DSゲームレビュー

現場に残された過去の記憶……
“第三の目”を使って犯人を追い詰めろ!

「AGAIN FBI超心理捜査官」

  • ジャンル:サスペンス・アドベンチャー
  • 発売元:テクモ株式会社
  • 開発元:株式会社シング
  • 価格:5,040円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(12月10日発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)

 今やお茶の間の定番コンテンツとして人気を博している海外のシリーズドラマ。登場人物たちの熱演や複雑な人間関係、張り巡らされた物語の伏線など、日本のドラマにはない魅力を放っている。ここでご紹介する「AGAIN FBI超心理捜査官」は、そんな海外ドラマのテイストを散りばめた本格派サスペンス・アドベンチャーだ。

 本作はFBIの捜査官たちがチームワークを駆使して謎に包まれた連続殺人事件に立ち向かうという筋書きになっているが、注目すべき点として“特殊能力を使って事件を解決に導く”というギミックがある。「パストヴィジョン」と呼ばれる“事件現場の過去と現在が同時に見通せる特殊能力”によって、時間を超えたふたつの事件の謎を解いていくのだ。特殊能力をギミックに取り入れた海外ドラマには、「デッドゾーン」や「トゥルー・コーリング」があるが、本作もそれらと同様に予想も付かないトリッキーな展開が楽しめるようになっている。さっそく本作の魅力についてお伝えしていこう。



■ 「過去」と「今」に秘められた謎を解き、真犯人を追え!

 物語は、新聞社クロックフォード・タイムズに送られてきた1通の手紙から始まる。アメリカ合衆国連邦捜査局――FBIに所属する、特殊犯罪捜査官のジョナサン・ウェーバー(通称ジェイ)。彼を名指しして送られてきた手紙の差出人は、19年前に起こった連続殺人事件の犯人とされる「プロヴィデンス」を名乗っていた。5人の被害者を出したその事件は迷宮入りしており、殺害現場に毎回1ドル紙幣の切れ端「プロヴィデンスの目」が残されていることから、「プロヴィデンス連続殺人事件」と呼ばれていた。

 差出人の正体を探るべく、かつての殺害現場に向かったジェイ。そこで「プロヴィデンスの目」を見つけ手にしたジェイは、事件現場の現在と過去を同時に見通せるという不思議な能力に目覚めてしまう。時を同じくして、19年前の「プロヴィデンス連続殺人事件」に酷似した殺人事件が発生。プロヴィデンス本人による新たな犯行なのか、それともプロヴィデンスを真似た模倣犯によるものなのか。ジェイは特殊能力「パストヴィジョン」を使って事件の真相に迫る……。

 以上が本作のプロローグ。プレーヤーは主人公ジェイとなり、現在進行中の「プロヴィデンス連続殺人事件」を阻止するために、ひとまず19年前に起きた連続殺人事件の捜査にあたることになる。本作はニンテンドーDSを縦にして文庫本を読むようにプレイするスタイルで、物語は全11章からなっている。ゲームは「捜査パート」と「パストヴィジョンパート」の2つに分かれており、これをくり返すことで捜査を進めていく。



ジェイ宛に届けられた手紙の差出人は、19年前の連続殺人事件の犯人とされる人物。この1通の手紙をきっかけにかつてない難事件に挑む19年前の事件は複雑さを極め、迷宮入りとなっていたプロヴィデンスを語る新旧ふたつの事件に挑む。特殊能力で過去の事件の真相に近づくにつれて、ふたつの事件がひとつにつながっていく……


