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間もなく日本で正式サービスの「HAWKEN」プロデューサーインタビュー
日本のロボ文化が生んだ高品質FPS。多彩なゲームモード拡張や次世代ハードへの対応意欲も!
(2013/6/19 21:28)
Meteor Entertainmentが開発するメカアクションFPS「HAWKEN」。美麗なグラフィックスと独特のゲーム性を備え、F2P(Free to Play: 基本プレイ無料)の目玉タイトルとして昨年末よりオープンβテストを実施中だ(関連記事:海外で話題のメカアクションFPS「Hawken」インプレッション)
本作は来る7月に正式サービスのローンチを目指している(8月にずれ込む可能性もあり)。注目すべきは、正式サービスを展開する地域に当初から日本が組み込まれていることだ。言語のローカライズだけでなく、有料アイテムの決済手段についても“日本化”されるということで、数あるF2Pタイトルの中でも日本展開を非常に重視する異色の作品である。
そのような展開を間近に控え、今回、「HAWKEN」のシニア・プロデューサーであるMeteor Entertainmentのポール・ロインド氏が来日している。NVIDIAオフィスにてプレス向けに開催されたプレゼンテーションについては別稿でお届けしたとおりだが(関連記事:メカアクションFPS「HAWKEN」がNVIDIAと強力タッグで日本展開)、さらに直接のインタビューを行なうことができたのでお伝えしよう。
インタビューでは本作が日本のロボカルチャーに強い影響をうけたことや、日本へのローカライズ姿勢、新ゲームモードの初出し情報、将来のマルチプラットフォーム化の展望などなど、非常に興味深い話題が続々と展開していった。
ロボオタクが作るロボットFPS「HAWKEN」。日本ローカライズにも気合!
─── まずは自己紹介をお願いします。
ロインド氏:Meteor Entertainmentで「HAWKEN」のシニア・プロデューサーをしています。「HAWKEN」に求められるクオリティの水準を定め、開発がスケジュール通りに進むように、また、より良い仕事ができるよう開発チームを助けるのが主な仕事です。また、NVIDIAや各国のパブリッシャーなど、パートナーとの協力が上手く運ぶように良い関係を築くことも仕事のひとつです。
─── 「HAWKEN」はインディーズ発、しかもF2PタイトルでありながらAAA級の映像クオリティを持つ作品ということで、世界を驚かせました。このようなタイトルを可能としたカギはどこにあるのでしょうか?
ロインド氏:我々のチームの出資元である、 Adhesive Gamesのカン・リー氏(共同設立者兼クリエイティブディレクター)の影響が強いですね。彼は元々映像業界の人間で、フィーチャームービーやミュージックビデオの制作に深い経験があります。その経験を活かすことで、我々のゲーム開発に非常に大きな価値をもたらしています。おかげで私たちは、小さなチームでありながら「HAWKEN」のような凄いゲームを作ることができました。
─── ハイクオティな開発が可能となった中で、どうして本作では巨大ロボという題材を採用したのでしょうか?
ロインド氏:“Mech”はクールだからです(笑)。文化圏によってその形は違いますが、特に日本のロボ文化はお気に入りです。毎年出てくる新しいロボアニメは欠かさずチェックしています。アニメだけでなく、「Mech Warrior」や「Battletech」のようなゲームも大好きです。子供の頃にプレイしたロボットゲームの楽しい記憶が強烈に残っていますね。
それだけでなく、多くのゲーマーが楽しむ「Call of Duty」や「Battlefield」シリーズのように、FPSならではの白熱した体験をロボット系ジャンルで再構築したかった、というのも大きな動機です。なぜなら、我々の周りにそのようなゲームがほとんど無かったからです。
─── かなりのロボットファンのようですね。アニメや映画、ゲームではどういった作品が好きですか?
