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「World of Tanks Blitz」初の世界大会「Blitz Twister Cup」が開催

初の栄冠はやはりCIS勢! Tier X 7輌による「WoT」史上最も激しい打撃戦が展開

【Blitz Twister Cup】

11月19日開催

会場:Altman Building

 11月19日にニューヨークで開催された「World of Tanks」の世界大会「Challenger Rumble」では、「World of Tanks Blitz」初の世界大会「Blitz Twister Cup」も併催された。初の試みということで随所に試行錯誤感の感じられるイベントとなったが、その模様をお届けしたい。

【出場チーム】
Team ID(APAC)
LEGION(EU)
C4(CIS)
HEAT(NA)

竜巻をイメージしたカップ
試合前の練習風景
試合中の様子。ソファに腰を下ろしてメンバーが向かい合わせでプレイする
iPhoneで巧みにプレイする選手
優勝を決めたCIS代表のC4
C4の優勝を称えるWargaming.net CEO Victor Kislyi氏

 「Blitz Twister Cup」は、東京ゲームショウで発表されたグローバルを対象にしたe-Sportsトーナメント。PC版「WoT」に次いで、コンソール版「WoT」や「World of Warships」よりも早いタイミングでの大会開催となり、近年、モバイル市場に注力するWargaming.netとして重要なイベントとして位置づけられている。

 このため初開催といえども今後のWGLへの組み込みを前提に設計されているためトーナメントルールはかなり厳格で、チームメンバーはWGLと同じ7名で、TierポイントはWGLをの68ポイントを上回る70ポイント。つまり、7輌すべてTier Xを使うことができる。試合時間は7分の遭遇戦で、マップは鉱山、ディスペア砦、廃線、砂漠の砂、運河、冬のマリノフカ、大和港から選ばれる形となる。

 使用デバイスは、スマートフォンとタブレットのみで、PCやMacは不可となる。また、Bluetooth接続のゲームパッドなど、外部接続デバイスの使用も一律不可とし、マートデバイスを両手に持ち、画面内に表示されるUIのみを使って操作を行なう必要がある。この点については、「運営面での効率を考えた暫定的な措置」としており、次回以降は参加選手のフィードバックを受けた上で、このあたりのレギュレーションが変更される可能性は十分にある。

 「World of Tanks Blitz」は、モバイルデバイスに特化したモバイル版「World of Tanks」として、「WoT」本来のゲーム性と比較するとかなりカジュアルな内容になっている。たとえば7対7を基本としているため、マップサイズが小さくなっており、さらに様々なモバイルデバイスでもゲームが楽しめるようにフィールドのオブジェクト数も少なくなっている。これは茂みの数が少ないことを意味しており、茂みの後ろを定位置として活動する軽戦車や駆逐戦車が活躍しづらい環境にある。また、そもそも自走砲はカテゴリとして存在しないため、結果として、“重戦車&中戦車大活躍ゲーム”となっている。

 まだ初回ということで、PC版ほど定番の布陣というものは存在しない印象だったが、ソ連のTier X中戦車Obj 140が圧倒的に人気だった。55kmの最高速度と240mmの砲塔装甲という、硬くて速いのが人気の秘密だ。チームによっては7輌全てObj 140というところもあり、WGLがまだTier VIIIで行なわれていた時代に、走攻守揃ったTier VIII軽戦車T-54 ltwtばかりで構成されていたことを思い出してしまった。「World of Tanks Blitz」ではObj 140部隊の突出を食い止めるために、IS-7やE 100、T110E5といった重戦車を好みでチョイスするという感じで、現在のPC版ほどではないにせよ、早い試合展開が特徴となっている。

 今回は、CIS、NA、EU、APACの各リージョンから予選を勝ち抜いた1チームずつ、計4チームが出場し、総当たりのリーグ戦の上にプレイオフを実施するという形でトーナメントが進められた。ちなみに日本が所属するAPACからは、韓国のTEAM IDが出場し、全チームが予選リーグで敗れるという混戦模様の中、最後に優勝を勝ち取ったのはCIS代表のC4だった。やはり「WoT」シリーズはモバイルにおいてもCIS勢が強いようだ。