【主な登場人物】
-FBIクロックフォード支局-
ジョナサン・ウェーバー
冷静沈着さと高い分析力を持つ本作の主人公、通称「ジェイ」。プロヴィデンスからの手紙をきっかけに、過去を見通す「パストヴィジョン」に目覚める。とある事件で両親を亡くしており、養子として育てられた過去をもつ
ケイト・ハサウェイ
有数の資産家でもあるハサウェイ家の長女。FBIアカデミーをトップクラスの成績で修了し、すぐさま特別捜査官に就任した。クロックフォード支局に配属されて以来、つねにジェイと行動をともにする
ヘンリー・ミルズ
ジェイとケイトの上司。仕事に関しては非常に厳しく妥協を許さないが、部下たちの意見にもしっかりと耳を傾ける頼れる存在。ジェイやケイトとは厚い信頼で結ばれており、彼らの相談役としても活躍する
-クロックフォード市警--クロックフォード・タイムズ社-
レーン・マルティネス
現在起きている連続殺人事件を担当する刑事。気難しい性格で、FBIに大きな対抗心を燃やしているが、プロヴィデンスの再来を想わせる連続殺人事件を目の当たりにし、徐々にジェイたちに心を開いていく
モーリーン・ヤシマ
市警で働く女性鑑識官。ケイトの大学時代からの親友でもあり、何かとジェイたちのことを気に掛けてくれる。若いながらも仕事ぶりは優秀で、事件に関する情報を鑑識官としての目線から助言してくれる
ヒューゴ・ワッツ
大手新聞社であるクロックフォード・タイムズに勤める若手新聞記者。性格はお調子者タイプで、ジェイの学生時代の後輩にあたる。情報を得るため、ジェイに捜査の協力を申し出る



■ 有力な情報は足で稼ぐ。捜査パートで犯人の足跡をたどれ

 捜査パートは右画面に表示される各種行動をタッチして過去の事件の関係者に聞き込みをしたり、現在起きている連続殺人事件を追うクロックフォード市警のレーン警部たちと情報を共有したりしながら、有力な証拠や証言を集めていくことが目的だ。

 右画面に表示される行動は、「所持品」、「会話ログ」、「移動」、「ヴィジョン」、「セーブ」、「電話」、「会話」の7つ。聞き込みを行なううえでとりわけ重要なのが、「所持品」と「会話」のふたつ。前者は捜査の過程で入手したアイテムを関係者に見せることで情報を聞き出すことができ、後者は相手に質問することで当時の状況を知る情報を聞き出せるという仕組みだ。

 しかし、これらの有力な手がかりを得るためには、何度も同じ現場や人物の居場所に足を運ぶ必要がある。「現場百回」、「捜査は足で稼ぐ」という刑事ドラマで知られる有名なセリフがあるが、本作の捜査パートもまさにこれ。行なったり来たりを続ける作業的なゲーム展開は好き嫌いが分かれるかもしれない。

 ただ、聞き込みを行なう際に左画面(左利き設定の場合は左右逆)には、会話する相手の人物が表示されるようになっており、彼らのリアクションがいちいち大げさなのが目を惹く。また、日本の刑事ドラマではシチュエーションを長いセリフで説明するケースが多いが、本作はセリフまわしも海外ドラマよろしく矢継ぎ早。テンポいい会話のキャッチボールが繰り広げられるため、飽きることなく聞き込みを続けられるという印象だ。



プレイ中はニンテンドーDSを縦にして操作する。右手側に十字ボタンがくる配置が基本設定だが、左利きプレーヤー用に、逆の設定(左手側にA、B、X、Yボタンがくる配置)も可能ゲームの中心は人との対話。左画面に登場人物が表示され、右画面にテキストが表示される。登場人物たちのジェスチャーと相まって、映画の字幕を読んでいる気分になるストーリーの合間には、セーブ画面へ移る際にアイキャッチ(TV番組がCMへ移る際の演出)が挿入される。細かい要素だが、これがひとつあるだけでよりドラマらしさが際立つ
同じキーワードでも、相手によってその返答は当然異なる。聞き込みの途中で新たなキーワードを引き出したら、再び関係者への聞き込みにあたろう。たとえ1度聞き込みを行なった相手であろうと、新しいキーワードを入手したときは何度でも聞き込みをすること。この地道な努力が解決への近道だ
聞き込みの相手は何も直接的な関係者だけではない。鑑識課や市警、新聞記者といった相手に協力を仰ぐことで、普通ならば知り得ない情報も入手できる新たな人物や場所の情報を入手するたびに、「移動」で行ける場所が増える。FBIのオフィスへ戻ると、現在捜索中の事件の要点や、次に何をするべきかケイトからの助言がもらえる相手への返答が選択肢として出現することもある。容疑者を尋問する場面もあるので、情報を整理して選んでいこう。ただし、選択肢を間違っても特にペナルティはない



