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操作性・映像・演出。「ウィニングイレブン 2018」の進化が止まらない!
過去最高の“手触り”を実現。TV中継と見紛う、リアルな絵作りにも注目
2017年6月17日 10:45
海外では「Pro Evolution Soccer (PES)」と呼ばれるKONAMI定番のリアルサッカーゲーム「ウィニングイレブン」シリーズ。長年、ワールドワイドでEA「FIFA」シリーズと熾烈なユーザー獲得競争を繰り広げてきたのはご存知の通りだが、今年は「PES 2018」が大きな躍進を遂げるかもしれない。
今作が比較的におとなしめの進化にとどまった印象の「FIFA 18」に比べると、「PES 2018」の進化度合いは非常に大きい。特にシリーズの特徴といえる操作性、映像、演出といった基礎的な部分が大きく底上げされ、前作「PES 2017」で感じられたさらなる進化の兆し、というものを期待以上の水準で実現した1本になっている。
これには過去数年の開発経緯が絡んでいる。本シリーズは2015年の「PES 2016」で新エンジン“FOX ENGINE”への移行が行なわれたが、ゲーム各所に荒削りな部分も残り、エンジンの移行とプレイステーション 4/Xbox One世代への対応という大きなタスクが開発リソースの大部分を占めたようだった。続く「PES 2017」ではサッカーゲームの基礎である操作性が集中的に改良され、「FIFA」ファンもうなるほどのプレイアビリティを実現した。これによりさらなる向上のための基礎が整った、というのが前作の印象だった。
そして今回の「PES 2018」。本作のコンセプトは明確だ。前作までに培った土台をもとに、全ての面で品質を向上させること。その結果として本作は、すべてのサッカーゲームファンにとって大いに魅力的な要素を数々実現するに至った。
左スティックだけでフェイントも自在。“思い通り”へ近づいたボールタッチ
今回のE3では昨年に引き続き、本作のアシスタント・プロデューサーを勤める田谷淳一氏にお話を伺いつつ、PS4の実機上でプレイすることができた。
その中で、田谷氏の作品解説が非常に沢山の要素にわたっていたのが印象的だ。昨年のE3で田谷氏は「駆け引きの面白さ」について力説していたが、それをベースに、今作では全体的な底上げを図ったという形だ。
まず、プレイフィールの進化。本作では「戦略的ドリブル」、「Real Touch +」といった新要素を謳い、基本操作の向上をアピールしているが、実際のプレイ感もまた上々だ。
まず「戦略的ドリブル」。これは左スティックでのドリブル操作をナチュラルに拡張したもので、従来は様々なコマンドで実現していた各種フェイントを、左スティックだけの操作で可能としている。例えば、ボールタッチの直前、ボールの進行方向とは異なる方向に左スティックを一瞬倒すと、状況に応じたフェイク(ボディフェイクやステップオーバー等)が発動する。また、ディフェンダーを背にすると、自動的に身体を使ったキープを行なってくれる。
これはサッカーゲームとしてはかなり根本的なパラダイム・シフトでもある。つまり、従来は「ボールを動かす」概念だったものが、今作では「選手を動かす」という概念へと完全にシフトしたという感じだ。
実際のところ「選手を動かす」概念にもとづくドリブルその他の操作については前作「PES 2017」で導入された部分だ。前作ではパスをトラップする直前などに選手を多少動かす事ができて、ボールを受ける位置やタイミングを細かく制御できた。今作ではその自由度がドリブルにも広がったということになるだろう。
実は最近の「FIFA」シリーズでも、同様の概念はすでに実現されていた。例えば現行の「FIFA 17」では、ダッシュドリブル等、ボールタッチが大きくなったタイミングで左スティックの方向を変化させると、ボールへのアプローチを若干変化させることが可能。結果的にフェイクっぽい動きもできる。
が、非常に地味な効果しかないため、実際には右スティックを使ったコマンドで各種フェイクを使う重要性は変わらなかった。なおコマンド型のフェイクでは、イグジットムーブ(フェイク後のボールタッチ)が必ず決まった形になるという弱点もある。例えばボディフェイク後のタッチでは必ずダッシュドリブル級の蹴り出しと加速を行なう。フェイク後にちょっとだけボールを転がしたい、と思ってもできない。
今作「PES 2018」でのそれは、そういったコマンド型フェイクの弱点を克服しつつ、明確に操作のややこしさを減らす方向に働いている。特に上体を大きく揺さぶるボディフェイクのような基礎的かつ効果の大きいフェイントを、左スティック操作だけで発動でき、しかもコマンド型フェイクとは違って極めて自然に通常ドリブルに混ぜられるというのは重要だと思う。
