★ PS3/Xbox 360ゲームレビュー★
初代主人公が続編の舞台で大暴れする魅惑の1本!
「 デッドライジング 2 オフ・ザ・レコード」
ジャンル:
  • ゾンビパラダイスアクション
発売元:
プラットフォーム:
  • Xbox 360
  • PS3
価格:
4,990円
発売日:
2011年10月13日
プレイ人数:
1人 (CO-OPプレイ時2人)
レーティング:
CERO:Z(18歳以上のみ対象)

フォーチュン・シティに、チャックではなく“この男”がいたら……。そんなifを実現してしまったファン必見の作品。もちろんシリーズ未体験の人にもオススメだ

 ゾンビ好きにはたまらない1作“ゾンビパラダイスアクション”こと「デッドライジング 2 オフ・ザ・レコード」が先日ついに発売された(PC版は11月24日発売予定)。完全新作ではないが、初代「デッドライジング」主人公のフランク・ウェストが続編の舞台に降り立つという“if(もしも)”を具現化させた、ファンは絶対に看過できない1本となっている。念のため触れておくと、ストーリーそのものは単体できちんと完結しているため、シリーズ初見の人がプレイしてもまったく問題はない。

 前作の主人公チャックも相当な兵(つわもの)だったが、パッケージにデン! と描かれた初代主人公のふてぶてしい姿を目の当たりにすると「やっぱりフランクさんは“格”が違うな!」と痛感させられる。フリージャーナリストでありながら、歴戦の傭兵も素足で逃げだす異次元のサバイバル能力を発揮するフランクさん。こうして原稿を書いていて、無意識のうちに「さん」づけしてしまうあたり、我々ファンのなかで「別格の存在」となっていることの証でもあるのだが……とにもかくにも、まずは「Welcome Back!」といいたい。

 if設定のスピンアウト的な作品ということもあり、本レビューは前作との違いやパワーアップした点について主に触れていく。世界観や全体マップなど土台の部分は「デッドライジング 2」がベースになっているため、予備知識がない人や細かい部分が気になる人は、僭越ながら前作レビュー記事に目を通していただければ幸いだ。なお、本レビューにはXbox 360版を使用している。PS3版と内容に違いはないので、購入の際はお好きなほうをお選びいただきたい。



■ ストーリーモード ~舞台が同じでも、フランクが主人公だと、こうなる!~

初代主人公が続編の舞台に登場。まさに夢のシチュエーションだ

 「デッドライジング 2」の舞台は、ゾンビアウトブレイクが発生したフォーチュン・シティ。シリーズ初体験の人向けに説明しておくと“ゾンビアウトブレイク”とは、ゾンビが人々を襲い、噛まれた感染者が新たなゾンビとなる恐怖と死の連鎖のこと。「デッドライジング」の「悪夢のウィラメッテ事件」から約5年、アメリカ各地で継続的に発生し続けるゾンビアウトブレイク。「デッドライジング 2」の主人公、チャック・グリーンは、ゾンビ感染した愛娘ケイティーを救うため、定期的に投与することでゾンビ化を防ぐ薬「Zombrex(ゾンブレックス)」の購入資金を稼ぐべく「フォーチュン・シティ」で開催中の悪趣味なTV番組「TERROR IS REALITY (テラー・イズ・リアリティー / TiR)」出演を決意する、といったストーリーになっていた。

 今作も「TiR」からゲームが始まるが、当然そこにいるのは我らがフランク。なぜここにいるかといえば、チャックのように「愛する娘のために」といった不可抗力ではなく、スキャンダルで富と名声を失ったあげく、自らのゾンビ感染の治療費に頭を抱えていたという、なんとも情けない姿で登場する。「俺はまだ終わっちゃいねえ!」とばかり、失ったものを取り戻すため、かつての英雄は「TiR」に出場する。開始直前、サインを求められたスタッフから「ファンなんです! サインありがとうございます。でもあなたが『TiR』で死んだら、このサインはもっと価値があがりますね!」などと冷や水を浴びせかけられるが、当然その程度のことでめげるようなフランクではない。

