【特別企画】

「ゼルダの伝説」発売40周年。気鋭の拡張デバイス「ファミリーコンピュータ ディスクシステム」とともに生まれたアクションRPGを振り返る

【ファミリーコンピュータ ディスクシステム/ゼルダの伝説】
1986年2月21日発売

 今から40年前の1986年2月21日、任天堂の「ファミリーコンピュータ」の周辺機器「ディスクシステム」と、そのローンチタイトル「ゼルダの伝説」が発売された。

 ファミコンソフトの新しい供給媒体として、磁気ディスクを採用した「ディスクカード」を用い、従来のロムカセットの3倍という大容量をうたって発売された周辺機器は、同時発売された「ゼルダの伝説」をはじめとするヒット作を数多く輩出し、当時のユーザーの心に刻まれる機器となった。

 本稿ではその40周年を記念し、ディスクシステム実機や「ファミリーコンピュータ Nintendo Classics」でプレイできる「ゼルダの伝説」の画像を用いて、ユーザーだった筆者が発売当時のことを振り返ろう。

ディスクシステムと「ゼルダの伝説」のディスクカード。1986年2月21日発売。本体は15,000円(ファミコンは別売り)、ソフトは2,600円。写真は全て筆者の私物
「ゼルダの伝説」のパッケージイラスト。リンクが左利きという設定はこのときからある ※画像提供:任天堂

容量はロムカセットの3倍! 独自の拡張音源も搭載した、ファミコン期待の周辺機器

 ディスクシステムが発売された1986年2月は、ファミコンの発売からおおよそ3年目にあたる。前年9月に「スーパーマリオブラザーズ」が発売され、家庭用ゲーム機としての知名度が大きく向上した。その次なる一手としてリリースされたのがこの機器である。

ファミコン本体にRAMアダプタを装着し、ケーブルをドライブに繋げば準備完了。ドライブの駆動には単二電池6本か専用のACアダプタが必要だ ※画像提供:任天堂

 制御用の「RAMアダプタ」と「ディスクドライブ」のセットで、PCなどでは一般的だった磁気ディスクを媒体に採用。安価かつロムカセットの約3倍の大容量をうたい、さらにセーブデータの保存や、ディスクに記録されたゲームをほぼ500円で別のタイトルに書き換えられるという、当時のユーザーにとっては夢のようなサービスも実施された。

「ゼルダの伝説」のソフトには書籍のような説明書(右)が同梱された。ソフト自体も安く、カートリッジソフトが5,000円前後だったのに対し、本作は2,600円だった
この黄色い「ディスクカード」をモチーフとしたシンボルキャラクターも登場し、人気を博していた。表と裏に書き込み領域があり、容量が大きなものは両面を使用する
店頭には「ディスクライター」が設置され、ディスクを持っていくことで有料でソフトを書き換えてくれた ※画像は任天堂公式サイトより引用
ソフトの書き換え価格はユーザーのお小遣いにもやさしい500円。ディスクに貼るラベルと説明書がもらえた。「ゼルダの伝説」のような書籍タイプの説明書は+100円かかった

 筆者はファミコンを入手して以降、ゲーム関連の情報源として購読していた雑誌でその存在をサプライズ的に知ったわけだが、ファミコンより200円高い15,000円という価格に躊躇し、しばらくは静観していた。

 改めてその存在を強く意識したのは、ラジオの深夜番組で「ゼルダの伝説」についてのトークを耳にしたときのことだ。番組のパーソナリティが、本作とディスクシステムの入手や事前の準備、序盤のゲームプレイについての紆余曲折を語り、後述するテレホンサービス(電話をかけると音声テープが流れ、本作のヒントを聴けた)のことなどについて触れたことが、筆者に「このゲームを遊んでみたい」と強く思わせるきっかけとなった。

 筆者がディスクシステムを入手するのは、当時遊んだソフトなどから、発売年の秋以降だったと記憶しているが、幸運なことにいち早く手に入れていた友人から本体とソフトを一式借りることができ、発売から比較的早い段階で「ゼルダの伝説」を体験することができたのだ。

本体の電源を入れてドライブにディスクカードを挿入すると読み込みが開始される。※残念ながら経年劣化でドライブが動作しなかったため(涙)、以降のゲーム画面は「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online」を使用

 タイトルに興味を持ったきっかけがラジオ=音だったこともあり、第一印象として強いインパクトを受けたのがそのサウンドである。「ゼルダの伝説」はゲームを起動するとタイトル画面が一定時間表示された後、プロローグのメッセージからゲームに登場する宝物(アイテム)が下から上にゆっくりスクロールし、再びタイトルへ戻る演出が施されていた。

