「ファイアーエムブレム ヒーローズ」レビュー

ファイアーエムブレム ヒーローズ

最低限のガチャでここまで楽しめる! “低ランク”こそが「FEヒーローズ」の本質だ!

ジャンル:
  • シミュレーションRPG
発売元:
  • 任天堂
開発元:
  • 任天堂/インテリジェントシステムズ
価格:
基本無料(アイテム課金制)
発売日:
2017年2月2日

 ついに2月2日に配信されたAndroid/iOS用シミュレーションRPG「ファイアーエムブレム ヒーローズ」(FEヒーローズ)。ゲームファンに長く愛される「ファイアーエムブレム」シリーズのスマホアプリ化という点でも、任天堂ブランドのスマートフォン用ゲームとして初めて「ガチャ」システムが導入されたという点でもまさに注目されている最中の1作だ。

 ゲーム全体の概要や主要な要素については先行体験レポートにて述べたばかりだが、今回は配信後に本格的にプレイをスタートさせてみて、“低ランクでのプレイ”にこそ本作の本質があると感じた。そこで本稿では「低ランクプレイのススメ」と銘打って、「ファイアーエムブレム ヒーローズ」の優れた点を述べていきたい。

【ファイアーエムブレム ヒーローズ PV】

「ガチャ」はシミュレーションバトルの面白味を失わせたか?

「FEヒーローズ」の戦闘シーン。「FE」らしい戦闘システムがスマートフォン用に落とし込まれている

 本題に入る前に、「FEヒーローズ」の作りを改めてご紹介しておきたい。初めに全体的な構造だが、「FEヒーローズ」はいわゆる“スマホRPG”のフォーマットに則っている。仲間を集めてチームを編成し、バトルを繰り返してキャラクターの成長とメインストーリーを進行していく……という構造自体は他のスマホRPGタイトルでも多く採用されているもので、ここに特段のアイディアが詰まっているわけではない。

 やはり「FEヒーローズ」の目玉となるのは、「FE」シリーズの特徴を活かしたバトルシステムにある。武器の3属性+無属性の相関関係に始まり、近接武器と遠隔武器、歩行・乗馬・飛行による移動距離、さらにはキャラクターごとのステータス特徴やスキル性能といった様々な要素が絡みあうことによって、一手間違えるだけで戦況が大きく変わるような、複雑かつ飽きの来ないシミュレーションバトルが「FE」の持ち味であり、この部分は存分に「FEヒーローズ」でも楽しむことができる。

 しかしこうした「一手が大事になる」面白みは、敵と味方の力量差が拮抗している場合に限る。シミュレーションバトルはバランスがすべてなので、本作には「『ガチャ』によってそれが崩れはしないか?」という懸念も付き纏う。言い換えれば、「『ガチャ』を乱用すれば(★5がたくさんいれば)シミュレーションバトルとしての進行はラクラクだが、そうやって進めることは果たして『FE』と言えるのか?」というのがプレイ前の心配ごととしてあった。

 しかし蓋を開けてみれば、★5の英雄をたくさん揃えたところで上には上のモードがあって、一時的に戦場をガンガン突き進めたとしてもぶつかる壁はあるし、その近辺では実にシビアな戦いが待っている。なので、ガチャがあるからと言って、「FE」の面白さが失われているかというとそんなことはないのでは、という印象だ。

 むしろプレイした実感としてお伝えしたいのは、「ガチャに大幅に頼らないプレイの方が、『FE』らしさを感じるのでは」ということ。低ランク帯からキャラクターをコツコツと育成している時間こそが、本作の最も楽しい時間だとプレイを重ねるたびに思う。以下では、そうした「低ランクでのプレイサイクル」をご紹介したい。

★3キャラクターがいれば「FEヒーローズ」は面白い!

