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日本中のUnityゲーム開発者が集結! 「Unite Japan」レポート
モバイルに据え置き機に負けない大作タイトルを!「REPUBLIQUE」の野望
(2013/4/16 00:00)
モバイルに据え置き機に負けない大作タイトルを!「REPUBLIQUE」の野望
多様化に向かうモバイルゲーム市場で、Unityを使って新たな試みが始まっている。モバイルゲームシーンに据え置き機並みの大作色のあるゲームタイトルを持ち込もうという動きだ。その先陣に立ち、まさにいま奮闘を続けているのがインディーズゲーム開発企業、Camouflaj Studiosを設立したRyan Payton氏である。
Helgason氏の基調講演にひき続いて登壇したPayton氏は実に面白い経歴の持ち主だ。スーパーファミコン「ファイナルファンタジー VI」や「メタルギア」シリーズで日本のゲームにゾッコンとなったPayton氏は、10年前、24歳にして単身来日。ゲーム雑誌の記者を経てKONAMIに入社し、プレイテストや海外向けローカライズ、マーケティングの担当としてPS3「メタルギア・ソリッド 4」の開発に携わった。現在は日本語も流暢に操る。
そこで深くゲーム業界にコミットしたPayton氏は、マイクロソフトに引き入れられて「Halo」シリーズ新3部作のディレクションに携わった。プログラマーでなければ、ゲームデザイナーでもないPayton氏だが、ほぼゲームへの愛と情熱だけで業界トップの現場に携わってきた傑物である。
「メタルギア・ソリッド 3」を人生で最高のゲームと表するPayton氏を付き動かしてきた情熱の源泉は、「壮大なゲームが好き。いつか本当に自分が思うような壮大なゲームが作りたい」という思いだ。
しかし全世界で数百万本というトップセラーである「Halo」シリーズに携わっても、氏の理想は果たされなかった。「百万人がプレイするゲームではなく、1億人がプレイするゲームを作りたいのです」とPayton氏は語る。
「Halo」や「MGS」を1億人がプレイできない原因は明らかだ。プラットフォームに縛られているからだ。対象機種の販売台数以上のユーザーには届きようがない。また、大きなチームと大きな予算に縛られて自由もない。それらのことが不満となりいよいよ憂鬱で会社に行くのもイヤになってきたというPayton氏は、一昨年、ついに独立を決意する。
そのタイミングで時代は変わっていた。スマートフォンの急速な普及によって、1億人が手にする汎用コンピューターというゲームプラットフォームが誕生した。その上で、Unityという強力なゲームエンジンの存在があり、独立して小規模チームで大作をものにするというスキームが現実味を帯びてきたのだ。
それがPayton氏がマイクロソフトで得たストック・オプションを全て売り払い、有り金全部使ってCamouflaj Studiosを立ち上げた理由だ。
Payton氏は、そのようにすべてをなげうって立ち上げた開発チームとともに、「壮大なゲーム」を作っている。Camouflaj Studiosが2013年のリリースを予定している「REPUBLIQUE」という作品だ。もちろん本作はUnityをフル活用して制作されている。
本作は当初iOSおよびPC向けに投入予定の作品だが、映像、世界観、ストーリー、演出、世界構造などゲームのスケール感においてAAAと呼んで差し支えない水準を目指している。タッチ操作向けにゲームのメカニクスに様々な工夫が加えれているものの、モバイル向けとはとても思えないような大作感のある仕上がりだ。
Unityのようなゲームエンジンの登場が条件のひとつだった、とPayton氏。本作は今夏を目処に北米でのリリースを予定しており、その後、キッチリとしたローカライズを経てぜひ日本でも展開したいと語っている。
実際のところ、モバイルプラットフォームの性能は上がり続け、少し前の据え置き機に並ぶ水準までの表現が可能になっている。性能に見合ったユーザーニーズを満たすという意味では、長期的に見て、モバイル向けのAAA水準のゲームの供給がやがて始まることは必然だろう。
しかし、その必然を満たすのは、まず第一にその世界を切りひらこうとする冒険者がいてこそなのだ。その意味でPayton氏のある意味で向こう見ずな取り組みは、今後のモバイルゲームシーンのトレンドを形成していく、ひとつの切っ掛けとして歴史に記憶されるかもしれない。その背景にUnityというゲームエンジンの存在があったことはそれと同じくらい興味深いことだ。
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