2017年4月6日 09:31
「Mass Effect」シリーズ最新作「Mass Effect: Andromeda」が登場した。本作は宇宙を駆け巡るアクションRPGだ。これまで「Mass Effect」は日本語版もリリースされてきたが、シリーズ4作目の最新作となる「Mass Effect: Andromeda」は残念ながら英語版のみのリリースとなった。Windows版がEAのゲーム配信ストア「Origin」において購入可能だ。
本シリーズの魅力はなんといっても「スペースオペラ」だ。異星人の仲間と共に強力な宇宙船に乗り込み、銀河の星々を探索する。様々な脅威、宇宙の謎が待ち受けており、主人公は仲間と共に苦難に立ち向かっていく。こういった“王道”をたっぷり体験できるのが、「Mass Effect」シリーズの楽しさなのである。
「Mass Effect: Andromeda」では、634年という長い長い旅路の果てにアンドロメダ星雲にたどり着いた者達の物語となる。これまでの舞台から一新、新しい物語がスタートすることとなる。キャラクタービルドや、生産要素なども興味深い、楽しいRPGとなっている。本作の魅力を紹介していこう。
634年の旅路の果てにたどり着いたアンドロメダ銀河で、冒険が始まる
「Mass Effect: Andromeda」では、634年の時を経て地球のある天の川銀河からアンドロメダ銀河へ旅をしてきた人々が中心となって物語が展開される。彼らは銀河系全体を脅かす「リーパー」の脅威から逃れるため、天の川銀河を離れることを決断したのだ。物語は、634年以上もコールドスリープをしていた主人公スコット ライダー(もしくはサラ ライダー)が目覚めるところから始まる。
目覚めた瞬間、突然スコットの乗る宇宙移民船「アーク・ハイペリオン」は“座礁”してしまう。未知のエネルギーフィールドが宇宙船を絡め取り航行不能にさせてしまったのだ。スコットは父と共にこの謎の鍵を握ると思われる惑星の調査へ赴く。スコットの父はこの船で最も優れた兵士であり、科学者であり、水先案内人の役割を与えられた「パスファインダー(Pathfinder)」の称号を持つ人物だった。
しかし、調査に赴いた惑星で、謎の異星人と遭遇、戦闘状態に突入してしまう。さらにこの星には謎めいた先進文明の遺跡があることを知る。どうやら敵性異星人もこの先進文明を狙っているようだ。調査隊は甚大な被害を受けながらもパスファインダーの優れたリーダーシップで謎を解き明かし、遺跡を起動させ、「アーク・ハイペリオン」をエネルギー流から解放する。
しかし、遺跡作動の衝撃がスコットとパスファインダーを吹き飛ばす。スコットのヘルメットのバイザーが割れ、呼吸ができなくなる。そのとき、父は自分のヘルメットを脱ぎ、スコットにかぶせた。そして、息子を次のパスファインダーへと指名し、絶命した。生き残ったスコットはパスファインダーとして、専用の宇宙船「テンペスト」を受領、天の川銀河の第2の故郷を求めて、冒険に出発する……。
「Mass Effect」シリーズではこれまで宇宙への進出が一番遅れた“人類”が世界の命運を握るという物語だった。宇宙連合軍のシェパード少佐を主人公に、「プロセアン」と呼ばれる古代文明で発展する天の川銀河の人々、しかしそれは大きな“罠”があった、というのが、これまでの「Mass Effect」のストーリーだった。「Mass Effect: Andromeda」は舞台や登場人物を一新、アンドロメダ銀河において、新しい一歩を踏み出そうとする人々が描かれる。
新しい物語を目指す「Mass Effect: Andromeda」だが、基本的な設定はこれまでを踏襲している。移住を決意したのは地球人類だけではなく、前作までの多彩な異星人達がいる。雌雄未分化の「アサリ」、ひ弱な体の「サラリアン」、規律を重視する「トゥーリアン」などなど、彼らの歴史と風俗を知っていれば、本作の楽しさは大きく広がる。
そして、やはり、「宇宙を駆け巡る冒険」だ。パスファインダーを受け継いで、テンペストに乗り込んでからが本作の本当の始まりとなる。アンドロメダ銀河を飛び回り、いくつもの太陽系を駆け巡る。様々な惑星と、多彩なクエスト、そして展開する物語がプレーヤーをぐいぐいと「Mass Effect: Andromeda」の世界へと引き込んでいく。
惑星上では本格TPSのシステムと、様々なスキルによるエキサイティングな戦闘が楽しめ、パズル要素の強いアクションも本作の大きな魅力となっている。さらにビーグルに乗り込み道無き道を進んでいくことができる。キャラクタービルド、パーティ編成とゲームの楽しさも高い。
アンドロメダ銀河で勢力を伸ばそうとする「Kett」や、彼らに抵抗する「Angara」といった新種族も登場し、そして謎の古代文明が物語の鍵を握る。天の川銀河の人々はこの世界で安住できるのか、新たな銀河を舞台にした壮大な冒険が、今始まるのだ。
様々な能力をパワーアップ、力の限り戦え!
