2017年3月17日 07:00
バンダイが2月末に発売したアクションフィギュア「ROBOT魂(Ka signature) ディジェ(以下、「ROBOT魂 ディジェ」)」。プレミアムバンダイの受注販売商品だが、GDCに取材にいっていた関係で、筆者の元にもようやく届いた。
本商品はユニークなアレンジとギミックが盛り込まれた商品である。なにより、「機動戦士ガンダム」の代表的なキャラクターアムロ・レイの搭乗機でありながら、他の機体に比べてマイナーな“ディジェ”というモチーフそのものがおもしろい。今回は本商品の魅力を語っていきたい。
アムロの搭乗機なのにマイナー機体? ジオン風のデザインがカッコイイ
「MSK-008 ディジェ」は、アニメ「機動戦士Zガンダム」に登場したMS(モビルスーツ)。地球上でティターンズに対抗するために活動している組織カラバが試作したMSであり、エゥーゴの地球降下作戦時に残された「リック・ディアス」を改修した機体である。陸戦用のMSとして設計されており、アニメの35、36話においてアムロ・レイの搭乗機として活躍した。
ディジェはビーム・ナギナタや頭部のデザイン、スカートのような腰部の装甲と、太い足など全体的に「ゲルググ」を思わせるデザインである。右肩に盾、左肩にスパイク状の突起があるウェポンハンガーと、ザクから続く左右非対称の意匠も取り入れられており、“ジオン系”を強く感じさせられる機体となっている。設定的にもジオン系の技術者が製作を担当したというものになっている。
「アムロがジオン系の機体に乗る」というところにディジェの面白さはあるのだが、リアルタイムで「機動戦士Zガンダム」を見ていた筆者もちょっと驚いた記憶がある。デザイナーを務めた藤田一己氏も「アムロの機体になるとは知らなかった」といった発言をしている。ディジェはファンの間でも登場当初から賛否がわかれたMSであり、プラモデルなどの立体化が比較的少ない。映画「機動戦士Zガンダム」にも登場しないなど、ちょっとマイナーな雰囲気の機体と言えるだろう。
「ROBOT魂 ディジェ」は、Ka signatureという、新たにカトキハジメ氏がアレンジしたディジェの立体モデルとなる。アニメで描かれていたディジェよりも細かくディテールが描き込まれており、全体的にシャープだ。頭部も小さく、マッシブな感じとなっている。全身につや消し塗装が施されており、鮮やかで明るいグリーンと、ボディや装甲の落ち着いたダークブルーとのコントラストもいい。その落ち着いた色合いの中に、ガンダムっぽい胸の赤いハッチや、黄色のダクトと首回りが目をひく。……ディジェにはやっぱり、「ガンダム」の記号を探してしまうところがある。
細部をチェックしていて楽しいのは、やはり各所に描かれたマーキングだ。バンダイコレクターズ事業部では「ROBOT魂(Ka signature)」ブランドで、「ガンダムMk-V マーキングプラス Ver.」や、「フルアーマーガンダムMk-II」など通常の「ROBOT魂」に比べ、高額なラインアップを展開しており、「ROBOT魂 ディジェ」も塗装やマーキングで豪華な感じがある。これらのシリーズを並べると統一感が出て楽しいだろう。
そして可動が優秀だ。腕の付け根には引き出し関節が仕込まれ、武器の両手持ちも可能。腰部のアーマーは細かく分割され、足の動きを妨げない。股関節にはスライド機構まで仕込まれ、ちょっと苦しいが膝立ちポーズまでとらせることができる。色々なポーズをとらせるところが楽しいし、動かしてもパーツが外れたりしないところは完成品のアクションフィギュアだからこそだ。ちょっとこすれて塗装がはがれそうなところは心配だが、高級感たっぷりの塗装と遊びやすさ、というバランスで悩ましいところだ。
