PCゲームレビュー

シムシティ

悪夢の緊急メンテラッシュを乗り越えて
新時代の街づくりゲームを改めて評価する

ジャンル:
シミュレーション
発売元:
エレクトロニック・アーツ
開発元:
エレクトロニック・アーツ
プラットフォーム:
Windows PC
価格:
6,980円
6,800円 [ダウンロード版]
発売日:
3月7日
プレイ人数:
1〜16人

数日の混乱を経てようやく、本作のマルチシティ要素が駆動しはじめた

 3月7日、期待の都市開発シミュレーション「シムシティ」が発売された。本作はシリーズではじめてオンライン接続が必須のタイトルとなっているが、「シムシティ」に関心のある人ならご存じの通り、発売直後はサーバーダウンや遅延が相次ぎ、発売から2日間程度はほとんど遊べない状態が続いた。

 筆者などは常時ログイン画面に張り付いた結果、発売当日からなんとか遊ぶことができたが、頻繁に落ちる、データが消える、都市連携が全く機能していないなどの不具合も続出していたため、実際にまともに遊べるようになったのは3日目、3月9日になってからのことだ。

 思い返せば「Spore」、「バトルフィールド 1943」そして「バトルフィールド3」と、オンライン接続を前提とするEAタイトルはおしなべて同種の問題が起きた経緯がある。サーバー整備に関するエレクトロニック・アーツの“相変わらずの”見込みの甘さを露呈しており残念だ。

 とはいえ、今回のアクセス過多に対するEAの対応は速く、発売4日を経過した現時点で、サーバー数は当初の2倍以上に増強され、日本人にとっては待望のアジアサーバーも追加された。現在は問題なく遊べる状態には来ている。

 ということで、βレポート発売直前インプレッションと続けて情報をお届けしてきた本作について、きちんと遊べるようになったこの機会に、改めて全体的な評価をしてみたい。

リアル感溢れる都市メカニズムが、市長の英断を求める!

自分で撮ったスクリーンショットがゲーム画面に見えないレベル
シム市民それぞれの行動が人の波を作り、都市を動かしていく
地価マップ。ミクロの変化がマクロな統計値に現われる代表例のひとつ

 写実性とイラスト的なタッチが調和した、どこかほのぼのとした「シムシティ」の世界。ゲーム画面とは思えないほどのまったり感を漂わせる絵作りの背後には、本作のために作られた「Glassbox」エンジンが高度なシミュレーションを実行している。

 このエンジンの良さは、都市に生活するシム市民の息遣いが感じられるところだ。住宅から出てきたクルマを追いかけると、職場へ出勤中。途中で渋滞にはまりつつ、工業地帯の職場へ到着。夕方になると帰宅ラッシュが始まり、職場で稼いだお金を使おうと商業地区にも人の波。渋滞の車列に混じって、強盗を働いた犯罪者と警察のバトルが繰り広げられていたりもする。

 こういった細かい部分の表現はまさに宣伝通りで、様々な時間帯に、様々な動機をもって動きまわる市民を追いかけているだけでもたくさんの発見があり、とてもおもしろい。この手の表現の先駆者として「トロピコ」シリーズが挙げられるが、本作はさらに大きなスケールで実現している。これだけのためでも、本作をプレイする価値があるほどだ。

 「シムシティ」の都市は、こうした市民生活のミクロな動きが大量に積み重なることで形作られている。例えば、人口が増えても職場が足りない場合。街には仕事を探してうろつく市民が増え、不穏な空気が漂い始める。彼らはやがてお金を使いきってホームレスに、あるいは犯罪者になってしまう。

 このように、個々の活動の結果が、都市全体の治安というマクロな状況に影響が伝播していく感じだ。本作では都市のメカニズムを形作るほとんどあらゆるものにこの仕組みが応用されている。エージェントベースの都市シミュレーションという複雑で取り扱いの難しい仕組みを、少なくとも見た目上は見事にゲーム化してあるのだ。

「シムシティ」のプレイで形作られる風景は楽しい。まずは活気ある都市の息遣いを楽しもう

対策不可避! 突然の破綻が襲いかかる

順調に育っているように見える街も、実は“爆弾”を抱えている
渋滞で消防車が働けない!
土壌汚染が手を付けられないところまで行ってしまった例

 その「Glassbox」エンジンのおかげもあってか、本作における都市のメカニズムは非常に精緻であり、ゲームバランスはなかなかハードである。結論から言うと、突然に襲い掛かる財政破綻と戦うゲームとなっているのだ。

 本作における都市は、税収源となる3つの地区(住宅地区、商業地区、工業地区)と、各種公共サービス(上下水道、警察・消防・医療、交通機関など)、そして特化施設(工業、観光など)で構成される。

 基本的なバランスとして、都市の規模がある程度になると、税収だけで公共サービスを充分に維持することは難しい。たいていは、地下資源を生かした工業系の特化産業や、交通の便を生かした観光産業でのビジネス収入で都市の規模を維持していくことになる。

