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膨大な資料とこだわりで作られた「ガールズ&パンツァー 劇場版」
プロデューサーの杉山潔氏が語る、Wargamingの資料協力
(2015/12/27 00:00)
ウォーゲーミングジャパンは12月26日、秋葉原UDXシアターにて、オフラインイベント「Wargaming Gathering: December 2015」を開催した。このイベントでは、「World of Tanks」、「World of Warships」の担当者がゲームの最新情報を語り、じゃんけん大会などの交流イベントも行なわれた。
本稿ではその中から、「ガールズ&パンツァー」プロデューサーの杉山潔氏と、ミリタリーアドバイザーの宮永忠将氏が出演した「ガールズ&パンツァー 劇場版 戦車トークショー」を取り上げたい。
「ガールズ&パンツァー 劇場版」では、中心となる“戦車”に関し、Wargamingが様々な協力を行なっている。トークショーでは、「ガールズ&パンツァー」ならではスタッフの“戦車へのこだわり”にWargamingがどう協力したかが語られた。
アメリカ陸軍の将校も協力! Wargamingの資料で奥深い戦車の世界を再現
「ガールズ&パンツァー 劇場版」は11月21日の公開以来、現在も公開され続けヒットとなっている。土日や平日の遅い時間の観客数も多く、12月14日の時点で5億円を突破する興行成績を記録し、新たに上映する映画館も出ているという。
この劇場版では、Wargamingは「World of Tanks」で集めた資料を提供し協力している。「ガールズ&パンツァー」は劇中で活躍する少女達と共に戦車の描写にも力を入れている。戦車の外見や運用方法、動きの描写だけでなく、車内の細かい描写まで必要とされる。「アメリカのシャーマンに乗っているのに、車内が日本の戦車風ではダメ」なのだ。このため軍事専門家や歴史学者など様々な協力者の助言を受けている。
Wargamingはゲームの制作に当たり、世界中から様々な戦車の資料を集めている。今回、「ガールズ&パンツァー 劇場版」に関して、Wargamingは資料の提供という形で大きな役割を果たしたという。
今回提供した資料の中からピックアップした1つめが「センチュリオンI」。第2次大戦の最後期に作られたイギリスの戦車で、ベルギーの戦闘に参加すべく洋上で輸送中に終戦を迎えたという。このため6両しか作られず、有力な資料となるプラモデルすらガレージキットしかないため、正確な姿がわからなかった。
Wargamingでは社内で資料を募ったところ、イラストがあり、これが映画制作にとても役だった。イラストは細かく内部も書かれており内装などもはっきりわかる。「写真の場合は、暗い車内の場合フラッシュをたくと影でつぶれてしまう場合がある。その点イラストは細部がわかって助かった」と杉山氏は語った。
もう1つがアメリカの「T28」。戦車と戦う事を目的とした“駆逐戦車”に分類される車両で、ソ連の戦車「T-28」と型番も似ている上、「T95」と1度名前が変わってから再びT28に名前が戻るというややこしい経歴を持つ。正面の装甲が特に強固で、戦車と戦う事を目標にした車両だ。
Wargamingでは内部図解も発見されたため送ったのだが、劇中では使用されなかったとのこと。大きな車体を持つ戦車だが、内部図解を見るとメカニックが詰まっており、かなり車内は狭いことがわかる。またエンジンはかなり貧弱で動きはかなり遅かったと宮永氏は解説した。
T28は左右2列、計4つの履帯(キャタピラ)をもつかなり特殊なデザインとなっている。そして驚きのギミックとして、外側の履帯が外れるというものがある。「ガールズ&パンツァー 劇場版」では、爆裂ボルトによって外側が外れる演出がある。実際は作業員が2時間をかけて取り外すことができる。そもそもなぜ4つの履帯を持っているかというと「車体が重すぎるので履帯を増やそう」とアメリカの技術者が思いついたためだという。そして貨車の乗せ運搬する時を考え、外側の履帯を取り外すことができることにした。
Wargamingではスタッフの1人にアメリカ陸軍の将校もいるため、現在のアメリカ軍で稼動させたT28の姿を写真に収めて送ってきてくれたという。T28は現在レストア作業を行なっており、履帯を外した姿も写真で見ることができた。
「ガールズ&パンツァー 劇場版」はWargamingや、様々な専門家の協力を得て作られている。心強い反面、1度作った設定を専門家のこだわりでご破算にされることもあり、現場は悲鳴を上げつつも高いクオリティを実現させたという。このこだわりがファンの高い評価を生んでいるのだ。
杉山氏は今後の展開として、BGMをオーケストラで収録し、イベントなどの特典映像を満載したBlu-rayの発売や、サントラCDの発売を告知した。また映画のスタッフや専門家が映画でのこだわりを語る機会も今後設けていくという。