2016年6月10日 12:00
驚きのドッキング式から薄型まで、新製品が出るたびに我々を驚かせてくれるMSIより、13.3インチフルHD液晶を備えたゲーミングノート「GS32 6QE Shadow(以下GS32)」が発売された。第6世代のCore i7(Skylake)にディスクリートGPUとしてGeForce GTX 950Mを組み合わせていながら、重さ約1.2kg厚み19.8mm。GTX 950Mなだけに遊べるゲームや設定は選ぶものの、インテル内蔵GPUだけを搭載するウルトラブックでは到達できない快適なモバイルゲーミングノートとなっている。さっそく実機をレビューしてみたい。
ゲームに必須な要素をしっかりとカバー
GS32の主なスペックは下表の通りとなる。CPUは軽量ノート向けの超低電圧(Skylake-U)版のCore i5-6500Uであるため2コア4スレッド仕様。GPUは第2世代MaxwellをベースにしたGeForce GTX 950Mで、VRAMとして2GBのGDDR5を備える。同サイズで同等以上のハードを搭載した製品は過去にAlienware 13等いくつかあったが、GS32はその上で重さわずか1.2kgと、ゲーミングノートとしては非常に軽く設計されている点に注目したい。サイズの制限から搭載インターフェース数は限られているが、左右に配置されたUSB3.0ポートや安定したオンラインゲームには必須の有線LANなど、使い勝手のよいものを厳選している点も評価のポイントだ。
【GS32 6QE Shadow(GS32 6QE-003JP)スペック】 | |
---|---|
CPU | Core i7-6500U(2コア、2.5GHz、最大3.1GHz) |
GPU | GeForce GTX 950M (VRAM 2GB) |
メモリ | 8GB DDR4-2133 (8GB×1) |
ストレージ | SSD 256GB (M.2 SATA) |
光学ドライブ | なし |
液晶パネル | 13.3インチフルHD(1,920×1,080ドット)、ノングレアIPS |
無線LAN | Qualcomm Atheros Killer Wireless-AC 1535 802.11a/b/g/n/ac |
有線LAN | Qualcomm Atheros Killer E2400 ギガビットイーサ+Killer Sheld K9000 |
OS | Windows 10 Home |
外形寸法 | 320(W)×227(D)×19.8(H)mm |
重量 | 約1.2kg(バッテリー込) |
GS32のウリである軽さと薄さだが、これはメリットであると同時に運用に注意を必要とする部分でもある。液晶の厚みはギリギリまでシェイプしているため、力を加えると容易にたわむ。液晶部分を掴んで持ち上げるような扱いには非常に弱いのだ。
幸いGS32本体と液晶のかみ合わせ精度が高いため、液晶を閉じた状態ではビクともしない。液晶を開けた時に丁寧に扱うことを心がけて使いたい。
内部に目をむけてみると、ストレージは256GBのSSD、メモリはDDR4-2133の8GBと十分なスペック。SSDはPCI-Express接続のNVMeでなく、M.2を通してSATAで接続するスタンダードなものだが、ゲームの読み込み時間は実のところNVMeにしたところで速くならないため、ここはコストパフォーマンスを優先させたというところだろう。
一方、メモリはシングルチャンネル動作となっているのが微妙に残念(といっても、性能的に5%も違わないので気分的な問題だが……)。底部のパネルを外せばメモリスロットに簡単にアクセスして増設もできるが、この場合、保証は切れてしまうので注意したい。
ゲーミングノートは単にハイスペックなだけでなく、ゲームの臨場感を盛り上げる要素の多さも評価のポイントだ。その点GS32は視野角の広いIPS液晶と、キレのあるサウンドシステム、さらに安定したネットワーク機能と全方向に隙がない。
その中でも特に面白く感じたのが近年のMSI製品に採用されているサウンドシステムの最新版「Nahimic2サウンドテクノロジー」だ。いわゆる音質補正やバーチャルサラウンド機能といった音質補正機能のほかに、ゲーム実況配信や実際のゲームプレイにフォーカスした機能が追加されている。
中でも最も強烈なのがゲーム中で一番目立つ音の出ている方向を画面上に表示する「サウンドトラッカー」だ。上級者は音だけ聞いて襲撃に素早く反応するというが、サウンドトラッカーを有効にすればその域に少しは近づけるだろう。同様の機能はASUS製のゲーミングマザーにも搭載済(Sonic Rader II)だが、とうとうゲーミングノートにも搭載されたかという印象だ。チートスレスレの機能ではあるが、ゲーム上達の助けになるかもしれない。
だがそんな機能を使わなくても、Nahimic2によるサウンドはクリア&クリスプ。ボリュームを絞っていてもしっかり音が立っているので非常にプレイしやすい。さらにヘッドフォン出力にはインピーダンス160Ω~600Ωのヘッドフォンにも対応する「ESS SABRE HiFiオーディオDAC」も組み込まれているのも見逃せない。
軽めのゲーム中心なら十分なパフォーマンスを発揮
そろそろGS32のパフォーマンス評価に入りたい。ただCPUもGPUも本体サイズを小さくするため消費電力の小ささが優先されている。そのため快適に遊べるゲームもある程度絞られてくる、ということを考えながらベンチマークを行なってみた。
