「Shadow of the Beast」ゲームレビュー

Shadow of the Beast

現代アレンジで復活した洋ゲーの古典アクション

ジャンル:
  • アクション
発売元:
  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント
開発元:
  • Heavy Spectrum Limited
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
2,160円(税込)
発売日:
2016年5月19日

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(SIEJA)は、プレイステーション4用アクション「Shadow of the Beast(シャドー・オブ・ザ・ビースト)」の配信を5月19日に開始した。価格は2,160円(税込)でCEROレーティングはZ(18歳以上対象)。

あれから27年 ~海外ヒット作がPS4オリジナルでリメイク復活~

ドット絵の2Dから迫真の3Dグラフィックスに超進化して復活! 基本テイストはそのままに現代的なリメイクがほどこされている

 唐突ながらが「シャドー・オブ・ザ・ビースト」と聞いて「えっあの!?」とリアクションを示す人は、少なくとも30歳代後半以降ではなかろうか。本作は、1989年に当時欧州でヒットしたコモドール製パーソナルコンピューター「AMIGA」で発売された2Dアクションを現代アレンジしたリメイク版だ。

 筆者とオリジナル版との出会いは、当時の御茶ノ水某ビル地下1階にあった海外PCやゲームを取り扱うパソコンショップ。店頭デモ機にセットされていた本作は、まさに「人を選ぶ」といった感じ。禍々しいグラフィックスと、キャラクターを動かした瞬間に全身が警報を発するかのような濃厚かつコクに満ちた“That's洋ゲー”テイスト。大胆な色使い、繊細さと骨太さを兼ね備えたタッチ、勢いとパワー、粗暴にして直球……ああもうコレ洋ゲー以外の何物でもないじゃん! という作り。数分触って「これはいいものだ」と思ったものの、当時は(今もか)貧乏学生だったこともあり、さすがにAMIGAごと買うわけにもいかず、たまに店にいって店頭デモを触るといった程度。そのうちデモ自体も入れ替わり、次第に記憶の彼方へと追いやられていった。

 一方「シャドー・オブ・ザ・ビースト」は海外で順調にヒットを伸ばし、Atari-ST、コモドール64、FM-TOWNSなどのパソコンだけでなく、ATARI、マスターシステム、メガドライブ、PCエンジン、スーパーファミコンといったコンシューマゲーム機に移植されていく。PCエンジン版やFM-TOWNS版は、当時もてはやされた“マルチメディア”云々でオープニングデモも豪華に! 日本語版に追加されたタイトル“魔性の掟”というワードとともに覚えておられる方々も少なくないだろう。

 さて……そんな「シャドー・オブ・ザ・ビースト」だが、ぶっちゃけ日本のユーザーにどれほどの印象を残しているかというと若干疑問が残る。当時愛読していたパソコン雑誌での扱いは決して悪くなかったように思うが、ゲーム専門誌でコンシューマ版が話題になったり、ましてやセールス上位にきていた記憶は皆無。さらにぶっちゃけてしまうと、個人的に「なんでいまさら」という印象もぬぐえない。30周年ならまだしも27周年だし……ホントに大丈夫なの? ちゃんとしてるの!? という大いなる不安をかかえたままゲーム本編を立ち上げたのだった。

キャラクターや世界観をベースにグラフィックスや操作を現代アレンジ

当時もなかなかだったが、3DフルCG化された主人公のフォルムは凶悪さと迫力が俄然増している

 ゲームを立ち上げると、いきなり主人公キャラクターの禍々しいグラフィックスがデーン! と映し出される。あまりのCGクオリティの高さに「これもう別モノですよね?」といいたくなるが、造形は往年の主人公以外の何物でもない。

 スタート直後は、これまた往年の2Dアクションを彷彿とさせる画面構成が目に飛び込んでくるが、主人公同様にステージグラフィックスのクオリティは天地の差。なお、1stステージはチュートリアル的な要素にくわえ、世界観やストーリーにまつわる演出が多め。正直ややテンポがよろしくないが、これは後々きちんと解消されていくので安心していただきたい。特にデモシーンは、最終ボスを倒したリザルト直後をのぞき1度見たあとは○ボタンでスキップが可能だ。

