株式会社マーベラスAQLは、10月5日からブラウザMMORPG「剣と魔法のログレス」のオープンサービスを開始した。本作は「ブラウザ三国志」や「戦国IXA」を開発したスタッフが集まった開発スタジオAimingによる初めての本格的なMMORPG。インストール不要のブラウザMMORPGで純国産は少なく、公式サイトでも「純国産」であることを大きくアピールしている。
本作はFlashベースのブラウザゲームで、この環境が起動するプラットフォームであれば基本的にはすべてプレイが可能だ。ただ、スマートフォンには少々荷が重い印象で、ドット絵の妙技を堪能するためにも、大画面で遊べるPCかタブレットがオススメだ。
お手軽なブラウザゲームではあるが、盛りだくさんな要素やお楽しみがある。家庭用ゲームの味わいを感じるエンカウントバトルと、縦一列に並んでモンスターと向き合う戦闘画面には、家庭用ゲームで育った日本人が、同じ郷愁を共有できる日本人に向けて作ったゲームらしさが現われている。このレポートでは、本作がどんなゲームなのか、数ある要素を紹介しつつ実際に遊んでみて感じた印象をお伝えしたい。
■ 未知のモンスターが徘徊する大陸をハンターとなって駆ける
ドットで描かれたパーツで構成されたフィールドは、なんとなく懐かしさを感じさせる |
限られたスペースを有効活用するために、UIは普段は収納されている |
「剣と魔法のログレス」はドット絵スタイルの2D見下ろし視点のRPG。チャット以外はマウスですべて操作できる。UIは画面の左側にタブの形で収納されており、マウスポインタを近づけたり、そのタブの項目に進捗があった場合せり出してくる。チャットウインドウはデフォルトでは画面右下に小さなウインドウが1つあるだけだが、複数のウインドウを並べたり、大きさを変えることもできる。
右下のスキルのショートカット風に見える枠は、実はプレーヤーフレンドリスト。他のプレーヤーのフレンドリストも見ることができ、さらにフレンドリストのアイコンからそのキャラクターのフレンドをみるといったSNS的なネットワークが見られるようになっている。
タイトルの「ログレス」は冒険の舞台となる国の名前。ログレス王国は10年前、突如として大量発生したモンスターの脅威に晒された。未知の動植物の大量発生「アニマプロージョン」の危機は、王国騎士団を初めとした多くの人の努力で1度は回避されたが、10年後にもその影響は残り、悲劇を繰り返さないようモンスターの討伐や原因の究明が進められている。危険地帯での活動を職業にする人々は「ハンター」と呼ばれるようになった。
ログレス王国には3つのハンターズギルドがあり、プレーヤーはそのいずれかに所属することになる。王国騎士団から生まれた「シルベリー」は正義と誇りを信条にした、気位が高く、他のギルドをライバル視している。「ガレリア」は元大盗賊が率いる奔放なギルドで、酒とお金が好きな無頼漢が集まる。建物もまるで酒場のような雰囲気だ。「グリュネ」は好奇心タップリで、少しオタクっぽいアキバ系ギルドだ。
現在のところプレーヤー人気はシルベリーとグリュネが二分している。人数的には1:1:0.5くらいの割合で、ガレリアが少なめだ。とはいえ、違いはギルドチャットの参加者くらいでどこを選んでもそれでプレイが有利になるというわけではない。ギルドに入ると使えるようになるギルドチャットは、雑談や質問、ギルド単位のパーティー編成などでいつも賑やかに稼働している。「お手伝いしてください」、「お手伝いしますよ」という呼びかけも多く見かけた。
ギルドは、拠点となるグランヴェルレー城にある。城にはほかにもクエストボードのある城下町や、合成や強化を行なうための大工房がある。移動はワールドマップを経由して、行きたい場所の好きなチャンネルに入る。
キャラクター作成画面。男女とも、髪型と顔が各10種類ずつ用意されている | |
移動はワールドマップ経由で行なう、まだまだレベルが低いので、初期エリアのキルギム草原にしか入れない | 城下街にあるクエストボードの前はプレーヤーが集まる場所 |
