「OCG 2011」レポート 世界市場で勝つアプリのヒント
バンダイナムコのFacebook進出事例など5つのセッションを紹介


5月31日 開催

会場:ベルサール秋葉原


 昨年はオンラインゲーム&コミュニティサービスカンファレンスとして開催していた「OGC」。今年は略称こそ従来通りだが、その意味をOpen、Grobal、Contentsの頭文字に変え、「オープン環境が生み出すゲーム&コミュニティコンテンツ -グローバル化とクロスプラットフォームの新次元へ-」という副題で開催された。

 内容もゲームだけではなく、Facebook、スマートフォン、ソーシャルと言ったオンラインの最新トレンドについて日本や世界の動向を紹介するセッションが集まった。この記事ではセッションの中から5つのセッションの概要をお届けしたい。




■ オープン化など、「Ameba」が考える5つのスマートフォン戦略

株式会社サイバーエージェント技術部門執行役員アメーバ事業本部ゼネラルマネージャー、長瀬慶重氏

 ブログサービス「アメブロ」や仮想空間の「アメーバピグ」などを軸としたPC向けのサービス「Ameba」を展開しているサイバーエージェントは、「『Ameba』のスマートフォン戦略~『Ameba』が考えるオープン化~」というタイトルで自社のスマートフォン向けの新戦略を紹介した。登壇したのは株式会社サイバーエージェント技術部門執行役員アメーバ事業本部ゼネラルマネージャー、長瀬慶重氏。

 PC向けのソーシャルプラットフォームの中では少し出遅れた感があったサイバーエージェントだが、講演では「AmebaSP」のオープン化やマーケットプレイスの設立など5つの戦略を提示した。「Ameba」は月に1~2億のペースでPV(ページビュー)を伸ばしているが、その中でもスマートフォンの普及に合わせてスマートフォンからのアクセスが右肩上がりに急増している。同社が調査したデバイス別のMAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー)では、スマートフォンからのPVは他のプラットフォームに比べて20代が多く、48%と半数近くを占めている。

 長瀬氏はデバイスのハイスペック化とモバイルのブロードバンド化によってユーザーニーズの多様化が進む。そこにきちんと向き合っていけるかが、今後成果を出せるかの重要なポイントだと語り、そのための5つの方策を紹介した。

 スマートフォン向けのウェブサービスの強化では、PCの「Ameba」のコンテンツをスマートフォンのブラウザでも使えるよう対応を進めている。また、PCで人気の仮想空間「アメピグ」をスマートフォン向けに展開する方法を具体的に検討し、9月ごろに市場へ投入できるよう開発を行なっている。

 スマートフォン向けのアプリではゲーム、エンタメ、教育、機能、ソーシャルの5分野に注力。2011年内に100本のアプリをリリースする予定だ。スライドでは現在女性向けに開発しているiOS用のペット育成ゲームや、男性向けのRPGが紹介された。ソーシャル系ではTwitterを自由に装飾できるアプリも紹介し「Androidと女性をキーワードにソーシャル系のアプリを積極的に投下していきたい」と語った。

 広告戦略では、4月に株式会社ディー・エヌ・エーとの合弁事業によるアドネットワーク会社を設立した。リアルイベントを通じたアルファブロガーによるプロモーションの強化や、ユーザーの属性に合わせたプロモーション広告をログイン画面に表示してアプリへの誘導を行なうとともに、リワード広告でのマネタイズ支援などにも力を入れていく。

 Android向けには、アプリマーケット「Ameba App Market」を立ち上げる。アプリではなくWEBベースのマーケットで、「Ameba」の仮想通貨であるアメゴールドを使って決済できるのが特徴だ。「Ameba」のウェブサービスの中にターゲットを絞った形で掲載することで、シームレスにアプリへ誘導するのが基本コンセプトになっている。

 スマートフォンからの利用者はPCからの利用者とユーザー層が半数近くかぶっていることから、すでにアメゴールドを所有しているユーザーが多く課金への敷居が低いことや、自社の仮想通貨を使うことでリワード的にアメゴールドを還元するようなインセンティブを設けたダウンロードプランを設けることができるのも強みだとしている。

 最後の戦略は、コミュニティプラットフォーム「AmebaSP」のオープン化だ。ソーシャルゲーム開発APIと、Twitterやmixi、Facebookなどの外部のソーシャルメディアと連携できるAPIを提供することで開発を支援し、アプリの数を増やしていく。WEB、アプリ、アドネットワークの3つで積極的にプロモーションしていき、「今年はスマートフォン元年ということで、積極的に臨んでいます。すべてのドメインに挑戦して結果を出していきたい」と語った。


