ベクター、「ブラウザゲームポータル発表会」を開催
ローンチタイトルは中国産ファンタジー「ドラゴンクルセイド」とAQインタラクティブの「ブラウザ三国志」
株式会社ベクターは、4月14日、都内にて「ブラウザゲームポータル発表会」を開催した。
発表会では、ブラウザゲーム専用のゲームポータルサイト「ブラゲタイム」と、そこで展開されるブラウザゲームとして、タクティカルRPG「ドラゴンクルセイド」と開発型タクティカルRPG「ブラウザ三国志」などが発表された。「ドラゴンクルセイド」は本日よりオープンβサービスを開始し、「ブラウザ三国志」はクローズドβテスターの募集をそれぞれブラゲタイムにおいて開始した。
発表会には、ベクター代表取締役社長 梶並(かじなみ)伸博氏のほか、「ドラゴンクルセイド」のデベロッパー中国Sun Ground Interactive EntertainmentのCEO 朱海燕氏と、「ブラウザ三国志」でパートナー関係にあるAQインタラクティブの武市(たけち)智行氏が出席し、それぞれブラウザゲームの未来について強い意欲を見せてくれた。
■ 今年度中に10本の作品をリリースする、ポータルサイト「ブラゲタイム」
ベクターの旧来のビジネスと関連付けながら、「ブラゲタイム」のコンセプトを説明するベクター 代表取締役 梶並伸博氏 |
発表会ではまず、ベクター 代表取締役 梶並伸博氏が登壇し、フリーウェア・シェアウェア等のダウンロードサービスから始まる同社のビジネスを説明。ブラウザゲームポータルがソフトウェアダウンロード販売、オンラインゲームパブリッシングに続く第三のビジネスと位置づけた。
そしてブラウザゲームの特性について、Macintoshや携帯電話でもプレイ可能である、クライアントプログラムのインストールが要らない、一方で画面の表現力が低いといったメリットとデメリット、それから今後の市場の可能性などについて説明した。
その具体的なキーワードとなったのは、日本市場における2008年のMacintoshシェア倍増(8→16%)とWindows PCのセールスに占めるネットブックのシェア増加(0%→20%)である。前者はもちろん、旧来のWindowsゲームがアプローチできない領域として、後者も動作スペック的にブラウザゲームの追い風となる……と見るわけだ。
ブラウザゲームを集めた専用のゲームポータルサイト「ブラゲタイム」では2009年度いっぱいで10本のブラウザゲームをリリースしたいという。会員登録の不要なソロプレイのFlashゲームを除くと、現在のところ提供される作品は先の2本ということになるが、ポータルとしての内実は、日ならずして実現される見通しである。
■ エピソード5では高レベル向けの新しい遊び「覚醒」を実装
大陸中国市場におけるブラウザゲームの急伸と、今後の中国市場の見通しを語る北京Sun Ground Interactive Entertainment CEO 朱 海燕氏 |
「ドラゴンクルセイド」の概要と魅力を説明するベクター マーケティング部部長 樋山 城氏 |
ブラウザゲームの市場は中国においても、急速に成長しつつある。そのことを再確認させてくれたのが、「ドラゴンクルセイド」の開発元、北京Sun Ground Interactive EntertainmentのCEO朱 海燕氏のプレゼンテーションだ。
朱氏は2007年から2008年にかけて、中国市場におけるブラウザゲームの売り上げが5倍に成長、タイトル数は10本前後から200~300本に増えたと述べた。そして、市場規模は最終的に20億人民元(約300億円)に達する見込みで、将来性は十分にあるものの、売り上げ額に比してタイトル数の増加が激しいことからわかるように、今後作品間の競争は激化するという予測を披露した。そして今こそが、ブラウザゲーム専業のデベロッパーとして開発力に自信を持つSun Ground Interactive Entertainmentが力を発揮する場面だと強調。日本市場でのビジネスに関しては、梶並氏の見解に沿ってベルクスに大いに期待する旨を述べて、説明を締めくくった。
朱氏に続いて登壇したのは、ベクター マーケティング部部長の樋山 城氏。「ドラゴンクルセイド」について、村の開発と傭兵ヒーローの雇用で、軍隊と占領地を拡大しながら魔王の打倒を目指すファンタジータクティカルRPGであり、画面表現こそ地味ながらハマる魅力を持つ作品だと強調した。
■ 欧米作品から課題を汲み取り、次はキャラクターもの/スポーツもの/経済シムを
AQインタラクティブがブラウザゲームに着手した理由を通じて、ブラウザゲームの将来性を語るAQインタラクティブ 代表取締役 武市(たけち)智行氏 |
発表会場にはテストプレイ用機材も用意されていた |
最後に壇上に上がったのが、「ブラウザ三国志」の開発元として紹介されたAQインタラクティブの代表取締役 武市智行氏だ。同社はコンシューマゲームの開発会社としてよく知られた存在だが、なぜブラウザゲームに深い関心を寄せるか?
