PCゲームレビュー

時まさに乱世、我が頼みはひと振りの剣
立身出世にハマる中世騎士アクションRPG

「マウント アンド ブレード ウォーバンド」

  • ジャンル:アクションRPG
  • 開発元:Tale Worlds
  • 発売元:サイバーフロント
  • 価格:8,190円
  • 対応OS:Windows XP/Vista /7
  • 発売日:8月27日(発売中)
  • プレイ人数:1~64人


戦場に踊る中世騎士ロマン!

 戦場に響き渡る馬蹄のうなり。振り上げられた剣が行き場を求め、甲冑と肉を切り裂く。血と鉄で彩られた釜の底をひとり、鍛え抜いた膂力と才気で生き抜く騎士。やがては王となるか、野に朽ちるか。今はただ、目の前に立ちはだかる敵を打ち倒すのみ。

 サイバーフロントが発売するPCゲーム「マウント アンド ブレード ウォーバンド」は、そんな男くささ満載の中世騎士ロマンを深く堪能できるアクションRPGだ。本作の開発元はトルコのゲームデベロッパーTaleWorlds。夫婦ふたりでつくりはじめたというユニークなアクションRPGは世界で最も成功したインディーズゲームのひとつとなり、北欧のゲームパブリッシャーParadox Interactiveのもとで商用化を達成。磨きをかけてついに日本語版の登場となった。

 本作には、多くのゲームファンが最新のタイトルに期待する、格好良いキャラクター、重厚なシナリオ、最新技術を駆使したグラフィックスなどを全く備えていない。そのかわり本作にあるのは、ついついハマってしまう痛快かつ重厚な剣撃アクションと、何十時間、何百時間もプレイしてしまうシナリオなき立身出世物語だ。地味な見せかけの中に、ゲームファンが本当に求めているはずのものがギッシリ詰まっているのである。



■ 斬る! 突く! 射る! 肉体感覚にリンクした痛快アクションと一騎当千の快感

敵兵を撫で斬りに!
弓で射ぬく!
歴戦の騎士は徒歩戦闘もお手の物
味方の兵士を指揮して戦略的に戦うことも可能

 本作の舞台は架空の大陸「カルラディア」。史実でいうとルネッサンス直前くらいまでのヨーロッパを模した世界となっており、いくつもの国が大陸の統一を求めて割拠する戦乱の時代となっている。プレーヤーはその中に生まれたひとりの男。大望を抱いて兵を集め、一国一城の主を目指すもよし。兵卒として最強の戦士を目指すもよしという世界だ。

 本作はジャンル的にはアクションRPGであり、リアルタイムで展開する戦闘パートと、より大きな時間スケールで展開するRPGパートで構成されている。その上で本作がすごいのは、戦闘も、冒険も、他のゲームには見られない独特の構造とプレイ感覚を持っていることである。

 まず本作のキモとなる戦闘パートは、最大で数百の兵が激突する「合戦」をアクションゲームとして成立させたものだ。プレーヤーは様々なタイプの甲冑、剣、斧、槍、ハンマー、弓、ボウガンを装備することができ、徒歩あるいは騎乗して、敵味方が入り乱れる戦場を駆け巡る。操作はマウス+キーボードを前提としたFPSタイプで、直感的な操作が可能だ。

 そのアクションは直感的で楽しい。例えば剣で戦う場合。攻撃は左クリックで行なうが、これにマウスの動きを組み合わせて剣を振る方向を決めることができる。つまり、マウスを横に走らせながら右クリックすれば横斬り、上に滑らせれば突き、下に引きながらなら兜割り、というシステムである。最初は戸惑うが、操作感覚を掴んでしまえば、まるで自分自身が剣を振っているような感覚だ。

 これに加えて本作のアクションを深みのあるものにしているのは、攻撃ダメージを決めるシステムだ。通常、この手のアクションゲームでは武器の攻撃力とキャラクターの性能で与えるダメージが決まってしまうものだが、本作の場合、それに加えて剣の切っ先が命中した部位、その際のスピードが勘案されて最終的なダメージが決まる。つまり、うまく相手の装甲が薄い部分を狙って、勢いよく刃をぶつけるほど、大きなダメージが期待できる。

 直感操作と詳細なダメージシステムが結合した結果、本作のアクションシーンは驚くほど手応えのある「打撃感」をもたらしている。いかに重い一撃を、相手の弱点(大抵は頭部)に叩き込むか。馬上で全力疾走しながら、カウンター気味に剣撃をぶち当てれば最も大きな打撃を加えられる。FPS的操作で正確に照準しつつ、剣の切っ先がどのような軌跡を描くか予想しながら、敵の集団をかすめて疾走する。テクニカルで、スピーディで、重量感のあるアクション。達人の境地に達すれば、ひとつの戦いで数十人の敵兵を切り伏せることだってできる。