【スライド】
「Ameba」全体のPVはすべてのプラットフォームで伸び続けているスマートフォンからのPVも右肩上がりスマートフォンからのユーザーには20代が圧倒的に多い
iPhoneとAndroidは次第に拮抗しているスマートフォンユーザーの約半分がPCを併用している「Ameba」のスマーフォン戦略の5つの柱
「日本一のスマートフォンソーシャルメディア」を合言葉に、2013年までに現在の10倍のPV獲得を目指す2011年内に、5ジャンル100本のスマートフォンアプリのリリースを目指す女性向けアプリとして開発中のペット育成ゲーム「なでなでフワムー」
男性向けのRPGゲーム「Gyaos~千年の塔~」課金ビジネスをアドオンしたメダル落としゲーム、Pigg Game「コインプラザ」芸能人や有名人とコラボしたエンターテイメントアプリ
50人の友達とつながることができる新しいタイプのソーシャルアプリ「tappie」女性ユーザーを意識した、Twitterを装飾できるソーシャルアプリスマートフォンアプリの決済には仮想通貨「アメゴールド」を使用する
スマートフォン向けのオープンプラットフォーム「AmebaSP」SDKの提供はiOS向けが6月、Android向けが8月となるソーシャルゲーム開発用APIではランキング機能などをサポートする
「Ameba」関連の各種APIも公開される他のソーシャルメディアと連携ができるAPIも提供されるアドネットワークの例として、アルファブロガーを生かしたプロモーションを紹介



■ 中堅企業が集まることで生まれるメリットを生かした「aima」

ACCESSPORT株式会社代表取締役の沈海寅氏

 プラットフォームに関するもう1つのセッションでは、「ソーシャルアプリのメジャー化に向けてのACCESSPORTの両輪戦略」と題して、ACCESSPORT株式会社代表取締役の沈海寅氏が講演を行なった。「Ameba」や「ハンゲーム」、「Mobage」のような巨大プラットフォームを運営できない中堅の企業がどのように生き残りの戦略を模索しているかについて興味深い内容となった。

 ACCESSPORTが運営しているアプリプラットフォーム「aima」は、会員数10万~100万程度の中堅のプラットフォーマーと、多くのプラットフォームにアプリを提供したいデベロッパーをつなぐPC向けのプラットフォームサービスだ。

 「aima」はmixiとAPIの多くを共通化したプラットフォームで、mixiアプリを簡単に転用できる。中堅のプラットフォームは自社でAPIを開発することなく、統一した課金システムを持つオープンなプラットフォームを用意でき、デベロッパーは複数のプラットフォーム用にアプリを用意する手間を省けるというメリットがある。

 現在は毎日新聞などのニュースサイトや、ポイントサイト、ネットカフェなど60近いメディアが参加し、利用したユーザー数は累計6,000万人以上にのぼる。デベロッパーとメディアは自由なやり取りが可能で、例えばいずれかのメディアのユーザーにポイントを絞ったキャンペーンも可能。ポイントサイトで貯めたポイントでの決済も行なっている。

 現在も月に1社程度、新しいメディアが参加している。そのたびに、メディアが抱える新規のユーザーがどっと入ってくることになるので、アプリのアクティブユーザー数が段階的に伸びていき、減りにくいという強みがある。

 ACCESSPORTはすそ野を広げるための支援にも力を入れており、株式会社トヨタマーケティングジャパンとともに行なった車に関するソーシャルアプリのアイデア公募を事例として紹介した。こちらの公募は70以上のメディアに紹介され、合わせて1,200以上もの公募が集まったという。沈氏は「小規模の投資と面白いアイデアで勝負をする時代が来た。1社で全部やるのではなく、各社がそれぞれの強みを生かしてシステムを作り、市場自体を大きくしていきたい」と語った。


