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日本マイクロソフト、Xboxプレスラウンドテーブルを開催

Xbox One発売延期の理由は、翻訳とコンテンツ準備のため。年内は新型Xbox 360に注力

9月17日開催

 日本マイクロソフトは9月17日、都内ホテルにてXboxプレスラウンドテーブルを開催し、明後日9月19日から東京ゲームショウでの出展を予定している米Microsoftの次世代ゲームコンソールXbox Oneについて、TGS開催に先駆けてメディアに披露し、Xbox OneにおけるMicrosoftのビジョンと、その魅力について説明が行なわれた。日本での発売時期は2014年中、価格については未定となっている。本稿では、イベントで語られたXbox Oneにおける新たな事業戦略について紹介したい。質疑応答や東京ゲームショウにおけるタイトルラインナップについては別稿にてお伝えしたい。

【Xboxプレスラウンドテーブル】
ラウンドテーブルは小規模で実施され、Microsoft Game Studiosからはトップのフィル・スペンサー氏をはじめ3人が来日していた

日本マイクロソフト執行役 インタラクティブ・エンターテイメント・ビジネス ゼネラルマネージャーの泉水敬氏
Microsoft コーポレートバイスプレジデントのフィル・スペンサー氏

 プレ東京ゲームショウイベントとも言える今回のラウンドテーブルは、ホスト役として日本マイクロソフト執行役 インタラクティブ・エンターテイメント・ビジネス ゼネラルマネージャーの泉水敬氏がメディアを迎え、スペシャルゲストとしてMicrosoft Game Studiosのトップ フィル・スペンサー氏が来日したにも関わらず、事前に「Xbox Oneの発売時期の告知は行なわない」と告知され、参加メディアも絞り、新作タイトルの発表もないなど、異例ずくめの内容で行なわれた。

 そこまでしてわざわざ日本でクローズドな発表会を行なった理由はXbox Oneというゲームプラットフォームは、説明が必要な複雑なマシンだからだ。現行世代までのゲームプラットフォームは、極端に言えば「●●が遊べます!」と声高に宣言するだけで良かった。しかし、そういうシンプルな戦略でゴリ押しできた時代はとっくの昔に終わり、今はライバルメーカーのゲームプラットフォームのみならず、スマートフォンやタブレット、スマートTVなど、あらゆるスマートデバイスがライバルになる。据え置きというディスアドバンテージを覆し、さらにリビングにTVと共に置いて貰うためにはどうしても多くの説明が必要になるというわけだ。

 この点については「プレイステーション 4はゲーム機」と宣言し、ゲームの紹介のみに注力するソニー・コンピュータエンタテインメントとは対照的に、「Xbox Oneはゲームのみならず映画、音楽など……」と語り始めるマイクロソフトは、スタートの時点で大きく戦略が異なっている。それは奇しくも、久夛良木健氏がPS3を「スーパーコンピュータ」と定義し、ノンゲーム向けの機能に注力したPS3のローンチと非常に似通っている。

 今回のラウンドテーブルで語られたのは、大別して以下の4つだ。

・マルチOSによるマルチタスク機能
・オールインワンのサービスプラットフォーム
・Kinect標準装備がもたらす、革新のジェスチャー/ボイスインターフェイス
・ID@Xboxによるインディーズゲーム開発のフルサポート

 マルチOSによるマルチタスク機能は、数あるゲームコンソールの中で、Xbox Oneのみが実現している最大のウリとなる機能だ。スペンサー氏は、数年前にXbox 360の後継機の検討に入り、ユーザーリサーチを行なった際、そこで得た最大のユーザーニーズは「複数のことを同時にしたい」ということだったという。

 ゲームをやりながら電話で話したり、TVCMの最中にWebブラウジングをしたりしたい。現在はそれを複数のデバイスでやっているが、それを1台のスクリーンで実現できないかと考えたのがきっかけだという。