それはコンソールゲームの世界も2~3年のうちに、PCや携帯電話と同じくインターネットに常時接続されているようになるという見通しがあるからだ。そこで旧来的なゲームのみに固執せず、社内の若手もしばしば述べるとおり「10分だけでもゲームをしたい」、「ふだんは携帯電話のゲームで遊んでいる」といった声を生かせる作品に進出し、世界市場をターゲットにする展望を描いたのだという。
武市氏によれば「社内の開発陣300名がほとんどテストプレイに参加して楽しみ、仕事に支障をきたしかねないほど」だったという「ブラウザ三国志」については、本日4月14日がクローズドβテスター募集の開始日とのこと。現在、同社のブラウザゲームはおよそ半年に1本くらいのペースで開発されており、その意味で梶並氏の述べた年度内10本というのも、それなりに根拠のある数字に聞こえる。
また、AQインタラクティブと協力して作品の開発を担当しているONE-UP 代表取締役社長 椎葉忠志氏によれば、「ブラウザ三国志」はブラウザゲーム(WEBゲーム)の元祖的な存在である「Travian」などの欧米作品が持つ“敗者には何も残らず、一部の勝者のみがゲームを楽しめる”というシビアなゲームバランスを批判的に検討したという。
その結果、「ブラウザ三国志」では、武将キャラクターのコレクション要素でプレイに幅を持たせ、また、3カ月に1回のサーバーリセット時に、キャラクターの能力の一部を次のクールに持ち越せるようにすることで、継続的にプレイするモチベーションを作り出しているのだという。現行ブラウザゲームが持つ、プレイ上の短所についてもきっちり認識しているようで、その意味で今後の作品では、より日本人プレーヤーと日本人の感性に合ったテイストを強く打ち出してくるかもしれない。
実際、全体として「Travian」ライクな枠組みの「ブラウザ三国志」に続いては、さらにキャラクター性を強めたもの、スポーツをモチーフにしたもの、ゲーム世界の経済シミュレーションを作りこんだものなどを、それぞれ考えているそうだ。
今回の発表で興味深いのは、オンラインダウンロードビジネスから身を起こしたベクターがむしろダウンロード不要のゲームに着目し、MMORPGに代表されるコミュニティ前提のアバターアイテム消費とは、かなり違った方向に歩み出したことだ。もちろん、ベクター自身が「ワンダーランドオンライン」や、「三国ヒーローズ」といったアジア産のオンラインゲームの運営経験からアジアのオンラインゲームビジネスに通じていて、そのアジアでブラウザゲームがホットな話題となっていることも無縁ではないが、非常に興味深い第1歩と言えそうだ。
梶並氏が説明の中で示した、「ブラゲタイム」の画面レイアウトとコンテンツ種別。ライセンス-イン作品、パブリッシング作品を含め、ブラウザゲームのサービスが速やかに充実することを祈りたい |
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□ベクターのホームページ
http://www.vector.co.jp/
□ブラウザゲーム専用ゲームポータルサイト「ブラゲタイム」のページ
http://bg-time.jp/
(2009年 4月 14日)