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セガ、TPGSに音楽ゲーム「maimai」などアーケードゲームを出展
Sega Amusements Taiwanのビジネスから見た台湾アーケードゲーム事情
(2013/2/2 07:19)
Taipei Game Show(TPGS)で、毎年一定の存在感を示しているアーケードゲーム。例年、セガやバンダイナムコ、それら日本大手メーカーからライセンスを受けたメーカーによる出展が行なわれているが、今年はセガの台湾法人Sega Amusements Taiwanによる小規模の出展のみに留まった。今回は、Sega Amusements Taiwanの出展模様から、台湾のアーケードゲーム事情をお届けしよう。
Sega Amusement Taiwanは、その名前の通り、アーケードゲームの販売、運営、メンテナンスに特化した組織で、公式サイトに「segataiwan」のドメインを使用しているものの、コンシューマーゲームやオンラインゲーム、スマートフォンゲームなどは一切担当していない。その代わり、担当している領域は日本と殆ど変わらず、「ムシキング」のような子供向けのカードゲームから、今回出展されていた「maimai」のような音楽ゲーム、そして「頭文字D」シリーズのようなレースゲーム、「三国志大戦」シリーズのような大型筐体を使ったオンライントレーディングカードゲーム、最後にメダルゲームやスロットマシーン、プライズマシンまで、日本で企画販売されているものはひととおり扱っている。
ちなみに、日本でも人気のアーケードマシン「初音ミク Project DIVA Arcade」は、台湾ではアーケードゲームメーカーのMega Biotech & Electronicsにライセンスアウトしたため、台湾では自社では扱っていないということだ。
セガブースでは、セガのリズムアクションゲーム「maimai」、IGSのトレーディングカードゲーム「機甲英雄」、バンダイナムコゲームスのトレーディングカードゲーム「百獣大戦(邦題『キングカイザー』)」の3つの筐体を出展していた。
今回久々に出展した理由は、「主催者のTCAに誘われたため」ということで、今出せる新製品を集めたという。「maimai」は、日本では7月から、台湾では9月から展開しているドラム式洗濯機のような形状をしたリズムアクションゲーム。
2つのトレーディングカードゲームは、他社のマシンばかりだが、セガでは「ムシキング」や「オシャレ魔女 ラブandベリー」をいち早く中文化し、台湾や香港、中国で展開してきた経緯があるため、こうした子供向けについては一日の長があるセガが、コンペティターのマシンも取り扱うという呉越同舟的なビジネスも行なっているようだ。
ちなみに、セガの台湾地域での強みは「頭文字D」や「三国志大戦」などの大型筐体とメダルゲームだという。台湾での主力商品である音ゲーは、伝統的にコナミが強く、確かに街では「REFLEC BEAT」や「jubeat」、「pop'n music」などのコナミの筐体を数多く見ることができた。これに「太鼓の達人」の中文版などを手がけるバンダイナムコゲームスを加えた3社が台湾ではしのぎを削る関係になっているようだ。
今回、セガがメインで押し出していた「maimai」については、日本でのリリースからわずか2カ月でのスピード展開となっているが、バージョンは現在日本で展開している最新版「maimai PLUS」ではなく、初代「maimai」となっていた。その理由を聞いてみたところ、意外な事情が明らかになった。
昨今ではアーケードマシンもまたネットワークに常時接続することが当たり前で、オンライン環境で、オンライン対戦モードや、ランキング、コミュニティ機能、そして新曲や新モードのアップデートを行なうことが当たり前になっている。
しかし、台湾ではアーケードマシンは「ネットワークに繋いではいけない」という決まりがあるため、オンライン対戦モードやオンラインアップデートといった現代のアーケードゲームでは必要不可欠の機能が使えないという。理由は「ネットワークに接続して自由にアップデートされると、内容が確認できないため」だという。
これだけオンラインゲームやスマートフォンゲームが自由にオンラインアップデートを行なっている中、アーケードゲームだけが禁止されるのは、時代錯誤過ぎてさすがにどうかという気もするが、実際には繋いでいる店舗も多くあり、台湾政府も繋いでいるからといって摘発しているわけでもなく、この辺りは本音と建て前を使い分けているという印象だ。
このほかにも台湾、とりわけ台北は、アーケードゲームについて非常に厳しい規制が敷かれている地域として知られている。たとえば、台北市では、アミューズメントスポットは学校から最低でも200メートル以上離れなければならず、関係者によれば最近はさらに厳しくなり1kmぐらい離れていなければ許可が下りないという。また、ゲームの言語については特に規制はなく、日本語版や英語版のマシンも稼働しているものの、筐体に張られたゲームの遊び方を説明したインストラクションカードは必ずローカライズしなければならないなど、日本で言う風俗営業法のような厳格な規制が敷かれている。
もう少し細かく見ていくと、アーケードマシンのカテゴリには、「制限無し」、「普通級」、「限制級」の3段階があり、制限無しは免許が設置できなくても設置できるもので、今回出展されたマシンはすべてこのランクとなる。「maimai」のような音ゲーは、いわゆる「アーケードゲーム」には含まれないため、台北地下街や西門町など街のいたるところで見ることができる。セガとしても、免許の無い業者にも販売できるため、このカテゴリが主力商品と言うことになる。年齢、場所を問わず、遊べるものが多いため、トレーディングカードゲームなどのように中文にローカライズされているタイトルが多い。
「普通級」は、いわゆる「アーケードゲーム」であり、ミディタイプ筐体を用いてアーケードスティックでプレイする各種ゲームや、「頭文字D」や「三国志大戦」といった大型筐体を採用したものもこのカテゴリとなる。こちらはレースゲームなど、見れば遊び方がわかるものが多いため、多くは日本語版や英語版のままとなる。
そして最後の「限制級」は、メダルゲームやスロットゲームなど、射幸性の高いゲームが該当する。「普通級」と「限制級」は、免許および許認可が無ければ設置/営業することはできず、台北市ではその許認可そのものが非常に下りにくく、台北市で営業しているアミューズメントスポットのほとんどは、規制が入る前から免許を取っていたところばかりだという。
このため、日本では多くの直営店を展開するセガだが、台北市には1店舗もなく、台北市に関しては、音ゲーやトレーディングカードゲームなど、免許のいらないアーケードマシンを販売しつつ、「普通級」や「限制級」の免許を持つ業者に、アーケードゲームやメダルゲームを販売しているという。
台北市以外の都市では、比較的許認可が取りやすいため、台湾中部の都市台中や国際空港がある桃園にはセガの直営店が計3店舗あり、「限制級」のメダルゲームを含め、あらゆるアーケードマシンを展開しているという。台北市のアミューズメントスポットは、長年営業している店舗ばかりであるため、全体的に古びており、若い女性や子供は入りにくい雰囲気だが、セガの直営店を含め地方のアミューズメントスポットも機会があればぜひ取材してみたいところだ。
(C)SEGA