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【E3 2013】「Xbox E3 2013 Media Briefing」から見るMicrosoftの新戦略
Xbox OneとXbox 360は今後も併売し、ラインナップも拡充。日本での同時期発売は見送りへ
(2013/6/11 08:07)
現地時間の6月11日、米Microsoftは、E3恒例のメーカーカンファレンスのトップバッターとして「Xbox E3 2013 Media Briefing」を開催した。本稿では、取り急ぎ「Xbox E3 2013 Media Briefing」から見えてきたMicrosoftのエンターテインメント事業の新戦略を解説したい。各タイトルの詳細については別稿にてお届けする予定だ。
ゲームに特化した「Xbox E3 2013 Media Briefing」。1番のメッセージは“Xbox 360の展開継続”
Xbox事業のトップを担うドン・マトリック氏はイベントの冒頭で「今日はゲームだけの話をする」と宣言し、1時間半に渡ってXbox Oneのラインナップを中心としたゲーム尽くしのイベントを繰り広げた。発表の中には、新型Xbox 360の発表や、Xbox Oneの発売時期と価格の発表、そしてXbox OneにおけるSmart GlassやXbox LIVE、動画配信サービスの紹介など、重要な情報も含まれていたが、直前に紹介されたゲームの興奮もさめやらぬ中で、さらっと流すように紹介され、前回のイベントのようにTVサービスや、スポーツ映像の配信など、セットトップボックス的な話は一切無く、「ゲームのXbox」を強く印象づけた。
また、ゲームコンテンツの話題については、これまでプレイステーションと共に二人三脚でシリーズを育んできた「METAL GEAR SOLID」の最新作「METAL GEAR SOLID V」のデモンストレーションを、「Xbox E3 2013 Media Briefing」の開幕に持ってきて、スペンサー氏と小島秀夫氏の握手を行ない、「MGS」ナンバリングタイトルの脱SCEファミリーを演出するなど、サードパーティーの有力コンテンツの奪い合いはさらに熾烈さを増している印象だ。
「Xbox E3 2013 Media Briefing」では、Xbox Oneタイトルは13タイトル、Xbox 360 3タイトルの計16タイトルが発表された。タイトルだけ見ると、Xbox Oneにシフトしていっているかのような印象を受けるが、実際はそうではなく、イベントでの発表によれば100タイトル以上のXbox 360タイトルを準備し、今回発表された新型Xbox 360も含めて、これからもXbox 360には力を入れていくことが強調された。
実際、「Grand Theft Auto V」、「LIGHTNING RETURNS : FINAL FANTASY XIII」、「バットマン:アーカム・ビギンズ」など、タイトルだけ告知してデモは行わなかったタイトルや、E3 Press Kitのみにラインナップされているタイトルまで含めると、実はXbox 360タイトルのほうが圧倒的にラインナップが充実している。これはWii Uの発売と同時にWii向けのタイトル供給が事実上ストップした任天堂とは明らかに戦略が異なっており。Xbox Oneリリース後も、変わらずXbox 360へのタイトル供給は続けられていくというのは、現行のXbox 360ユーザーにとっては嬉しいニュースだろう。
今回発表された新型Xbox 360は、Xbox Oneとのファミリーであることを強く意識した黒地のスポーティーなデザインになっている。価格は現行モデルと同じ、4GBフラッシュを搭載したモデルが199ドル、250GB HDDを搭載したモデルが299ドル。欧米では本日より発売が開始され、日本を含むその他の地域でも月内に発売開始する予定としている。
Microsoftでは、これまでXbox 360を支えてくれたXbox LIVEゴールドメンバーシップユーザーへの感謝の気持ちとして、Xbox LIVEゴールドメンバーシップを対象に、6月より無料で2本のタイトルを提供していくという。今月は「ASSASSIN'S CREED II」と「Halo 3」で、今後も「Fable III」などの大型タイトルの提供も行なっていくという。期間は12月までで、日本でも実施するかどうかは未定。
次々にAAAタイトルの実機デモを披露したXbox One。ハイエンドPCゲーミングの世界をゲームコンソールに