記念すべき5連続召喚第1回。今思えばこの★3×5が「低ランクプレイ」の面白さを気づかせてくれた
★3以下のキャラクターばかりでもコツコツ進める。やることはたくさんあるし、この顔ぶれでもプレイが楽しい

 本作は、初期メンバーは★2のキャラクターで纏められている。本作において★2の立ち位置はかなり弱い方で、メインストーリーの最序盤くらいは良いものの、彼らだけではどうしようもなくなる場面が5章や6章あたりで必ず出てくる。

 そこで一旦は「ガチャ」の登場、となるわけだ。ガチャシステムの「召喚」では、最低限★3以上の英雄が登場するので、たとえ★3ばかりの英雄が集まったとしても、初期メンバーで頑張るよりはプレイはかなり楽になる。

 「召喚」は1回5オーブが必要だが、5回連続で利用すると2回目以降は消費オーブが4つ、4つ、4つ、3つと減少して合計20で済むので、基本的には5回連続での召喚がお得。オーブはメインストーリーの進行で入手できるほか、現在は各種キャンペーンで手に入りやすくなっているので、課金をせずとも5連続召喚を数回程度はすぐに行なえるだろう。

 筆者の記念すべき1回目の5連続召喚は見事に★3が5人だったが、それでもプレイの幅はかなり広がった。

 本作の成長システムは、★の数を上げて英雄をランクアップさせる「覚醒」システムが肝で、「覚醒」が可能になるレベル20への到達が各ランクでの第一の目標になる(★5は最高ランクなので「覚醒」できない)。各ランクの中でも、★3からはスキルが豊富に揃いだすので、レベル20への到達がかなり容易になる。★3がいることで★2の成長の手助けもでき、初期メンバーを含めて様々なキャラクターを成長させる楽しみが生まれる。

 こうした成長過程では、主にシリーズ作の「遭遇戦」にあたる「修練の塔」でプレイを回していくことになるが、この「修練の塔」でレベル上げをする過程が「FE」らしくて非常に楽しい。

 この「修練の塔」では、メインストーリーをある程度進行させておくことでチームのレベル帯にあったステージを選択できるのだが、成長を目標としたときに、常に「適当なプレイが許されない」塩梅になっている。

 本作での戦闘では、個々のキャラクターが攻撃を行なったり、敵に止めを刺したときに経験値を獲得できるようになっており、また敵が相対的に弱いほど経験値を得にくくなる。戦闘で倒された場合も「ロスト」はないが、そのマップで得た経験値はリセットになる、という仕組みもある。

 つまり、あるキャラクターを成長させたい場合は、「相応のレベル帯マップ」で「ちゃんと生き残るように使う」必要がある。そのキャラクター自体のステータスに不安がある場合は、他の強いキャラクターで体力を減らしつつ、最後の一撃だけ任せるなどの戦略を取っても良いだろう。サポート役が強すぎると一気に止めを刺してしまうので、その場合はあえて装備を弱く付け替えるなどして上手くあわせていきたい。

 「修練の塔」には、地形の異なるマップがいくつも登場するほか、配置される敵も様々いる。同じマップでも配置されるキャラクターによってまったく違う展開になるし、油断すれば全滅まで簡単にあり得る戦闘が常に繰り広げられるので、そうした中で頭を使ってプレイする戦闘には「FE」らしさを強く感じることができる。

 上手く勝ち抜くにはチーム構成のバランスもかなり考えることになるので、ここが整うまではガチャに頼っても良いかなと思う。ちなみに筆者は、属性の青、赤、緑、無色を1人ずつ入れるのがバランスが良くて好み。無色は特に弓が気に入っているが、手持ちでは初期メンバーのヴィオールしか選択肢がないので、彼を使い続けている。

ぜんぜん手に入らない「英雄の翼」は今後に期待

覚醒に必須の「英雄の翼」。キャンペーン前はこの画面で絶望した

 そういった感じでむやみにガチャを回さずとも、低ランクキャラクターをコツコツ成長させることが楽しくて仕方ないのだが……「FEヒーローズ」最大の問題は、「覚醒」に必要な「英雄の翼」がほとんど手に入らないことにあると思う。その主な方法が他プレーヤーのチームデータと戦闘する「闘技場」でポイントを稼ぎ、一定期間(1週間ほど)で集計されるポイントに応じて配布されるというものなのだが、まず入手のために1週間待つのが辛い。

 加えてより多くのポイントを稼ぐには当然強いチームが必要であり、★3で構成できるチームで稼げるポイントはたかが知れている。ゲーム内ではようやく1シーズンが終了した段階だが、一生懸命プレイして手に入った「英雄の翼」は600。★2から★3への覚醒に「英雄の翼」は200必要なので、★2の「覚醒」3人分が手に入った計算になる。