ロインド氏:我々のグループは皆「マクロス」や「ガンダム」、「エヴァンゲリオン」などを見ていますね。個人的には「ガンダム」を全シリーズ見ています。ですから、個人的に好きなロボットのスタイルは、日本のアニメでよく出てくるような人型タイプですね。巨大な武器を持って、肩から大きなメタルパーツが飛び出ているようなヤツが特にいいです(笑)。
全く別のスタイルを採用する「HAWKEN」のようなメカも好きですよ。このジャンルでは、PS2時代の日本のゲーム「Ring of Red」(KONAMI)が記憶に残っています。あまり有名な作品ではないですが、ドイツが第二次世界大戦に勝利し、日本が戦車の代わりにロボを開発したという平行世界を描いています。ああいった世界観やロボットのデザインも本当にクールだと思いますね。
─── 本当にコアなロボットオタクたちがロボットゲームを創りあげたのが「HAWKEN」というわけですね。
ロインド氏:まったくです(笑)。
─── そういったメカメカしい世界の「HAWKEN」ですが、オープンβを続ける中でユーザーからどういった反応を受けていますか?
ロインド氏:プレイしていただいた方たちからは非常に良い反応をいただいています。ハードな開発を続けるなかで、そういったフィードバックをもらえることは本当に励みになります。今後もユーザーの皆さんに満足してもらえるように、コミュニティを重視したゲーム開発を続けて行きたいです。
─── ユニークな内容を持つ作品だけに、国や文化圏毎の反響に違いはありましたか?
ロインド氏:今のところアメリカのユーザーが大半を占めていますが、驚きだったのはロシアが2番手に入ったところですね。3番手はカナダで、他の国、ヨーロッパや日本などははまだ似たり寄ったりといったところです。
─── そこでいよいよ日本へのサービス展開を本格化させるということですが、アジアマーケットへの見立てはどんな感じでしょうか?
ロインド氏:特に我々にとって、アジアマーケットは非常に巨大だと思います。日本での展開がすぐに成功するとは思っておらず、また、様々な困難もあることを認識していますが、日本には豊穣なロボット文化があり、日本の皆さんは個性的でカッコイイものを求めていると思います。「HAWKEN」にはそれがあると思いますね。メインストリームのメカデザインとはまた違った風味を備えていて、品質にも自信がありますから、必ず皆さんの関心を引くことができると期待しています。
また、日本と同様に、来年には中国への展開を予定しています。すでにプレイしていただいた皆さんからは良好な評判をいただき、「HAWKEN」を気に入ってもらえているようです。我々が重視して開発している“ロボの操縦席に乗っている感覚”を高く評価していただけたのが特に嬉しいですね。アジアは非常に巨大な市場ですから、しっかりとしたローカライズで完璧に展開していきたいと思っています。
─── 日本への展開に関して、言語や決済方法のローカライズを含め、良いパートナーを得られましたか?
ロインド氏:はい、まだ数は少ないですが、さらに多くのパートナーを見つけて進めていく予定です。例えば、日本国内で決済システムの構築に経験がある方などの協力をいただき、日本で一般的な決済手段への対応を進めています。またローカライズについても、単に言語を訳すだけでなく、しっかりと作品のスタイルを打ち出していけるよう、日英の語感の違いによって生まれる違和感を最小限に留めるような形のローカライズを目指しています。
新ゲームモード実装に大期待。 最新テクノロジーへの積極性も特色
─── ゲーム本体の開発も順調ですか?
ロインド氏:本当に、本当に、マジで忙しいです(笑)。いま我々はオープンβから正式サービスへの移行を目指していますが、そのために非常に多くの追加要素を準備しています。来年には中国への展開も控えていますし、並行して様々なことが進行している感じですね。おかげで開発チームは自分の生活がほとんどなくなっている状態です(笑)。ですが非常に手応えのある仕事で、楽しみながらやっています。
─── 近いうちにはどんなゲーム要素が追加されますか?