「Mass Effect: Andromeda」の大きな魅力はこれまで以上に洗練された戦闘システムだ。プレーヤーキャラクターであるスコット(サラ)は「コンバット」、「バイオティクス」、「テック」の3つのカテゴリーから様々なスキルを成長させキャラクターをより個性的に成長させていく。スキル取得にはレベルアップで得られるポイントを使い、スキルは成長させることでより個性的な特性が付与されていく。一方でどれを上げて良いか迷ってしまうところもある。
スコットを助けるパートナーのキャラクター達は種族や性格で入手できるスキルが決まっており、選択肢の幅は狭いため成長がわかりやすい。ゲームを進めていくと仲間が増えるが、出撃させなくても経験値は得られ、成長していく仕組みになっているため、プレーヤーの成長の方向性や、敵の特性に合わせてメンバーを組み替えていけば良いだろう。
取得する能力によって戦闘方法は大きく異なってくる。筆者の場合は初期から習得していた強力な攻撃が放てる「CONCUSSIVE SHOT」を上げていった。しかし威力を求めていたところ発射に「パワーセル」というリソースが必要となってしまい、安易に撃てなくなってしまった。
代わりに「テック」のカテゴリーで攻撃スキルを取ってみた。前作までは相手を持ちあげて無力化するバイオテックのスキルが強かったが、今作ではどうだろうか。色々試してみたい。本作が好きになったプレーヤーはとことんまでやり込み、キャラクターを育てていくだろう。
今回の戦闘はこれまでのシリーズ以上に楽しい。パートナー達が優秀で、プレーヤーの攻撃にタイミングを合わせてくれる上、簡単には倒れないので、とても頼りになる。逆にスコットだけで突っ込むとあっという間に倒されかねないので注意したい。
シールドの回復、スキルのクールダウン、撃ちまくることでの残弾数の管理など、戦闘は中々忙しい。しかし、戦場にこまめに回復ポイントが用意されているので、ある意味「出し惜しみ無し」という気持ちで戦える。また中ボス的な強さの敵も多く、結構緊張感もある。今作の戦闘はこれまでのシリーズと比べても楽しくエキサイティングだ。
オーグが直面する地獄、この時代の苦難を人類はどう切り抜けるか
今回筆者が大いに気に入ったのが「アイテム製作要素」だ。今回スコットはこまめにセンサーを照射し様々な文明の特性を学んでいく。そしてそれらを元に武器やアーマー、アイテムの設計図を作りだし、各惑星を巡って得たリソースを消費することでアイテムを作成するのである。
ゲームではことあるごとにセンサーを起動し様々なものをスキャンしていく。建物から機械、敵の死体、植物……。これらにセンサーの光を照射し、文明ポイントを稼いでいく。このポイントは船内などの施設で、武器やアーマーの開発に使用する。現在より強力な武器やアーマーをアンロックしていくのは楽しい。
しかも文明は3種類あり、どうリソースを使うかはプレーヤーの手にゆだねられている。銀河文明でアサルトライフルを、アンドロメダ銀河の文明でスナイパーライフルを開発といった「割り振り」をしていくのがいいだろう。
そして設計図ができたら生産である。実はこれが結構ハードルが高い。ゲーム中盤くらいまではとにかく資源が手に入らずやきもきさせられるかもしれない。しかし、この「資源を集める」というアクションがいいのだ。
各惑星を偵察し資源をスキャンする。惑星を車で走っているときにセンサーを見て数値が高いところで収集装置を設置する。こまめに敵の死体や鉱石から回収する……。ダンジョンを隅から隅まで探索するタイプのプレーヤーにはこの資源の回収そのものが楽しいだろう。ゲームが進んでいくと特定の材料が足りなくなり、生産目的のためだけに銀河を駆け巡ることになるだろう。それもまた楽しい。
