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「ゼノブレイド」プレイインプレッション
世界が絶賛した伝説となったRPG、「ゼノブレイド」がNew 3DS用に完全移植!
本作の持つ7つの魅力を伝授!
(2015/4/2 00:00)
世界のあらゆるRPGファンに傑作として絶賛されたWii用の「ゼノブレイド」。発売された当時、RPGというジャンルは本来の持つべき形からシネマティックなものになろうとしていた。昔のドットな名作が引き起こしていたあの独特な感動を味わう機会が劇的に減っていた。
「もう傑作は現われないだろう」と、諦めの気持ちを感じ始めたところで、「ゼノブレイド」がゲームショップに登場した。「ゼノギアス」など、数々の名作RPGに携わったスタッフによる新作RPGだった。で、購入してプレイしてみたら、1990年代の傑作RPGのあの感動が一気によみがえった、僕の心の中で。「JRPGはまだ元気だな!」と強く感じた。
あれから5年が経った。4月29日に念願の続編、「XenobladeX(ゼノブレイドクロス)」が、Wii Uで発売されることになった。しかし、その前に、このシリーズの魅力を知らないゲーマー達の為に、任天堂は絶好の機会を設けてくれた。高性能なNewニンテンドー3DS用に「ゼノブレイド」の移植版を用意したのだ。発売は4月2日。原作の全てが忠実に再現されただけでなく、New 3DSで導入されたCスティックによるカメラのスムーズな操作ができるようになり、裸眼立体視のおかげでフィールドを歩き回っている臨場感も格段にアップ! 続編をプレイする前に、ぜひ、伝説の始まりである「ゼノブレイド」を手にするべきだと思う。
発売前にNew 3DSバージョンをプレイすることができた僕が、本作の持つ7つの魅力をお伝えしたいと思う。
1つ目の魅力:変化していく広大なフィールド
通常の3DSで本作が実現できなかった理由は1つ。グラフィックスやフィールドのボリュームを携帯ゲーム機に移植するにあたって、より高性能なゲーム機が必要だったことだ。
「ゼノブレイド」の最もすごいところは、紛れもなく、フィールドの広さだ。ストーリーが始まるコロニー9とその周辺を探索し始めると、上記の言葉の意味がすぐわかる。街、フィールド、洞窟などが立体的な構造になっており、遠くに見えるあらゆる場所に到達できるようになっている。遠くに絵が広がっているだけの行くことのできない、いわゆる“背景的な場所”がほぼ存在しない。画面に見えるほぼ全ての場所が、冒険の舞台なのだ。
それだけでなく、四季を感じさせる演出や、時間の経過が、周囲に広がるフィールドを変化させていく。世界に暮らしている生き物も時間帯によって変わり、平和を好む生き物もいれば、プレーヤーを発見したら攻撃を仕掛けてくる生き物も存在する。フィールドと生き物の統一感は絶妙だ。ポリゴンでできた世界が、その統一感のおかげで、本物の世界かのように感じられるのだ。
こんな広大な世界なのに読み込み時間がほとんど発生しないのが、さらにすごい! 何時間も平原を走り回れる爽快感は格別だ。ストーリーを進めずに、普通にカメラを回しつつ、世界を感じたい時がある。自分よりずっと強い生き物を遠くから眺めて、「十分にレベルアップしたら、近付いてやっつけてやるよ!」と自分に誓う時がある。平原の絶壁のところまで行って、ロマンチックな夜景を楽しみたい時もある。
「ゼノブレイド」の世界は何でも自由にできてしまうという感覚をプレーヤーに味わわせてくれる。もちろん、ストーリー要素も濃いが、いつでもストーリーを止めて、クエストや探索に集中できるので、プレーヤーは心地いい自由度を感じて、冒険をコントロールしているフィーリングが味わえるのだ。
2つ目の魅力:緊張感に溢れる秀逸なストーリー
最近のRPGはフィールドが広大でクエストの数が多いが、ストーリーが弱いケースが多い。「ゼノブレイド」もその部類に入ると思ったら、大間違い! ネタバレになるのであまりストーリーに触れることはできないが、「ゼノブレイド」のストーリーは巨神と機神という2つの神の体で展開している。過去にその2つの神の戦いがあって、今の世界が生み出された。そして、機神兵と巨神兵との戦いが繰り広げられていった。戦いが終わったかのように思われた現在、種族の1つ“ホムス”はコロニーで生活をしている。「ゼノブレイド」の主人公、シュルクもそのコロニーで幼なじみと一緒に幸せに生活している。しかし、何かが変わろうとしている。過去の悲劇が再び……。そして、「神剣モナド」という謎のアイテムを巡る壮大なストーリーが幕を開ける!
