「Sound BlasterX Siege M04」、「Sound BlasterX Vanguard K08」レビュー
Sound BlasterX Siege M04
クリエイティブがゲーミングデバイスに参入! まずはマウス&キーボードをレビュー
- ジャンル:
- ゲーミングマウス
- ゲーミングキーボード
- 発売元:
- クリエイティブメディア
- 開発元:
- Creative Technology
- プラットフォーム:
- Windows PC
- 価格:
- 8,900円(税別)
- (Siege M04)
- 19,800円(税別)
- (Vanguard K08)
- 発売日:
- 2016年12月29日
- (Siege M04)
- 2017年1月21日
- (Vanguard K08)
2017年2月9日 13:06
Sound Blasterシリーズのサウンドカードで有名なPC用オーディオシステムの老舗、クリエイティブ・メディア(グローバルブランド名『CREATIVE』)から、意外な新製品が登場した。ブランド名「Sound Blaste X」を冠するゲーミングマウスとゲーミングキーボードだ。
昨年12月に発売された「Sound BlasterX Siege M04」は、最大加速度50G・最大トラッキング速度250インチ/秒の高性能オプティカルセンサーを搭載した7ボタンゲーミングマウスで、クリエイティブの直販価格は8,900円(税別)。もうひとつの製品は1月21日発売となった「Sound BlasterX Vanguard K08」。こちらはオムロン製カスタム“PRES”キースイッチを採用した104キー+5マクロキー搭載の英語レイアウトゲーミングキーボードで、クリエイティブの直販価格は19,800円(税別)。
どちらもゲーミングデバイスとしてハイエンド帯に属する価格となっているだけに出来栄えが気になるところ。現時点ではドライバー機能がβ版となっておりいくつか重要機能が欠けている状態となっているため評価が難しい面もあるが、既に発売中ということで現時点のレビューをお届けしたい。
なお、「Sound BlasterX Siege M04」に最適化されたゲーミングマウスパッド「Sound BlasterX AlphaPad」(350×270mm、税別1,680円)および「Sound BlasterX AlphaPad Mini」(280×210mm、税別1,280円)も発売中である。
ゲーミングマウス「Sound BlasterX Siege M04」は高性能センサー+手堅いデザイン
「Sound BlasterX Siege M04(以下『Siege M04』)」は、クリエイティブとしては久々、日本としては初となるゲーミングマウスだ。ケーブルを含まない重量は約110g、形状的にはロジクールのG402とRazerのDeathAdderの中間のような、“つまみ持ち”、“かぶせ持ち”の両方に適した左右非対称のデザインとなっている。ちょうど往年のマイクロソフトIntelliMouse Explorer 3.0をリスペクトした感じのフォルムだ。
核となるセンサーにはPixArt Imaging製の「PMW3360」赤外線センサーを搭載し、最大加速度50G、最大トラッキング速度250インチ/秒というスペックを実現。このセンサーはロジクールのG502や、SteelseriesのRival 700など、ハイエンドのFPS向けゲーミングマウスでよく採用されているもので、独自性は薄いものの性能的には申し分なし。
デザイン上のポイントとなるのは左右の側面部に装備されたラバー製のすべり止め。かなりハッキリとしたエンボス加工が施されており、左右ホールド時の各指に対して強力なグリップを提供する。ちょっと刺々しい感触があるため最初は多少の抵抗を感じられることもあるが、少々の手汗では全くグリップが低下しないため長時間のプレイで利益がある。
ボタンレイアウトは、通常の左右クリック+ホイール(チルト機能はなし)、2つの左サムボタンに加えて、ホイール下部にDPI切り替えボタン、左側面に追加のサムボタンを装備。DPIはオンザフライで3種類を切り替え可能で、標準設定では800DPI/1,600DPI/3,200DPIとなっている。これはクリエイティブのゲーミングデバイス共通ドライバーアプリ「Sound BlasterX Connect」にて各100~12,000DPIの間で自由に調整が可能だ。
ただ、ボタン面では現状1つ問題がある。ドライバーアプリにボタンカスタム機能がまだ実装されていないため、追加のサムボタンが実質的に利用できないのだ。本来はこの追加ボタンに何らかのファンクションやマクロを割り当てて使用することを想定しているのだろうが、ソフトウェア側の準備が間に合っていないのだ。
メーカーに問い合わせたところ「『Siege M04』、『Vanguard K08』に関しまして、現在、ソフトウェアはβ版となっており、一部のボタン(キー)や機能が使用できません。アップデータの開発を行なっており、順次公開予定です」との回答が返って来た。アップデート時期については未定ということで、もうしばらく辛抱する必要がありそうだ。