ロインド氏:予定されている要素のうち、いくつかはまだ話せる段階ではないのですが、例としてはPvE要素を予定しています。いわゆるCOOP(協力プレイ)モードですね。「HAWKEN」に関心を持ってくださるユーザーの皆さんの中にも、あまり対人戦に関心がない方が多くいることを認識しています。
そこで、フレンドと一緒に協力して、AIの敵キャラを撃破していくモードが特に必要だろうと考えました。しかも単なるシューティングではなくて、大量の敵ロボット、きちんとしたミッション目標があるようなものです。このモードのプレイを通じて「HAWKEN」のプレイを学び、その上で白熱した対人戦にチャレンジしていただけることも期待しています。
─── 先日、メカ試乗ツアーのバス内でお話したときに、チラリと別のモードの話もしていましたね(笑)。
ロインド氏:それはまだ公式には詳しく話せないんですが(笑)、「DUEL(1対1)モード」の話でしたね。その背景だけ説明しておくと、じつは最近、コアなプレーヤーたちが面白いことを始めてまして。
勝手を知った参加者がサーバー上に集まって、選ばれた2人のパイロットが前に進み出て、正々堂々と決闘するという遊びです。決闘の間、他のパイロットは見てるだけ。それで、誰が最強を決めようという。これを“HAWKEN Fight Club”と言います(爆笑)。
これは面白い!ということで、ゲームモードとして実装するのが良いだろうと考えました。システムでサポートすれば、こういった面白い遊び方を皆さんがもっとスムーズに楽しめるようになりますからね。具体的な中身についてはまだ話せませんが、きっかけはそんなところです。
─── それはとても楽しみですね。ゲームモードの他にもいろいろと技術的な要素の追加が行なわれているようですが、その点でNVIDIAの協力体勢はいかがでしょうか?
ロインド氏:NVIDIAの協力はとても素晴らしいですね。スタッフが実際に我々のオフィスにやってきて、開発チームと同じ席に座って、ゲームに最新技術を組み込むための作業をよく助けてくれています。
またマーケティング上の協力も非常にありがたいです。日本ではGTX 700シリーズのロンチに合わせて「HAWKEN」を紹介してくださっているのはご存知の通りですし、また、NVIDIAサイトのドライバダウンロードページでも「HAWKEN」をオススメとして表示してくれています。もうこれは何百万人もの人々が見てくれますから、これ以上ない露出機会ですね。NVIDIAは本当にベストなパートナーのひとつだと思います。
─── 技術的な最先端を行く「HAWKEN」ですが、これから特に注目しているテクノロジーはありますか?
ロインド氏:ええ、「Oculus RIFT」です(笑)。これは直接の協業を行なっているもののひとつで、すでにゲームに統合することができています。
大変悲しいことに、Oculus VRの設立者のひとりである、アンドリュー・スコット・リース氏が交通事故で亡くなるという痛ましい事故がありました(※5月30日、米カリフォルニア州サンタ アナにて、警察に追われた銃撃犯の暴走車両に巻き込まれ事故死)。彼はRIFTを我々のゲームに統合する上で精力的に動いてくれた人のひとりでしたから……。
しかし、彼が亡き後もRIFTの正式サポートを提供するために引き続き協業を続けています。RIFTを使うと本当に操縦席の中にいるような、かつてない臨場感のある体験を楽しめます。これは本当に「HAWKEN」の面白さをさらなるレベルに引き上げるテクノロジーに違いありません。
次世代機対応は「SHIELD」にも? 長期持続的な成長を目指す「HAWKEN」
─── 先日のE3 2013までに発表された次世代ゲーム機は「HAWKEN」を実行できる充分なパワーがありますね。これらのハードウェアにも本作を展開する予定、計画、意欲はありますか?
ロインド氏:はい、我々はできるだけ多くの人々に「HAWKEN」を届けたいと思っています。ですのでPS4やXbox Oneへの対応は是非やりたいところなのですが、しかし現在は正式サービスをスタートさせるための作業で手一杯です。まずはPC上で「HAWKEN」を成長させていき、その成長が許す限りにおいて、他のプラットフォームに展開していく機会を作っていきたいですね。
─── PCやAndroidといったオープンプラットフォームの分野でも新機軸のゲームマシンが登場しつつありますね。これについての見立てはいかがですか?