例えば現実のほうでFCバルセロナのメッシ選手のドリブルをよくよく注意して見ると、極めて頻繁に、言われなければ気づかないようなスピードでボディフェイクを入れている。フェイクを入れた後のボールタッチも自在。メッシ選手は本能的にやっているのだと思うが、「PES 2018」ではそういう動きがまさに本能的にできるよう、操作システムを進化させている。
実際に田谷氏と対戦プレイをしつつその感触を確かめたが、確かに、ボールタッチ間の操作の自由度が向上していて、以前にも増してイメージどおりのボールタッチができる感触があった。ただ、フェイクの発動も思い通りにするには、ある程度慣れが必要だ。筆者は田谷氏の変幻自在なドリブルにバンバン抜かれてしまった次第だが、田谷氏は左スティック1本でドリブルしていただけ。筆者のディフェンスをチンチンにしつつ、涼しい顔で「直感的に動かすのがコツです」という田谷氏である。
2試合目の終わりには、筆者もだんだんと感覚をつかめてきて、田谷氏のディフェンスをいくらか突破できるようになってきた。こういった上達の感覚がたまらない。従来のフェイントの概念と違い、「コマンドをいくつ覚えているか」ではなくて、シンプルな操作の中での習熟度、センスで競う感じだ。例えばレースゲームで、ハンドルさばきだけで素人からプロまでの差があるのと似ている。9月14日の発売日を迎えたら、さらに練習してみたいと思う。
もうひとつの「Real Touch +」については、トラップの自由度についての改良点になる。足、腿、胸、様々な部位でのトラップを拡充させることで、ネイマールのような上手な選手ではより幅広い状況で効率よくボールを受けられ、テクニックに乏しい選手との差が広がる。これについては今回の試遊で明確な違いを感じることはなかった。というのも、特殊なトラップが必要となる状況が、わりとレアケースであるためだ。とはいえ浮き球を多用するプレーヤーなら、すぐに違いに気づくかもしれない。
TV中継と見紛うリッチな映像・演出。抜群に楽しい3対3協力プレイ。その他新モードも!
本作では基本的なプレイフィールを大きく進化させた上で、映像・演出面でも強力な進歩を遂げている。
まず基本となる選手の3Dモデルについて、今作では新たにトップアスリートのボディキャプチャーを導入。痩せ型、がっしり系、長身タイプといった様々なタイプのサッカー選手からデータを取ることで、きわめて自然な「サッカー選手の体型」が実現しているという。
これに加えてアニメーションについても、基本となる走る、歩くといったモーションから見直されており、動きの説得力が増した。各選手の顔グラフィックスも継続的に改良が加えられて来たことで、全体の印象としての“実写感”が大きく向上。その品質はスクリーンショットや公式ムービーで確認できるとおりだ。
こういった3Dモデルの改良に加えて、今作では選手の表情変化をさらに強化。ゴールセレブレーションの演出において、選手たちの爆発する感情を極めて自然に表現している。これに加えて各シーンのカメラワークを徹底してTV中継のスタイルに忠実化。これらの改良により、リプレイやセレブレーション、入退場シーンといった各種演出場面が、本物のTV中継と間違うような水準まで高められている。特に、観客席からゴールを捉えるカメラが、サポーターの大歓声によりガタガタと震える表現は必見。いやおうなくプレーヤーの感情も揺さぶることになるだろう。
さらにはスタジアムの描写も大きく改良。本作と公式パートナーシップを結んでいるバルセロナとドルトムントの限定ではあるが、現地取材に基づく2万点ものデータから、選手入場口、ピッチサイド、場内のライティングにいたるまで極限の再現度を実現した。
バルセロナのファンの筆者にとって、カンプ・ノウの選手入場口で出番を待つアスルグラナ戦士たちの佇まいや、観客席から響き渡るイムノの大合唱は、まさに毎週の衛生中継で見てきたそのもの。ビッグマッチではシビレるほどの感動である。田谷氏によると現地取材までは実施しなかったそうだが、リバプールFCについても同様の改良が行なわれている。
「PES 2018」は、こういった演出面においてライバルを寄せ付けないほどのレベルに到達した。これに加えて新たなゲームモードでも、ライバルを超えることを意識した(田谷氏はそう言っていないが、筆者の目ではそう見える)内容が追加されている。
その代表格となるのが、各ゲームモードにインテグレートされた「3対3オンラインCOOP」モードだ。「FIFA」では以前より、オンラインマッチで2人1チームを操作するCOOPモードが存在しているが、「PES 2018」で追加されたこのモードはさらに上を行く。
このモードではネット接続を通じ、対AIマッチあるいは対人マッチにて、2人~3人での協力プレイができる。各プレーヤーが選手カーソルを切り替えつつ動き回れるシステムで、基本的には「FIFA」のCOOPプレイと同じテイストだ。
しかし、なぜ2人ではなく3人なのか。これについて田谷氏から明確な説明を受けることができた。「サッカーではボールの出し手、ボールの受け手の関係だけではなく、3人目の動き出しが重要だと言われます。3人協力プレイならそこの面白さが再現できます」と。なるほど!
