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【特別企画】「超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」インタビュー
どのキャラクターがいるかはっきりわかる、合体ロボならではの面白さ
(2014/11/25 11:00)
パーマンの肌色、ゴンスケのカゴ……こだわりに満ちたデザイン
そして、腕になるのは、「パーマン1 号ロボット」と、「ゴンスケロボット」だ。パーマン1号はモチーフは“人間”である。最もロボット化が難しいキャラクターだったと寺野氏は語った。悩んだのは肌色の部分。試作を重ねたが、他の色だとパーマンらしさがなくなってしまう。肌色の色合いも苦労したとのことだ。目を引くのはパーマン1 号ロボットの手についているパーツ。これは、合体したときに手の部分を隠すパーツとなる。
「ゴンスケロボット」のゴンスケは「21エモン」でレギュラーキャラクターとして活躍するが、「ドラえもん」、「ウメ星デンカ」や短編集などにも登場する。多くの作品に登場するキャラクターであることもあり「超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」にぜひ加えたかったという。
ゴンスケは“カゴ”を背負っている。ゴンスケは「芋掘りロボット」であり、この設定、そして劇中の姿を再現したものだ。ゴンスケは手足が細いデザインとなっているが、変形の時はカゴがうまく“腕の太さ”を生み出す仕掛けとなっている。またカゴ部分から「カブラペントライデント」をつかめるツメが出てくる。パーマン1 号ロボットは足を折りたたみ、手を前に出すことで変形完了、ボディのドラえもんに接続する。
ここに「タイムマシン型メカ」、「ベレー帽型メカ」を変形合体させて構成される頭部を接続し、コロ助ロボットの刀を後ろに背負わせ、カブラペントライデントの先を展開することで、「超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」の合体完了となる。
どのキャラクターがいるかはっきりわかる、合体ロボならではの面白さ
「超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」の最大の特徴は、“顔”であると言えるだろう。黒目は消えているが、胸のドラえもん、腰のチンプイはもちろん、ゴンスケ、パーマン1号、ドラミ、コロ助も全て顔が確認できる。ドラえもん以外の変形はあえてシンプルにし、それぞれのキャラクターの姿がわかるデザインにしたのは寺野氏の狙いだ。
「前から見てキャラクターが何体いるか、それがちゃんとわかるようにするというのがこのロボのデザインコンセプトなんです」と寺野氏は語った。合体ロボのデザインとしては、通常のロボットだと一体感を強調するために合体前のロボのパーツや顔は隠したり、後ろに回して正面から見えなくする。しかしこの「超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」ではあえて正面に顔を持っていっている。
またキャラクターが集合しているからこそ、“頭”はロボットらしいものにした。ロボットの顔は口部分が観音開きで開き、内側の模様が「F」という字に見える。また肩と胸パーツを繋ぐ金属部分にもFの字のようなデザインになっている。これはもちろん藤子・F・不二雄氏の名前を意識してのデザインだ。隠れキャラなど、「超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」にはデザインとしての“遊び”もたくさん込められているのだ。
合体したロボットは、マッシブなシルエットだ。合体前のコミカルなロボの体型からがらりと変わっているし、「エヴァンゲリオン」のような人型に近いスマートなものでもない。これは「合体ロボ」の1番わかりやすいデザインとして、70年代のロボットアニメや、特撮の「戦隊ロボ」風の往年の超合金的デザインの流れをくんでいるという。それは「よくわからないもの」ではなく、「合体ロボである」というわかりやすさを重視しているからだ。
寺野氏が今回最も苦労したところは「ゴールを探るのが大変だった」という。原作のキャラクターにはそれぞれオリジナルのイメージがあるものを、「合体ロボにする」というコンセプトを提示する中で、“ゴール”を共有するのは難しい。藤子・F・不二雄氏のキャラクターが合体ロボになる、その命題をどう実現するか、そのすりあわせには時間がかかった。
ダクトやシャッターなどの“巨大ロボらしさの記号”を「何でついているんですか?」と版元に聞かれることもあった。金色や銀色のラインをなぜ入れるのか? デザインとしてのバランスや、巨大合体ロボットに見せるためのノウハウを説明し、イメージを共有してもらったという。
そういった試行錯誤の中で最も寺野氏が重視したのは、「超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」は、80周年記念として、派手で、楽しい商品、お祭りのような楽しさが、しっかり伝わるということだ。藤子・F・不二雄氏のキャラクターが巨大合体ロボになった、それが一目見てしっかりわかるデザインを追求した。「『パーマンやドラえもん、ドラミちゃんが合体してるよコレ!』とお客さんにいってもらえる商品を目指しました」と寺野氏は語った。
また“シンプルさ”も寺野氏が突き詰めた部分だという。変形システム、ギミック、デザイン、凝ろうと思えば凝れる、変形ももっと複雑にしたり、関節を多く仕込むこともできる。しかし、「藤子・F・不二雄キャラクターが合体するロボット」を楽しんでくれるお客さんが求めるのは何か、この商品に求められる合体のしやすさや重視するキャラクター性やコンセプトは何か、そこを考え試作品から手を加え、削ったギミックも多かったという。
「そこは僕の至らない部分で、図面の時点でわかれば良いんですけど、試作品で気づかされることが多い。過去の超合金を担当した方はには、僕らのように図面からすぐ試作品ができる“光造形”といった技術がない時代、図面だけで頭の中で全部変形を実現させている方もいる。そういった先輩と比べると、まだまだ至らないと思ってしまいます」と寺野氏は語った。
寺野氏が本作で最もアピールしたい部分は「変形の手触り」だという。クリック感や、部品のはまる感じ、目が隠れるギミックや、1度パーツを大きく開けて、形を変えてから再び閉めるといった動作、それらに「気持ちよさ」を配慮している。ぱちりと部品がハマリ、かみ合う感じ、しっかり各部品の場所が定まっているその変形の手触り、変形が完了したのが感触として伝わってくる楽しさをぜひ感じて欲しいとのことだ。
最後に寺野氏はユーザーへのメッセージとして、「商品として目指したコンセプトを実現できたものになりました。だからこそ、情報や、写真で満足できるものではなく、ぜひ手に持って変形合体させてみてください。変形玩具の本当の面白さは情報だけで伝えられるものではなく、自分の手で確かめるものだと思うんです。そこで本当の意味で伝わると思います。きっと楽しいです」とコメントした。
(C)Fujiko Pro