■ 事件に隠された真実を暴くパストヴィジョンパート

 捜査パートで過去の事件を再現できるだけの情報を揃えたら、いよいよパストヴィジョンモードの出番。パストヴィジョンを発動するには、メニューから「ヴィジョン」を選択すればいい(自動的にパストヴィジョンパートに移る場面もある)。発動中は右画面に現在の、左画面に過去の事件現場の風景が映し出され、それぞれを見比べながら相違点を探し出していく。

 パストヴィジョンモードの発動中は事件現場が3D画面で表示され、十字ボタンを使って現場内を歩き回りながら、タッチペンをスライドさせることで視点変更が可能。これで過去と現在の風景の違いや疑問が残る箇所を検証していこう。「ここだ!」と思うあやしい箇所を発見したら、すかさずタッチ。なお、タッチのやり方は2種類あり、一瞬だけタッチするとその箇所に関する情報が表示され、長くタッチし続けることでパストヴィジョンパートの肝である「精神集中」が行なえるのだ。

 精神集中を行なった箇所に謎が隠されていた場合、「予感フラッシュ」と呼ばれる画面が白く光る演出が入る。すると左画面に「ヴィジョンパネル」が出現し、予感フラッシュで手に入れた手がかりが記録される。ヴィジョンパネルはいくつかのピースで成り立っており、このピースをすべて埋めることで過去の事件の疑問点が浮かび上がるようになっている。

 ただし、注意したいのは精神集中には「精神力ゲージ」が必要ということ。謎解きに無関係な場所で精神集中を行なって精神力ゲージがゼロになると、その場でゲームオーバーになってしまうからだ。過去と現在で風景を見比べて「ここだ!」と精神集中を行なってみたものの、その違いが単純に建物の経年劣化などによるケースもあるので、事前に捜査パートで手に入れた情報を鑑みて検証する必要がある。精神力ゲージを無駄遣いできないゆえ、「プレーヤー自身がじっくり検証してから謎解きを行なうおもしろさ」が存分に味わえるのが本作の魅力といえよう。



「ヴィジョン」を選択し、パストヴィジョンパートへ移ると、左画面にムービーが表示される。ジェイがパストヴィジョンを発動し覚醒するその様は、見ていて思わず息をのむ緊迫感だパストヴィジョンパートでは現場を自由に歩き回れる。物をチェックするのはもちろん、壁や床、天井もくまなく調べよう。ときには少し引いた位置から空間を見渡すのも大事スライドでの視点変更は、左右以外に上下も可能。移動しながら視点変更することもできるので、効率よく現場を捜索していこう


 パストヴィジョンから精神集中、予感フラッシュまでの一連の流れは始めこそ戸惑ったが、間違い探しに似たこのシステム、プレイを続けるうちにどんどんのめり込んでいった。自分の直感だけを信じるときもあれば、捜査情報を統合して目星をつけ、精神集中を行なう場面もある。自分の予測がピタリとハマったときの快感は、何ともやみつきになりそうだ。



怪しい箇所に目星をつけたらまずは精神集中。成功すればそのまま予感フラッシュが発生。このとき、失敗して精神ゲージが減少した場合は、あきらめて別の箇所を探そう。予感フラッシュが発生すれば、それが手がかりとしてヴィジョンパネルへと記録されるのだ。この手がかりを、ヴィジョンパネルのカケラ分集めよう
パストヴィジョン中は、左画面に過去の、右画面に現在の状況が表示される。両画面をしっかり見比べながら探索し、何か違いがないか探していこう左画面にある割れた破片のようなものがヴィジョンパネル。割れている数だけ、その現場には手がかりがある。発見した手がかりは、ヴィジョンパネルの対応した場所に記録される精神集中を行なって予感フラッシュに失敗した場合、右画面上部に表示された精神力ゲージが少し減少。この精神力ゲージがすべてなくなってしまうと、ゲームオーバーとなる
精神集中を失敗して減ってしまったゲージは、捜査日が進まない限り回復しない。パストヴィジョンパートへ移行する際は、かならず事前にセーブをしておこう手に入れた過去の手がかりを振り返りたいときはプロヴィデンスの目のアイコンをクリック。どんな手がかりを手に入れたのか、あといくつ集めればいいのかが一目で判断できるアイテムアイコンから使えるアイテムは、パストヴィジョンパートで入手したアイテムのみ。捜査パートで入手したアイテムとは、別のものとして認識しておこう



■ ヴィジョンパネルのカケラをすべて入手したら、いよいよ過去の再現へ!

