Game Developers Conference 2012レポート

【GDC 2012】Zynga COO John Schappert氏が語るゲーム産業の未来
ゲームビジネスは“黄金時代”に突入、Zynga PlatformにKONAMIが参入


3月5日~9日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center


 


 GDC4日目となる3月8日、Zynga COO John Schappert氏によるマネタイズトラックの基調講演「Why “Free” and Cross-Platform is The Future of Gaming(次世代のゲームが無料&クロスプラットフォームである理由)」が行なわれた。すでにお伝えしたように今年はGDCの基調講演はなかったものの、過去にGDCや東京ゲームショウの基調講演を含め、数々の基調講演を行なってきたSchappert氏だけに、話の進め方は基調講演そのもので、正式発表したばかりのZynga Platformについて、Rob Dyer氏に語らせ、KONAMI、playdemic、Rebellionの3社の参入を発表するなど、内容的にも実質的にはこれがGDC 2012の基調講演と言っても過言ではないセッションだった。

 セッションレポートに入る前に、John Schappert氏を知らないゲームファンのために簡単におさらいしておくと、もともとXbox 360の中核的なオンラインサービスであるXbox LIVEを担当していた米MicrosoftのSVPで、この時期に2008年のGDCでMicrosoftを代表して基調講演を担当している。Microsoft退社後は、米大手ゲームパブリッシャーであるElectronic Artsに転職し、ナンバーツーのCOOとして、EAの全コンテンツを担当しながら、M&Aで子会社化したPlayFishやChillingoといったソーシャルゲームメーカーも担当し、2010年にはGDCでソーシャルゲームビジネスの明るい未来を語っていた。まさに彼のキャリアそのものがグローバルゲームビジネスの変遷を体現しているという印象である。


【Zynga Platform】
キーノートの終盤にZyngaが現在βテストを開始しているソーシャルゲームプラットフォーム「Zynga Platform」についての紹介も行なわれた。説明を担当したのは元SCEAのRob Dyer氏。Dyer氏はZyngaが抱える240万MAUを武器に、プラットフォーマーとして詳細な分析データや優秀なファシリティをアピールしながら、さらにKONAMI、Playdom、Rebellionの3社が新たにサードパーティーとして加わることを報告。これでサードパーティーは6社となる



■ Xbox LIVE、EAの顔が、今度はZyngaの顔としてゲームの未来を語る

多くの人が詰めかけた会場の様子。クリエイターよりは、メディアや経営者、ハードベンダー、プラットフォーマーからの参加者が目立っていた様子だった
Zynga COO John Schappert氏
Zynga Platform担当のRob Dyer氏
ゲームビジネスに黄金時代が到来!

 10分遅れで到着したSchappert氏は、いつもながらの落ち着いた雰囲気で自身のMicrosoftやEAでのキャリアを振り返りながら、ゲーム業界に長年関わってきたことを、そしてこの業界に非常に強い愛着を持っていることを強調した。

 話のきっかけとしてSchappert氏は、まず子供の遊びから入った。子供は自然な流れで砂場で友達と遊ぶことを取り上げ、スライドは砂場に、レゴ、「スター・ウォーズ」、自転車、スケートボード、「マジック:ザ・ギャザリング」、「Dungeon & Dragon's」、サッカーと続き、「屋外でやるスポーツは楽しい。ひとりでやるよりも仲間と一緒のほうが楽しい」とソーシャルな遊びの楽しさを改めて紹介した。

 Schappert氏は、ここでゲームの進化に話を転じ、1977年の「スペースインベーダー」から、2006年のWiiまでを並べたスライドを提示し、「彼らを覚えているか?」と語りかけ、1977年のVCS(Video Computer System)、1985年のNES(Nintendo Entertainment System)、GENESYS(メガドライブ)、1989年のGame Boy、1991年のSNES(Super Nintendo Entertainment System)、1995年のPlayStation、2000年のPlayStation2、2001年のXbox、2005年のPS3/Xbox 360、2006年のWiiと一気に振り返っていった。

 Schappert氏はゲームクリエイターがひしめく来場者の共感を得ようとするかのように、「私も愛したATARIのVCSは最初のハードカートリッジを採用したゲームマシン」、「任天堂はNESの大成功に留まらずに、Game Boyをリリースし、ゲームをポケットに入れてどこでも持ち運べるようにした」などなど、その特徴から人気ソフト、ハードスペックや販売数まで細かく取り上げ、過去のゲームマシンに賞賛を惜しみなく送った。

