インタビュー
「セガ3D復刻アーカイブス」インタビュー第2弾!!
「スペースハリアー3D」、「アウトラン 3D」に「ヘルパーモード」導入!
(2014/12/17 00:00)
「スペースハリアー3D」、「アウトラン 3D」に「ヘルパーモード」導入!
―― 先ほど触らせていただいていて、「スペースハリアー3D」、「アウトラン 3D」も前回のインタビュー時点とは変わっていましたね。
奥成氏: 前回もお話させていただきましたが、10年前にプレイステーション 2の「SEGA AGES 2500 Vol.20 スペースハリアーII ~スペースハリアーコンプリートコレクション~」に、初回特典として赤青のセロファンを付けさせて頂いて、「スペースハリアー3D」の立体視をアナグリフ式で実現したんですが、今回、カラーで立体視できる「スペースハリアー3D」が遊べる、というところがポイントです。
―― 画面モードは3つありますね。オリジナルと縦いっぱいに広げたもの、それとフル画面ですね。オリジナルの画面比率時に選べる背景、実は4つあったんですね(笑)。
奥成氏: はい。「セガ・マークIII」、「マスターシステム」に加えて、「マスターシステム」のデモ画面と、真っ黒の4つです。
奥成氏: そして今回、「ヘルパーモード」を追加しました。これが前回のインタビューのラストに「バーチャルコンソールでは規格外になっちゃう仕様を追加」と触れていた部分ですね。「バーチャルコンソール」では基本的に追加要素はやらない、という作りなんですが、今回は「バーチャルコンソール」ではないので。
この「ヘルパーモード」は、「SEGA AGES 2500」のときにやりたかったものなんですけれども……それがようやくリベンジできたという。
―― 10年越しの夢ですね(笑)。
堀井氏: 10年越しです。
奥成氏: 「スペースハリアー3D」の「ヘルパーモード」は無限コンティニューです。
堀井氏: あの当時、コンティニューのカウンターを探すのが時間の関係上後回しになってしまって、入らなかったんですよね。おかげでPS2版でも、クリアした方はほぼいないんじゃないか、という難易度のままなんですよ。本当に、あれは人類がクリアできるものじゃないと思うんですよ。
―― (笑)クリアしている方はいますよね?
堀井氏: そういう方はある意味人類じゃない(笑)。
―― 今の目線で言うと、難しいんですよね。
奥成氏: 今回、「設定」の「ヘルパーモード」をONにしていただくことで、ゲームオーバー画面でLボタンを押して頂くだけでプレイが再開できて、しかも何度も可能になりました。
堀井氏: 中断セーブもありますから、今回はかなりクリアしやすくなっています。
―― MSXのコナミさんのゲームを思い出しますよね。ゲームオーバー画面でボタンを押すとコンティニューって(笑)。押し忘れるとひどい目にあうという。
堀井氏: ああ、F5を押し忘れるとゲームオーバーになっちゃうという。かなり泣けますよね。
奥成氏: 「スペースハリアー3D」のコンティニューコマンドがかなり難易度が高かったので(2種類あり、それぞれ3回、6回までコンティニュー可)、入力ミスでコンティニューができないというのは哀しかったので。そこで、今回はボタンひとつでできるようになりました。
ただ、コンティニューは、ゲームの途中からではなくてステージの最初からなので、どこでもセーブを使いつつ、何度も遊んでみてください。道中が長いゲームなので……敵が1セット×2回、みたいな感じで。
―― ボーナスステージがないですから、テンポが変わりませんし。
奥成氏: なぜボーナスステージがないのかは、エンディングで明らかになるという……。ぜひ、感動のラスボスとエンディングをご覧ください。皆さん、「スペースハリアーII」のエンディングでしか「スペースハリアー3D」のオチを知らない、ということもあると思うので、ぜひ実際にクリアして見ていただいて「そうだったのか!」と思っていただきたいですね。
それから、裏技でネームエントリー時にIIコントローラーから特定の文字を入力していたサウンドセレクトやレベルセレクトなどもやりやすくなってます。別の方法で再現されていますので、お試しください。
―― 「アウトラン 3D」に関してはいかがですか?
奥成氏: こちらには「日本版」が入っています。
―― 日本で発売されていないのに(笑)。
奥成氏: 日本の「セガ・マークIII」や「マスターシステム」用の設定が存在していたことがわかったので、「あるんだったら選べるようにしよう」ということで収録しています。でも、実はタイム設定が海外版よりシビアになるんですよ(笑)。
―― ええっ難しくなっちゃうんですか(笑)。通常のゲームの国内版と海外版とは逆の設定になっているんですね。それ以外の部分は何か変わるんですか?
