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【特別企画】「World of Warships」はどんなPCでどれくらい動くのか?
ユニットコム「LEVEL∞」シリーズでテストしてみた!
(2015/12/17 12:00)
現在、PCショップで販売されているゲーミングPCの選択肢は、数万円で手に入るものから数十万円の大きな買い物になるモデルまで幅広い。PCゲームのプレイをメイン用途としてゲーミングPCを選ぶとき、遊びたいゲームの推奨スペックと店頭に並ぶ機種のスペックを照らし合わせながら予算と相談するわけだが、これから発売されるゲームのことなども考え始めると、いまお目当てのゲームに合わせて買ってしまっていいのか、かなり悩ましいことになる。
当然、ハイスペックなPCを選べば快適にプレイできることはわかっているのだが、大抵の場合は予算がそれを許さない。ただ、せっかくゲーミングPCを購入するのだから、お目当てのゲームはできるだけ快適にプレイしたいもの。では現在、「ゲーミングPC」と銘打って販売されている一般的なPCは、実際にどのくらい快適にゲームを動かせるものなのだろうか? ゲーミングPCブランドを展開するパソコン工房に協力いただき、「LEVEL∞」シリーズから、いくつかの機種をサンプルとして、実際に動かしてみた。
ちなみに、今回の検証は秋葉原にある同社のアンテナショップ「LEVEL∞Hub」で実施させて頂いた。理由は単純明快。様々なクラスのゲーミングPCが展示されており、それぞれを実際に触って使用感を確かめられるからだ。今回は特別に同店舗の2階で、お借りした機種を実際に動作させることで、動作検証を行なってみた。
快適に遊べる基準は?
今回はユニットコムがパソコン工房で販売している4機種のゲーミングPCを用いてパフォーマンスを比較してみた。使用タイトルは今人気の高い「World of Warships」(以下WoWs)。4機種の内訳は、デスクトップPCが3機種と、ノートPCが1機種だ。
評価の基準は“体感でどのくらい快適に遊べるか”。具体的な指標として、下記の方針を設定した。
【検証基準】
・ブラウザ(IE)を開いた状態でプレイする
・ラウンド開始時および戦闘時に60fps前後で安定する設定に抑える
・できるだけ画質(テクスチャ品質と海面描画品質)は落とさない
・できるだけ解像度を落とさない(最低でもフルHD)
・垂直同期は無効にする
もちろん、スペックによって快適に遊べる設定は変わってくるので、動作を軽くする必要のあるときは、ゲームの設定を変更して調整を行なっている。垂直同期はティアリング防止の観点からゲームプレイの快適さに寄与するが、フレームレートが固定となるため、60fpsで遊ぶ設定に調整するという方針から、無効とした。
「WoWs」に限らず、近年ではオンラインゲームをプレイする際に、有志のユーザーが作成したWikiを参照にしたり、動画配信サイトを開きながらプレイすることがある。今回の検証ではこうした環境を想定し、ブラウザ(IE)でWikiの画面を開いた状態でプレイした。
コスパの良いミドルレンジのPCを採用
各機種の主要なスペックは下記の通り。価格と性能のバランスが良い、ミドルレンジのPCを選んでいる。また、ゲーム動作の快適さに関して、「WoWs」の場合はGPUの性能が重要になってくる傾向があるので、GPUには特に注目したい。
なお参考までに、ノートPCに採用されている「GeForce GTX 960M」は、デスクトップ向けGPUでいえば「GeForce GTX 750」相当の性能であることを付記しておく。
【検証機】
機種名 | Lev-S15M-i5-TM | Lev-M015-i5-RM | Lev-C000-P-LM-Limited | Lev-15FR078-i7-RSM |
---|---|---|---|---|
区分 | デスクトップ | デスクトップ | デスクトップ | ノート |
CPU | Core i5-6500(3.2-3.6GHz) | Core i5-6500(3.2-3.6GHz) | Pentium G3250(3.2GHz) | Core i7-6700HQ(2.6GHz) |
GPU | GeForce GTX 970 | GeForce GTX 960 | GeForce GTX 950 | GeForce GTX 960M |