「ゼノブレイド」のストーリーは「ゼノギアス」や「ゼノサーガ」などのヒット作を生み出してきた高橋哲哉氏によるものだ。上記の名作とは繋がりはないが、やっぱり、全体的な味の独特さが非常に似ている。先が読めないストーリー、大変なことが起きようとしていると示唆させる謎めいた台詞がやはり、高橋氏のトレードマークだ。暴力な表現がないのに、場面の残酷さが鮮明に伝わる間接的な演出も印象深い。ファンタジーだが、それと同時にSFでもある、そして、宗教や哲学関連の知識も豊富に秘められているのも魅力になっている。
「ゼノブレイド」のストーリーはもちろんわかりやすいが、その中には沢山のサブテーマが存在しており、様々なレベルで楽しめるようになっている。RPGで難しい台詞を用意すると、「あ! この脚本家が賢い!」と思われるかもしれないが、本当に面白いストーリーは簡単な言葉で語られるものだ。で、「ゼノブレイド」のストーリーはまさにそれだ。
3つ目の魅力:可能性に満ち溢れた自由度の高いバトル
「ゼノブレイド」のバトルもすごい。フィールドに暮らしている生き物に近付いて、ボタンで剣を出せば、シームレスにバトルに突入する。プレーヤーは1人のキャラクターを操作し、ターゲットとして選んだ敵を軸に戦闘を進めることになる。通常のアタックは自動的に行なわれるが、各キャラクターにはアーツという技が用意されており、それらを実行することで、多大なダメージを与えるものもあれば、敵の防御力を下げたり、仲間のヒットポイントを回復したりするものもある。
技の効果や効率は敵と位置取りによって変わるのも本作のバトルの魅力のひとつ。例えば、敵を後ろから特定のアーツで攻撃すればダメージが倍増するケースもあれば、横から攻撃を仕掛ければまた別の効果を与えるものも存在する。本作のバトルはアクションゲームとターン形式のちょうど間のバランスを持っており、そのおかげで緊張感を保ちつつ戦闘を楽しめるようになっている。
普通のアーツはフィールドの生き物には効果が高いが、機神兵にはそれほど効かない。その時に重宝するのは、シュルクが握っている「神剣モナド」のモナドアーツだ。前にいる敵によって毎回アーツの種類を使い分けなければならないので、バトルは単調になることはない。いつも戦況を瞬時に見極め、臨機応変に行動して作戦を考えなければならないので、本作のバトルは楽しい、刺激的、そして、絶対にプレーヤーを飽きさせないものになっているのだ。
戦闘をうまく運ばせるためには「崩し」、「転倒」、「気絶」の仕組みをよく理解する必要がある。例えば、シュルクのアーツで、「崩し」効果のアーツで攻撃してから、仲間の「転倒」、そして、「気絶」効果のあるアーツで順番に敵を攻撃すれば、敵が倒れ、しばらく気を失う為、無防備な状態になって通常より多くのダメージを与えることができるのだ。
さらにアーツを効果的に使い続けることで、画面の左上に表示された水色のパーティーゲージが溜まっていき、そのエネルギーを消費することで、仲間全員がアーツを連続で繰り出すチェインアタックが発動する。うまくキャラクター達のアーツを組み合わせれば、敵を転倒・気絶させたり、一気に絶大なダメージを与えることができる。チェインアタックは特にボス戦で役に立つので、その仕組みをマスターすれば戦闘をよりスムーズに運べるに違いない。
「ゼノブレイド」のバトルでは、特にボス戦の難易度が高い。クエストなどでレベルアップしておかないと簡単に勝利を得られないのだ。とはいえ、パーティーが全滅してもペナルティがかからないし、所持金や経験値が減ることなく、直前の状態で何回でも再挑戦できるので、ストレスはそれほど感じさせないシステムになっている。
4つ目の魅力:ストーリーを彩る魅力的なキャラクター達
「ゼノブレイド」のキャラクター達は普遍的な価値のストーリーに欠かせないような顔ぶればかりだ。主人公のシュルクは堅実で、純粋で、何があっても信念を曲げないような人間だ。彼のまっすぐな性格に共感できるプレーヤーは少なくないだろう。