 ここで「なんだ、主人公キャラが違うだけで他は全部一緒か」と誤解されそうだが、もちろんそんなことはない。全体の世界観や“ケースファイル”と呼ばれる単位で進行していくストーリーの軸は同じだが、フランクが直接関わりあう部分は、あちこちに大小さまざまなアレンジが加えられている。たとえば、冒頭の「TiR」ミニゲーム。バイクレーサーだった前作主人公のチャックはチェーンソーつきバイクに乗ってゾンビを轢き倒していたが、フランクはプロレスラーのコスチュームを身にまといリングの上で身体ひとつでゾンビに立ち向かうという完全新作のミニゲームをプレイすることになる。なんというか、実に“らしい”マッチョな内容だ。

 番組が終了し控え室に戻ったあとのシーンでは、フリージャーナリストの嗅覚で悪徳プロデューサー「TK」の尻尾をつかみ、初代ファンにはおなじみのカメラ撮影(左トリガー長押しの状態でRB同時押しでカメラモード)で悪事の一端をパチリ。その姿をTKのSPたちに発見されてしまうが、野生のゴリラですら顔面蒼白で逃げ出しかねない脅威の戦闘力を誇るフランクにかなうはずもない。ストーリーは、ここから一気に本流へとなだれこんでいく。


【地に落ちた英雄は、かつての栄光を取り戻す戦いを始める】
スキャンダルにより冠番組も終了。「TiR」出場で再浮上のキッカケをつかもうとするフランク。「TiR」は悪趣味きわまりない内容だが、贅沢はいっていられない


 ネタバレになってしまうのでアレンジの詳細については触れないが、ストーリーの中核をなす魅力的な登場人物たちとの関わり合いも、少し違ったものになっている。シェルター管理人のサリバンに「お前、感染者だろ」と立ち入りをとがめられるのは、ケイティーではなくフランク本人。「あなたに憧れていたこともあるわ」と、チャック相手とはまた違った距離感を見せる美人レポーターのレベッカ、犯人の首魁とみなされ困惑するゾンビ権利団体のリーダー・ステイシーなど、前作をプレイ済みの人は「なるほど、こんなふうに変えてあるのか」と思わずニヤリとしてしまうシーンが続出する。


騒動に巻き込まれてしまうフランク。ショウの裏で暗躍するプロデューサー「TK」のたくらみに気づき、その真相を暴くため行動するようになる


基本は前作ベース。まったく同じ部分もあれば丁寧にアレンジされているところもある

 プレイ本編も、ストーリー以上にさまざまなアレンジが加えられている。まずはZombrexを探すことになるが、処方するのはケイティーではなくフランク本人なので、前作のようにいちいちセーフハウスに戻る必要はない。時間がきたら、方向パッド左で首筋にプスリ。自ら注射できるのはいいが、一瞬両手がふさがるため装備武器をドロップしてしまう点に注意。今回はサイコや一部敵キャラクターの動きが“いやらしく”なっており、前作以上に一瞬たりとも気が抜けない。主人公がフランクになったことで使える体術も変わったため、バトル全般は前作以上にスリリングかつ楽しいものになっているだ。

 変わったといえば、1番地味で大きな変更ともいえるのが“生存者”だ。知らない人向けに説明すると、生存者はさまざまな理由でフォーチュン・シティ内に取り残された人たちのこと。生存者を発見し、セーフハウスに連れ帰ると大量のPP(Prestige Points:キャラクターの成長に必要な経験値)がゲットできる。初代の生存者は、あまりにもAIが弱く「ああもう、どうしてそこでひっかかるんだよバカ!」と常にイライラさせられる面倒な存在だったが、前作では驚異的なレベルで劇的に改善され……というか、改善されすぎて「戦闘オプション」として活用するプレーヤーが続出。生存者は最大3人まで連れ歩けるが、アサルトライフルなどの飛び道具を持たせてアシストさせると、屈強なサイコが一瞬でボコボコにされるという凄まじいプレイが堪能できた。