メモリ | DDR3 1600 8GB(4GB×2) | DDR3 1600 8GB(4GB×2) | DDR3 1600 4GB | DDR3L 1600 8GB |
チップセット | H170 Express | H170 Express | H81 Express | H170 |
ストレージ | 1TB 3.5インチHDD | 1TB 3.5インチHDD | 1TB 3.5インチHDD | 1TB 2.5インチHDD |
OS | Windows 8.1 64bit | Windows 8.1 64bit | Windows 8.1 64bit | Windows 8.1 64bit |
価格(税込) | 143,619円 | 107,979円 | 64,779円 | 140,379円 |
(※注釈:価格は12月16日現在のもので、最新の価格はパソコン工房のサイトで確認して頂きたい。
※上記機種はすべてBTOに対応しており、表記しているのはベースモデルのスペックおよび価格となる。
なお、表の中に表記はないが、デスクトップ機については左2機種がMicroATX、右1機種がMiniITXのミニタワーケースを採用しており、いずれもゲーミングPCとしての性能を維持しながら、省スペース性にも配慮した小型ゲーミングPCである。おおまかなサイズ感については写真を参照されたい。
フルHD解像度では余裕で駆動
さて、「WoWs」をフルHD解像度で遊ぶ際の推奨動作スペックは、CPUがCore i3(2.4GHz以上)、GPUがGeForce 460/550 Ti以上、メモリが4GBとなっている。今回テストに使用した機種はいずれも推奨スペックを上回っており、結論からいえば、普通に遊ぶ分にはどの機種も特に問題は見られず、最高画質でも60fpsで安定して遊べた。
「WoWs」でPCに最も負荷のかかるポイントは、艦船が爆発炎上して沈むシーンだろう。艦の体力がなくなった瞬間に爆発し、派手に黒煙を上げながら炎上するエフェクトによる演出があり、この前後のシーンはGPUにかなりの負荷がかかるようで、明らかにフレームレートが下がる。
GeForce GTX 970を搭載した上位機種「Lev-S15M-i5-TM」は、ビデオ設定を「最高」にしてもほぼ常時60fps以上をキープ。爆発炎上するシーンでも、ほとんどフレームレートは落ちなかった。
中位機種「Lev-M015-i5-RM」は、コストパフォーマンスに定評のあるGeForce GTX 960を装備。ゲーム中のパフォーマンスは概ねGeForce GTX 970と同様だが、艦船撃沈時は一時的にフレームレートが50台前半まで低下した。
GTXシリーズの中では下位に属するGeForce GTX 950を搭載した「Lev-C000-P-LM-Limited」でも、通常時はゲームをプレイする上で体感的に上位モデルとの差は感じられなかった。ただ、やはり爆発炎上の高負荷時にはさらにフレームレートが下がり、40台前半まで落ち込むことはあった。
上記のように、一時的に強い負荷がかかった時だけは有意の差は見られたが、いずれも普通にプレイしていたら無視できるレベルであり、実際にはほとんど差がないと考えていいだろう。
ノートPCでは思ったように駆動できず
デスクトップではかなり快適に遊べたのだが、ノートPCではなぜか思ったようにパフォーマンスが出ず、安定して60fpsが出る状態で快適に遊ぶには、ビデオ設定のプリセットでいうと「低」程度にまで設定を下げる必要があった。なお設定ごとの数値でいえば、「最高」で35~40fps、「高」で42~46fps、「中」で50~52fpsという数値が出ており、普通に遊ぶ分には支障はない。
推奨スペックは問題なく満たしているはずなのに、ノートPCだけやや低い結果が出たというのは気になるが、原因の特定は難しい。スペック的には最高設定で60fpsくらいは出るはずなので、ドライバをクリーンインストールしたり、NVIDIAコントロールパネル上のプログラム設定なども確認してみたのだが、最高設定におけるパフォーマンスの改善にはいたらなかった。
今回、デスクトップの下位機種にあたる「Lev-C000-P-LM-Limited」が採用しているGeForce GTX 950と、GeForce GTX 960Mのスペックをざっと比較して最も数値が異なるのはメモリクロックだが(GeForce GTX 950が6.6GHz、GeForce GTX 960Mが2.5GHz)、GPUが違うので単純比較はできないため、これを原因とするのは少々乱暴であり妥当ではない。
