」については、比率的に日本のユーザーの割合が大きいのではないかと想像しますが、そのあたり実際はどうでしょうか?

Victor Kislyi氏: 今のところ正確な数字はわかりませんが、日本のプレーヤーが非常に多いことは間違いありません。日本にはあまりゲーミングPCが普及していないという難題もありますが、そのかわり「WoT」にしても「WoWS」にしても、日本のプレーヤーの皆さんは非常にロイヤリティが高く、ゲームの質を高めれば高めるほど長くプレイしてくださる傾向が強いと見ています。

──日本人の海軍好きな特性を考えると、「WoWS」のPS4版も早く出て欲しいなと思いますが、そのあたりはどうでしょう?

Victor Kislyi氏: それについては、私達のゲーム作りについての姿勢を知ってもらいたいと思います。「WoT」のPC、Xbox 360、Xbox One、そしてPS4版、それに加えて「WoWS」もですが、それぞれ単体で非常に大きなプロジェクトなんです。それぞれ完璧に仕上げるためには長い時間、多くの人的リソース、そしてお金がかかります。1つ出すたびに34の言語に翻訳して、各国にコミュニティマネージャー、カスタマーサポート、PR、マーケティングスタッフを準備しなければなりませんからね。ですのでそうそうペースを上げることはできないのです。現在は「WoT」のXbox One、PS4版、「WoWS」のPC版に注力していますから、すぐに「WoWS」のPS4版についてお話することは難しいですね。

Chris Cook氏: もうひとつ覚えておいて欲しいのは、それぞれのプラットフォームに移植したものは、ただのコピーではないということです。それぞれのプラットフォームに対してベストな状態になるよう、ほとんど1から作っています。移植というよりはリメイクという形ですね。ですので新しいプラットフォームへの展開は簡単ではない、ということを知ってもらえればと思います。

──「World of Warships」について、日本のユーザーにとって心のトゲになっている問題があります。つまりゲームの中から旭日旗が排除された件です。旭日旗は今現在も海上自衛隊で使われている政治的に中立な海軍旗ですし、ゲームのリアリティという点でも、日本のユーザーの多くがその実装を希望しています。これについて今後、より前向きな解決を図る意思はありますか?

Victor Kislyi氏: これはとても重要なことなのですが、私たちは歴史シミュレーションを提供しているわけではなく、あくまでもエンターテイメントを提供しています。ごく普通の人達のためのe-Sports的なゲームです。「Counter-Strike」などと同様に、「WoT」も「WoWS」も非常に国際的なものです。そして日本に限らず、中国、韓国、台湾といったアジアの国や、欧州の各国にしても、第二次世界大戦の出来事にまつわる繊細な問題、それぞれに異なる事情を持っています。

 そこで私たちはWargamingを、政治的に繊細な議論を行なう場所にはしたくないと考えました。人々はゲームをプレイし、競うするために来るのであって、議論のために来るのではありません。そこでWargmingとしては、不必要な政治的・センシティブな議論を明確に避けるという判断をしています。ですので、あくまでもゲームとして楽しむように考えていただきたいと思っています。

──日本のユーザーとして伝えておきたいのは、入れないことによって、問題が拡大しているふしがあるということです。ナチス党旗とは違って、旭日旗は伝統的な海軍の旗で、現役で使われている旗でもあり、歴史的正確性以前の話でもあります。もともと問題でなかったものを、過剰に反応することで、かえって問題化してしまっている、というふうに見えるのです。

Victor Kislyi氏: これは知っておいて欲しいのですが、私達の国、ベラルーシでは、大戦によって人口の30%が失われました。戦前は900万人だったのが、戦後には600万人まで減ってしまったのです。これは割合として世界中のどこの国よりも甚大な被害です。ですので私たちは、世界のどの国であっても、大戦での出来事についてどれだけセンシティブな思いを持っているか、よくわかっているつもりです。ですので、たとえ歴史的正確性を欠くことになったとしても、旭日旗に限らず、繊細な議論を引き起こす意匠については排除することを決めたのです。例えばドイツは特定の旗について非常に厳格なルールがありますし、ロシアにもあります。

 また一例としては、中国では、ゲーム中にいかなる現実の旗も使ってはならないという法律上の規制があります。「WoT」にはソビエト戦車、中国戦車、ドイツ戦車、日本戦車などいくつもの国の戦車がありますが、中国版では中国戦車ですら実際の中国旗を見ることはできません。それは法に基づくものです。私たちは中国の法律に逆らおうとは思いません。

──平行線になりそうですので、次の話題にしたいと思います。いま、VRの世界が非常に盛り上がりつつありますが、Wargamingとしても、VR向けの展開に興味、関心はありますか?

Victor Kislyi氏: ふふふ、実は、私たちは既に「WoT」のPlayStation 5版を開発してるんですよ(笑)。

──そ、そんな(笑)。

Victor Kislyi氏: ハハハ(笑)。もちろん関心はありますし、技術的な準備は整っていますが、F2Pゲームの企業としては大きなインストールベースを非常に重視していますので、すぐにとは言えません。私達としては数百万、数千万のプレーヤーを獲得することがまず第一ですので、どのプラットフォームであっても、展開を決定するためには成熟した市場が必要だと考えているのです。

──普及を待ってからの参入を考えているということですね。

Victor Kislyi氏: はい、技術的には可能ですし、たくさんのコンタクトも受けています。VRは素晴らしい技術ですし、私自身もOculus Riftのデモなどを体験してきています。2千万台、3千万台と普及してきたら、是非やりましょう。その点で良いニュースは、あのFacebookがOculus Riftを熱心に支援し、世界征服を狙っていることです(笑)。

── その将来がやってくることを期待しています。ありがとうございました。

(佐藤カフジ)