さらに生産時に盛り込む「オーグメンテーション」も作れる。これらを組み込むことで装備はより強力になる。リソースをどう投入し、どう強くしていくか、やりこむことでより楽しくなる。大きな可能性を感じさせるシステムである。
謎が深まる物語。マルチプレイも搭載
安住の地を求める天の川銀河の人々。彼らはこのアンドロメダ銀河でも古代文明を発見する。この文明は天の川銀河にあったものなのか、そしてこちらの行く手を阻むKettの思惑も機になるところだ。様々な謎が増えて行きつつ、物語は進行していく。
「Mass Effect: Andromeda」はエキサイティングなゲームである。戦闘は凝っており、行く先々の文明は驚嘆させられる強烈なイメージを叩きつけてくる。様々な異星の宇宙人達の個性と、彼らを率いて銀河を巡る楽しさ。「Mass Effect: Andromeda」は“スペースオペラ”をたっぷり楽しめる作品である。
しかし一方で、やはり英語はネックとなる。「Mass Effect」シリーズはなんといっても異星人達の文明が楽しい。どの種族にも独特の風習があり、歴史があり、現在がある。そしてその種族の歴史をベースに各キャラクターの想いがある。種族を代表するようなキャラクターもいれば、種族になじめず葛藤するキャラクターもいる。
しかも彼らはスコットのアクションによって感情を変化させていくのだ。その結果恋愛まで関係が深まることもある。このキャラクター達との関わり合いはシリーズの大きな魅力である。筆者は子供のように表情豊かなアサリの科学者Peebeeが気になっているし、女性のトゥーリアンがどのような反応を見せてくれるか楽しみだ。しかし……かなりの英語スキルが必要だ。正直、筆者の英語スキルでは理解しきれない。やはり日本語の翻訳が欲しい。
また、本編以外の魅力として、「オンラインマルチプレーヤー」がある。こちらはオフラインとは異なるキャラクターを育て上げていく。「Mass Effect: Andromeda」の戦闘部分を特化したゲームとなっていて本編とは別に育てていく楽しさ、強化していく面白さ、そして他プレーヤーと協力する面白さを満喫できる。
こちらは本編を満足するまでやりこんでから挑戦したい要素である。アップデートで様々なミッションが追加されていくのも魅力で、これからの「Mass Effect」シリーズの新しい展開を予想させる要素である。
「Mass Effect: Andromeda」は改めて「スペースオペラ」の楽しさを実感させてくれる作品だ。自分だけの宇宙船に乗り込み、個性豊かな宇宙人達を仲間に加え、邪悪で強大な敵と戦いながら、銀河を駆け巡る……。「キャプテン・フューチャー」や「レンズマン」などの古典SFに胸を熱くした人はもちろん、「スター・ウォーズ」、「スタートレック」が切り開いたより幅広いファン層など、米国には層の厚いスペースオペラファンがいて、そういった人に本作はたまらない作品といえる。
残念ながら日本ではスペースオペラはそこまで大きなファン層はない。しかいそれでも筆者のように「大宇宙の冒険」に強い魅力を感じる人もいるだろう。確かに言葉の壁はあり、魅力の隅々までは味わえないかもしれないが、それでもかなり楽しめる。なにより、「Mass Effect: Andromeda」という、質の高い、エキサイティングなスペースオペラ作品が生まれたことをまずは祝いたい。宇宙にロマンを感じるならば、チャレンジして欲しい作品だ。
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