また、前述の通り、GeForce GTX 960MはGeForce GTX 750相当のスペックを有する。各メディアが公開しているベンチマーク結果において、GeForce GTX 950はGeForce GTX 750よりも高い結果を出しているのだが、比較的最近のPC構成であれば軽めに動く「WoWs」において、「最高」設定と「低」設定の差が出るほど、両者の間に大きな性能差があるとは考えにくい。
「WoWs」の動作環境に関する情報を少し探ってみると、GeForce GTX 960Mを搭載したノートPCで快適に動作している事例が報告されているので、今回は「Lev-15FR078-i7-RSM」のハードウェア構成と、ゲーム側のなんらかの要素が衝突していると考えたほうがよさそうだ。
オンボードではさすがに性能不足
これらの結果から、「WoWs」はミドルレンジのスペックでも十分快適に遊べることがわかった。では、それよりも低いスペックのPCではどうだろうか? 一旦ビデオカードを抜いて、オンボード(もしくはCPU内蔵の)グラフィックスでも動かしてみた。
今回テストしたPCの中で、上位2機種にあたる「Lev-S15M-i5-TM」と「Lev-M015-i5-RM」は、内蔵ビデオ機能の性能向上を図ったSkylake世代のCPUを搭載している。これを旧世代のスペックに見立ててビデオカードなしで動かしてみたところ、インゲームのフレームレートは中設定でも25を割ってしまった。
また、「Pentium G3250」を採用した「Lev-C000-P-LM-Limited」にいたっては、低設定でも10fps出るかどうかという結果に終わった。
必要/推奨動作環境にビデオカードが指定されているだけに、さすがにビデオカードなしで動かすのは無謀だったようだ。これはいくらミドルレンジのPCで快適に遊べる「WoWs」といえども、やはり必要動作環境ぎりぎりであったり、極端に古いPCではまともに遊ぶのは厳しいということである。素直にビデオカードの導入を検討すべきだろう。
ミドルレンジでも4Kでゲームはできる?
「WoWs」だけに限らないが、近年のゲームタイトルは、4K対応のモニタさえあれば4K出力が可能である。先述の通り、フルHDではあまり大きな差が見られなかったので、今度は4Kモニタを用いて、一通り遊んでみた。
4K(3,840×2,160ドット表示)はフルHD(1,920×1,080ドット表示)と比べると表示領域が4倍になるため、その分描画の負荷がかなり増大する。もちろんゲーム画面の精細感は増すのだが、それ以上に動作の重さが際立ってくる。フレームレートにすると体感で15~25fpsくらいは落ちている印象を受けた。また、ゲーム側でも4Kの表示は想定していないらしく、通常の表示ではユーザーインターフェイス関連のグラフィックスが極端に小さく表示されてしまい、通常の設定では大きさの調整もできないなど、実プレイ上で不便に感じた。
「Lev-S15M-i5-TM」は、最高設定では平均45fps前後で推移。「高」設定まで落とすと60fps前後で安定した。
「Lev-M015-i5-RM」では、港での艦船選択画面で30fps前後、ラウンドが始まってからは36~43fps前後だった。ここから高設定をベースに、アンチエイリアス(FXAA)、エフェクト品質、影品質、ポストプロセス、反射、海面描写品質、異方性フィルタリングの設定を落とすことで、50~60fps前後に持っていくことができた。
「Lev-C000-P-LM-Limited」でもゲーム中は終始30~30台後半のフレームレート。低設定なら比較的余裕をもって60fpsを出すことができるが、テクスチャ品質や海面描写品質を上げても快適と呼べるパフォーマンスを得ることはできた。
結論としては、「4Kでも遊べないことはない」。解像度が大きくなった分ティアリングが目立つので垂直同期をONにする手も使えるが、GeForce GTX 950クラスでは15fps前後でフレームレートが固定されてしまうので、この状態でプレイするのは正直かなり辛い。GeForce GTX 960以上であれば30fpsで固定できるので、ゲームは普通に遊べるだろう。
