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「FF」、「ドラゴンクエスト」だけではないスクウェア・エニックスのグローバル戦略
「キングダムハーツ III」に歓喜の声! モバイル向けAAAタイトルをモントリオールが手がける時代
(2015/6/17 16:52)
スクウェア・エニックスは、E3初日の6月16日、グローバルのメディアに向けたプレスカンファレンスを開催した。プレスカンファレンスとしては初のライブ中継を行なったため、実際に中継を見た方や、弊誌の各種速報を読んで知ったという方もいるだろう。ほとんどのタイトルはトレーラーのみで続報は今後、あるいはブースでというものが多く、深掘りして紹介できるタイトルはほとんどないのだが、カンファレンスに参加して感じたスクウェア・エニックスのグローバル戦略の変化についてレポートしたい。
今回スクウェア・エニックスは、約90分のカンファレンスに10本もの新規タイトルの発表を行なった。先日体験版の新バージョンを公開した「ファイナルファンタジーXV」や、6月23日に拡張パッケージ「蒼天のイシュガルド」をリリースする「ファイナルファンタジーXIV」を抜いて10本。ついでに言うと、「ドラゴンクエスト」シリーズの発表もなかった。その意味では日本国内における“「FF」、「ドラゴンクエスト」のスクエニ”という印象とはかなり趣の異なる発表会だった。
最初に感じたのは、海外タイトルの勢いだ。Avalanche Studiosが手がけた「Just Cause 3」を筆頭に、「Rise of The Tomb Raider」を発表したCrystal Dynamicsや「Deus Ex: Mankind Divided」を発表したEidos Montreal Studios、「HITMAN」を発表したIO Interactiveといった旧Eidos系の開発スタジオ、そして彼らの流れを汲むSquare Enix Montrealの新作モバイルタイトル「LARA CROFT GO」に至るまで、すべてが各スタジオの強みを活かしつつ、いずれも粒ぞろいのタイトルに仕上げている。往年のEidosファンにとっては、Eidosの著名フランチャイズのすべてがカムバックを果たしているのが嬉しいところで、「Tomb Raider」至っては、ゲームコンソール向けとモバイル向けの両方をキッチリ手がけるなど、グローバルで戦うために世界中に点在する開発スタジオをうまく機能させていると感じられた。
海外タイトルの中で個人的にもっとも印象的だったのは、「LARA CROFT GO」だ。「HITMAN GO」の流れを汲む、「Tomb Raider」シリーズの世界観をモチーフにしたスマートフォン向けパズルアクションゲームで、「HITMAN GO」と同様に、単純なタッチ操作で、「Tomb Raider」ならではのアクションや謎解きを駆使した遺跡探索が楽しめる。
説明を行なった担当者は、「ゲームの本質を取り出し、それをスマートフォン上で再現する」という基本コンセプトを繰り返し語っていたが、AAA(トリプルエー)を宿命付けられた著名フランチャイズの新作をモバイル向けに投入するというところに大きな時代の変化を感じた。
その一方で日本発にこだわっているところもスクウェア・エニックスらしいところ。カンファレンス冒頭で発表された「NieR(ニーア)」シリーズの新作、新規ユーザー向けの「ファイナルファンタジー」となる「World of Final Fantasy」、「スターオーシャン」シリーズの新作「スターオーシャン5」、最後に「One More Things」として発表されたRPG専門の開発スタジオ「Tokyo RPG FACTORY」の手による新作「Project SETSUNA」など、JRPG(日本のRPG)の担い手としての自覚を持ち、「FF」、「ドラゴンクエスト」ナンバリング以外の布石もしっかり行なっている。
ただ、今回、もっとも大きな歓声が聞かれたのは上記のいずれでもなく、2年ぶりに最新トレーラーという具体的な形で発表が行なわれた「キングダムハーツ III」だった。同作は日本でも期待作のひとつだが、ディズニーの本拠地、そのお膝元であるロサンゼルスでは、その期待度は一段も二段も高い印象だった。
そのトレーラーの内容は言葉で説明するより見て貰った方が早い。PS4のパフォーマンスを活かしたド派手な内容に仕上がっており、中でも主人公ソラがキーブレードを様々なものに変化させて戦場を縦横に駆け回り、群がり来る敵を次々に撃破していく後半シーンは必見の出来映えとなっている。残念ながら発売時期については明言されなかったものの、確かな進捗と、完成への手応えが感じられるトレーラーだった。
発表会のトリを務めた代表取締役社長の松田洋祐氏は、スクウェア・エニックスは世界のRPGファンに支えられており、これからもファンのためにRPGを作り続けていくことを明言。その具体的なコミットメントとして、先述したRPG専門の開発スタジオ「Tokyo RPG Factory」の設立と、その最初のタイトルとして「Project SETSUNA」を発表した。松田氏は紹介の中で、続編でもリメイクでもなく、完全新規RPGを家庭用ゲーム機向けに開発していると語り、そのリリース時期は来年の2016年とし、「スピード感を持ってリリースしていく」と語っていたのが印象的だった。
この発言の背景には、「ファイナルファンタジー」シリーズ、とりわけナンバリングタイトルは、開発に長い年月を要していることがある。財務畑の松田氏としては、開発期間が延びることを財務的なリスクをよく理解しており、今後は全社的に比較的短期間でのリリースを目指していくことの決意表明だと受け取った。果たして今後数年で同社がどのように変化し、どのようなアウトプットでグローバルで勝負していくのか、引き続き注目していきたいところだ。