 古巣のXboxフランチャイズについてはやや我田引水的ながら当時を彷彿とさせる口ぶりで、特にXbox LIVEの革新性について言及したが、ゲームコンソールの進化の果てをWiiにおいているのがユニークで、Schappert氏がMicrosoft在籍当時に、ライバルのSCEの顔として数々のキーノートに登壇した元SCE WWS PresidentのPhil Harrison氏と通じるところがある。理由はそのソーシャル性で、「リビングルームにゲームコンソールに持ってきた。誰もが理解できるゲームコントローラーで、両親や祖父、子供まで誰もがWiiをプレイした。コンソールゲームをよりソーシャルに、より容易なものに変えた」と文字通り絶賛した。

 Schappert氏は、レイオフや株価の低迷、開発費の高騰といったネガティブなニュースが毎週のようにゲーム業界から飛び出していることを受け、「暗黒時代に突入しているのではないか?」と語りかけたが、「事実はそうではない。私は黄金時代が来たと考えている」と述べた。その理由としてSchappert氏は、、Webとモバイルゲーム市場はいまだかつてないスピードで成長しており、さらにいまだかつてないユーザーがゲームをプレイしているからだという。その数は10億人。コンソールゲームでは考えられない数字である。そしてZyngaが算定する新たなグローバルエンターテインメントマーケットの市場規模は1兆ドル。既存のゲームソフトウェア産業が90億ドルの100倍以上の数字となる。多くのユーザー、多くのプレイ手段、多くのプレイ機会が与えられている。なぜこのことに着目しないのかというわけだ

 Schappert氏はここでようやくZyngaに話を移し、Zyngaが重視している3つの要素を取り上げた。それはソーシャル、アクセシブル、フリーの3つ。まずソーシャルについては、Zyngaのソーシャルゲームでプレイしているユーザーの意見を採り上げ、いずれもソーシャリティの高いプレイスタイルで日夜ゲームを楽しんでいることを強調。Zyngaのレポートによれば、過半数のユーザーが仲の良い友人や家族とソーシャルゲームを楽しんでいるだけでなく、ソーシャルゲームを通じて新たな仲間に出会えたことなどを報告した。

 アクセシブルについては、具体的なタイトルを挙げて説明。2007年にFacebookとMySpace向けにリリースしたソーシャルゲーム「Zynga Poker」は、現在ではFacebook、Google+、iPhone/iPad、Android、KindleFireなどあらゆるプラットフォームへの対応を果たし、ユーザーは様々なデバイスからアクセスし、700万のDAUを誇る世界でもっとも人気の高いオンラインポーカーゲームに成長している。2010年にサービスを開始した「WORDS with friends」は開始直後はiPhone向けのみだったが、こちらもマルチデバイスに対応を果たし、200万のDAUだという。日本のソーシャルゲーム市場では、実力を示すDAUの数字はあまり出したがらないだけに、この数字群は圧倒的なインパクトがある。

 3つ目のフリーについては、全世界で現在までに2,500万本のセールスを記録したモンスタータイトル「Call of Duty: BlackOps」を引き合いに出し、「FarmVille」がDAUが3,200万人を超えることを挙げて、「たった1日で『「Call of Duty: BlackOps』の生涯セールス記録を塗り替えるのです」と豪語。Schappert氏はトドメとしてフリーミアムタイトルの金字塔「Angry Birds」が7億回ダウンロードを記録したことを挙げ、その8割がフリー版を選んでいることを報告。これらがまさにフリーの強さだというわけだ。

 Schappert氏は締めくくりとして再びソーシャル、アクセシブル、フリーの3つを挙げ、「私は黄金時代が来たことを信じている。いまだかつてない数のユーザーにゲームを提供できる機会が来ている。その数は10億人です」と力強く断言。〆の挨拶で往年の口ぶりでうっかり「ショウを楽しんでください」と口を滑らせ、会場を沸かせながらの大きな拍手となった。


【Evolution of Gaming】
1977年から2006年までのゲームハードの歴史。簡潔によくまとまっている

【Why “Free” and Cross-Platform is The Future of Gaming】
煌びやかな数字ばかりが並ぶスライド。ZyngaはIPOを終え、自社プラットフォームを立ち上げた今年が勝負の年になる。どのような展開を見せるのか楽しみだ

(2012年 3月 9日)

[Reported by 中村聖司]