ニュース

バンナムとドリコム、HTML5ゲーム開発の新会社「BXD」設立を発表

「ドラゴンボール」、「ファミスタ」、「アイマス」新作を開発中

2018年春サービス開始予定

左から大下聡氏、手塚晃司氏、内藤裕紀氏

 5月25日、バンダイナムコエンターテインメントとドリコムは、共同出資による新会社「株式会社BXD」設立の発表会を開催した。BXDは、HTML5を中核とする技術を活用したオンラインゲームの配信、およびプラットフォームの運用を行う会社となる。

 今回の発表会にはバンダイナムコエンターテインメント 代表取締役社長の大下聡氏、ドリコム代表取締役社長の内藤裕紀氏、さらにBXDの代表取締役社長に就任するバンダイナムコエンターテインメント NE事業部 第2プロダクション ゼネラルマネージャーの手塚晃司氏が登壇。設立の経緯や、今後の事業展開について説明を行なった。

新プラットフォームではサードパーティからのタイトルも予定

強力なIPを活かした3作がローンチタイトルとして発表された

 最初にマイクを握った大下氏は、バンダイナムコエンターテインメントがキャラクターマーチャンダイジングに強みを持ち、一方のドリコムはHTML5の技術力が強みであると話す。この両社の強みを掛け合わせて、新たな価値を提供するため、ジョイントベンチャーとして「BXD」を設立することになったと説明した。

 続いては内藤氏から「プラットフォームから構築することによって、誰でも簡単に遊べる環境を作りたい」と、アプリだけでなくプラットフォームから作り上げることの意味を強調した。

 さらに同氏は、両社がタッグを組むことになった経緯も語った。取り組みの始まりは2年程前にさかのぼり、当時はネイティブアプリが盛り上がりを見せ、中でもIPタイトルが強さを発揮している状況だった。

 バンダイナムコとドリコムはどちらもIPタイトルのヒット作を抱えていたが、「大きな変化があるとしたら何だろう」と考えも巡らせていたという。そこで内藤氏は「HTML5を中心に、ブラウザゲームが再興するのでは」と考え、バンダイナムコも奇しくも同じ考えを持っていたことから、協業する運びとなったという。

 ドリコムはブラウザでネイティブアプリと同じ体験を提供できるかの実験を続けており、現在では「ほぼ同等の体験ができるところまできた」と内藤氏。しかし同等のだけでは新しい価値にはならない。そこで昨年夏から本格的に新作タイトルだけでなくプラットフォームの開発をはじめ、2017年入ってから「世界中の人に届けられるのでは」と自信を持ったことで、単なる業務提携ではなく、共同で新会社を設立することにしたそうだ。

 そしてBXDの代表取締役社長となる手塚氏はバンダイナムコのロゴにある「アソビきれない毎日を。」と、ドリコムの「With entertainment」を引き合いに出し、「新しいエンターテインメントを、日常に密着した形で提供していきたい」と抱負を語った。さらにバンダイナムコが長年培ったノウハウ、さらに安定運用が続く会員基盤といった強みと、ドリコムが持つHTML5の技術開発力を活かすことが当面の目標とした。

 BXDの大きな取り組みはやはりHTML5によるゲーム開発、さらにプラットフォームの開発だが、将来は関連商品の展開、新デバイスへの対応なども予定しているという。関連商品の具体的な内容は明かされなかったものの、手塚氏いわく「シリアルコード、位置情報など、日常生活と連動したものを計画している」と語った。

 プラットフォームのサービス開始時期は2018年春を予定しており、それと同時に「ドラゴンボールZ」、「ファミスタ」、「アイドルマスター」と、バンダイナムコを代表するタイトルが配信予定。他のタイトルも整い次第順次発表で、さらに前述の通り各タイトルの関連商品、さらにはサードパーティからのタイトルリリースも計画中とのことだ。

ネイティブアプリとして配信中の「ONE PIECE トレジャークルーズ」を用いたデモ映像も公開。「BXDから改めて配信されるわけではない」とのことだが、サウンド、演出などすでに配信されている同作品がほぼ同じ内容で動いていた
会場ではBXDのロゴも公開。BXDは「Breakthrough X Digitallife」の略で、「未知なるデジタルライフを打ち出していきたい」という思いが込められている

手軽さが魅力になる時代が再び来る

 発表会の後半は質疑応答の時間が設けられ、会場に訪れた記者からさまざまな質問が飛び出した。「PC側での提供は?」という質問に対して手塚氏は「今回はモバイルに特化したUI・UXになっており、現在のところ想定していない」と回答。

 また手塚氏は自社プラットフォームでやることのメリットとして、「商品展開などがしやすくなる」と説明。これに加えて各社の要望も汲み取りやすくすることも重要とし、今後も「サードパーティとして協力していきたい」と展望を述べた。ジョイントベンチャーにした理由として内藤氏は「スピード感を上げたい」という思いがあったからだと語る。より早く意思決定して、行動につなげていきたい考えがあるそうだ。

 HTML5が盛り上がると思った背景には「アプリがリッチ化し、逆にアプリが重すぎて入りづらくなっている」と現在のスマートフォンアプリを分析。より手軽に、入りやすくなることが魅力になるとの予想が、今回の根底にある。さらに内藤氏は「ゲーム業界では同じことが繰り返されている」と持論を展開。かつてPS2からPS3へ以降するとき、ゲームがマニアックなものになり、代わりに手軽なニンテンドーDSが盛り上がりを見せた過去がある。スマートフォンも同じフェーズに入っていると内藤氏は考えており、URLひとつで複数の人が同じ体験を味わえる手軽さが大きな魅力になるという。

 一方で、既存のネイティブアプリとの差別化は大きな課題だ。これについて手塚氏は「バンダイナムコグループがいることの意義」だという。関連商品との連動をはじめ、日常とデジタルデバイスの連動を積極的に行なうことが重要だと語った。また、「バンダイナムコID」が提供する電子マネー「バナコイン」にも対応するとのこと。こちらはより使い勝手がいいようにカスタマイズした上での提供となるようだ。

 バンダイナムコでは「GOD EATER ONLINE」、「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」など3D表現を用いた作品も多い。BXDのアプリでも同様に3Dゲームの提供が期待されるが、「端末の処理が追いついていない」と内藤氏。その一方で、「端末が追いつけば3Dの再現、オンラインの同期も可能になる」とも語った。バッテリーの消耗なども含めて、チューニングしていくという。

 最後に大下氏は、「今回の発表では、BXDの展開の10分の1しか発表していない」とコメント。残りの情報については、BXDが設立する8月3日ごろから徐々に発表していくとした。