まずはCPU・GPU・ストレージそれぞれで定番ベンチマークを走らせてみた。GS32はCPU内蔵GPUとGTX950の切り替え(Optimusテクノロジ)が可能なので、GPUを扱うベンチマークに関しては内蔵GPU(Intel HD Graphics 520)のみを使った時のスコアも記載する。ディスクリートなGPUを搭載しないウルトラブックに比べて、どの程度アドバンテージがあるのかに注意しながら読んで頂きたい。
CINEBENCH R15
CPUの計算能力を見るのに適した「CINEBENCH R15」のスコアを計測してみた。マルチスレッド化が非常によく効くCGレンダリングを題材にしたテストなので、2コア4スレッドのCPUしか持たないGS32だとマルチコア時で318cbと控えめ。特に最近のAAAタイトルはCPU負荷も半端ではなく高いため、CPUのスペック的にも軽~中量級ゲーム向けといえるだろう。
<表要素>
CINEBENCH R15スコア
CPU(マルチコア) 318cb
CPU(シングル) 129cb
3DMark
ゲームにおけるグラフィックス描画性能の評価として広く使われている「3DMark」のスコアは以下の通りとなった。第6世代Coreの内蔵GPU(HD 520)も昔に比べ性能が上がってはいるが、さすがに第2世代MaxwellベースのGTX 950Mには大きく見劣りする。フルHDの重量級ゲーム環境を模した「Fire Strike」でのスコアを見ると・GTX 950MはHD 520の10倍以上の描画性能があることが分かる。
GTX 950M | HD 520 | |
---|---|---|
Fire Strike | 3228 | 265 |
Sky Diver | 9110 | 1025 |
人気ゲームはどこまで快適に動く?
では実際のゲームにおける快適さをチェックしてみたい。繰り返すようだがGS32の搭載GPUはミドルレンジの中でもエントリー的な性格のGTX 950Mであるため、快適に動くゲームも自ずと軽めのものに絞られてくる。
そこで手始めに「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」のベンチマークを走らせてみた。解像度はフルHDに固定し、画質のみを「最高品質」および「標準品質(ノートPC用)」の2通りで計測している。
GTX 950M | HD 520 | |
---|---|---|
最高品質 | 3480 | 718 |
標準品質(ノートPC) | 7379 | 1251 |
GTX 950MのおかげでフルHD&最高品質でも見られるフレームレートで動作するが、敵の多い激しい戦闘だとモタつきが予想される。挑戦的なコンテンツなら標準品質で手堅くフレームレートを稼ぐとよいだろう。だが風景を楽しみたい時にはGTX 950Mのパワーで最高品質で遊ぶ、という使い分けを心がけたい。
「World of Warships」もリアルな描写の割には描画が軽いため、今回テストしてみた。「Fraps」を利用して実際のプレイ中のフレームレートを計測する。画質は“高”または“低”、解像度はフルHDに設定した。
高い画質設定では地形が混みあった場所や炎上した艦の多いシーン等では40fps台まで下がることもあるが、平均して50fps~60fpsの間でプレイが楽しめた。内蔵GPUでも低画質なら平均30fps程度出るためプレイはできるが、リアリティー重視ならGTX 950Mの方が格段に上となる。
もうひとつ、描画の軽めな直近の人気タイトルとして「オーバーウォッチ」も試してみたい。画質はプリセットの「NORMAL」を選択し、実際のプレイにおけるフレームレートを「Fraps」で計測してみた。もちろん解像度はフルHDである。
GS32だとフルHD+画質NORMALで遊ぶにはギリギリの感がある。リスポーンエリアなら60fps程度は出るが、拠点奪取等で敵味方がお祭り騒ぎをしている状態だと30fps近くまで割り込む。遊べなくないがペースの速いFPS系ゲームなので、画質を低まで下げてもよいだろう。
まとめ:ゲームは多少選ぶもののライトゲーマーには嬉しい製品
以上GS32をひととおり試してみたが、GTX 950Mの評価に対してはざっくり割れることだろう。「World of Warships」や「FFXIV」をフレームレート重視で軽めの設定で動かすゲーマーにとっては、どこでもゲームが遊べるGS32はかなり魅力的な製品となる。設定を欲張らない、最新のAAAタイトルを最高設定で無理に遊ぼうとしない、の2つのルールさえ守れば、GS32は非常に使えるマシンだ。特にNahimic2のサウンドの完成度は非常に高い。ボリュームを絞っても音が聞こえやすいため、隣人や家族の苦情が心配な集合住宅住まいにとっては特に有用だ。
問題は約18万円という価格設定だろう。あと2万円程度追加することで、GTX 970Mに4コアのCore i7が搭載された同社の14インチノート「GS40 Phantom(参考レビュー)」が射程に入ってくる。ただ、重量やサイズのバランスで考えると、GS32と比較しうるモバイルゲーミングノートはない。持ち運びがメインでゲームも遊びたい……というアクティブなゲーマーにオススメしたい製品だ。