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バンナム、CC2、ドリコム等が結集し新規IP「Project LayereD」を発表
アニメとゲームを同時展開、オーディションで主役を決定。オープンIP化も明言
2016年9月17日 10:36
東京ゲームショウ2016のバンダイナムコエンターテインメントブースにて、UGC(User Generated Contents)を活用したアニメとゲームアプリ「Project LayereD(プロジェクト レイヤード)」の発表会が開催された。
本作はUGCを活用してオリジナルのIPを創出し、育成していくという取り組み。サイバーコネクトツーが企画・原案、ドリコムがゲームアプリ開発、ポリゴン・ピクチュアズが3Dアニメ制作、大橋聡雄氏がアニメ監督、redjuice氏がキャラクターデザイン、月光がシナリオ、バンダイナムコスタジオが楽曲・音響をそれぞれ担当。バンダイナムコエンターテインメントがプロジェクトを統括するという関係だ。
発表会には、同社でプロジェクトの総合プロデューサーを務める手塚晃司氏、サイバーコネクトツー代表取締役の松山洋氏、ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役社長の塩田周三氏、ドリコム代表取締役社長の内藤裕紀氏が登壇。アンタッチャブルの柴田英嗣氏がMCを務め、軽快なトークで進行した。
UGCとは、一般の人がコンテンツを作るという意味。本作においては先のとおりプロの会社に担当分けされているのだが、キャラクターデザインや声優などをプロアマ問わず広く募集して、それをもとにプロジェクトに参画するプロが仕上げていく。またその中で、一般の人の意見も取り入れていく、という形を取る。
このプロジェクトの発端となったのは松山氏。3年ほど前に、「今は1つの商品に夢中になるのではなく、作品が好きでゲームも遊ぶしアニメも見る。だからIPを作らなければならない」と感じたという。同社は「.hack」というオリジナルIPを作ってきたが、それとは別で、10年商売できる作品を作りたいと考えたそうだ。
当初はサイバーコネクトツーの社内で新たなIPを考案していた。ある日、松山氏がそのことを手塚氏に話したところ、手塚氏も同じようなことを考えており、それなら一緒にやろうという話になったそうだ。
新規IPとなる「Project LayereD」では、まずアニメとゲームの配信が予定されている。手塚氏は「スマートフォンが出始めて、アニメをテレビではなくスマホで見るようになってきた。我々も今までどおりのゲームやアニメではなく、新しい表現でゲームを作り直そうと思った」という。企画段階においては、途中から月光が参加してシナリオを整理しつつ、関係者向けの説明のためだけにプロの漫画家に頼んで漫画を作ったりもしたそうだ。
UGCの活用については、「インターネットの可視化」という表現で説明された。人の意見や好みは様々あるが、それらを採り入れるためにインターネットを活用する。また松山氏は、「人は能力や環境などが各々違い、生まれながらにして不平等。本当の意味での平等な世界はネットの中にあると思う」と、インターネットを活用する意義を語った。
本プロジェクトの特徴は3点あるという。1点目はアニメとゲームの融合。基本設定として、2037年の渋谷を舞台に、主人公とヒロインの物語が展開する。しかしそれ以外の時間軸でも2人の物語が展開される。アニメとゲームは独立した物語として語られるが、例えば時間軸の異なるゲームに出てきた怪獣が倒されると、アニメでは怪獣が倒された後の話になる、といったように影響を及ぼしあっていく。パラレルワールドではなく、あくまで1つの世界として相互に深みを増していくというニュアンスだろう。
CGアニメの制作を得意とするポリゴン・ピクチュアズの塩田氏も、松山氏らと同じように新規IPの必要性を感じており、プロジェクトに参加。「アニメはデジタルでやる強みを出していきたい。今ならアニメとゲームのワンソースマルチユースも実現できるのでは」と語った。通常はCGアニメでリアルタイムエンジンを中核にすることはないが、今回はUnreal 4エンジンを中核にして映像を作るつもりでいるという。