奥成氏: 多分変わらないと思います。
―― 「スペースハリアー3D」も日本版と海外版が入っていますね。
奥成氏: はい。調べてみたらあったので、入れてみようと。こちらも日本版と海外版の違いはほとんどないですね。
「アウトラン 3D」の「ヘルパーモード」は、ゲームスタート時のタイムが通常より多くなります。これでクリアしやすくなりますね。
セガ・マークIIIの「アウトラン」をプレイされたことがある方は、「アウトラン 3D」の「同じハードで、どうやって改善するか」といったところの面白さが味わえるのではないかなと。容量との戦いとか、演出をどういう風に作るかとか……。一部退化しているところもあるんですけれども。
―― 立体視に対応させたことでトレードオフになっている部分とか……。
奥成氏: いろいろな努力や工夫のあとが味わえると思います。「ビッグゲート」とかなくなってますけれどもね。
―― その代わりトンネルが……。
堀井氏:そうそう、BG(バックグラウンド画面)を書き換えるだけでどうトンネルに見せるか、というとんちの部分ですね。
―― びっくりしますよね。
奥成氏: 今回、移植してみてはっきり伝わるのが、当時の立体視の立体感の迫力というか、飛び出し具合ですかね。前回のインタビューでもお話しましたが、立体視の設定をソフト側で変更することはできないので、3DのON/OFFしか切り替えられません。逆に、オリジナルの立体視の飛び出し具合はTV+3Dグラスで見たときと同じ立体感になっていますので、他の3DSのゲームも含めて、1980年代の立体感を楽しめるんじゃないかなと。
―― 結構はっきりと立体視化されている感覚を受けました。
堀井氏: 「アウトラン 3D」に関しては、松岡いわく、立体視が破綻するのを防止するための処理が1番時間がかかっていたようです。開発期間として取っていた時間よりもはるかに長かったな、という……。
―― ということは、勝手に移植(笑)していた時期から、ずっと手がけていたんですね。
堀井氏: そうなんですよ。前回のインタビューでお話していましたが、液晶シャッター方式からの3DSの裸眼立体視に対応させる部分の話ですね。液晶シャッター方式では、右目用と左目用の映像が違っていて描画1枚ごとに右目用と左目用の映像が変わるので。それを直すのに苦労したようです。
―― 不思議なのは、オリジナルが開発されていた時期って、立体視に関して、開発ツールなどでさくっと奥行を決定するような仕組みってたぶんなかったころですよね? それで立体視の奥行の位置決めとか調整って、どうやっていたんですかね?
堀井氏: どうやっていたんでしょうかね? 視差の部分は計算で位置決めしていたと思うんですけれども。
―― ツール上で確認することができたんですかね?
堀井氏: 多分、ビルドしたものを実際に3Dグラスをかけて調整していたんじゃないでしょうか? 調べてみてわかったんですが、プログラムごとなんですが、偶数フレームと奇数フレームをどちらの目に割り当てるのかがまちまちだったりもしましたし……。「ついさっきまで右目が偶数フレームだったのに、セレクト画面では左目が偶数フレームになってるね」ということが結構あったようなので。
―― 規則性がないんですね。
堀井氏: あの当時のことですから、規則性や規約のようなものがない時代だったと思うんですよ。
奥成氏: 「スペースハリアー3D」は、以前PS2への移植(「スペースハリアー2 スペースハリアーコンプリートコレクション」に収録されている)で手がけたときに解析ができていたので、比較的スムーズに移植できたんですが、「アウトラン 3D」は「3Dスペースハリアー」とはまったく違うプログラムで液晶シャッターに対応していて、しかもシーン1つ1つを解析して3DS向けに直していくという必要があったんですね。
―― 当時も分業でプログラムを組んでいらっしゃったと思うんですが、ゲーム中はこの人が、メニューはこの人が、とそれぞれ別にプログラムしていて、共通ではなかった可能性もありますよね。
奥成氏: 正直、今回、それで開発が1週間延びたんですよね。1番大変でした。
―― (笑)。そこまで大変だったんですね。FMサウンドユニットのON/OFFも「セガ 3D復刻プロジェクト」では初の仕様ですよね。当然のように入っていて笑いました。
奥成氏: そこはきっとこの後で並木(学)さんが語ってくれると思います。
アソビン教授がロード画面に登場!
―― もう1つお伺いしたかったのは、今回、アソビン教授(セガ・マークIIIの説明書に登場していたアドバイスキャラクター)が、パッケージの裏側だけかと思っていたら、ロード画面にも出てくるんですね。
堀井氏: 松岡から、「アソビン教授のセリフを132個考えたよ! 読もう!」とアピールされました。
―― (笑)。132個も入ってるんですか!