水色を基調とした「シルベリー」 | 本が大量にある「グリュネ」 |
酒場のような雰囲気の「ガレリア」 | 装備の合成を行なう「大工房」 |
■ 状況に合わせて使い分け可能。いつでも転職可能な5つの職業
転職は各ギルドで行なう。レベル10までは費用がかからない |
マジシャンからファイター転職。装備がすべて外れて下着だけになってしまった。持ってきてないのに…… |
「剣と魔法のログレス」には全部で6つのクラスがある。そのうちノービスは最初の転職をするまでの暫定的な職業で、覚えられるスキルが少ない。ギルドに所属して転職ができるようになった後は、「ファイター」、「ナイト」、「レンジャー」、「マジシャン」、「プリースト」の5つがメインとなる。
「ファイター」は斧を振るう近接の純アタッカー。「ナイト」は敵を固定する挑発スキルを持つ盾役。「レンジャー」は敵のステータスをダウンさせる攻撃でパーティーをサポートする。「マジシャン」は威力の大きな全体魔法と、敵の属性や防御力を下げる魔法を使う。「プリースト」は威力のある近接攻撃と、回復魔法を使い分ける。
転職は自由度が高く、必要に応じて色々な職業に変わることができるのは本作の大きな特徴だ。転職はギルドハウスで行ない、各クラスレベル10までは無料でその後も安価な費用で変わることができる。職業にはクラス事にレベルがあるので、ファイターでレベル10まで育てた後、プリーストに転職すると再びレベル1から育て直しになる。
レベルを上げるとアクティブとパッシブのスキルを覚えていく。アクティブのスキルは職業事に使えるものが異なるが、自動的に発動するパッシブスキルは全職業のものからその時のレベルに応じた数を装備することができる。防御力の上がるナイト系のパッシブスキルを、体力が少ないマジシャンで使用して防御力を上げたりと、満遍なく職業を育てることで同じクラスでも性能に差が出る。
このように簡単でメリットも多い転職だが、転職するたびに6カ所ある装備を手動で総入れ替えしなければならないのは少しめんどくさいかなという気がする。5つの職業すべての専用装備をととのえるとそれだけで30も倉庫を占拠してしまう。倉庫自体にはバラエティに富んだソート機能がついていて非常に便利なので、気にならない人は気にしていないかもしれないが、筆者は何度か転職の際に装備を持って来忘れて、下着姿で城下町を倉庫まで走った。
パーティーメンバーを待たせているときなど、この転職に伴う細々した作業で非常に焦る。あらかじめ装備やスキルを登録しておいて、転職と同時にすべてが入れ替わるようになればいいなあ、とここに希望を書いておく。
■ アクションコストが緊迫感を生むエンカウントバトル
戦闘はシンボルエンカウント。フィールドでモンスターと接触すると、左右に立つ戦闘画面に切り替わる |
戦闘中は外からは、漫画のような煙で表現される。パーティーメンバーの煙には、触ることで途中入場できる |
戦闘はシンボルエンカウントバトル。フィールドをうろついている敵に接触すると、お互いが左右に向き合って対峙する戦闘画面に切り替わる。戦闘が始まると同時に、HPゲージの下にあるアクティブゲージがたまりはじめる。アクティブゲージがいっぱいになると、アクションコストが+1ずつ累積していく。
スキルにはそれぞれ必要なアクションコストがあり、大技になるほど多くのコストが必要になる。例えば近接攻撃職ならアクションコスト1から使えるスキルが多いが、1発のダメージが大きいマジシャンは一番弱いスキルでもアクションコスト2からになる。
アクションコストは累積なので、5まで貯めると2の技を連射できる。ただし1度スキルを使った後は一定時間攻撃ができないウェイトタイムがある。モーションが長いスキルなら、発動している間にウェイトタイムを消化してモーション終了と同時にすぐ次の技に入ることも可能だ。このアクティブゲージ、ウェイトタイム、スキルモーションにかかる時間を上手く組み合わせて、なるべく無駄なくスキルを繰り出すのがコツだ。