 特化産業が軌道に乗れば、大幅黒字となった収支をベースにぜいたくな公共サービスを整備できる。大きな警察署や消防署で安全を守り、大学を作って工業地区をハイテク化。増加する上下水道や電力の需要にも、大型設備で余裕の対応だ。

 そうして順調に都市の規模を拡大していくと思いきや、ある時点で破綻へのトリガーが引かれる。止めどない財政悪化スパイラルの始まりだ。

 その引き金になりやすいもののトップは渋滞。人口が増え、バスや路面電車では吸収しきれないほど交通が増えてくると、各地でクルマが詰まり始める。それに引っかかる形で各種公共サービスや特化産業を動かしている車両も身動きがとれなくなり、都市メカニズムが麻痺。収入が激減し、都市環境も悪化の一途だ。

 たいていの場合このまま金庫がゼロになって“終了”してしまうのだが、覚悟を決めて人減らしをするなど出血覚悟の“英断”を下すことができれば、ある程度の段階でスパイラルを止めることができる。

 しかし、そこから街を再スタートさせるにも、土壌汚染、犯罪者、大量の病人などなど、巨大なハンデを背負うことになるので、そもそも破綻を起こさないことに越したことはないのだ。

 したがって本作においては、緻密な計画に基づく、無理のない都市経営が求められる。まったりのんびり楽しもうとしていた人には厳しいゲームだが、分析と攻略が大好きなゲーマーにはやりがいのある仕上がりなのだ。

何にも増して、都市機能を麻痺されせる渋滞には細心の注意が必要。ブロックを越えて数珠つなぎになり始めたら道路の再設計サインだ

めんどうな道路設計と楽しい特化経済

単に太い道路を碁盤の目にするだけでは簡単に渋滞が起きてしまう
シム市民の生活動線に合わせてうまく交通機関を繋げたい
埋蔵資源を生かして特化産業をはじめる。これは油田都市

 本作は知恵と工夫のゲームだ。破綻を避け、財政状況を持続的にプラス安定させるためには沢山のノウハウが必要になる。その基本となるのは渋滞対策としての道路設計と、人口管理、そして住・商・工の需給バランスの維持だ。

 道路と交通の管理は本作で特にめんどうな部分。中でもあらゆる建物が道路に面してしか建設できないという仕様が最悪だ。これは都市レイアウトにかなりの制限を加える。先に建物を配置して後から道路をつなげることができれば良いのだが、それも不可能。ある程度面積を要する施設、例えば空港などは特に、道路の寸法が合わず作り直しになることが多い。

 交通量の管理もかなり難物だ。最強の「高密度の大通り」で街中を敷き詰めればOKかというとそうでもない。迂回路がないと結局どこかで詰まるためだ。そもそも、用もないのに走り回るクルマや、同じ停留所をグルグル行ったりきたりする頭の悪いバスなどのせいで渋滞が余計ひどくなっている様子なので、憤懣やるかたなし。

 それでもなんとか対応するには通勤と買い物客、公共サービス系のクルマの動きを観察し、都市内交通がうまく分散するように地区を分散させるといった細かい制御も大事で、道路まわりは絶えず交差点の渋滞状況をチェックするようなマイクロマネジメントを要求するゲームになっている。もう少し大局的なプレイを期待していた筆者としては、この点は残念だ。

 人口制御については、もう少し大局的な観点で扱える。基本的には、公園を配置して地価をコントロールすることで低収入、中収入、高収入の各市民のバランスを変えたり、税率の調整によって絶対数を増減させる感じだ。

 これがうまくいくと、税収中心の経済から、都市特化による経済への移行がスムーズに行なえる。都市特化は市長の個性と計画の見せ所であり、本作の中でも特におもしろい部分だ。

 例えば豊富な石油が眠っている地域の場合、あらかじめ油田となる地域は開けておく。ある程度資金が溜まってきたら、油井を敷き詰め、流通センターを経由して原油の輸出で売上を立てる。税収の何倍もの収入が入ってくる!

 やがて「石油本部」の設置が許可され、石油を原料とするプラスチックと燃料の生産施設を用意できるようになる。さらに利益率が上がり、金庫の残高はうなぎのぼり……でも無駄遣いせず、しっかりと次に備えよう。油田が枯渇する、その瞬間のために。

 このように長期的な視点にたって都市開発を進めていく感じは、まるで本物の都市のようだ。有限の資源、止めどなく高まる市民の要求、避けがたく襲いかかる過密都市ならではの各種問題。都市全体のメカニズムが擁する各種の“貯金”を使い果たす前に、知恵を絞って先手を打っていこう。ここに詰まった本作の醍醐味が、非常にユニークな面白さをプレーヤーに提供してくれる。

【スクリーンショット】
油田を中心に産業施設を整備した結果、街の半分が石油がらみの都市になった
枯渇しはじめる石油。資源のいらないリサイクル&電子機器産業に移行するのもいい

(佐藤カフジ)