 キャラクターの移動は基本的にオリジナルと一緒で、方向キーまたは左スティック左右と×ボタンのジャンプのみ。×ボタンで段差をこえたり、方向キーまたは左スティック上下で壁をよじのぼったり滑り降りるといったことも可能。カメラアングルは固定だが、シーンによっては相当引いた遠景などスケール感を強調した演出が加えられる。

まずはデモシーンなどもまじえつつ全体の雰囲気が伝わるような場面をチョイス。カメラ固定ながら演出がしっかりしているのでアクション性は一切損なわれていない。

 本作はステージ制を採用。レベルデザインは変化に富んでいる一方、いずれも短すぎず、それでいて冗長さを感じさせない適度なサイズで、それぞれフックのある仕掛けが適度に配置されている。序盤はシンプルだが、ゲームが進むにつれ純粋なアクションスキルが要求されるもの、パズル的な仕掛けなど、少しずつ手が込んだものになっていく。いずれも理不尽さはなく、パズルが苦手な人でもトライ&エラーで十分クリアできる程度に抑えられているのがいい。

 敵との戦闘は、恐らくオリジナル版のプレイ経験がある人は誰もが「なんだこれ! 完全に別物じゃん!」と驚くこと間違いなし。かつてパンチや武器を使うくらいしかできなかった主人公の攻撃アクションが、多彩かつダイナミックなものに超進化している。

 基本操作は、十字ボタンまたは左スティックが移動、右スティックが回避。ボタン類は□がヘビーアタック、×がジャンプ、△がスタン攻撃、○がつかみ攻撃、R1がブロック(防御)、L1がカウンター、R2がスペシャル、L2がプラズマガンを構える、タッチボタンがシューティングなどのボムに相当するアーブロンの怒り。特殊操作は、プラズマガン射撃がL2+R2、カウンターがL1+□、パリーがR1+△、スペシャルがR2+△or□or○or×、R3+L3がシャドーストーン、R1+L1orR2がレイジチェイン。一見やれることが多すぎて混乱しそうだが、最初からすべて使いこなす必要はない。また、オプションのチュートリアルをオンにしておくと、それぞれの場面で適した操作が表示されるので、最初のうちはこれを頼りに少しずつ覚えていくといい。

一見すると操作系は煩雑だが……クリアが目標のうちは全部使いこなす必要はなく、そのうち慣れるので特に問題はない。ちなみに難易度は3段階だが、最初からすべてのステージで選べるわけではなくクリアに応じたステップアップ方式で難しいものが選べるようになっていくようだ
チュートリアル表示がデフォルトでオンになっており、オプションでオンオフが可能。最初のうちはこれでその場でできるアクションを確認しつつ慣れていくといい
ケレン味あふれるボス戦はいかにも昨今の洋ゲーという感じで楽しい

 ステージ選択画面で△ボタンを押すと、プレイで獲得した「マナ」と呼ばれるポイントを消費して「コンバット・アップグレード」による主人公キャラクターの強化が可能。最大ヒットポイントを増やしたり、スペシャルアタックなどで消費されるブラッドの吸収量など効果をさらに強化したり、回数増加、プラズマガンのブラッド消費量低減など、一部をのぞき3段階までパワーアップできる。また、ステージ中に隠された「タリスマン」と呼ばれるパッシブ効果もここで獲得でき、各ステージ開始時に4つまで設定できる。

マナを支払って主人公の能力をパワーアップ。ヒットポイントとブラッド関連は先に押さえておくとクリアが楽になるのでオススメ
タリスマンはステージ中に隠されているものを発見する必要がある。マナを支払い獲得したタリスマンは各ステージ開始時に4つまで選んでセットできる

