E3 2011レポート

2K Games/Irrational Games、「Bioshock Infinite」プレビュー
あの「Bioshock」の幻想世界再び! 空中都市を舞台に大空中戦が展開


6月7日~9日 開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 米Take-Two Interactiveの子会社2K Gamesは、E3の自社ブースにおいてフラッグシップタイトルとなるアクションシューティング「Bioshock Infinite」を初披露した。「Bioshock Infinite」は、初代「Bioshock」のクリエイターKen Levine氏率いるIrrational Gamesの手によるもので、昨年8月の製作発表以来、実に10カ月ぶりの情報発信となったが、今回もシアターの撮影、録音、録画は一切禁止され、一部の来場者にこっそりと見せるという感じだった。弊誌でもじっくり見ることができたのでその模様をお届けしたい。「Bioshock Infinite」は北米でPS3、Xbox 360、Windows PC向けに2012年発売予定で、日本でもテイクツージャパンによる自社展開が決定している。



■ 今度の舞台は空中都市「Columbia」。不思議な能力を持つエリザベスとの二人三脚の物語

「Bioshock Infinite」シアターの前は、常に行列ができていた
シアターの内部は、「Bioshock」らしい20世紀初頭をイメージしたデザインで統一。このあたりのこだわりが嬉しい
ゲームの舞台は空中都市「Columbia」。彼女が重要なパートナーとなるエリザベスだ

 「Bioshock」は2007年に発売されるや否や、その個性的で独創性の高い世界観、魅力的な登場キャラクター、「System Shock 2」譲りの充実したシステムが評価され、400万本もの大ヒットとなった。とりわけ、ラプチャーと呼ばれる海底都市の生態系をリトルシスターと呼ばれる少女と、それを守るビッグダディが担い、プレーヤーが介入することで都市や彼らの運命が大きく変化していくというストーリー設定は世界中に衝撃を与えた。ちなみに2010年にリリースされた「Bioshock 2」は、Irrational Gamesは開発にタッチしておらず、「Bioshock」をベースにした追加ディスク的なタイトルとなっている。「Bioshock」の正当な続編は「Bioshock Infinite」となる。

 「Bioshock Infinite」の世界観は、「Bioshock」からさかのぼること30年余り、1912年のアメリカ。正確には元アメリカで、現在はアメリカから勝手に独立したColumbiaと呼ばれる空中都市が舞台となる。この空中都市では、都市を建設した超愛国主義者の集団「The Founders」と、それに反対するアナーキストの集団「Vox Populi」が激しく対立している。

 この対立劇で重要な役割を果たしているのが、幼少の頃からこの都市で囚われの身となっている少女エリザベス。エリザベスは、超能力のような不思議な能力を持っており、「The Founders」はこの力を利用するために幽閉を続けようとし、対する「Vox Populi」はエリザベスの殺害とColumbiaの破壊を望んでいる。エリザベスを「Vox Populi」の魔の手から守る役目を与えられているのが、翼を持つ巨人Songbirdである。

 「Bioshock」ファンならピンと来たかも知れないが、この構図は「Bioshock」とまったく同じだ。ラプチャーを作り海底都市を支配するライアン社、専制的なライアン社に対するレジスタンス一派、ラプチャーの生態系のカギを握るリトルシスター、そしてそれを守るビッグダディ。名前や性格付けは多少異なるが、与えられているロールはまったく同じだ。こうした中、探偵社ピンカートンの元探偵の主人公Booker Dewittは、クライアントからエリザベスの救出を依頼され、単身Columbiaに乗り込むことになる。

 デモンストレーションでは、上記のようなゲームの短い概要説明のあと、20分ほどの最新トレーラーを見ることができた。そのダイジェスト版を掲載しているので、まずはトレーラーをごらん頂きたい。


【「Bioshock Infinite」E3 2011 Teaser】



■ Songbirdとの遭遇、エリザベスの不思議な力、スカイラインを駆使したハイテンションバトル!

