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【E3 2013】「Oculus RIFT」のスゴさをCCP Gamesの「EVR」デモで確認!

インディーズ開発者も大注目のVRヘッドセット。会場各地で使い勝手を確かめてきた

6月11日~13日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

1080p対応のHDプロトタイプ

 Kickstarterプロジェクトとして成功を収めつつあるOculus VRのVRヘッドセット「Oculus VR」。E3 2013会場において当のOculus VRはミーティングルームのみの出展で、殺到するデベロッパーとの会合に追われていた様子。そのOculus VRではE3 2013の開会に合わせ、解像度を向上させ1080pに対応したプロトタイプの存在や、Unreal Engine 4への対応を発表しており、北米のゲームデベロッパーを中心にさらなる注目が注がれている。

 筆者の期待通り、「Oculus RIFT」はやはり乗り物系ゲームとの相性がバツグンにいい。3月にお伝えしたGDC会場での体験ではロボアクションFPS「HAWKEN」での感触をレポートしたが(関連記事)、今回はそれ以上の手ごたえを得ることができたので本稿でレポートしよう。

ヘッドトラッキングが肉体感覚とリンク、意識が一瞬で異世界へと没入する!

会場で見かけた「Oculus VR」。その背後には100%の確率で長大な行列
CCP Gamesのミーティングルームにて「EVR」を試す
「EVR」の画面。宇宙戦闘機のコックピットビューだ
2Dディスプレイにリダイレクトされた画面はこんな感じ

 さて、ご存知のとおり「Oculus RIFT」は左右90度、対角110度という高視野角を誇るヘッドマウントディスプレイに、高精度・高速反応のヘッドトラッキングセンサーをセットにした新世代のVRヘッドセットだ。

 その製品版はいまだ開発中という状況だが、各ゲームデベロッパー向けには開発キットの配布が進められており、フライング気味に続々と対応ゲームが姿を現わしている。そのうちいくつかがE3 2013の会場で出展されていたという格好だ。

 中でも格段にスゴさを感じたのが、SF-MMORPG「EVE ONLINE」や連動型FPS「DUST 514」を開発するCCP Gamesが製作した、「EVR」デモだ。これはCCP Gamesのスタッフによればコンセプト実証のために作られたテストプロジェクトで、販売や配布の予定はなし。アイスランドで行なわれた「EVE ONLINE」のファンフェストや、この会場でのみ体験できるという超レアなVRゲームというわけだ。

 舞台はEVE宇宙、ヘッドセットを装着すると、そこは宇宙戦闘機の操縦席!ヘッドセットを装着した瞬間、さっきまで見ていたはずのリアルの風景がどっかに吹っ飛んで、意識が異空間に飛ばされたような衝撃である。

 下を見れば自分の足が見え、ぐるりと横、後ろと見ていけばキャノピー越しに母船内の風景が一望できる。静止画ではとてもわからないが、両眼3D立体視の効果で、まさに体全体が“そこにいる感覚”に襲われる。下に見えるパイロットの下半身が、自分のものであると本気で錯覚しそうになるほどだ。

 母船内を急加速して発進。吸い込まれるような感覚と共に、一転、目の前に巨大な宇宙空間が開ける。上も下もない、360度すべての方向が平等な世界。頭を振り回し、周囲の風景を確認する。自分の機体から伸びる両翼の先端が10メートルほど先の距離感に見える。機体全体が体の一部という感じがし、水平感覚を取り戻す。鋼鉄の体だ。なんと頼もしい。

 敵機が出現。ほとんど真後ろまで首をふりながら位置を把握し、敵を視界中心に捉えながら旋回、機種を向けて攻撃。この一連の動きと、自分自身の肉体感覚が完全にリンクしているおかげで、いろんな方向を向きながらでも機体の姿勢や相対角度が完全に把握でき、一体感溢れる操縦感覚が得られる。ヘッドトラッキング機能が正確で、遅延も非常に少ないための効用だ。

 機体と一体化し、3次元空間を縦横無尽に飛び回る感覚はたまらなく気持ちがいい。時間を忘れていつまでもプレイしていたいほどだった。残念ながらデモは5分間ほどで終了したが、すさまじいほどのインパクトで、忘れえぬ体験となった。本稿を書いている今でも、コックピット内で感じた浮遊感覚が肉体に蘇るほどである。

 このように、「Oculus VR」は乗り物系のゲームとの相性がバツグンに良い。「HAWKEN」でもかなりの衝撃だったが、今回の「EVR」での体験では、より乗り物感が強いシチュエーションでの体験だったためか、それ以上の異世界没入体験が得られた。これをレースゲームやフライトシムで使用したら本当にヤバいことになりそうだ。現実に戻ってこれるか心配。

【Eve Online - EVR Trailer fan fest 2013】

このデモでは360度全方向に旋回できる宇宙戦闘機の感覚を体験できた。コックピットビューにより機体の姿勢が感覚的に把握でき、完全な没入感と一体感が得られた

VRヘッドセットならではの没入感は3Dアドベンチャー系などでの応用にも期待

「INDIECADE」コーナーで見つけたRIFT
不思議な空間を探検するVRアプリ。没入感で世界の魅力を増幅
ビジュアルとサウンドの連動でトリップ気味になるアプリ

 その他、インディーズ系のゲームが集まる「INDIECADE」コーナーでも「Oculus RIFT」を複数発見した。インディーデベロッパーの間では現在、Unityを使ってRIFT対応ゲームをデザインするのがアツいようだ。

 3Dアドベンチャー系の作品のひとつは、アーティスティックな空間設計とVRによる没入感を組み合わせるスタイルで「Oculus VR」を活用。これもなかなかの“そこにいる感覚”を得られるのだが、自分の体が表示されないため、移動方向と頭の向きのズレが感覚的に把握できない瞬間がたびたび出てくる。このあたりに改良のポイントがあるのではないかと感じられた。特に正確なエイミングが必要となるFPS系ゲームでは、実用上の課題となるはずだ。

 面白いところでは、音楽に合わせて独特なビジュアルパターンを表示し、一種のトリップ体験を誘発するというアプリもあった。両眼立体視による吸い込まれるような感覚とサウンドの連動で、装着まもなく、えも言われぬ気持ちになる。時間が限られていたため少ししか体験できなかったが、こういったノンゲーム分野にも応用の手を伸ばせるのがインディーズデベロッパーの良いところだろう。

 企業もインディーズもわれ先にと対応アプリを作り始めた「Oculus VR」。今後も何かと面白いものが続々見られるに違いなく、VRの魅力に取り付かれてしまった筆者としては今後の展開に引き続き注目していきたい。

(佐藤カフジ)