 なお★3から★4への覚醒には「英雄の翼」が2,000、★4から★5ともなると20,000が必要になるので、これはかなり気が遠くなる。「ガチャを引かないなら弱い者は弱いまま根気良く頑張ってね!」という運営からのメッセージかとも思ったが、2月7日には「英雄の翼」プレゼントキャンペーンが実施されて、「英雄の翼」10,000の全員配布がサクッと確定した。英雄を低ランク帯から育てることに喜びを見出していた1人として、これはかなり嬉しい決定だ。今後の「英雄の翼」の扱いをどうしていくかも含めて、期待できる施策の第1歩と考えたい。

“1人も死ねない”「英雄戦」で感じる「FE」らしさ

2月8日の「英雄戦」で入手できた「リズ」。回復役が仲間にいなかったのでかなり嬉しかった

 もう1つ、「FE」らしいゲームモードが「スペシャルマップ」だと筆者は考えている。ここでは期間限定のマップがプレイできるのだが、中でも注目はクリア条件達成で★1、あるいは★2の英雄が手に入る(たとえば2月8日であれば「ファイアーエムブレム 覚醒」に登場する「リズ」が報酬対象)日替わりの「英雄戦」マップ。

 このマップでは難易度がノーマルとハードとあり、ノーマルでは敵の目安がレベル5、ハードではレベル15に設定されているのだが、「味方4人生存」というクリア条件がかなり興味深い。

 他の通常マップでは、キャラクターが倒された場合、そのキャラクターがそのマップで得た経験値やスキル獲得に必要な「SP」などがリセットになるというデメリットはあるものの、1人でも生存してクリアすればクリア報酬はもらえるようになっている。プレイが終われば倒れた仲間も復活するため、味方が倒れることを普通はそこまで気にする必要はないのだが、クリア条件が「味方4人生存」となるとまったく話が変わってくる。

 要は1人も死なせられないので、味方が死んだら「ロスト」する本来の「FE」に近い感覚のプレイとなる。ノーマルは比較的簡単だが、ハードとなるとレベル20以上の★3キャラクター4人で挑戦して、3回失敗して1回成功するくらいの難しさになっている。動かし方に気をつけて、慎重に事を運んでやっと成功するという点で、このレベル20で★3×4人による挑戦が非常にやり応えがあって良い。

 クリアすれば毎日新たな英雄が手に入るし、実際悩みながらのプレイになる分、達成の感慨もひとしおなので、興味があればチャレンジしていただきたい。さらに2月10日16時からは、★3の英雄が手に入る「大英雄戦」の実施も発表された。こちらも今から楽しみにしておきたい。

どのランク帯でもがっつり楽しめる骨太構造こそが「FEヒーローズ」の凄み!

ホーム画面では、城の装飾をオーブで購入しておくことで、獲得経験値を最大100%上昇させることができる。地味な要素に見えるがかなり大事なので、ガチャよりも優先的に導入しておきたい

 「FEヒーローズ」が配信された直後は初期メンバーのまま進めることへの行き詰まりから、「まずガチャで★5を当てないと始まらないのでは?」と感じたのだが、実際には低ランク帯でじっくり取り組むゲームプレイこそがしっかり面白いという構造は非常に興味深い。

 一方で高ランク帯に突入すれば、ストーリーモードにも「ハード」、「ルナティック」といった高難易度ステージが用意されているなど、ランク帯に応じた遊びはきっちりある。

 運営型ゲームの宿命として、エンドコンテンツの積極的な提供や上限の解放が多くのプレーヤーの注目点となっていくと思われるが、本作においてはそこに至るまでの遊びが骨太に設計されており、ガチャを利用してもしなくても、「FE」の本質を見失わずにじっくりと遊ぶことができる点はかなりの好印象だ。これから本作を始める人には、「低ランク帯からでもかなり楽しめるよ」ということはぜひお伝えしていきたい。

 また「低ランクプレイ」のメリットとしては、低ランクから始めることでキャラクターの動きやスキルについて順を追って理解できることと、成長過程で自然とSPが溜まっていくので、ガチャ等でキャラクターを入手するよりもスキルを多く覚えた状態でプレイできることが挙げられる。育成についてはその分時間はかかってしまうが、成長させるほどに頼もしくなっていく英雄たちを見るにつけ、面倒を見たかいがあったということを実感できるだろう。

 コンテンツ的にはゲームモードに「???」という未公開のものがあり、今後の進化・拡張を思わせるものもある。「FEヒーローズ」はまだ配信されたばかりなので、今後のアップデートや最新情報にぜひとも注目したい。