【スライド】
「aima」は、文字通りソーシャルメディアとデベロッパーの合間に存在するサービス現在参加しているメディアの例。ISPはさらに増える予定だ双方向のサービスにより、メディアとデベロッパーが連携したキャンペーンなどもサポートしていく
内製アプリ「農場パラダイス」のプラットフォーム別アクティブ数。数値は割合「農場パラダイス」のプラットフォーム別課金比率「農場パラダイス」の決済手段
「農場パラダイス」プラットフォーム別ユーザー単価の比率「aima」は新メディアの加入によって、ユーザー数が階段的に増加する新規ユーザーの増減率も、単一メディアとは違う傾向を示す
大企業と連携した事例として、トヨタマーケティングジャパン主催によるクリエイター発掘への取り組みを紹介車を楽しくするソーシャルアプリを大々的に募集した最終的には1,200件を超える公募があった。ベンチャーキャピタルとは違う支援の取り組みは今後も行なっていくという



■ KONAMIの失敗事例から世界市場の難しさを解説

株式会社バタフライ代表取締役副社長COO北川敦司氏

 今回紹介する中では唯一、デベロッパー側の視点から業界を分析する内容となるのが、株式会社バタフライ代表取締役副社長COO北川敦司氏のセッション「SAPが考えるグローバル市場攻略法」だ。バタフライはモバゲータウン向けの携帯アプリ「モバ7」、「ルパン三世~もう一人の共犯者~」、「頭文字D」などを開発した会社で、今後iPhone、Android向けのソーシャルARゲーム「iButterfly Plus」のサービスを予定している。

 セッションではグローバル展開の障害となっていた世界市場の傾向を、北川氏がかつて所属していたコナミデジタルエンタテインメントでの失敗事例を例に紹介した。

 現在、世界のモバイル端末普及台数は約50億台だが、約80%は2GでコンテンツもSMSや音楽が中心となっている。日本、韓国は3Gの普及がほぼ100%に近いが、北米では約70%、欧州や中東は40%、ロシアや南米、中国などアジア、アフリカは10%以下とこれから普及が始まる段階だ。モバイルのゲーム市場は世界全体で増加傾向だが、その中でもアジアの需要が急増している。スマートフォンの普及率も上がっており、「いずれは2人に1人がスマートフォンを持つ時代が来る。ここへの投資は最重要課題としてやらなくてはいけない」と説明した。

 北川氏はKONAMI時代に「悪魔城ドラキュラ(英語名:Castlevania)」で世界の携帯市場に戦いを挑んだことがある。結果は上手くいかなかった。その原因として、1つの国の中だけでも多種多様なキャリア、端末に合わせたアプリが必要になり、その苦労の割にはユーザー数が少ないために採算が合わなかったからだ。

 スマートフォンの登場でOSが統一され、App StoreやAndroid Marketの登場で販売するための障壁は少なくなった。北川氏はiPhone、Androidに加え、Xbox LIVEとの連携で北米市場に強みを持つWindows Phoneにも注目したいと語った。

 課金方式については、現在ではまだダウンロード課金が収益の多くを占めているが、今年から来年にかけて基本無料のアイテム課金が多くなっていくのではないかと予想している。また、今は通信速度の問題でアプリが主流を占めているが、今後はフィーチャーフォンと同じWEBブラウザ型に移行していくのではないかとも語った。

 また北川氏は、「今、月額でたくさん会員がいるフィーチャーフォン向けのプラットフォームは、迷わずスマートフォン対応を進めていくべきだ」と言う。モバイルアプリでは日本が先行する形になっているが、すぐに追い抜かれてしまう可能性はある。この1年の間に蓄積したノウハウを海外に向けて持っていって欲しいと来場者を鼓舞した。


【スライド】
バタフライが手掛けたタイトル世界のモバイル普及台数世界の3G使用の状況
日本と韓国は3Gへの移行がほぼ終わっているが、他の国はまだ途上にある全世界のスマートフォン販売台数2009年第2四半期と2010年第2四半期のスマートフォンOSシェア
モバイルOSの普及率。Androidの比率が年々高くなっているモバイルコンテンツの全世界の市場規模。アジアやヨーロッパで大きく伸びている5年前のフィーチャーフォン時代の世界市場の状況。非常に多くのキャリアや課金方式、携帯の種類があって混沌としていた
10カ国に配信しようと思うと、掛け算の結果1,200ものバージョン違いのアプリが必要になる日本はiモードなどのリッチコンテンツが主流だったが、海外では音声サービスやSMSが主流App Storeの売り上げ比率
スマートフォンの時代、ゲームの仕組みはソーシャル型へと移行していく課金スタイルは、アイテム課金が多くなっていくだろうと予想北川氏はiOS、Android、Windows Phoneの動向に注目している