しかしながら、インパクトという点で、イベントの主役を担ったのはやはりXbox Oneタイトルだ。DirectX 11世代のグラフィックス、毎秒60フレーム表示、クラウドベースのゲームデザイン、Twitch等を使ったゲーム配信といった、これまでハイエンドPCゲームの専売特許だった要素をわずか499ドルのハードウェアにすべて盛り込み、これまで10万円以上の投資が必要だったハイエンドゲーミングの世界を、一気に普及レベルまで落とし込んでいる。PCゲームをよくプレイするようなコアゲーマーにとってはXbox Oneが実現する次世代ゲーミングの世界は衝撃的だろうし、カジュアルなコンソールゲーマーにとってはまさに未知の世界だろう。
とりわけ、8年ぶりにハードウェアが大きく刷新されるインパクトは、我々の想像以上に大きく、Xbox OneのパワーとDirectX 11世代のゲームエンジンのポテンシャルを活かした贅沢なエフェクト、大量のモンスター数、画面を覆うほどの巨大なオブジェクトがリアルタイムで動き、激しくぶつかり、そして動的にレベルデザインが変化するという、これまでは各種ハードウェアの制限でなかなかできなかったような表現が存分に行なえるようになっており、MSのエグゼクティブが口にしていたように、“クリエイターの創造力を刺激する”ハードウェアになっていると感じた。
個々のゲームの紹介については別稿に譲るとして、本稿ではXbox Oneで提供される新しいXbox LIVEサービスについて取り上げたい。イベントではSmart Matchとオートレジューム、UPLOAD STUDIO、Twitchへの標準対応などが紹介された。
これらは実は密接に絡み合った一連のサービスになっており、どれか欠けても、今時のゲームコミュニティのニーズを満たせない。Smart Matchは、オンライン上のフレンドとより手軽に対戦機能を楽しむための機能で、他のゲームやゲーム以外のコンテンツを利用していてもゲームに誘うことができる。もしゲームに参加する場合は、ゲームを終了せずに、現在のゲームを中断したまま他のゲームに遷移することができる。これがオートレジューム機能となる。
UPLOAD STUDIOは、フレンドとの対戦の映像を自動で録画しておき、任意の映像を自動的にカッコイイ編集を加えて動画をクラウド上にアップしてコミュニティに公開することができるツール。別アプリでは無く、OSの機能となっており、ゲームを立ち上げたまま編集やアップロードができる優れものだ。
最後のTwitchへの連携機能は、PCゲームの分野で利用者が増えているゲーム動画配信サービス「Twitch」をXbox Oneに丸ごとビルトインして、Xbox Oneタイトルをプレイしながら、同時に映像も配信できるというものだ。PC向けに提供されているTwitchと決定的に異なり、かつ進化している点は、その映像を見るだけで無く、対戦やマルチプレイに参加して、自らが参加者になれるところだ。PCゲームのトレンドを単にキャッチアップするだけでなく、さらに進化させているところがPCとゲームコンソールの両方にリーチしているMicrosoftならではの展開だと感じた。
Xbox Oneの気になる発売時期と価格は、11月発売予定で価格は499ドルと発表された。販売エリアは現時点では北米および欧州の21カ国としか発表しておらず、残念ながら日本は最初のローンチから漏れてしまっている。Xboxファンにとっては、初期ローンチに漏れてしまったのは非常に残念なニュースだが、過去の例で見ると、Zuneしかり、Windows Phoneしかり、Surfaceしかりで、日本はMicrosoftの初期ローンチから漏れることのほうが多く、Xboxフランチャイズこそ珍しいケースだったと言える。
現在のXbox 360も日本と欧米では、特にXbox LIVEで提供されているコンテンツの種類、量に大きな違いがあり、販売開始から8年経ってもその差が埋まるどころか、拡大してしまっている現状を踏まえると、まずは欧米から走らせ、落ち着いてきてから改めて日本展開を図るという形が妥当だと思える。日本展開については依然として「未定」としているが、日本のXbox事業のトップである泉水敬氏をはじめ、プロダクト方面のスタッフは何名かE3に参加しており、公式サイトもオープンしている。展開そのものはほぼ確実視されるが、肝心の時期についてはまったくの未知数というステータスだ。これから巻き返して世界ほぼ同時発売という可能性もゼロではないが、今回は日本のゲームメディアはMicrosoftブースの取材対象から外されており、その可能性は限りなくゼロに近いと見ていい。日本のゲームファンは首を長くして発売発表を待つしかなさそうだ。
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