 個人的には「コレはコレでありかな。遊び方の応用としては楽しいし」と思っていたが、今回の生存者たちは、戦闘力・体力ともに控えめになった印象。前作は普通に連れ帰るくらいでは体力すら減らないケースも珍しくなかったが、今回は誘導が雑だと道中のゾンビたちに半分以上削られていることもある。このあたりは「フランクが超人すぎるから、バランスをとった結果だろう」と思うことにしている。まぁ、前作の戦闘オプション扱いそのものが「人間扱いしていなさすぎ」という話もあるが……。


イベント以外で手に入るZombrexは、前作から配置が変更されている。時間がきたらその場で打てばよく、セーフハウスには戻らなくていい
フランクはジャーナリストなので、撮影でもPPが稼げる。写真には「DRAMA(ドラマ性がある)」、「HORROR(恐ろしい)」、「OUTTAKE(こっけい)」、「EROTICA(セクシー)」、「BRUTALITY(暴力的)」、「SPECIAL(特別なシチュエーション)」といった6種類のジャンルがあり、評価対象となる写真を撮ると評価PPが与えられる
ザコも侮れなくなった。特にフードをかぶったコソ泥連中は、ダメージだけでなく金やアイテムまで盗んでいく。マジで最悪だ
前作が頑丈かつ頼りになりすぎたのか。生存者の能力は、気持ち弱めに調整された。そこまで慎重になる必要はないと思うが、自律的に戦える生存者には、念のため武器を持たせておくのもいいかも
おなじみのサイコたちも地味に強くなっている。上画面・最右は、なんとチャック!! こんな形で出会いたくなかった……


メンテナンスルームは、フォーチュン・シティ内のあちこちに点在する

 前作で初登場した“コンボ武器”は、全部で65種類とさらにパワーアップ。これも知らない人向けに説明しておくと、コンボ武器は拾ったアイテム2つを組み合わせて作る発展的な武器のこと。各アイテムにはレンチ型のアイコンが表示されているものがあり、これが“オレンジ色”は単体で使うもの。“水色”であれば、それはコンボ武器の材料として使えることを意味する。コンボ武器の作成場所は、フォーチュン・シティのあちこちにある赤い扉の「メンテナンスルーム」。やりかたは、作業台のうえにBボタンで各武器を置くだけ。組み合わせが可能であれば「組み合わせる」というメッセージが表示される。

 武器の組み合わせは、コンボカードにハッキリと記載されている。コンボカードはレベルアップのほか、フォーチュン・シティ内にあるポスターなどを見ると入手できる。コンボカードを持っていない状態でコンボ武器を作成したときは“スクラッチカード”が追加され、コンボカード画面にファイリングされていく。スクラッチカードの武器はXボタン長押しのヘヴィアタックが使えず、敵を倒したときに得られるPPもコンボカードの半分となる。

 これまたネタバレを避けるため詳細については避けるが、新登場のコンボ武器は、実用性、シュールさ、おバカっぽさ、すべてがさらにエスカレートしたというか「よくもまぁ、こういうネタを色々と思いつくものだな……」と感心するものばかり。ちょっと作るのに手間がかかるものもあるが、それはコンボ武器のアイコンから消去法で調べていけば、さほど時間を要さずにたどり着けるだろう。


レベルアップで覚えるものもあれば、上画像・最右のようにフォーチュン・シティ内のポスターなどを見てひらめくものもある。当てずっぽうで作ってもいいが、その場合は“スクラッチカード”となり、Xボタン長押し攻撃が使えず敵を倒したときに得られるPPも半分になる
実用性抜群からネタ系まで、全65種類が登場。後述のサンドボックスモードで時間を気にせずフォーチュン・シティ内を探索して、必要なアイテムマップを自作しておくと後々すごく楽になる