 そこで流れる「タイトルBGM」はディスクシステムの拡張音源を用いており、それまでのファミコン楽曲とは一線を画す深みのあるサウンドで、筆者を舞台となるハイラルの世界へと引き込んでいった。

滝が流れるタイトル画面。当時は黒バックにロゴが表示されるタイトル画面が多かった中、世界観を表す情景の画面は美しかった
「タイトルBGM」の旋律とともに宝物リストが流れるタイトルデモは、いつまでも見ていられる。最後にリンクが掲げる「くわしいことは本をみて下さい。」は説明書を指していると思われる

 「ゼルダの伝説」は発売当初、明確なジャンル付けがされておらず、手触りとしては見下ろし型の画面で上下左右に1画面ずつスクロールするタイプのアクションゲームだった。次のディスクシステム用タイトルとして発売される「謎の村雨城」も同様のタイプだったが、ゲームとして明確に違ったのは、“主人公リンクが宝物を手に入れることで成長していく”点である。

リンクの旅は洞穴にいる老人に剣をもらうことから始まる。剣は3種類あり、ハートの上限数でより強いものを持てるようになる
ハートが少ない序盤は、弱い魔物にも敵わないことも。ルピー(お金)を稼いで、商人から道具を買うことで新たな道が開ける

 リンクのHPは「ハートの水筒」、攻撃力は「剣」、防御力は「シールド」に依存しており、それらを入手することで強くなっていく。そのほかの宝物はリンクの攻撃や移動をアシストするもので、手に入れることで移動範囲が広がるとともに、その先にはより強い魔物が待ち受けているというレベルデザインが施されている。

 ファミコンで「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といった本格的なRPGが発売されるのはもう少し先のことで、アイテム取得によって成長するアクションRPGの手触りを本作で初めて体験したユーザーも多いはず。こうしたゲームデザインは、一部作品を除いて、その後の「ゼルダ」シリーズへと脈々と受け継がれている。

要所でリンクを待つ老人は「命の水」(回復薬)かハートの水筒をくれる。前者は後に買えるようになるので、迷わず後者をもらおう
迷宮には必ず一つ宝物が隠されている。中にはゲームを進めるために必要なものもあるので、念入りに探して必ず入手するのが定石だ

広大なハイラルのフィールドと9つの迷宮。ゲームクリア後には「裏ゼルダ」もプレイできた

 大容量をうたうディスクシステムのローンチタイトルということもあり、舞台となるハイラルのフィールドは全128画面、「LEVEL」で表記される迷宮は9つ存在する。迷宮は(構造上の部屋の流用はあるものの)、それぞれが数十画面分の広さを持ち、進行に合わせて規模も拡大していくなど、かなりのボリュームを誇っていた。

 さらにゲームクリア後には、迷宮の場所や構造が異なる高難度の「裏ゼルダ」まで用意されていた。

フィールドマップは8×16画面に及ぶ。最初から全ての場所へ行けるわけではなく、宝物が必要な場所もある
ディスクの読み込みは迷宮に入るときに行われる。それなりに時間はかかったが、入口で間違って出入りを繰り返したりしない限り、待つことはそれほど苦ではなかった

 「ゼルダ」シリーズ名物の謎解きも、この頃からすでに確立されていた。迷宮の入口の発見方法やボスの倒し方などは当時としてはかなり巧妙で、ゲームデザイン自体に類例が少なかったこともあり、多くのプレーヤーが頭を悩まされたはずだ。

 そのため、ソフト付属の説明書にはLEVEL1に至るまでの攻略法やLEVEL2までのフィールドマップ、ゲームプレイのヒントなどが表記されている。さらに、公認ゲーム誌の「ファミリーコンピュータMagazine」では、任天堂の宮本茂氏(プロデューサー、現任天堂代表取締役フェロー)と手塚卓志氏(ディレクター、現任天堂執行役員および企画制作本部 上席統括)がQ&Aに答える形で語った手厚い攻略情報の記事も掲載された。

宝物は迷宮で手に入るものがほとんどだが、一部はフィールドに隠されているものもあり、それらを128画面の中から探すのは大変だ
迷宮の入口も隠されていることがあり、ただ歩き回るだけでは見つからない。ヒントをくれる人もいる

 先ほども触れたが、任天堂は本作のプレイに行き詰まった人に向け、所定の番号に電話をかけることでゲームのヒントを音声で聴けるテレホンサービスも実施していた。筆者も実際に電話をかけたことがあり、本作の「地上BGM」を背景に、ゼルダの乳母インパが迷宮の場所や宝物について説明してくれるという内容だったと記憶している。