全部でプレイアブルなキャラクターは7人。黒澤明監督の名作映画、「七人の侍」のように、「ゼノブレイド」のキャラクター達には「英雄」の様々な顔が反映されている。あからさまに大胆で命知らず、勇敢なものもいれば、一見臆病者に見えるが、誰よりもヒーローのようなメンバーも潜んでいる。7人の英雄達だが、実は1人。7人が一体となり、完全なヒーローを象徴するのだ。
細かく描写された繊細な台詞にもかかわらず、豪華声優陣のおかげで、キャラクター達の心理がわかりやすく伝わってくる。会話を重ねる毎にプレーヤーは主人公達をより身近な存在として実感し、感情移入していく。絆があるからこそ、英雄達の心が通じ合い、世界に迫ろうとしている脅威に立ち向かえるのだ。キャラクター達もRPGの命の1つ。「ゼノブレイド」はこの面でも見事に務めを果たしている。
5つ目の魅力:各場面を見事に演出するサウンドトラック
言うまでもなく音楽はRPGの命。最近のRPGではこの要素を軽く扱われるケースもある。もちろん、広大なフィールド、秀逸なバトルシステムがあるからこそ、RPGは面白い体験になるが、それらの要素の1つ1つをうまく繋げ、絶妙に一体に仕上げるのが、音楽の務めだ。
「ゼノブレイド」の音楽は、その務めを完璧にやり遂げている。スタートボタンを押すところから、最終ボスを倒しに行くところまで、本作のシーンの1つ1つを素晴らしく盛り上げると共に、プレーヤーの感動を誘っていく。
間の使い方も絶妙だ。手強い敵との戦いで苦労して洞窟から出たら、音楽がストップ。少し歩いてみたら、無限に感じる平原が広がるところに到達した瞬間に、音楽が再び再生。「ガウル平原」の曲が始まるとともに、プレーヤーのイマジネーションが刺激される。心が開放感に満たされ、画面の向こうの世界に突入したような気持ちにさせてくれる。どこまでも幸せに探検していく感覚を際立たせ、「探検はこんなに楽しいんだ!」、「フィールドを歩き回るのはこんなに素晴らしいんだ!」と、一生忘れられないような素敵な体験にさせてくれるのだ。
ドラマチックな場面はいつも見事に演出される。悲劇が起きる時も、強い敵が現われる時も、バトルが発生する時も。曲のリズムが、ゲームのリズムになる。バトルでも、アーツの選択や移動などを、音楽がより一層気持ちよく感じさせてくれる。そして、「かかってこい!」、「倒してやる!」と、プレーヤーの闘争心を刺激してくれるのだ。
音楽はゲームの体験を強調する要素だ。世界観や場面に合った曲があればRPGの価値は飛躍的に上がる。「ゼノブレイド」はまさにそのケースだ。昔のRPGのように、音楽を聴くためだけでも遊んでみたい、そう、「ゼノブレイド」はまさにそのゲームなのだ。
6つ目の魅力:ボリュームたっぷりのやり込み要素
ストーリー重視にプレイすれば「ゼノブレイド」のプレイ時間は60時間前後だ。しかし、クエストなどを徹底的にやり込めば、その倍以上になる。正確にいうと、本作には480個のクエストが用意されているのだ。その内容は敵の討伐依頼、アイテム収集、友達探しなど、多種多様に存在する。クエストをやりこなすことで経験値もより多くもらえるし、レアなアイテムをゲットできるチャンスにもなるので、ストーリーとクエストをバランス良く交互に進めることが、本作をより楽しめるカギだといえるだろう。
なお、受注したクエストは遂行したら、依頼者への報告が必要ないという親切設計になっている。つまり、毎回わざわざ依頼者の場所に向かわなくても大丈夫ということだ。フィールドが広大な本作では非常に大切な要素として評価するべきだ。
やり込み要素の1つとして、戦闘にも良い効果を与える仲間達との絆を強めることができる「キズナトークイベント」や街の人々の生活が観察できる「キズナグラム」など、とにかくやることがいっぱいなのだ。