そのかわりというわけではないが、感度等のパフォーマンス設定はわりと充実している。上述したように3つのDPIプロファイルを100~12,000DPIの間で調整可能なほか、マウスアクセラレーション(高速操作時により加速する)、ディセレーション(低速操作時により低速化し精度を高める)の各機能をオフ~9の10段階で設定可能。
また、リフトオフディスタンスの調整機能もあり、2mm/3mmのどちらかに設定可能だ。基本的な赤外線の反射性能が確保されたゲーミングマウスパッドではリフトオフディスタンス2mmの設定で快適に使用できる。3mmに設定するとリフト時の余計な反応がやや増えるが、反射性能の低いノンゲームマウスパッドや机の上等で直に操作する際はよりトラッキングが安定する感じだ。
また、上下・左右のまっすぐなポインタ移動をしたいときに補正してくれる“アングルスナッピング”機能も搭載されており、ON/OFFが制御できる。本機能はリニアリティ補正機能とも言われるが、ゲーミングマウスの中には暗黙のうちに本機能を搭載していてオフにできないモデルも存在するので、このあたりきちんと選択できるようにしてある点はありがたい。よりスキルの高いプレーヤーであれば、このような補正機能はオフにしたほうが素早く正確なエイミングが可能になるためだ。
これに加えて、ドライバーアプリ「Sound BlasterX Connect」にて異常に力が入っているのが、本マウスに搭載されているLEDライトの調整機能だ。マウス下部をぐるりと囲むように装備されたLEDライトは完全にプログラマブルで、通常設定ではレインボーカラーがぐるぐるとアニメーションしている次第。ドライバーアプリの「ライティング」項目では、より落ち着いた各種のプリセットを選べるほか、ユーザーカスタムにて色(フルカラー1,680万色)、発光パターン、アニメーション速度を事細かに設定できるようになっている。このこだわりはロジクールすら上回るもので、本製品の大きなセールスポイントと言える。
実際の使用感触としては、左右サイドのラバー加工がかなり硬めであるため、あまり力を込めると指先が痛くなる感じで、エンボス加工により充分なグリップ力が提供されているため、むしろ力を抜いてプレイしたほうが快適に使える印象だ。トラッキング性能は非常に高く、他メーカーのハイエンドゲーミングマウスと遜色のないパフォーマンスを発揮してくれる。少なくともFPSやRTS等のゲームプレイの範囲で、カーソルがドリフトしたりジャンプするといった現象は全く無く、常に正確な操作感を得られる。
筆者はマウスパッドの幅を最低30cmはフルに使用する低センシティビティ系の設定を好むが、トラッキング性能のスペックまだまだ余裕があり、それよりも極端な低センシティビティ設定のプレーヤー(机半分異常をマウスで使う、いわゆるロシアンスタイル等)でも全く問題なく使えるだろう。
デザイン上でひとつ気になったのは、DPI切り替えボタンがやや大きすぎるところ。非常に軽いクリック感で押せることもあって、かぶせ持ち時に少々力がこもりすぎたり、ホイールボタンを急いで押したようなときに、指の腹でDPI切り替えボタンをクリックしてしまうことがあるのだ。プレーヤー的には、気がつかないうちに突然マウス感度が切り替わった、といった状況になるため、慣れぬうちは混乱しやすい。このボタンはもう少し小さくするか、クリックを固くして誤操作を防止するデザインにしたほうがよいのではないかと思う。
それ以外の面については特にこれといった問題点もなく、ハードウェア的には非常に手堅い内容のゲーミングマウスだ。性能的には申し分ないため、ホールド感が気に入れば“買い”だろう。
もちろん、現時点ではドライバ機能の不備のため使えないボタンが存在するという仕様上の問題が存在するため、早急なドライバアップデートが求められるというのは当然の話である。筆者などはこのゲーミングマウス特有の追加ボタンをスクリーンショット撮影等の機能に使うことが多い。MOBA系のゲームでは使用頻度の高いスキルを割り当てるという使い方もよく見られる。そういったプレーヤー毎のカスタマイズ性が確保されてはじめてハイエンドクラスのマウス製品として期待に応えられるというものだろう。
独自キースイッチで個性を出したキーボード「Sound BlasterX Vanguard K08」
もうひとつのゲーミングデバイス、「Sound BlasterX Vanguard K08」は価格19,800円(税別)と、かなりハイエンド帯に属する104英語キー配列+5マクロキーのUSBゲーミングキーボードとなる。外見上の特徴としては、テンキーを含むフルキー配置ながらフレーム部分を最小限に切り詰めた省スペース設計(約149×465×37.6mm、重量約1.4kg)と、付属パームレストによる物理的なカスタマイズ性が確保されているという点だろう。
筆者的にはコンパクトなノーマル状態がより使い易く感じるが、より長時間の使用を前提とするならパームレストを装備したほうが手首への負担が軽減しそうである。いずれにしても、持ち運び時の利便性等も含めて考えると簡単に着脱可能、という点はゲーミングキーボードとして素晴らしい点のひとつだ。