 Xbox OneではマルチOSを採用し、ゲームOSに加えて、システム用のOSが常時走っているため、ゲーム中にゲーム映像をアップロードしたり、ゲーム中にSkypeを使ったり、ブラウザを使ったりすることができる。ゲームならゲームに、ビデオならビデオに、基本的に何か1つのことでマシンを占有してしまうPS4やWii Uとの最大の違いはここにある。マイクロソフトとして様々なことを同時に行ないたいと考えるユーザーニーズを満たすためにはマルチOSの採用は必要不可欠と考えたわけだ。

【マルチOS】
メインはゲームやNFL中継で、サブとしてSkypeやTwitchを利用する。Xbox Oneではマルチタスク機能が簡単に利用できる
Xbox Oneの動画ツール「UPLOAD STUDIO」。ゲームをプレイしながらの録画はもちろんのこと、画面を切り替えて映像の確認をしたり、アップロードしたりもできる

 2点目として、発表時からアピールされているオールインワンプラットフォーム。Xbox Oneではゲームのみならず、映像、音楽、TVと様々なコンテンツがフルスペックで楽しめる。のみならず、クラウドサービスを使ってフレンドやフォロワー(TwitterやFacebookのそれと同じような扱い)と好みやお勧め情報をシェアできる。マルチOS採用のおかげで、ゲームをポーズしたまま映像コンテンツに切り替えたり、音楽を聴きながらゲームを遊んだりといったことも可能。シームレスかつ流れるようなコンテンツ利用がXbox Oneの真骨頂といえる。

【オールインワンプラットフォーム】
Xbox Oneではゲーム以外にもあらゆるサービスにアクセスすることができる。ただ、特に映像配信サービスは国毎に権利が異なるため、その都度権利を撮り直す必要がある。北米版で提供されるNFLのライブTVに変わるコンテンツが獲得できるまでは日本で発売できない、という判断なのだろう

 そして実際にデモを行なう形で丁寧に解説されたのが、Kinectを使ったジェスチャー/ボイスインターフェイスだ。Xbox OneはKinectを標準装備したため、PS4と比較して価格が高くなっている。この価格分の機能をいかにアピールするかはマイクロソフトとしても非常に重要だと考えているようだ。

 Xbox Oneのダッシュボードは、Windows 8と非常に親和性が高いタイルベースのUIを採用しており、現在のXbox 360のダッシュボードと同様に、横にスライドさせて利用したいコンテンツを選択する仕組みになっている。Kinectを使ったジェスチャー/ボイスによる操作は、Xbox 360でも採用されていたが、Xbox Oneでは標準装備となったため、より高機能になっている。

 デモでは、ボイスを使ったボリューム調整やミュート操作、メニューの呼び出しといった基本的な操作に加えて、顔認識で自動的にログインするというE3で発表された新機能、そして複数人が同時ログインして、多重ログイン状態でダッシュボードを操作するという複雑な操作などが紹介された。

 デモを担当したアルバート・ペネロ氏によれば、ハードは完成したものの、ソフトウェアについては現在開発中で、まだバグが残っていたり、操作がもたつく場面があるということだったが、見た限りではもたつくことなく快適に複雑な操作が行なえていた。

 驚いたのは、泉水氏が飛び入り参加して行なわれたデモだ。アルバート氏がログインした状態で、泉水氏がコントローラーを握り、TVの前に立つと、アルバート氏のアイコンの隣に泉水氏のアイコンが表示され、2人同時にログインした状態になった。この場合、コントローラーを持っている人がマシンを占有した状態になり、ダッシュボードは占有している人の状態に刷新される。この占有権が切り替わる場合、つまりコントローラーを手渡すと、今度はその人のダッシュボードの情報が自動的にクラウドからダウンロードされ、切り替わる。

 しかもこの際、ボイスコマンドは2人のいずれでも行なえるだけでなく、そこで呼び出されるメニューはボイスコマンドを発した人のものとなる。デモでは、アルバート氏が占有したXbox Oneで、泉水氏がXbox Call Friendsとボイスコマンドを発することで、泉水氏のフレンドリストが表示された。このほぼリアルタイムな切り替えは驚異的だ。マルチOSとクラウド機能がもたらすウルトラCと言えそうだ。