ロインド氏:実は去年、NVIDIAのTegra 4端末「HAWKEN」を、30fpsのパフォーマンスで動かすことに成功しています。非常に忙しいゲームのためタッチパネルでの操作はほぼ不可能なのですが、ゲームコントローラーのサポートさえあれば充分に遊べます。それさえ揃えば対応しない理由はないですね。ですから「SIHELD」には非常に注目していますよ。1月のCESでも「SHIELD」で動く「HAWKEN」を紹介しましたしね。
─── では、近いうちに我々ユーザーも「SHIELD」で本作を遊べるようになると期待していいですか?
ロインド氏:ウフフフ、アッハッハッハッハ(笑)。……Tegra 4は、まさにこのようなゲームのためのテクノロジーだと思います……。実際、我々はTegra 4上で「HAWKEN」を動作させることができましたから……、我々に可能な何かがあると思います。……まあ、まずはTegra 4搭載端末が出てみないことには何とも(笑)。
─── 慎重に言葉を選んで、無難なご返答ありがとうございます(笑)。そんなふうにステキな未来が広がっていくなかで、今後、「HAWKEN」をどのように成長させていきたいですか?
ロインド氏:「HAWKEN」で最も重要なことのひとつは、過去15年で誰もが遊び尽くしたような、よくあるFPSのゲームモードから離れることです。ここ5年間を見ても、FPSにおいて本質的な進化は果たされていないように思えます。どのゲームを見ても似たような内容が多いですよね。
しかしロボットのFPSゲームでは、操縦席の中の感覚、巨大な武器、様々なガジェットの広がりで違いを作り出すことができます。それを通じて全く新しい遊びを提供していくことが「HAWKEN」を成功させるカギだと考えています。
ゲームの拡張も重要です。現在ゲーム世界における2つの大企業が製造するメカが登場していますが、今後数カ月のうちに、さらに新たな企業を登場させ、それぞれに異なった特徴を持つメカを投入していきます。それに新マップなども含め、レギュラーコンテンツのさらなる充実が重要だと思います。
その中で必要な方法は、コミュニティからもらったフィードバックや、支払っていただいたお金を余すことなくゲームに再投資し、コミュニティに還元していくというサイクルです。それが長期持続的にゲームを成長させていくカギだと信じています。
─── 10年にわたって持続的成長を果たした「EVE ONLINE」のようなモデルを目指すとすれば、コミュニティイベントの開催も今後積極的に行なっていきますか?
ロインド氏:もちろん、やりたいですね。特にアジア、欧州で大きなうねりを見せるEスポーツの文化は我々にとって非常に重要だと思います。例えばTwitch.tvのようなライブ配信サービスは、ほぼ、人々が誰かのゲームプレイを観戦することだけでビジネスを成立させてしまっているほどです。
「HAWKEN」はまさにそれ向きのゲームだと思いますし、DUELモードのようなものがあれば尚更ですね。現在実装されている「Siege」モードもまた、FPSでありながらMOBA(※「DotA」や「LoL」的なゲームジャンル)のような香りもありますから、人気が出るはずです。我々としては実用的な観戦機能の実装や、公式トーナメントが開催できるシステム、クラン戦のシステムサポートの構築を急務と認識し、開発を行なっています。
─── 最後に、本作の正式サービスを楽しみにしている日本のユーザーにメッセージをお願いします。
ロインド氏:「HAWKEN」は日本の文化なしには存在しなかったゲームです。特に本作は横山宏氏の作品「マシーネンクリーガー」から強いインスピレーションをもらっていますからね。ですので、日本の皆さんには“ありがとう”と言いたいです。「HAWKEN」をしっかりローンチすることで、皆さんに恩返しをしたいと思います。