■ Facebookアプリ3年の歴史とバンダイナムコの進出事例

株式会社バンダイナムコゲームス第2スタジオ第2-5プロダクション第1課チーフ 定元国浩氏

 グローバル展開に関するもう1つのセッション「ソーシャルアプリのグローバル展開における、ノウハウ・戦術 一挙紹介」は、PC向けのFacebookアプリの動向を紹介するとともに、クラウドや顧客サービスといった開発者向けのバックヤードのサービスに関するセッションとなった。

 株式会社バンダイナムコゲームス第2スタジオ第2-5プロダクション第1課チーフ 定元国浩氏は、Facebookアプリ黎明期からの動向を紹介した。Facebookアプリは2008年にFacebookがAPIのオープン化に踏み切ったことでブレイク。Facebookを世界ナンバー1のSNSへと押し上げる原動力となった。

 バンダイナムコゲームスは2010年8月にRPG「Treasure ABYSS」とサッカーゲーム「City of Football」をFacebookに提供した。他にも「パックマン」や「ディグダグ」などのクラシックタイトル、DSiウェアとして発売したソフト「コトバシる」などを試験的にFacebookアプリとして提供している。

 北川氏はFacebookアプリ黎明期を「ツールの時代」として紹介し、まだゲーム性のないツールや、メッセージとともにプレゼントを贈り合うだけの単純なアプリで楽しんでいた事例を紹介。その後、PlayfishやPopCap Gamesなどのメーカーがミニゲームを作り始め、Zyngaの「Texas Hold'Em Poker」がヒットを記録した「ミニゲームの時代」がくる。

 さらに「怪盗ロワイヤル」の原点ともいえる「Mob Wars」の登場と、それを模倣したZyngaの「Mafia Wars」が生み出したウォーズ系ゲームが大流行した「戦争の時代」、そして「Farm Town」とそれに続く「Farm Ville」が生み出した農場系の大ブーム「農場の時代」。そして現在に続く「多様化の時代」と変遷を説明した。

 Facebookの魅力はもちろんその会員数の多さだが、個人でもアプリを公開でき、お金さえ払えばユーザーを絞り込んだFacebook Adに広告を出して集客もできる。「だがリスクも大きいので、戦略を練ってから挑戦してほしい」と、失敗しないためのTIPSを披露した。

 まずサーバーは国内ではなく、ターゲットのいる場所に合わせておいた方がいいということ。バンダイナムコゲームスがサービスする際、最初に国内のサーバーを使おうとしたのだが、北米でプレイすると起動に1分半、欧州では3分半もかかってしまい、社内でクラウド化の検討が始まったのだそうだ。

 そして最初から広い地域に広告を打って集客するのではなく、最初は狭い地域でユーザーを集め、その動向からゲームを改善した後、本格的に稼働した方がいいと語った。Facebookの画面右側に表示されるFacebook Adはユーザの居住地や趣味、趣向に合わせたきめ細かい絞り込みが可能で、ある特定のコミュニティの中だけで流行らせてみるといった実験を行なうこともできる。

 他にもウォールを使ったユーザーサポートの事例や、英国でしか広告を打たなかった「City of Football」にトルコのユーザーが多く訪れた例などを紹介した。定元氏は、ソーシャルゲームはバランスゲームの「ジェンガ」のような「おもちゃ」だと例え、だからこそ人と遊ぶのが楽しいと語った。


【スライド】
キャラクターを作ってダンジョンを攻略していく「Treasure ABYSS」サッカーチームの勝敗を予想する「City of Football」移植しやすいクラシックタイトルもFacebookアプリとして提供
DSiウェアやiPhoneに提供しているパズルゲーム「コトバシる」も移植しやすいという理由でFacebook用に開発2008年にこっそり作ったという実験作「Voyage of the Planet」
「パックマン」のファンページ。200万以上のファンが「いいね!」を押している海外向けのゲームはFacebookのファンページが必須になっているソーシャルゲームを黎明期から観察してきた定元氏がその歴史を概観
ツールの時代。まだまだゲームとは言えないが、社内でプレゼントを贈り合っている間に、1人が課金アイテムを購入したのだそうだミニゲームの時代。PopCap Gamesの名作「ビジュエルド・ブリッツ」。友達とランキングで競い合えるのが新鮮だったそうだ今はEAグループとなったソーシャルゲーム大手デベロッパーの1つPlayfishもミニゲームから出発した
Zyngaのヒット作「Texas Hold'Em Poker」。今でも常にランキング上位にいるゲーム戦争の時代。ウォーズブームの先駆けとなった「Mob Wars」。友達を課金で増やせるZyngaの「Mafia Wars」
当時は「Wars」で検索すると、同じような戦争ゲームが大量に出てきた農場の時代。世界的な大ブームとなった農場系の先駆け「FARM TOWN」直後に出てきたZyngaの「Farm Ville」
ソーシャルゲームは多様化の時代へZynga成功の3つの秘訣。TTPとは「徹底的にパクる」スキルだと定元氏Facebookのソーシャルゲームをサービスするなら、国内サーバーでは通信速度の問題で無理がある
開発は2つのフェーズに分けて、最初は狭いエリアで様子を見て改善したほうがいい右側の赤線部分がFacebook Ad米国のゲーム好き大学生が1日に見た広告を収集したもの
課金の利用率。今はFacebookクレジットがもっとシェアを伸ばしている多言語対応の例ユーザーサポートはファンページのフィードで行なわれることが多い