スマートフォン向けのアプリはゲームだけでなく、アニメの視聴にも使用するターミナル的なアプリになるという。開発を担当するドリコムの内藤氏は、「これまでは人気のアニメの配信が終わってからゲームになったり、ゲームの人気でアニメができたりするが、今回は両方をリアルタイムにやって欲しいという話になっている。今回は新しいチャレンジになる」と意欲を見せた。
2つ目はオーディションの実施。物語の柱となる主人公やヒロインのキャラクターデザインをオーディションで募集する。対象はプロアマ問わず。絵がうまければいいということではなく、キャラクター的に面白いものなら採り入れ、最終的にredjuice氏がタッチを合わせるために仕上げるという。キャラクターデザインの応募は9月16日から10月20日まで受け付けている。他に声優の募集を12月、主題歌ボーカリストの募集を2017年春頃に実施する予定。その後も様々なオーディションが行なわれる見通し。
3つ目は、オープンなIPとなること。「Project LayereD」の世界観やキャラクター設定を用いた個人での創作は商用・非商用問わず自由に行なえる。さらにアニメやゲームのモデルデータも無償公開され、それらを使ったアニメーションやゲームを制作することも自由だ。なお法人の利用の場合は、バンダイナムコエンターテインメントが展開している「カタログIPオープン化プロジェクト」に則った形での利用となる予定。
続いては大橋氏とredjuice氏がステージに登壇。「Project LayereD」のイメージPVが上映された。
このPVは、大橋氏の想像に任せて作られたものだという。現在流行を見せているARやVRが進化し、LayereDというものに変わった約20年後の渋谷を描いたものとなっている。ヘッドフォン型のデバイスも決まり事ではなく、発展形ARとでも言うべきLayereDが実現できるなら、コンタクトレンズでも何でも構わない。あくまで現段階でのイメージであり、先のキャラクターデザインにおいても踏襲する必要はないく、むしろ「いろんなデバイスをみなさんにも考えて欲しい」という。
redjuice氏はキャラクターデザインのオーディションで審査員を務める。応募するイラストに注意すべき点を聞かれると、「絵が上手い下手より、キャラクターデザインにどれだけコンセプトを詰め込んで伝えられるか。時代劇に登場するキャラクターならその時代背景や服、風俗を調べて、デザインに少しずつ反映させる。これはこうだよと説明できるのがいいのでは」と述べた。また今後もデザイン系のオーディションは行なわれる見通しで、「アバター的なものやメカニック的なものもあると思うので、得意分野に応募して欲しい」とも語った。
オーディションには賞金も用意されるが、キャラクターデザインの受賞者には、その後の声優オーディションなどにも携わって欲しいという。今回結集したプロ集団としては、UGCで作品のアイデアを集めること以上に、多彩な才能を集めて一緒に仕事をしたい、ゲームを作る楽しさを多くの人に知ってもらいたいという思いが強いようだ。
最後にQ&Aの時間が得られたので、本プロジェクトについていくつか質問してみたので、内容を以下にまとめていく。まず「Project LayereD」というタイトルは仮題ではなく正式タイトルとして決定している。
IPとしての横方向への展開だが、アニメとアプリ以外のものについては現時点では未定。ただなるべく近い時期に展開したいとしている。ゲームに関しても現状はスマートフォンアプリのみが決定しているが、家庭用ゲーム機等への展開も検討していくという。
UGCやオーディションという形を活用するプロジェクトとしては、「Project LayereD」がその第1弾となる。これが成功できれば、今後は2037年の渋谷とは違う、新たな第2弾、第3弾プロジェクトもやりたいとのことだ。
サイバーコネクトツーは今回、企画・原案担当として携わっているため、ゲーム制作には直接タッチしない。松山氏は「もし家庭用ゲームを作っていくことになれば、どこかのゲーム会社さんと組んで作っていただくか、あるいはその1社がうちになるかもしれない。現時点で決まっていることはないので、今後バンダイナムコさんと相談しながら決めていきたい」とコメントしている。
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