悪いところばかり挙げてしまったが、4Kゲーミングは単に重いだけではない。4Kでゲームをするメリットは、なんといっても高精細な映像を楽しめる点だろう。4K解像度で艦船をよくよく観察すると、フルHDで見た時よりも3Dモデルの輪郭やジャギーが低減され、テクスチャもより美しく描画され、ディテールもしっかり見えるようになる。わかりやすいのは、ロープ、手すり、はしご、砲塔の輪郭など、直線で表現されている部分。特に表面がギザギザになってしまい部分的に消えてしまっているように見えるロープなどは段違いの描写であり、見ていて気持ちがいい。
描画が重くなることと引き換えに、より美しい描写でゲームを楽しめるのが4Kの魅力。一般的に4Kの描画にはVRAMの容量が多い方が有利なので、もし4K画面をフルに使ってのPCゲーミングを検討しているならば、最低でもGeForce GTX 970、可能ならGeForce GTX 980より上のクラスのGPUを搭載したビデオカードを選択したい。
下記はグラフィック設定のプリセットごとに、インゲームのフレームレートをフルHDおよび4Kでざっくりまとめた表である。「WoWs」内蔵フレームレート表示機能と、キャプチャソフト「Fraps」のFPS表示機能の数値を適宜拾ってメモした数値を記している。体感の数値につき、かなりアバウトなので、目安程度に見ていただきたい。なお可能な限り画質重視の設定でフレームレートを取るという方針上、「中」および「低」設定では試していない。
【「最高」設定時のフレームレート】
フルHD | 4K | |
---|---|---|
Lev-S15M-i5-TM | 68~71 | 42~51 |
Lev-M015-i5-RM | 68~71 | 34~40 |
Lev-C000-P-LM-Limited | 68~71 | 24~36 |
【「高」設定時のフレームレート】
フルHD | 4K | |
---|---|---|
Lev-S15M-i5-TM | 68~71 | 60~70 |
Lev-M015-i5-RM | 68~71 | 60~70 |
Lev-C000-P-LM-Limited | 68~71 | 35~50 |
ストレージとメモリを盛ると何が変わる?
ここまでビデオカードの性能差でパフォーマンスを見てきたが、ではストレージやメモリの影響はあるのだろうか?
今回使用したPCはどれもストレージがHDDなので、SSDに換装する余地がある。また、メモリ容量を増やしたり、シングルチャネル駆動をデュアルチャネルにしたらどう変わるのかも確認してみた。
ストレージをSSDに換装して試したところ、ゲームの立ち上がりと、読み込み速度が明らかに速くなった。何度か計測したところ、立ち上がるまでに大体5~8秒程度は速くなっている。具体的には、HDD使用時、ゲームを立ち上げるのに30秒弱かかっていた読み込み時間が、SSDに換装したところ20秒前後で済むようになった。
メモリについては条件を変化させても、少なくとも「WoWs」をプレイした範囲においてはゲームプレイ時のフレームレートでは、はっきりと体感できる差は得られなかった。さらにゲームとブラウザを起動した状態で、メモリの使用量をタスクマネージャーで確認すると2.2GBとなっていたため、「WoWs」をプレイするにあたっては最低でもモデル標準の8GBを搭載していれば問題はないだろう。
ただ、メモリの容量が増えることによって、同時に並行してやれることが増えるのは良いことだろう。ゲームの録画と並行した実況動画配信や、スクリーンショットを画像編集ソフトで加工してツイートしたり、ブログにアップすることなどを考えている人は、16GB以上の大きな容量のメモリへの変更や、デュアルチャンネルにアップグレードするなど、一考の余地があるのではないだろうか。
まとめ
ゲーミングPCを購入する動機は様々だが、ゲーミングPC選びのポイントは、ゲーム+αの部分で何がしたいかを整理することだろう。近年ではゲーム実況動画の録画や配信、録画の編集も動機の1つになりうるが、そのときハイスペックなPCが必要になる。スペックが高いほど快適なのは言うまでもないし、先々にプレイしたいタイトルがあれば、いまのうちにある程度余裕のあるマシンを手に入れておくのもいいだろう。
予算の範囲で構成を工夫できるのがBTOの良いところなので、たくさん悩んで、良いゲーム体験ができればと思う。