特に体力が少なく発動に時間のかかるマジシャンは、殺すか殺されるかというタイトな戦いになる事が多い。よりアクションコストのかかる範囲攻撃まで耐えるか、個別撃破で数を減らすかの瞬時の判断が必要になり、スリリングな戦闘を楽しめた。運悪く負けることも多々あるが、その場で復活した後一定時間「衰弱」状態になるだけなのでペナルティを畏れずどんどん攻めていける。
キャラクターの強さはレベルに依存する割合が強く、同レベル帯より上のモンスターには非常に苦労するが、同じモンスターでも格下になれば通常攻撃だけで倒せてしまえるほどになる。また、レベルによって入れる狩り場の制限がある。エンカウントバトルの性質上、1戦するのにそれなりに時間がかかるのでレベルアップは一般的な最近のMMORPGに比べるとやや遅め。効率的にレベルを上げたいなら、パーティープレイがおすすめだ。
パーティーバトルは最大5人まで参加が可能。ギルドチャットで呼びかけてもいいし、「ハンターサーチ」に参加希望や募集をだしておけば、ギルドに関係なく声がかかることもある。パーティーメンバーの戦闘には途中参加することもできる。筆者も何度かパーティーを組んでみたが、パーティーを組んだ時点で簡単な打ち合わせをしておいて、戦闘中はほぼ無言で各々が役割をこなすという戦い方が多かった。
ソロでの戦闘。相手が複数だと、スキル選択のプレーヤースキルが問われる | |
パーティーでの戦闘。回復や盾役がいると、アクションコストを貯めている間の待機時間も安心なので大技が使える |
■ コンプリート目指してクエストを受けまくる
「クエストボード」でその時受諾可能なクエストをチェック。よさげなクエストがあれば早速受ける |
日替わりで敵や指令が変わる「ギルドコール」。パーティー向けのコンテンツだ |
日常のプレイは城下町で受けるクエストと、ギルトから発令されるギルドコールをこなすのがメインになる。城下町のクエストボードから受けるクエストには「討伐」、「納品」、「会話」、「重要」の4種類がある。1度に受けられるのは3つまで。重要という項目には、チュートリアルやストーリークエスト、パーティーでいく強ボス、ハンターランクの昇格試験などが含まれていて1度受けるけど放棄するか、達成するまで受けたままになる。
他の3つには受諾期限と遂行期限があり、期限を過ぎると自動的に破棄されてしまう。1度クリアした後は「準備中」という表示に変わってしばらくは同じクエストを受けることができない。クリアしたクエストは、エリアごとのクエストリストに記録されていくので、クエストのコンプリートを目指して色々なクエストにチャレンジする楽しみが生まれる。中にはレアモンスターの討伐のように、簡単にはクリアできないものもある。難易度を示す★がついているので、それを指針にできる。
ギルドコールは、ログインしたときに自動的に発令されるギルドの目標のようなもの。パーティーを組んで戦う強ボスや、敵の大量撃破などクエストよりも難易度が高い。クリアすると「GP」というゲーム内通貨を獲得できる。このGPを使ってギルドショップから、スキルや素材、ギルド装備などの特別なアイテムを入手することができる。
ほかに王国から発令されるらしい「キャッスルコール」という欄があるが、筆者のプレイ中には発令されているところを見かけなかった。まだ詳細は不明だが、ギルドのさらに上位にある国からの依頼ということで、きっとより難易度が高くMMORPGらしい大人数の参加が必要なコンテンツになるのではないだろうか。
クエストを達成した後は、クエスト画面から報酬受け取りを選んでお金やアイテムをもらう | クリアしたクエストは一覧で確認することができる |
ギルドコールの対象モンスター。HPが多く、特殊なスキルを使う、レアポップのレジェンドモンスター | 「会話」クエストでは、プレイに役立つ情報や、ゲーム内の設定を知ることができる |
■ 強化合成とコアで装備品の性能をアップ!