 情報過多の現代では想像しにくいサービスだが、当時主流だった雑誌媒体ではカバーしきれない公式情報を、いつでもどこからでも聴けるという点はきわめて斬新な体験だった。

これはディスクシステムユーザーになった筆者が保存していた「ファミリーコンピュータMagazine」のスクラップ。“てっちゃん”または“TENTEN”こと手塚氏と、“みっちゃん”または“MIYAHON”こと宮本氏による解説が記されている
誌面にはテレホンサービスの番号も掲載。電話代が高額にならないよう、地域ごとに異なる番号が用意されていた

「THE HYRULE FANTASY」の始まり。シリーズに受け継がれる世界観はこの頃より確立

 タイトルロゴに「THE HYRULE FANTASY」とサブタイトルが掲げられているように、その舞台となるハイラルや登場キャラクター、魔物などの世界観も、本作の時点である程度確立されていたように思える。

 主人公のリンクは緑の装束をまとう耳の尖った左利きの剣士。神秘の力を持つ三角形の遺物「トライフォース」、そのトライフォースに深く関わる王国の姫ゼルダ、そして大魔王ガノン。説明書のプロローグのみとなるが、ゼルダの乳母インパも登場している。

リンクは左利きだが、本作の剣による攻撃は突きが主体のため、利き腕はあまり強調されない。ゲーム画面の彼が下を向いた際の攻撃時に見えるシールドの動きから、かろうじて左利きだということが分かる
ガノンは巨大な豚のような魔物。デスマウンテンにあるLEVEL9の迷宮最深部で、「知恵のトライフォース」を集めてきたリンクを待ち受ける。後に「ガノンドロフ」として、多くのシリーズ作品で宿敵として登場する
本作のゼルダはガノンに捕らえられていて、ラストシーンに登場する。シリーズごとにキャラクター設定は異なるが、物語やトライフォースに深く関わるヒロインであることは共通している

 本作でガノンがハイラルに放つ魔物達の一部は、シリーズ最新作の「ティアーズ オブ ザ キングダム」に同名の存在が登場したことが記憶に新しい。リンクのマジカルシールドを食べる「ライクライク」、プレーヤーがIIコントローラーのマイクに叫ぶと倒せる「ポルスボイス」、壁から現れてリンクを捕獲し、迷宮の入口に戻してしまう「ウォールマスター」など、唯一無二の個性的な魔物も多数登場している。

“盾食う虫”のライクライクは、その後のシリーズにも嫌われものの魔物として姿を変えて登場する

 また、任天堂のコンポーザー近藤浩治氏が手がけたサウンドも、「ゼルダ」シリーズの象徴として受け継がれている。「Nintendo Switch Online」の楽曲配信サービス「Nintendo Music」では、この「ゼルダの伝説」を筆頭に、いくつかの「ゼルダ」シリーズの楽曲を聴くことができる。その系譜を聴き比べてみるのも一興だろう。

フィールドで流れる「地上BGM」のメロディは、後のシリーズでも様々なアレンジバージョンが制作された

「ゼルダの伝説」筆頭とする名作を安価でプレイできた、コストパフォーマンスの良さは忘れない

 ディスクシステムとともに生まれた「ゼルダの伝説」は、続編「リンクの冒険」が翌年1月に発売され、その後のシリーズは次世代機のスーパーファミコン用タイトル「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」へと受け継がれていく。

 ディスクシステムではその後「メトロイド」、「パルテナの鏡」、「ファミコン探偵倶楽部」といった任天堂の人気作がリリースされ、各社からも多数のヒット作が誕生した。

 しかし、ディスクカードのそれをさらに上回る大容量ロムカセットの台頭により、需要は徐々に減少していく。それでもソフトの供給は1992年頃まで続き、書き換えサービスは2003年まで行われていた。

「ゼルダの伝説」の続きの物語を描く「リンクの冒険」もディスクシステムで発売された。シリーズで数少ない経験値制を導入したアクション要素の強いRPGで、こちらも「ファミリーコンピュータ Nintendo Classics」でプレイ可能だ
「ファミリーコンピュータ Nintendo Classics」では2026年2月現在、任天堂のディスクシステムタイトル12作品をプレイできる

 ディスクシステムは国内だけの展開だったので、日本のファミコンユーザーだけが楽しめたことも特筆に値する。ディスク音源ならではの深みのあるサウンドや、書き換えによる最新ソフトの手軽な入手手段、「ファミコン探偵倶楽部」のような2枚組ソフトの登場など、カートリッジソフトでは味わえない独自の体験がそこにはあった。

 ディスクシステムとともに生まれた「ゼルダの伝説」は現在、「ファミリーコンピュータ Nintendo Classics」で当時とほぼ同じプレイフィールで楽しむことが可能だ。現役でプレイをしたことがある人も、そうでない人も、40年にわたって続く「ゼルダ」シリーズの原点となる本作を、この機会にぜひ体験していただきたいものだ。