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「LOST SPHEAR」、この手法だからこそ描ける物語、ゲーム性がある
ディレクター橋本厚志氏インタビュー
2017年6月15日 13:00
スクウェア・エニックスと開発スタジオTokyo RPG Factoryが制作するRPG「LOST SPHEAR(ロストスフィア)」。2017年秋にプレイステーション 4と、Nintendo Switch版が発売予定だ。今回、E3会場で本作のディレクターを務めるTokyo RPG Factoryの橋本厚志氏に話を聞くことができた。
「LOST SPHEAR」は、「いけにえと雪のセツナ」から続く「Project SETSUNA(プロジェクト・セツナ)」の第2弾となる。とはいえストーリーの繋がりはない完全新作だという。
「Project SETSUNA」は、1990年代の“日本のRPGの黄金期”の文法をベースに、現代の技術、価値観、テーマでRPGを表現していくプロジェクト。前作「いけにえと雪のセツナ」は日本だけでなく海外でも好評だったという。「LOST SPHEAR」もこの流れに続き、手法としては同じものを踏襲しながら、新しいRPGを提示していくという。
「LOST SPHEAR」では、“記憶”がキーワードとなる。この世界に存在する全てのものには、記憶が宿っている。その記憶が何らかの理由で“抜け落ちて”しまうと、「ロスト」という状態となる。それは真っ白な、何もない空間となってしまうのだ。
主人公達は、このロストという現象に対峙し、記憶を復元したり、時には創りなおしたりして、ロストに対処することで“世界のことわり”にあらがっていく、という物語となる。主人公達はロストの原因を追いかけていく中で、世界の謎に直面していくこととなる。
「LOST SPHEAR」は4人でのパーティプレイ。見下ろし型のフィールドで、パーティを率いて進むという伝統的なRPGならではのスタイル。ワールドマップでは敵とエンカウントせず、ダンジョンなどで敵に近づくとシームレスに戦闘が開始される。戦闘ではゲージがいっぱいになるとコマンド選択ができるアクティブタイムバトルとなっている。
こういったところは、「いけにえと雪のセツナ」を踏襲している。本作はゲームエンジンとしては同じものを使っており、モンスターなどにも共通するものはいるが、プログラムやテクスチャーのほとんどに手が入ってるとのことだ。
本作ならではの要素としてはコマンド選択時にキャラクターが移動できる要素が実装されたことで、範囲攻撃などで敵を多く巻き込むなど有利に戦える。ただし「背後をとったからダメージが増える」というところまで複雑にはしておらず、ボタン連打でも戦えるようなバランスを目指している。こういった要素は「いけにえと雪のセツナ」で得たフィードバックを反映している。街に宿屋があるというのも、ユーザーの声で入った要素だ。
本作は方向性として、「いけにえと雪のセツナ」と同じ“路線”にある。SF的な未来世界などではなく、異世界を感じさせるファンタジー風の世界観だ。この路線を継続したのは「ユーザーの声に応えたかった」からだという。同じ路線でありながら、「きちんとパワーアップした姿」を提示したかったと、橋本氏は語った。「より完成度の高いものを作りたかった」というところも正直な感想とのことだ。ストレスのたまらない、快適なゲームプレイなども意識しているという。キャラクターの成長システムなどもセツナを踏襲しながらより完成度の高いRPGを目指しているとのことだ。
「前作を踏襲」、「前作を発展」、「前作の不満を解消」という橋本氏の話をずっと聞いていると、実は「LOST SPHEAR」で橋本氏達はゲームシステムは手法として、もう前作のシステムをある程度の完成形として固定化し、“物語”にこそ全力を注ぎ込むのだろうか? という疑問が浮かんできた。あえて力の注ぐ場所を限定することで、よりはっきりしたゲーム性を打ち出すのだろうか? 筆者はここを質問してみた。
橋本氏は「そうではない」と応えた。「LOST SPHEAR」には今は話せない大きなテーマ性を持ったゲーム性があり、この新しいゲーム性とストーリーという大きな2つが魅力となっているとのことだ。まずは今回のインタビューでは、前作を発展させ、“記憶”をテーマにした新しいRPGを制作中だ、というアピールがメインであり、今作ならではの新要素に関しては、今後の発表を楽しみにしてほしいという。
ヒントの1つは、実は公開されているスクリーンショットにも含まれているという。まず今の段階ではユーザーにあれこれ想像してもらい、楽しみに待ってもらいたいと橋本氏は語った。
もう1つが「Project SETSUNA」という手法そのものだ。現在はリアルな3DグラフィックスのRPGが主流だが、見下ろし型のマップ、デフォルメされたキャラクター、テキストによるメッセージで表現できるストーリー、演出法、ゲームシステムはまだあるのではないか?
本作を「1990年代RPGへのリスペクト」ととられることもあるが、橋本氏自身は“思い出の再生産”ではなく、あくまで作っているのは最先端のゲームであり、懐かしさを感じさせるRPGの方法論で、想像させる余地を残すような雰囲気を残しつつ、現在の想い、価値観による新しいゲームが提示できるはずだ、と思っているとのことだ。
今回はデモプレイとしては最序盤、主人公達が初めて“ロスト”という現象を知り、生まれ故郷である街が真っ白になって消えているシーンが提示された。彼らは自分たちの思い出を、記憶を、失われたかけがえのないもの取り戻せるだろうか?
橋本氏はユーザーに対して「トレーラーをよーく見てください、今は話していない要素も入っていますし、かなり新しい体験ができると思います。これからの情報にご期待下さい」と語った。トレーラーはネタてんこ盛りと言うことで、注目したいところだ。
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