大工房にいる合成屋ドクス。合成とコアの取り付けをしてくれる。有料なのに失敗が多いのた玉にきず |
グランヴェルレー城の大工房では装備の強化合成とコアの装着ができる。強化合成は同じ種類の装備品を材料にして装備のグレードを上げるシステム。装備はクエスト中にドロップなどで集まるものや、市場から入手した物を使う。「+4」以上の強化には「増強剤」が必要になるのだが、これが序盤には意外と高価でなかなかサイフに厳しい。
コアの装着は、モンスターを倒した時にドロップするコアを武器のスロットにはめて特別な効果を持たせることができるというもの。コアを装着できるのは武器と上半身、下半身の3カ所。つけられるコアは1種類で、解除するとつけていたコアは消える。解除には手数料が必要だが、成功するとは限らない。
合成やコア会所の成功率をアップさせるアイテムは、課金で回せる「コアガチャ」から入手することができる。しかし欲しいもの意外は欲しくないという節約型主婦タイプの筆者としては、アイテム単体での販売も希望したいところだ。
強化したい装備と同じ種類の装備を材料に使う | 無事成功。失敗すると、数値はそのままで材料だけが消えてしまう |
ドクスの息子ジョーから、強化合成とコア装着の説明を聞くことができる | 大工房の中には市場や倉庫、商店など必要なものがそろっている |
■ 家庭用ゲームの遺伝子とブラウザゲームのノウハウが融合したカジュアルゲーム
ギルドという大きなまとまりが連帯感を生んで、パーティーを組みやすくしている |
ここまで「剣と魔法のログレス」を構成する主要な要素を紹介してきた。本作がMMORPGとMOの中間的な位置にあることがわかっていただけただろうか? クエストボードで依頼を受けてパーティーを組んで戦闘マップに赴くというやり方はまるで「モンスターハンター」のようだし、アクティブタイムバトルの戦闘方式は「ファイナルファンタジー」シリーズを思わせる。
海外の特にアジア産のMMORPGは出発点からオンラインゲームであり、プレイしていても、家庭用とは全く違うオンラインゲームの方程式で作られていると感じることが多い。本作は逆に、種々の要素はオンラインゲームのスタンダードといえるものなのだが、そこにおそらく開発者たちがこれまでに遊んできたであろう家庭用ゲームの影響を強く感じる。家庭用の思想に「ブラウザ三国志」で培ったブラウザゲームのノウハウをプラスして、MMORPGに必須の要素を加えた結果誕生したゲームと言えるだろう。
切り替え式のわかりやすいチャットUIや、後々遊び要素になりそうな沢山のエモーション、プロフィール表示や、他のプレーヤーの交友関係が見えるSNS的なプレーヤー表示など、コミュニティ要素にかなり力が入っているのも、オンラインで他人と遊ぶことが海外ほど日常的ではない日本らしい配慮だと思える。
また、プレーヤーを「三国志」的な既成の勢力に振り分けることで、きつすぎず、緩すぎない程度な距離感を持ったコミュニケーションを実現している。プレーヤーが設立するギルドは、気の合う仲間とプレイするのは楽しいし、集団に所属することで様々な恩恵を得ることができることは事実だが、ギルドマスターの負担が大きいことや、身内だけでしかパーティーを組まなくなって閉鎖的になること、ログインを強制するような形になりやすく、それを嫌って引退する人が出るというデメリットがある。
適度な所属意識が集団を形成し、なおかつ個人への負担や強制がきつくなり過ぎない。所属しているだけでクエストが降ってきて、遊び方も提示してもらえるという本作のギルドシステムは、気軽に遊びたいけれど寂しいのは嫌だという日本のユーザーにもっとも適した方式ではないかと筆者は思う。
もちろんクエストやギルドコールだけではなく、アバターの収集や、クエストコンプリート、装備の強化にキャラクターカスタマイズと遊び方も複数用意されている。「ブラウザ三国志」の戦争のような、べったり張り付いてプレイするタイプのやり込み要素はない。寝食を忘れてプレイするのではなく、その日の目標を決めて短時間のプレイを楽しむカジュアルなゲームだ。国産ならではの台詞回しの面白さや、可愛いキャラクターはオンラインゲーム初心者のハートを掴みそうだ。
掲示板形式になったコミュニティボード。色々なトピックを自由に立てられる | ギルドに関係なくパーティーの募集や希望が出せるハンターズサーチ |
つかず離れずの適度な距離感でコミュニケーションが楽しめる |
(2011年 10月 21日)