■ 新登場のサンドボックスモード ~時間無制限で数々の課題にチャレンジ!~

本モードはゾンビパラダイスが時間無制限で骨の髄まで楽しめる

 今回が初登場となる新モード「サンドボックスモード」は、ストーリーモードのように制限時間やZombrexを気にすることなく、ひたすらゾンビたちと戯れられる夢のようなモード。決まったストーリーなどはなく、ゾンビを倒した数によって様々な「チャレンジ」に挑戦できる。チャレンジを達成すると成績に応じて報酬が与えられ、そうしたPPやお金は同じセーブファイルのストーリーファイルに引き継がれる。本モードも、ストーリーモード同様に他プレーヤーとCO-OP(協力プレイ)が楽しめる。

 本モードはストーリーモードと同じフォーチュン・シティを舞台に展開される。マップ内にある各チャレンジは、少しずつアンロックされる形になっている。位置はマップ上に明示されるが、チャレンジできるかどうかは実際にそこまで行ってみないとわからない。ゾンビを一定数以上倒す、あるいは特定のチャレンジで一定の成績以上を収めるなどの条件が設定されているため、まずは手近なものから少しずつクリアしていくといい。

 前作ではケースファイルを失敗することで、ある程度は自由に大暴れすることができた。それでも一定の制限があったため「最初から最後まで、ずっとフリープレイで遊べるモードがあればいいなぁ」と思っていたが、本モードはその要望をきっちり満たしてくれる。アンダーグラウンドにも最初からいけるため、必要なアイテムの場所さえ覚えておけば強力なコンボ武器で装備を整えられる。気ままにレベルを上げたい人や、ストーリーモードをプレイする前にどこに何があるか把握しておきたい慎重派にもオススメのモードだ。


最初から全部にチャレンジできるわけではなく、手近なものから少しずつアンロックしていくことになる



■ 初代と前作にプラスアルファ ~懐かしく新鮮に遊べる楽しい作品~

単なる流用ではなく、大小さまざまなアレンジが加えられている点に注目

 フランクの劇的復活という驚きの“if”を現実のものとした本作。ファンとしてはそれだけでも拍手喝さいだが、単なる辻褄あわせではなく、新要素、重要アイテムの配置変更、バランス調整など、全体的だけでなく細部もリファインされているいことが、とてもうれしい。価格も控えめで、これなら前作の購入者も文句はないだろう。順次リリース予定のDLCコスチューム「パラダイス パック(PS3版が各200円、Xbox 360版が各160MSP)」も、ちょっと目先を変えて遊びたいときには最適だ。

 初代、前作、ダウンロード配信タイトルをさんざん遊ばせていただいた筆者だが、発売前までは正直「ぶっちゃけ前作ベースなんだよね……」という先入感があったが、いざ実物に触れると、ふてぶてしいフランクの立ち居振る舞いがプラスアルファされて、これがまぁ心の底から楽しくて仕方がない。差し支えのない範疇でネタバレすると、バイクで列車を追跡したチャックのシーンが、フランクの場合はハリウッドスタントばりに身体ひとつで大ジャンプして列車に飛び乗ったりと、キャラクターの違いが考慮されたアレンジに触れるたび頬が緩んでしまう。これがもし前作同様にバイクで飛び乗らされたなら「あー、はいはい。(悪い意味で)流用ね」などと白けてしまっただろう。

 バランス調整も、開始早々にスノーフレイクを手なづけようとして「全然ステーキ食ってくれない! どういうこと!?」と数十分苦闘して「あぁ、今回はこうしないとダメなのか……前作とまったく同じように対処しようとしたのがまずかったか」とわかったとき「前作と同じとタカをくくっていると、これは酷い目にあうな」と実感。微細な追加や改良点は枚挙にいとまがないほどで、随所にいい仕事が施されている。単なる流用のスピンアウト作品などと、あなどることなかれ。初代や前作をやり込んだ人こそ、本作をいの1番にプレイすべきかもしれない。前述のとおり、今回がシリーズ初体験という人もまったく問題なし。ゾンビの楽園“ゾンビパラダイス”を、心行くまで味わっていただきたい。



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