ストーリーの謎を解く「禁書」とステキなアンロック項目の数々

 ステージ選択画面では、コンバット・アップグレードのほかに「ビジョン」や「禁書」といったストーリーや世界観に関する項目がある。ビジョンは主人公やゲーム中に遭遇した敵キャラクターなどの説明やアートワークを、マナを支払ってアンロックし閲覧できるようになる。

 「禁書」は、同様にマナを支払いアンロックすることで、ゲーム中に登場する敵言語がきちんと読めるよう字幕表示されるというもの。プレイ当初はよくわからない象形文字のような字幕が表示され、思わず「なんじゃこりゃ?」となってしまったが、各種族やキャラクターをアンロックしていくことで、ストーリーが具体的にわかるようになる。

 翻訳は5キャラクターそれぞれ2,000,000マナと、結構なお値段(?)。まずは主人公の能力を強化したいが「やっぱりストーリーも気になる!」という人は率先してマナを費やすのも悪くない選択。翻訳のほか、オリジナル版のBGMでプレイできる項目も用意されており、こちらは200,000マナと格安。これ以外にも「ヒストリー」では1989年版「シャドー・オブ・ザ・ビースト」がプレイできたり、無敵状態のプレイモード、さらにはクリアムービー、アートワーク、サウンドなどのステキなアンロック項目がそれぞれ用意されている。

「禁書」の翻訳をアンロックしていくとストーリー中で象形文字のようになっている字幕が読めるようになる
ファン泣かせの貴重な資料などがズラリ。目玉はやはり1989年オリジナル版がプレイできる項目だろうか。無敵モードでプレイできたりクリアムービーも用意された充実ぶりだ

いまどき洋ゲーらしい正統アレンジ ~スコアアタックが超熱い!~

 1990年代以前のゲームアレンジ手法にはさまざまな前例があるが、本作は“洋ゲー”として“正統”あるいは“王道”ともいうべき手堅いアプローチがなされているように感じられる。奇をてらった、あるいは尖った部分はないが、ここ十数年来の洋ゲーで多くのユーザーに好まれているであろう要素が適度に織り込まれている。一見やや操作系が煩雑にも思えるが、これは後述の理由により大多数のユーザーにとって障害となるものではない。

 各ステージのレベルデザインも「ソツがない」の一言。単調さを払拭するにはどうしたらいいか、どこでメリハリをつけるか。この価格帯の作品は「あぁ、やりたいことはわかるけど……」といったケースに陥りがちだが、本作は欲張った挙句の残骸もなければ、尻切れトンボで口あんぐりといったお粗末さとも無縁で、丁寧にカッチリまとめられている。逆にいえば、そうした「優等生」さが、尖ったテイストを求めるユーザーに「あともう一押し!」という物足りなさを感じさせるかもしれない。平均点の高さか、あるいは平均点が低くても1カ所100点が欲しいといったところか。価格を考えれば贅沢な話ではあるが……。

 グラフィックスクオリティはもちろん、操作性、レベルデザインともに高水準。なかでも筆者が気に入っているのは“スコアアタック要素”の充実。アーケードライクな洋ゲーには欠かせないスコアアタック要素だが、本作はザコからボスに至るまで動きがロジカルでランダム要素が少ない一方、ブラッドを使った倒し方でスコア効率が圧倒的に違ってくる。ザコはタイプによって戦い方を変える必要があるため、ノーダメージを貫くにはしっかりした対応が大前提。

 そのうえで、左右からくるザコをどう倒していくか。多彩なアクションから最適な選択を考え試していくのがとても楽しく、最初は煩雑に思えた操作系も、気付くと身についているといった按配。クリアだけでも大変というレベルの筆者でさえ、戦っている最中にふと「ん!? 今のところは上手くやると……」などと考えてしまう瞬間が少なくない。「おっ、これ昔よくやったなぁ」という懐かしさに惹かれた人はもちろん、スコアアタック、プレイの質を高めていくことに楽しさや気持ちよさを感じるゲーマーであれば、本作は必ず心に響くものがあるはず。まったく知らなかったという人も、この機会にぜひ触れていただきたい。

Amazonで購入