さらにこの協力モード、プレーヤーの評価システムもついているのが嬉しい。「FIFA」ではゲーム内の“選手”に対する評点しか行なわれないが、本作では各選手を操作する“プレーヤー”への評価がリアルタイムに行なわれる仕組みだ。すなわち、ドリブルやパスの成功・失敗、重要なパスを展開できたか、オフザボールで効果的な動き出しができたか、ディフェンスでどのような貢献をしたか……などなど。試合後にはそれらのスタッツがプレーヤーごとに詳しく表示され、協力プレーヤーのなかで誰がどのような活躍をしたか(あるいは足を引っ張ったか)が一目瞭然である。
実際に田谷氏と一緒に遊んでみたところ、田谷氏はドリブル成功率の高さ、パスの受け手としての成功率など、手堅いプレイで筆者を上回っていた。そのかわり筆者はキーパスの数が多く、チャンスメイクの面で高評価を受けることができた。ちなみにAIチームのほうは、ディフェンスがとても上手で、試合後評価もディフェンス面で一つ抜けていた感じだ。
サッカーゲームというのはなかなか自己評価が難しいものなので(なにしろ自分の失敗シーンは忘れがちで、活躍したシーンばかり記憶することが多い。それでいて他人の失敗には敏感というやつだ)、このように的確な評価をしてくれるシステムが存在するのはとてもうれしいことだ。
この協力プレイモードも今作以降は定番の遊び方になりそうだし、本作では「ウィニングイレブン10」以来の搭載となる「ランダムセレクションマッチ」(指定した数チームの中からランダムに選手をピックアップして対戦する機能)が復活したり、公式大会システムである「PESリーグ」に「myClub」、「ランダムセレクションマッチ」、「オンラインCOOP」が対応。多彩なカテゴリーで頂上を目指す事ができるようになった。
以上のように、多方面で大きく進化した「PES 2018」。これまで「FIFA」シリーズに移っていた人も、この完成度は認めざるを得ないはずだ。
今作の方向性やその完成度を見ると、おそらく次回作の「PES 2019」では、高再現度スタジアムの拡充など、コンテンツのボリューム面に注力した改良が行なわれていくのではないかと思う。少なくとも、本作でその準備は完璧に整ったのではないか、という印象を持つことができた。
今作からPC版もハイエンドバージョンを投入。……なのだが
PCゲーマーの皆さんへ追伸。
「PES 2018」開発チームのプレゼンテーションによると、これまでPS4およびXbox Oneのみで展開していたハイエンド版は、今作よりPC(Steam)版にも投入されるという。つまり前作まで、PC版の「PES」はPS3/Xbox 360バージョン相当だったわけだ(日本での「ウィニングイレブン2018」はPS4でのみ発売)。
これはPCゲーマーにとって非常に大きなニュース!……なのだが、残念ながら例年と同じく、PC版は日本以外の地域でのみ配信される予定だとのこと。Steamで日本国内から「PES」シリーズのストアページにアクセスしようとすると「このアイテムはお住まいの地域では現在ご利用いただけません」と、いわゆる“おま国”対応をいただけるが、それは今年も変わらない見込みなのだ。残念至極!
ちなみにPC版で日本が除外されている状況について、田谷氏自身は「えっ、そうなんですか?」と広報スタッフに確認するレベルであずかり知らぬところのようだった。開発者としては、国も地域も関係なく、全バージョンを平等に配信したいという考えではあるようだ。このあたりは、ファンの声で動かしていくしかないかもしれない。