 剣のほかにも、相手の盾や武器による防御を押し崩すハンマーによる重い一撃、盾を破壊する戦斧の一振りもまた、本作の戦闘を深めてくれる要素だ。騎士の花形、長大なランスを構えてチャージをかければ、どんなに重装甲な敵でも一撃で屠ることができる。物理法則に従って飛翔する弓矢を極めれば、ロビンフッドか那須与一か、という活躍も可能だ。

 その全てを組み合わせて展開する本作の戦闘は、個人的武勇を競うだけでも相当に楽しい。これに加えて、プレーヤーは部隊長として多数の兵士を従え、命令を下しながらRTS的な戦いを展開することもできる。知力をふりしぼって効果的に用兵するならば、自ら剣を振ることなく勝利を収められるだろう。本作をプレイするならば、まずこういった合戦の醍醐味を存分に楽しんで欲しい。


蹄の音、武器が打ち鳴らす鉄の音、阿鼻叫喚の声。様々な音が入り混じる戦場の雰囲気は本作ならではのもの。その中で一騎当千の活躍をする気持よさ



■ 群雄割拠の乱世で立身出世を目指す! 躍動する世界で展開するシナリオなきRPGパート

キャラメイク画面。はじめは非力ないち浪人としてキャリアをスタート

 本作が単なる戦闘ゲームに終わることなく、膨大なプレイ時間を約束してくれるのは、RPGパートの面白さによるものだ。シングルプレイのメインゲームモードとなっているRPGパートでは、プレーヤーは乱世の大陸「カルラディア」に生まれたひとりの浪人としてそのキャリアをスタートする。

 プレーヤーの能力は近接戦闘系、弓もしくはボウガン系、騎乗系、それから部隊運用と経済、対人関係のスキルなどによって構成されている。各スキルはプレーヤーがスタート時に選択した「出自」から一定のポイントが割り振られる仕組み。はじめは一般の雑兵にも満たない非力なプレーヤーではあるが、レベルアップ毎に新たな能力値を獲得・割り振りし、やがては天下無双の戦士、あるいは最高の用兵巧者を目指すのもいいだろう。

 本作のRPGパートの最大の特徴は、シナリオが存在しないことだ。世界は複数の国に分割されており、それぞれの国が覇を競って、各国に所属する諸侯が自律的に和戦両面の作戦を展開している。モンゴル的な国「ケルギット」、フランク王国的な国「スワディア」、イングランド的な国「ヴァエギル」、イタリア的な国「ロドック」、北欧的な「ノルド」、中東的な国「サラン朝」。それぞれに王がおり、独特の兵種が存在し、文化の違いが色濃く再現されている。


カルラディアの大地はいくつもの国によって支配されており、常に戦乱の嵐が吹き荒れている。この中でどう生きていくか、プレーヤーの裁量次第だ

諸侯と接触してクエストを受け、関係を良好にしていく
交易は、うまくやれば最も儲かる手段のひとつ
武闘大会で優勝すれば一気に大金をゲットできるかもしれない

 たとえプレーヤーが居なくても世界はダイナミックに変化し、各国、各諸侯の軍団が都市・城・村を奪いあって戦いを繰り広げている。だが、その世界に「意味」を与えるのはプレーヤー自身だ。プレーヤーはひとりの浪人者として、何をしようと自由。山賊風情に身をやつしてもいいが、独自に兵を集め、軍資金を稼ぎ、「コンパニオン」と呼ばれる旅の仲間を得て、立身出世の道を探るのが王道といえよう。

 兵士は村々で徴募することができる。徴募できるのは各国の民兵で、戦闘を繰り返し成長させていくことでそれぞれの国の上級兵へ成長していく。特に「スワディア」の騎兵、「ヴァエギル」の弓兵、「ノルド」の歩兵は強力でオススメだ。これらの兵種は最上級まで成長させるために長い時間が必要だが、その特色を活かすことができれば、1国の兵種だけで構成されたどの諸侯の軍団をも上回る実力を養えることだろう。

 軍団を組織するために先立つものは軍資金。カルラディアの世界で金銭を稼ぐには、各国の諸侯に接触して頼まれごとを果たしたり、賊を襲って捕虜や装備を奪い売り払ったり、あるいは交易によって利益を追求することもできる。各地で開催される武闘大会に参加し、自分に掛け金をかけて優勝すれば大金が手に入る。悪に手を染める覚悟があるなら、各国のキャラバンを襲って交易品を奪ったり、村を襲って物資を供出させてもいい。全てにリスクとメリットがあり、その選択は自由だ。