またSound Blasterのクリエイティブらしく、キーボード右上には一揃いのメディアコントロールボタンおよびスイッチが装備されている。音量の調整やミュートが手元で素早くできるというのはメリットのひとつといえるだろう。
さらにキーボード裏側にはUSB2.0のパススルーポートを装備しており、任意のUSBデバイスを接続することが可能だ。例えばUSBヘッドセットなど、着脱頻度の高い装備を運用する際、手元だけで操作が完了するので便利である。このあたり、USBヘッドセットの豊富なラインナップを揃えるクリエイティブならではのこだわり仕様といったところだろう。ここまで行くなら、キーボードにオーディオチップを搭載した製品をリリースしてもおもしろいような気がする(笑)。
さてキーボードとしてメインコンポーネントとなるキースイッチだが、これは本製品独自のものが装備されている。オムロン製のメカニカルスイッチをゲーミング向けにカスタマイズしたという“PRES”キースイッチだ。
このスイッチはストローク3.5mmと、通常のメカニカルキーよりも0.5mmほどストロークが短く、また、アクチュエーションポイント1.5mmと短めの設定になっているのが特徴だ。他のハイエンドゲーミングキーボードでも同様の仕様にて応答速度を高めたモデルが多く見られるが、性能・感触的に最も近い物を挙げるとするならロジクールのハイエンドキーボードに搭載されているRomer-Gスイッチだろう。
キー押下の感触はメカニカル系のスイッチの中でもカチカチ音が少なく、サク、サクといった手応えだ。押下圧は45gに統一されており、この点もRomer-Gスイッチの感触に近い。ただ、底打ちは硬めで、強く打鍵するとキーボードの低板全体がゴツンと震える感じがあり、高速操作時のノイズはかなり大きなものになる。このためタイピング用途には少々厳しい点もあり、まさにゲーム向けのキースイッチという感じだ。ゲーム内、ゲーム外の双方を含めた全体的な手応えは好みが分かれるところだと思う。
そして、上述のマウス「Siege M04」に輪をかけて豪華になっているのがLEDライトの調整機能だ。本製品は全キーがLEDライト装備になっており、その発光色および発光パターンを自在に調整できる。デフォルトでレインボーカラーのアニメーションとなっているのは「Siege 04」と同じで、LEDライトの光量がかなり強いこともあって見た目は派手派手である。明るい部屋でもビカビカに光って見えるほどで、おそらく現時点で存在する全てのゲーミングキーボードの中で1番LEDライトの出力が強力だ。
というLEDライトのちょっと過剰気味な演出は、ユーザーの好みに応じて素早く「地味」にすることもできる。キーボード右上に装備されたメディアコントロールキーに並んで装備されているライト調整ボタンを押せば、LEDライトの出力を明るい、普通、暗め、オフの4段階で切り替え可能だ。暗い場所なら一番低めの設定でも充分なライティング効果が得られる。
そして「Siege M04」と同様に仕様上の問題点となっているのが、現時点におけるドライバー機能の不足だ。本製品には5つのマクロ専用ボタン(M1~M5ボタン)が左側面に装備されているが、初期設定では何も割り当てられておらず、「Sound BlasterX Connect」ドライバーアプリに現時点でキー設定機能が存在しないため、事実上、これらを利用する方法がないのである。
この点はフルプライスのゲーミングキーボード製品としては致命的な欠陥となってしまうため、早急のアップデートにて解決を求めたい。マクロ専用キーは多くのPCゲーマーが活用している機能だけに、これが使えないというのは問題だろう。
また同様に、「1」、「C」、「S」と表記されたプロファイル表示らしきインジケーターや、メディアコントロールボタンの右端に備えられた「SBX」ボタンの機能も現時点では用途不明になっている。こちらもメーカーに問い合わせたところ、「1」はナンバーロック、「C」はCAPSロック、「S」はスクロールロックということで、実行時にインジケートされる仕様となっている。
また、「SBX」ボタンは、今後アップデートによってSound BlasterX Katana ゲーミングスピーカー製品等と合わせて利用した際、サウンド設定のON/OFFに割り当てられる予定ということで、こちらも未実装であることがわかった。
キースイッチにオムロン性のカスタム品、全体のフォルムも個性を感じられるデザインで、ハードウェア的にはクリエイティブのゲーミングデバイスに対する工夫を充分に感じられるキーボードである。ソフトウェア面の準備が整っていないのは新規参入メーカーとしてゲーミングデバイス開発に対するノウハウの不足から来る部分かもしれないが、せっかくのデビュー製品が、現時点では不完全な状態となっているのは至極残念なところ。というわけで本製品が気になっているユーザーの皆さんは、もう少し様子を見つつドライバのアップデート状況を確認することをおすすめしておきたい。