■ データで見る「ソーシャルネイティブ」の動向

株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏

 「『ソーシャル×スマートフォン時代』の新ネットユーザー像 ~1万人規模メディア・コンテンツ調査による豊富なデータから解き明かす~」と題したセッションでは、株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏が、国内最大のネット・コンテンツ調査「MCS(メディア&コンテンツ・サーベイ)」で得られたデータの一部を紹介し、現在のユーザー像を読み説いた。

 この調査は全国の10~64歳の男女でPCからインターネットを利用している人を対象に、選択式のネットアンケートで行なわれた。調査期間は2010年11月下旬から12月中旬で、サンプル数は10,005人。調査項目は約536の設問で、PCだけでなくスマートフォンやタブレット、ソーシャルゲームを始めとしたゲームや、テレビ、書籍などのコンテンツなどについてもデータを収集している。

 遠藤氏は冒頭にネイティブマップという世代別のグラフを示した。これはどの年代に生まれた人がどのコンテンツに触れてきたかを示すもので、今の20代以下は社会に出た時点ですでにソーシャルメディアがあった「ソーシャルネイティブ」だと説明した。この世代は物への消費意欲が低く、これまでのマーケティングではその実態がわかりづらかった。

 セッションでは様々なデータから、ソーシャルメディアの利用者の年代別や性別、利用サービス別の傾向を分析した。またソーシャルネイティブの実態を、映画や漫画など、彼らが接しているコンテンツの傾向から読み解く「コンテンツターゲティング」についても紹介した。


【スライド】
年代別の、ネイティブの階層「MCS2011」の調査方式日本のFacebook会員は現在350万人程度と言われているが、データによればもっとも多いのは30代女性で、これはmixiやMobageなど他のSNSと共通している
ソーシャルメディア利用者の「恋人」についての考え方。Twitterはユーザーが若いため既婚率が低いが、考え方は普通の人が多いソーシャルメディアの利用時間。Facebookが非常に短くmixiの約半分しかないソーシャルメディアの友人の数。平均は50人以下で、アメリカのそれと比べて少ない
ソーシャルメディア利用者の好きなタレント。「Twitterが少しおたく臭いかも?」(遠藤氏)ソーシャルメディア利用者の観るバラエティテレビ番組ソーシャルメディア利用者のスマートフォン所有率。Facebook利用者が突出している
今後1~2年以内にスマートフォンを購入したいと思っている人のソーシャルメディア別の割合。iPhone、AndroidともにFacebookユーザーが多め。ユーザー全体と比較すると、ソーシャルメディア利用者の購入意欲は高めスマートフォン利用者の年代別Twitter、mixi利用率。20代のスマートフォンユーザーはソーシャルメディアをよく利用しているのがわかる今後1~2年以内にiPhoneを購入したいと思っている人の年代別の割合。10代男性の購入意欲が高く、20代後半では女性の方が男性よりも欲しがっている
今後1~2年以内にiPhoneを購入したいと思っている人の年代別の割合。10代男性の購入意欲が高く、20代後半では女性の方が男性よりも欲しがっているソーシャルメディア利用者のスマートフォン利用アプリ。Facebookのユーザーが最も積極的にアプリを利用している。特にSkypeの利用率が高いソーシャルメディア利用者のジャンル別利用アプリ。スマートフォンでもソーシャルメディアの利用率が高い

(2011年 6月 1日)

[Reported by 石井聡]