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アーケード・オンラインゲームメーカー、IGS本社訪問レポート
社内に工場も持つ、30年の歴史を誇る台湾ゲームメーカー
(2015/5/28 14:00)
ライオンズフィルムは、台湾のアーケード・オンラインゲームメーカーIGS(International Games System)が開発したブラウザアクションRPG「三国戦記WEB」の日本での運営を発表した。
今回この発表に合わせ、台湾で開発者のプレゼンテーション、さらにIGS本社にも行くことができた。本稿ではIGS本社レポートをお伝えしたい。IGSは日本以外では珍しい、アーケードゲームメーカーとしてビジネスを展開する会社だ。また、オンラインでは台湾での有名スターのライセンスを得て、彼らと麻雀ができるオンライン麻雀「明星3欠1 Online」を初めとして、様々なタイトルを展開している。IGSの活動も紹介したい。
アーケードとオンライン、2つの柱でビジネスを展開
今回はIGSの総経理(General Manager)を務める江順成氏を初めとするスタッフからIGSの概要や取り組みを聞くことができた。IGSは江氏を含める技術者出身の3人の人物によって1989年にアーケードゲームメーカーとしてスタートした。2006年には台湾で上場を果たし、現在中国本土のスタッフを含めて800人を超えるという。
IGSの強みは“ゲーム開発者の層の厚さ”だと江氏は語った。400人を超える開発者がアーケードゲーム、PC向けやスマートフォン向けのゲームを開発している。創立者が技術者だからこそ、今後も開発重視の方向性をとっていきたいとのことだ。
現在、IGSは「アーケード部門」、「オンライン部門」の2つの柱で組織を編成し、ビジネスを展開している。オンライン事業部は2001年よりスタートし、現在は売り上げはほぼ5:5まで成長した。中国や韓国のメーカーとの共同開発タイトルも数多く手がけている。台湾では「Game Tower」というポータルサイトで、自社タイトルの運営も行なっている。
これまでで最大のヒットとなったのが、オンライン麻雀ゲームの「明星3欠1 Online」だ。台湾の有名スターとライセンス契約を結び、プレーヤーは彼らのアバターを使ってオンラインで麻雀ができる。現在“台湾で2人に1人が「明星3欠1 Online」をプレイした”といえるほどの登録アカウント数を記録し、同時接続者数は40~50万人と現在も大きな人気を集めている。
台湾ではオンラインゲームが出始めた頃から、カジノゲーム、麻雀ゲームが人気だったが、ギャンブル性のみにフォーカスしたタイトルが多かった。「明星3欠1 Online」は台湾の有名アイドル、有名人を起用することで、他のシンプルなゲームとは異なる世界観を生み出し、新人アイドルのプロモーションなどにも使われるなど話題を集め、他のタイトルと明確な差別化ができたのが人気の秘密だという。
オンライン事業では、PCゲーム以外にも、スマホ、Facebookアプリなども展開している。「明星3欠1 Online」はスマホ版もリリースしており、こちらではAIが操作するアイドル達のキャラクターと麻雀が楽しめる。ポーカーやルーレットなどのカジノゲームも人気だ。オンラインシミュレーションやクイズゲームなど定番のタイトルも揃え、現在30タイトル以上をリリースしている。
一方のアーケードゲームは、2階建てバスやデコトラでレースを繰り広げる「動力トラック」や、リアル系の「Speed Racer4」など多彩なレースゲーム、モーションセンサーを使ったダンスゲーム「DANCE BASE」、ガンシューティング「MONSTER EYE」など様々なアーケードゲームを展開している。「三国戦記WEB」はアーケードのアクションゲーム「三国戦記」シリーズのブラウザ版となっている。「三国戦記」シリーズは日本でもファンページがあり、台湾や中国で大きな人気だ。
昨今では、「子供向けアーケードゲーム」も人気だ。特にロボット系カードゲーム「機甲英雄」には力を入れており、ロビーにも大きなロボットの模型があったり、開発室には全カードの絵柄が展示されていた。他にも子馬のおもちゃにまたがるレースゲーム「GoGo Pony」、UFOキャッチャー風の「鳥亀家族」など様々なゲームがある。
IGSはメダルではなく「クーポン」を発券し、そのクーポンの量に応じて景品と交換できるギャンブル系のゲームも製作しており、こちらの売り上げも大きい。IGSは中国や東南アジア、北米にもアーケードゲームを展開しているが、売り上げ的には台湾、中国に続き、イタリアが好評とのことだ。イタリアは最近アーケードゲームに関する法律の改正がアリ、IGSの重要なマーケットとなっているという。
世界ではアーケードゲームが遊べる“ゲームセンター”は法律で大きく制限されているのが現状だ。その突破口の1つが、“家族向け”をアピールすることで、台湾でファミリー向けの認可を受けたアミューズメントが100件ほどあり、台北市内では10件ほど。一方成人向けの景品交換型のゲームセンターは、台北は規制が厳しいためあまりないが、台中や高雄などでは非常に多く展開しているということだ。
「IGSは30年間アーケードゲームメーカーとしてやってきました。15年前からはオンラインゲームも手がけています。アーケードでは日本市場へも展開していますが、オンラインゲームでは日本市場への投入が、『三国戦記WEB』が初めてとなります。世界におけるゲームのリーダーである日本へタイトルをサービスできるのはとてもうれしいです。全力でがんばりますので、よろしくお願いします」と、江氏は挨拶した。
社内のいたるところにあるアーケード筐体。基板や筐体の製造工場も社内に完備
今回はさらにIGS本社を見ることができた。IGSの大きな特徴はゲームメーカーとして開発スタジオがあるだけでなく、「アーケードゲームの工場」としての役割も持っていることだ。筐体の組み立てや、機器のテスト、既存のPCパーツをベースに、ROMを交換したり、専用のSSDを取り付けアーケードゲームの機版を製作し、筐体に組み込んで出荷する本格的な工場施設も社内に持っているのだ。
ROMをオートメーションで倉庫から取り出す機械や、正確に基盤にはめ込む工作機械、ボタンやレバーのチェックや、数十台の基盤をまとめてチェックする機械など、アーケードゲームメーカーならではの施設を見ることができた。
開発者自らがドライブゲームの座席に座ったり、ダンスゲームをプレイしてセンサーや難易度をチェックする部屋なども見ることができた。アーケードゲームは来客や社員向けの専用コーナーもあるほか、ジムやヨガができるレクリエーションフロアにも置いてある。ちなみにレクリエーションフロアにはものすごく大きなカラオケルームもあった。カラオケルームは会社説明をしたイベントスペースのある最上階にも設置しており、癒やしを求める社員が熱唱しているとのことだ。
筆者はこれまでもゲームメーカーは何社も訪れているが、アーケードゲームメーカーは初めてで、とても新鮮だった。アーケードゲームは筐体でまずユーザーの興味を大きくそそり、プレイしている人の楽しそうな姿で強く「プレイしたい」と思わせる。ゲーム性はシンプルで、すぐにルールが把握でき、身体ごとゲーム空間に引きずり込まれる。アーケードゲームならではの楽しい空間を日夜生み出している環境を見ることができたのはとても楽しかった。