 ほかにもゲームをプレイしながら、ボイスコマンドで録画をスタートさせ、さらに撮った映像を画面を切り替えて内容を確認したり、アップロードして友人にシェアし、またゲームに戻ってポーズした状態から再開するという従来のゲーム専用機の概念を覆す完全なマルチタスク機能が紹介された。ゲームからゲームに移る際も、いったん終わらせる必要がなく、アプリを切り替えるような感覚で新たなゲームへと移行できる。まさにPCのようだ。

【デモ】
写真だけではまったく伝えられないが、Kinectを使ったボイス/ジェスチャーインターフェイスは、Xbox 360から格段に進化している。ぜひ東京ゲームショウで確認してみてほしい

ID@Xboxを解説したクリス・チャーラ氏

 そして最後の「ID@Xbox」は、Gamescomでマイクロソフトが発表した独立系デベロッパーへの支援プログラムだ。今回のラウンドテーブルでは、すべての独立系デベロッパーに対して開発キットを無償で提供し、専用のストアで販売する際のロイヤリティ以外は、すべて無料でXbox One向けのゲーム開発に必要なサービスを利用できるというもの。

 Xbox Oneではファーストパーティー、サードパーティー、そしてID@Xboxを利用する独立系のデベロッパーのゲームはすべて分け隔て無く同じ「ゲーム」として扱われ、Xbox 360の際のような「インディーズゲーム」という柵で囲うようなことはしないという。

 マイクロソフトとしては、このID@Xboxのプログラムを通じて、ゲーム専用機向けにゲームを作りたいデベロッパーのみならず、現在、スマートフォンやタブレット向けにモバイルゲームを提供しているデベロッパーをXbox陣営に引き込みたい考えだ。すでに日本語でのサポートサイトも完成しているため、興味のある開発者は1度覗いてみてはいかがだろうか。


今年の年末商戦は新型Xboxがメインとなる
北米版Xbox Oneで提供されるTVチャンネル。日本語版ではこの辺も日本の番組となる

 以上が、今回のラウンドテーブルで語られた内容となる。冒頭でも触れたように、肝心の日本での発売時期や価格については一切語らなかったが、スペンサー氏は、最初のローンチグループから日本が漏れた理由は、マーケットとしてプライオリティを下げたわけではなく、あくまで日本市場のビデオゲーム発祥の地という特殊性を考慮し、ボイスコマンドのローカライズや名実共にオールインワンプラットフォームと呼べるだけのコンテンツの整備に時間が必要のためだとしている。

 Xbox 360はこれまで7,500万台以上が出荷されているのに対し、日本では200万台以下しか出荷されていないため、マーケットとしてのプライオリティが下がるのはある程度やむを得ないところではあるが、その一方で、一般的にローカライズに時間が掛かるとされるアジア地域はすべて2013年11月の発売からは漏れているのも事実だ。

日本語でのボイスコマンドを可能にすることと、オールインワンプラットフォームとして国毎のTVチャンネルや、北米のNFLチャンネルに匹敵するような日本独自の映像サービスの獲得に、さらに若干の時間が必要だと判断したのは間違いないと思われる。日本マイクロソフトでは、年末商戦は先日発表した新型Xbox 360および、サードパーティー製のホリデーシーズンタイトルを主力商戦として乗り切る考えだ。このため、2年ぶりに出展する東京ゲームショウでは、Xbox Oneタイトル8本に対して、Xbox 360タイトル21本で、Xbox 360重視の姿勢を鮮明にしている。

 気になるXbox Oneの日本での発売時期だが、最初のローンチ地域の発売が順調に推移すれば、早くて3月頃。遅くとも6月末の今期末までにはリリースされることが予想される。それ以上遅くなる場合は、一気に来年のホリデーシーズンまでずれ込みそうで、オールインワンプラットフォームとして完全に準備を整えた上で、できるだけ欧米からズレないタイミングでの発売を期待したいところだ。

【Xboxフランチャイズ】
奥にあるボックスは、できたてほやほやだというXbox Oneの外箱。Xbox 360とほぼ同サイズといったところ
こちらは日本の主力商品となる新型Xbox 360。現行モデルより小型化、薄型化、静音化を実現した製品となる

(中村聖司)