 パストヴィジョンで手がかりを集めてヴィジョンパネルをすべて埋めたあとは、いよいよ現在の事件現場で過去の再現に移り、さらなる真実を探ることになる。19年前と今では当然ながら状況が大きく異なっている。そのため、左画面に映し出された過去の現場を参考に、アイテムやタッチペンを使って過去の状況を再現していこう。事件現場の再現に成功すると、過去の映像が「ヴィジョン」として映し出される。これにより、過去に起こった出来事が判明するのだ。

 それと同時に、ヴィジョンパネルに記録されていた手がかりが、このヴィジョンの映像へと変化する。映像をすべて集めたら、いよいよ最後の仕上げ。右画面にヴィジョンパネルが映し出されるので、そこにあるヴィジョンを時系列順にタッチしていこう。すべてのヴィジョンをタッチし終わると、さらに鮮明な映像とともに過去が見えてくる。ついに事件の真実へと近づく瞬間だ。



再現にはアイテムが重要な鍵となっていることも多い。また、タッチペンをスライドさせてアイテムを置いたり、特定の場所をこすったりといったアクションも登場するヴィジョンの映像は不鮮明だが、現場にいた人物しか見られない非常に貴重な映像が確認できる。このヴィジョンの出来事を元に、捜査パートでのキーワードが登場することもあるどうしても再現できない場所があるときは、アイテムや特定の情報が足りない可能性がある。1度現場を離れ、再度聞き込みをして情報を集め直そう



■ 過去の目に映し出される真実……果たして真相は!?

 パストヴィジョンによる過去と現在の事件現場の検証を終えると、過去の出来事がはっきりとした形で表示される。被害者や殺害時の状況、そして犯人の正体を暴く瞬間だ。もちろん、ひとつの事件を解決したからといってのんびりしている暇はない。プロヴィデンスを模倣した連続殺人事件の脅威は、今も市民を脅かしている。すぐさま次の殺人事件の捜査に取りかかり、すべての謎を解明していこう。

 本格的な推理ドラマに加え、特殊能力というギミックを使ったシナリオとシステムが非常に魅力的な本作。実写映像を取り込んだ海外俳優たちの演技もツボを押さえたもので、ゲームをプレイしていないときもふと事件の謎について考えたりと、ここ数日はまさに海外ドラマに熱中しているときのようだった。ニンテンドーDSの小さな画面の中で、奥行きのある練り込まれたドラマを楽しめるのは、まさに推理小説の進化形とも言える完成度だ。

 話を追ううちに、ついつい「あとちょっとだけ……」と続きが気になってしまい、時間を忘れてプレイしたこともしばしば。海外ドラマ三昧もいいが、ジェイとともにプロヴィデンス連続殺人事件の謎に挑んでみるのはいかがだろうか。



最後のヴィジョンは、現場の状況だけでなく、被害者、加害者の顔がはっきりと認識できるほど鮮明。とくに被害者が殺害されるシーンは、かなり衝撃的だ過去の事件を1つ解決するたびに、プロヴィデンスを模倣した新たな殺人事件が起こる。その殺害状況は、まさにこれから臨もうとしている事件と酷似。この奇妙な一致は果たして……物語を追っていくと、プロヴィデンスだけでなくさまざまな人物の過去を知ることができる。ジェイがFBIを目指した理由や、プロヴィデンスとの意外な関係性などが明かされていくのだ


(C)TECMO,LTD.2009


(2010年 1月 12日)

[Reported by 目代将規(TRISTAR)]