 やがて実力を蓄えることができたなら、各国の騎士団に名を連ね、戦国の表舞台にデビューするもよし。あるいは、どの国にも属さず、たったひとりで1国を相手に城を奪い、一国一城の主を目指す。各国の王が時折招集する戦役には大量の諸侯が付き従い、総兵力が数千に至ることもあるので、生半可な準備では簡単に打ち破られてしまうだろうけれども。

 また各国には、それぞれの王位を主張する者たちが潜伏している。彼らに接近して将軍となり、正統の王を立てて反乱を企てるのも立身出世を早める道だ。諸侯との良好な関係をはぐくめば、敵となった軍団を味方につけることも可能だ。独自の領土を手にいれたなら、それを守護し、経営して、税収を得よう。そうして精鋭兵からなる最強の軍団を組織し、伝説の「カルラディア帝国」を復興することが究極の目標だ。

 本作のRPGパートはこのように自由で、柔軟にプレイできる環境が用意されている。何度プレイしても全く同じ展開になることはなく、様々な方法で目指す道を極めることができるのだ。乱世に野心をいだくひとりの騎士として、そのロールをプレイするという意味で、本作はRPGの理想的な形態のひとつといえるだろう。


カルラディアの各地は文化的に異なる表情を持っており、各都市を巡って歩きまわるだけでもなかなか楽しい

一国一城の主を目指すなら避けては通れないのが攻城戦。城壁に配置された大量の散兵に対処しつつ、狭い進撃路から侵入を果たさなければならない

プレーヤーの成長記録。装備を改善し、スキルを高め、軍団を養成して、最強の勢力をめざそう



■ マルチプレイにMOD、さらに広がり続ける遊び

マルチプレイでは兵卒として戦う。相手の弱点を突くテクニックが頼りだ
攻城戦は、守備側のプレイも楽しい。地形をうまく利用して戦う
マルチプレイでの装備はプリセットから選択する方式。活躍すれば高価な装備が使えるように

 シングルプレイだけでも大変なプレイボリュームがある本作だが、マルチプレイモードや多数のMODの存在でさらに遊べるゲームとなっている。マルチプレイは最大64人でのプレイをサポートしており、デスマッチ、チームデスマッチ、旗取り、そして攻城戦といったゲームモードでバトルを楽しめる。

 この最大64人というのは「公式」のサポート数で、世界のゲームサーバーの中には最大200人以上で参加が可能なサーバーも存在する。ゲーム内のサーバーブラウザ上で簡単に見つけることができるので、いちど試してみるといいだろう。100人対100人以上で展開する攻城戦は、ちょっと他にはない雰囲気とおもしろさだ。

 マルチプレイでのプレーヤーにはレベルが存在せず、各国のデフォルト兵士としての能力と、ラウンドごとに与えられる金銭で、プリセットから武器を購入して参加する仕組み。ただこの仕組み、「cRPG MOD」というユーザーメイドのMODを導入すれば、長期的なレベルアップあり、アイテム管理ありという全く違ったゲーム性を導入できる。

 MODで違った遊びができるという柔軟性は本作の特徴のひとつで、現在までに多数の優秀なMODがリリースされている。筆者のお気に入りのひとつは「Custom Commander」というMOD。これはRPGパートを強化するMODで、プレイ中に発生する様々な単純作業を自動化してくれるほか、コンパニオンキャラクターを直接操作して戦闘ができるなど、かゆいところに手が届く仕様を実現している。

 このほか、各種の武器MODも人気がある。ファンタジー系の武器MODでは本来ありえないほどの強力な武器をゲームに導入できるし、なかにはオリジナルのゲームに登場しない銃器類を再現するMODもある。18世紀のマスケット兵による戦闘を再現するMODなどもあって、その幅は想像以上だ。

 筆者は、日本語版がリリースされる前のバージョンから本作にぞっこんであり、既に総プレイ時間は軽く500時間を超え、しかもまだ飽きる気配がない。何度もカルラディアを統一したはずなのに、RPGパートを新たに始めればたちまちハマってしまうという按配だ。この意味不明なまでのゲーム的魅力を、是非多くのゲーマーの方に体験して欲しいとおもう。オススメである。


【マルチプレイモード スクリーンショット】



【スクリーンショット】

(c) 2010 PARADOX INTERACTIVE. ALL RIGHTS RESERVED. MOUNT & BLADE: WARBAND IS A TRADEMARK OF TALEWORLDS ENTERTAINMENT.

(2010年8月27日)

[Reported by 佐藤カフジ ]