堀井氏: 入れも入れたり132個ですよ(笑)。
奥成氏: 今回、大々的にというわけではないですが、アソビン教授をフィーチャーしてまして、パッケージ裏だけでなく、マニュアルやゲーム中にも登場します。昨今のご時勢でマニュアルがなくなっちゃっているんですが、操作説明シートは作ってもいいということで、4つ折りのものをこんな感じで作っていまして……。最後のページは「アソビン教授からのアドバイス」が収録されています。「パッケージ版なんだから、マニュアルほしいよね」ということで。
でも、この操作説明ですが、「スペースハリアー3D」と「アウトラン 3D」のものは入っていないんです。なのに「アソビン教授からのアドバイス」が入っているという(一同笑)。これが制作者のこだわりです。ペラペラなところも、ある意味セガ・マークIIIみたいでいいかなと。
―― なんか懐かしい感じですね。
奥成氏: そして、ゲーム中にも登場します。これはですね、元々「セガ 3D復刻プロジェクト」のゲームって、3DSのメモリいっぱいを使って作られているんですよね。普通、こういったゲームを作る場合、メニュープログラムは常駐させておいて、各ゲームのデータを読み込む形を採るわけですが、それぞれのタイトルがメモリを全部使っちゃっていたので、ゲームの切り替えにお時間をいただくことになって。
―― 「よっこらしょ」ってメモリの中を入れ替えるという(笑)。
奥成氏: メモリの中をほぼ全部取り替えるので、そこにアニメーションだとかを入れる余裕がまったくなくて。それで「何ができるだろう?」と考えた中で、松岡さんが「アソビン教授を出したい」と。
堀井氏: 「アソビン教授を大々的に出したい」という野心を。
奥成氏: ということで入れたんですけれども、「アソビン教授からのアドバイス」のテキストって、意外とクセがあって、再現するのに独特の文章力(笑)が必要なんですね。
Wiiの「バーチャルコンソール」のマスターシステムのホームページに、下にアソビン教授を登場させたんですが、後半のタイトルのいくつかにマニュアルにアソビン教授が出てこなかったので、僕が勝手にアドバイスを作っていたんですね。あと『ソニック&オールスターレーシングTF』のローカライズの時にも、ロード画面のTIP用として書いたりしました。それらの時に「アソビン教授らしさ」を出すのは意外と難しいことを学んでいたので、「できるの?」と聞いたら、「できる」と。それで、最初「実装する前にテキストを見せて」と送ってもらったものは、僕がほぼボツを出しました。
―― うぉぉ……難しいんですね。
奥成氏: 最初は、1ゲームに4個づつぐらい、メニューを含めて40個ぐらいのテキストをもらったんですが、ほぼボツにしちゃって。「これじゃ普通すぎて全然アソビン教授らしくないよ」と。「各ゲームにつき1つだけでいいから、それらしいものを」とリテイク出したんですね。
そうしたら、それを見ていた松岡さんが、「僕がやります」と。しかも「もう時間がないので、作って実装します」と。それが今のバージョンです。
―― (笑)。
奥成氏: もちろん僕も確認してOKを出しました。
―― ついに重鎮が動いたと。
奥成氏: 松岡さん、コンパイル出身だから、もともとテキスト系もいろいろ扱ってきてるんですよね。
―― 「3D サンダーブレード」のときのコメントを思い出しましたよ。読者の方にも、「松岡さんのコメントは1文が長いのに一気に読めちゃう」って書いてらっしゃった方がいましたね。
奥成氏: 僕がいくつか出した注文もすべてクリアして。しかも、最初はタイトル×4個だったものが、タイトル×8個になってるんですよね(笑)。「こういうものは、同じものが何度も出るより、違っているものが出たほうがうれしいから、たくさん書きます」って。ゲームタイトルの時だけでなくて、タイトル切り替えの時など、シチュエーション別で、全部で130個を超えるという。全部を見るのはなかなか難しいかもしれませんが。
ちなみにですが、今まで配信してきた「3D復刻プロジェクト」の起動時のセガとエムツーロゴの表示が長い理由は、あの時間バックグラウンドでずっとデータをロードしているからなんですよ。あそこはボタンスキップできたら理想なんですけれども、後ろでロードしているので、スキップできないんです。
―― (笑)。
奥成氏: あれよりは「セガ3D復刻アーカイブス」のゲームの切り替え時のロードはさすがに短くなっていますが。
―― ロードだけでなくて、圧縮されたデータの展開などもやっているんですよね。
堀井氏: 時間かかっちゃいますね。
奥成氏: しかもメモリをいっぱいに使っているので、例えば「LOADING」の文字などをアニメーションさせることすらできる余裕がないという。
堀井氏: しない!
―― 潔く(笑)。