7つ目の魅力:New 3DSならではの新規要素
New 3DS用の「ゼノブレイド」はWii用オリジナルバージョンの忠実な移植だ。その全てが再現されているのだ。ただ今回、自宅にいなくても公園でも電車の中でもどこでも好きな時間に遊べるようになったのだ。お仕事の休憩中にクエストをこなしてもいいし、お仕事の帰りにフィールドを少し探索してもいい。いつでも中断できるので、短時間の休憩でも「ゼノブレイド」の世界を楽しめるようになったのだ。
グラフィックスももちろん完全に再現されている。フィールドの細かいところも、四季の変化も、派手なエフェクトも、全てが完全移植! 通常サイズのNew 3DSでも楽しめるが、New 3DSLLを持っていると、画面の大きなサイズで美麗なグラフィックスをより一層堪能できるのだ。
Cスティックの導入で、操作性の良さも実現した。左のスティックでキャラクターを動かして、右のスティックでカメラを回転させ、周囲をより気持ちよく見渡せるようになった。そして、下画面にキャラクターのパラメーターやマップが表示されており、2つの画面の役割分担がうまく計られている。あえて言うならば、もう少しタッチスクリーンのマップを大きく表示させ、タッチ操作的な要素も加えて欲しかった。
裸眼立体視も大きな追加要素の1つ。New 3DSの「3Dブレ防止」機能で本体を傾けても立体視が楽しめるし、長時間プレイしても目の疲れをほとんど感じない。ただ、元々がNew 3DS用に開発されたゲームではないため、立体感の点で、少し奥行き感が欠けているかもしれない。逆にそのおかげで目がそれほど疲れないので、それは長所としても捉える。
New 3DS版で追加されたコレクションモードでは、くじを引いて3Dのキャラモデルやサウンドトラックを手に入れることができる。冒険を彩る91曲も入手可能で、本体を閉じたままが本体を閉じたままヘッドフォンなどで楽しめる点も大きなおまけ要素だ。リピート再生ができないといった点はあるが、簡易なサウンドトラックCDのように楽しめるだろう。「ゼノブレイド」の音楽を愛しているファン達にとってはとても嬉しい付加価値だ。
RPGを愛している人々に捧げられた傑作
Wiiの「ゼノブレイド」は世界中で最高傑作として評価された。何故ならこのゲームにはRPGというジャンルのエッセンスが凝縮されているからだ。そして、完全移植であるNew 3DS用の「ゼノブレイド」も最高傑作としてしか捉えられないのだ。
このゲームは容赦なく難しい。一見コアゲーマー向けにしか見えないが、実は豊富に用意された親切設計のおかげでライトなユーザーも十分に楽しめる体験になっている。僕もバトルシステムに慣れるまで、そして、その仕組みをマスターするまで、沢山の時間がかかったが、「頑張ってよかったな!」という気持ちにさせてくれるのが、本作の大きな長所の1つ。クエストをこなして強くなってからボス戦に再挑戦できるし、順番はプレーヤーが自由に選べるから、経験の少ないプレーヤーもフラストレーションを感じることなく、本作の良さを堪能できるのだ。
7つの魅力を持つ「ゼノブレイド」。どこまでも広がる、躍動感に満ち溢れたフィールド。爽快感抜群のバトル。神秘的で壮大なストーリー。魅力的なキャラクター達。全ての要素を絶妙に演出する音楽。ボリュームたっぷりのやり込み要素。そして、New 3DSで新たに導入された裸眼立体視やCスティックによるカメラ操作で、「ゼノブレイド」の世界はポータブルでも深く体感できるようになった。
Wii U用の完全新作、「XenobladeX(ゼノブレイドクロス)」の発売まであと1カ月。続編をプレイする前にぜひ、伝説の始まりである「ゼノブレイド」で徹底的に遊んで欲しい。RPGというジャンルを愛しているあなた、本作が好きになれない理由は、1つもない。
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