店の中を楽しそうに歩き回るエリザベス。この直後にSongbirdに襲われる
階段から人を突き落とす。アナーキストの集団「Vox Populi」の活動により、都市は無政府状態になっている
エリザベス自身は操作できないようだが、彼女の不思議な力を使って戦いを有利に進めることができる

 会場で見たトレーラーは、エリザベスと共に、「The Founders」のリーダーComstockに会うために、物資を調達するべくショップに足を踏み入れるシーンからスタートした。ここがゲームのどの辺りなのかはわからない。

 主人公のDewittが戦闘に備えてピストルや弾薬を集める中、エリザベスは黄金の像を持って見せたり、お店にある仮面を被ったりしておどけてみせる。人生のほとんどの時間を幽閉生活を送っている彼女が見せた人間らしい姿だ。

 つかの間の楽しい時間は、Songbirdの到来によって破られる。店を破壊するような地響きによって店が揺れ、商品が倒れ落ちていく。強烈なサーチライトが外から照らされ、否応なく外にいるのが誰なのかを教えてくれる。エリザベスは物陰に隠れ、おびえた様子を見せる。しばらくして彼が去り、彼を止めることを約束する主人公に対して、彼を止めたり帰らせようとすることはできないとエリザベスは抗弁する。彼とエリザベスとの関係性において重大な何かを隠している事を伺わせる一幕だ。

 次のシーンでは、痛みに苦しむ馬をエリザベスが悲しみ、不思議な力を行使して馬を助けようとする。血だらけの馬がたちまち生気を取り戻しただけでなく、荒れ果てていた雑草群がたちまち青々とした草花となり、次の段階ではなぜか都市の一部が丸ごとテレポートしてきてエリザベスが車にひかれそうになってしまう。彼女の不思議な力の一面を見せつけられた。

 続いて街を歩いて行くと、不穏な空気が流れているのがわかる。街の人々は退廃的で、ムダに反抗的で、「The Founders」のリーダーComstockが描かれた巨大な横断幕に火炎瓶を投げつけているものもいる。さらに進むと「The Founders」によって、「Vox Populi」の一味が公開処刑されようとしており、主人公が大声を上げてこれを止めたことにより、周囲の「The Founders」の一派を巻き込み、大きなバトルに進展する。トレーラーの後半の映像がまさにそれだ。

 正直なところ、処刑を止めただけで、なぜ都市そのものを破壊しかねないような大バトルに進展するのかはわからないが、スカイラインと呼ばれる、Columbiaにおける公共交通手段を駆使して立体的かつダイナミックなバトルが展開される。このスカイラインを使うために、主人公の左手には専用のフックが取り付けられており、レールに合わせてジャンプすることで自動的にフックにアジャストされ、上昇下降を含む、ダイナミックな移動が可能になる。この空中戦は見てるだけで気分爽快だ。

 スカイラインを駆使して都市の上部まで行き、ロケット弾で爆撃してくる飛空挺に乗り移ってこれを破壊。再びスカイラインを使ってColumbiaまで降り、エリザベスと合流し、これにて一件落着と思ったところ、先ほどのSongbirdに襲われてしまう。圧倒的なパワーになすすべもなく倒されてしまう主人公。エリザベスを拉致し、どこかへ連れていってしまうシーンでトレーラーは終了となる。

 このバトルシーンで印象的だったのは、TEARSというリソースを利用することでエリザベスが特殊能力を使えるところ。トレーラーの中盤のように、カットシーンで特殊能力を見せるだけでなく、タレットや馬車などのオブジェクトを設置できる。設置できる場所は、残像のように表示され、TEARSがあればエリザベスに特殊能力を使わせることができるようだ。

 あとひとつはトレーラーでも確認できるテレキネシスのようなスキルは、「Bioshock」と世界観が異なるため、当然のことながらプラスミドやトニックではない。「Muder of Crows」と呼ばれるエナジードリンクのようなものを呑むことでその力を使えるようだ。

 今回は残念ながらプレイはできなかったが、トレーラーを見た限りでは、ベースのゲーム性、ゲームのメカニズムはほとんど変わらず、シリーズのファンなら安心して遊べそうだ。グラフィックスに関してはキッチリ4年分の進化を遂げているが、ベースのシェーダーが若干トゥーン寄りのものに変わり、ビジュアルのタッチは猟奇系からまだ別のものに変化している。ゲームのテイストもホラー系から、空中ハイスピードバトルという気分爽快なものに変わっており、このイメージチェンジは歓迎したい。「Bioshock」以上のタイトルに仕上がるかどうかは現時点ではまだわからないが、大作の片鱗は十分に感じさせてくれた。続報に注目していきたいところだ。


【ポスター】
シアターの中で展示されていたポスターを紹介。これらはすべてゲーム内のポスターとして使われている。右下のフックは、嘘か誠か実際に販売するという

【スクリーンショット】
これまで公開されたスクリーンショットをまとめて公開。キャラクターデザインはシリーズを踏襲しているが、ビジュアルのタッチは大きくトゥーン寄りになり、ライティングも派手になっている

(2011年 6月 10日)

[Reported by 中村聖司]