 今回はChallenger Rumbleの隣の特設エリアで同時進行だったため、通しでじっくり観戦できなかったのが残念だが、開始数秒で砲撃戦が始まる印象で、そのままお互いに距離を詰め、PC版では考えられないような近距離での撃ち合いとなり、僅差でいずれかが勝つという大乱戦ばかりが目に付いた。PC版と比較すると、マップが狭いため、チームの目となる軽戦車が不要で、隠れた状態で強力な一撃を食らわせる駆逐戦車、遠距離から砲弾を撃ち込む自走砲といった、ゲームのすくみ関係を成立させるキャラクターがいないため、試合展開が単調なのが気になった。

 もっとも、試合会場は狭かったためか、試合はかなり近くで観戦することができ、選手たちの指捌き、かけ声、喜びの表情などを、間近で感じることができたのは楽しかった。選手層、観客層も、PC版よりは断然若く、新しい市場が開拓されていることを感じることができた。何より、モバイル版でも、PC版に勝るとも劣らない、興奮度の高い試合が実現できていたのは、さすが「WoT」といった印象だ。

 選手たちが使用していたデバイスは、チームによって違うというより、個人レベルでバラバラで、iPhone、GALAXYといったスマートフォンを巧みに使いこなしている選手もいれば、iPadやiPad miniといったタブレットを使ってゆったり操作している選手もいた。ひとりだけiPad Proを使っている選手もいたが、モニターサイズが大きすぎるため少々使いずらそうだった。

 観戦については、ライブ配信用の観戦モードはかなり高機能なものが実装され、俯瞰視点で両チームの動きを見ながら試合を観戦できたものの、モニター出力への最適化が行なわれておらず、選手名や車輌名、ミニマップ、残り弾数といった試合を観戦する上で必要不可欠な情報が小さすぎて判読できず、いま何対何でどちらが勝っているかという基本的な情報も、試合をずっと見ているか、実況解説を聞かなければわからないなど、改善すべき点はまだまだ多いと感じた。

 そして今回、もっとも大きな問題となったのは、断続的な無線通信トラブルだ。使用機材はスマートデバイスということで、試合はすべてWiFiを使って行なわれたため、強力な無線LAN環境が必要となるが、初めての開催ということで運営母体のESLも十分な環境を準備できていなかった。

 このため第1試合から通信トラブルで試合開始が遅れ、もともとの予定ではChallenger Rumble決勝戦の前座として、Blitz Twister Cupの決勝が行なわれるはずだったが、まったく間に合わず、Challenger Rumble決勝戦の後、しばらくしてようやく試合が開始されるという有様になった。試合が終了したのは23時過ぎで、初開催とはいえ15,000ドルの賞金が掛けられた大会とは思えないほどお粗末な進行だった。大会運営を担当したELSには猛省を促したい。

 そうした中で、そんなトラブルはお構いなしに、一般客に混じって熱い声援を送っていたのが、Wargaming.net CEOのVictor Kislyi氏だ。今回、大会前日に空母イントレピッドで実施されたファンミーティングにサプライズ登場した後、終日大会を観戦していた。Kislyi氏は、最前列で腕組みをした状態で試合を見守り、スーパープレイが飛び出ると大声を上げて応援するなど、本当に試合が好きであることが伝わってきた。

 試合後にはステージに呼ばれてマイクを握り、満面の笑みで選手たちと握手を交わし、参加者の労をねぎらうと同時に、今後も引き続きこのようなイベントを開催していくことを約束。10時間超の戦いに疲労感たっぷりの選手たちだったが、Kislyi氏の熱意に大会運営の不満も吹き飛んでいた印象だった。Blitz Twister Cupの今後の展開については未定ということだが、若い層を開拓する意味でも、「World of Tanks Blitz」の大会は欠かせないと言える。今後の展開に期待したいところだ。

【観戦モード】
「WoT Blitz」の観戦モードは、「WoT」に準ずる内容で、かなり高機能だが、目の前に見るスマートデバイスに最適化されているため、モニターだと文字が小さすぎて読めない