ディジェの元デザインは、やはり胴体が動きそうにない。しかし「ROBOT魂 ディジェ」では装甲の分割と腰のブロック構造で可動範囲を確保しているし、中央の赤いブロックは基部も動くので動きの表情付けができる。さらに背中の大きな放熱フィンもバックパックと共に関節がきちんと仕込まれているので、調節すればポーズにさらなる“勢い”を演出できる。そして、本商品に付属する“豊富な武装”がさらなる楽しさをもたらしてくれるのだ。
巨大なメガ・ランチャーに加え、充実しまくりな武装
「ROBOT魂 ディジェ」の主役は“武装”、特に「ハイパー・メガ・ランチャー」だと断言してしまおう。Zガンダムが使っていた大型ビームライフルが、本商品には付属しているのだ。ディジェは百式のビーム・ライフル、リック・ディアスのクレイ・バズーカと、他の機体と同じ武器を使うのが特徴であり、“エゥーゴ側の機体”であることを主張するのだが、その特徴をさらに1歩推し進めたアレンジと言えるだろう。
このハイパー・メガ・ランチャーが“実にイイ”のである。精密なモデリングと、グレー系の渋いカラーリング、銃身が延長したり、左右のグリップの取り付け場所が3カ所も用意されておりさらに下部のグリップはスライドする。これらを活用することで様々な構え方が可能なのだ。
そして「サブアーム」だ。メガ・ランチャーにはいくつもの関節と回転機構が仕込まれたサブアームがついており、ディジェの左肩に装備された「ウェポンラック」のジョイントに接続し、しっかりとメガ・ランチャーを支えることができる。このアームのおかげで、“ものすごくでかい武器をきちんと撃てるようにしっかり保持している”という場面が作り出せるのである。この“がっしり感”ともいうべき絵面がとても楽しい。
メガ・ランチャーは尾部にもう1つアームが設定されており、こちらでも接続できる。設定で明言されていないが「このアームでエネルギーをディジェ側からも供給しているかも?」といった想像も膨らむ。アームとグリップを工夫して色々な射撃ポーズをとらせるのも面白い。さらにサブアームはディジェの左肩にメガ・ランチャーを固定するのにも活用する。アームが展開してディジェが射撃ポーズをとるシーケンスを想像するのはワクワクさせられる。
しかも「ROBOT魂 ディジェ」には百式型のビーム・ライフルと、リック・ディアス型のクレイ・バズーカがそれぞれ2つずつ付属するのだ。これらをバックパックや、ウェポンラックのジョイントに接続できる。特にウェポンラックには武器を重ねて接続できる。ディジェの左肩は“ウェポンラック”という設定だったが、実はどう使うかは長年謎であり、ファン定番のツッコミポイントだったのだ。今回、その活用法が提示されたのである。
使ってみるとしっかりと左肩に武器がはまるし、背中のジョイントも含めると、まるで牛若丸の弁慶のような「武器をいっぱい持った感じ」がでる。しかもこれにメガ・ランチャーまで加えられるのだ! ……実際こんなに装備したら重力のある地上じゃ動けなくなるんじゃないの? ともおもうが、この「フル装備」は実に楽しい。これだけの重装備でもしっかりと直立する「ROBOT魂 ディジェ」の保持力の高さも賞賛したいところだ。
ちなみに本商品には実は「顎パーツを外すと、マスク風の別デザインの顔になる」という説明書にも書いていない隠しギミックがあり、ユーザー間で話題になっている。筆者も外そうと奮闘してみたのだが、ちょっとパーツを壊したり塗装をはがしそうだったので、今回は断念した。やはり壊したくないのでここは安全策をとりたい。
「ROBOT魂 ディジェ」は、筆者にとってかなり満足できるアイテムだ。ジオン系らしいマッシブなフォルムがかっこいいし、多彩な武器を組み合わせ活躍シーンを想像するのが楽しい。「メガ・ランチャーを装備するときはサブでライフル持つかな」、「標準装備はライフルとバズーカで、交換することを考えるとバズーカも右かな」、「バズーカを2つ左肩に持つのは、どんなシチュエーションだろう……」。子供のように玩具を手に持って活躍を空想するいわゆる“ブンドド”が実に楽しい。プレイバリューの高さは、本商品の大きな魅力だ。
(C)創通・サンライズ